ケイケイの映画日記
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2007年09月07日(金) 「荒野の七人」(布施ラインシネマ ワンコインセレクション)




御存じ黒澤明の「七人の侍」のリメイクにして、傑作西部劇。もちろんテレビ放送時に観ていますが、子供の時なので全然覚えておりません。忙しくて時間が取れるかヒヤヒヤだったんですが、本当に観て良かったです。ユル・ブリンナーとイーライ・ウォラック以外、当時はまだ駆け出しだったはずですが、本当にすごいキャスティングです。再現しようにも、絶対無理。だってキャストほとんど死んでるし(←意味違う)。娯楽映画はこうでなくっちゃ!というお手本のような作品でした。なお元作「七人の侍」も全然覚えておりません。そのため今回比較は出来ませんので、あしからず。

メキシコのとある村。農民たちは毎年収穫時になると、カブレラ(イーライ・ウォラック)を首領とする盗賊一味に、収穫物や女性を貢物として差し出さねばならないことに、業を煮やしていました。村の長老に相談すると、「戦え」と言われる農民たち。武器も策もない彼らは、取りあえず銃を調達しに町に出かけます。そこでクリス(ユル・ブリンナー)という一匹狼に出会います。彼に用心棒になってくれと頼む農民たち。もっと数が必要だというクリスは、後6人(スティーブ・マックィーン、ブラッド・デクスター、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、ロバート・ボーン、ホルスト・ブッフホルツ)を集めます。

超ーーーーーーカッコイイ!!!!!
エルマー・バーンスタインのお馴染みの音楽が聞こえはじめるや、一気に心は西部劇。ブリンナーたちが初めて登場する棺を運ぶシーンからして、佇まいだけで格の違う男っぷりなのです。七人のうち、リーダー格のブリンナーが当時40代後半だった以外は、キャストはほとんどが30前後。ちょうど青年から大人の男性に移行する感じでしょうか?この男としての強さ、包容力、華やかさ、、ガンさばき、そして意地とプライド。どれをとっても「ザ・大人の男」の世界なのですね。あの名優だけど美男とは聞いたことがないチャールズ・ブロンソンだって、若い時はこんなに男前だったのか!と唖然とするほど。そう、みんなハンサムと言う感じじゃない、「男前」なんです。

農民とガンマン、成熟した大人(ブリンナー)と若造(ブッフホルツ)、老人(長老)と働き盛り、大人(ブロンソン)と子供、男と女、親と子。臆病な農民を嫌い勇敢なガンマンになりたい若造のチコに、他のガンマンたちが聞かせるアウトローの厳しさと孤独。ブロンソンが子供たちに言い聞かせる親の尊さ。女性のもてなしに安息を覚える男性。くっきりと対比してあります。あぁそうだった、私の子供の頃には差別もあったけど、それぞれきちんとボーダーがあり、必要な上下関係、住み分けがあったのだと思い出しました。今はそういうボーダーがなくなりつつあり、対等という言葉を得た代わりに、失ったものも多いなぁと感じます。

正直言うと、前半のテンポの良さから考えると、後半は脚本の弱さも感じます。その最もたるのが、捕まえた七人に銃を返すカブレラでしょう。しかし演じるウォラックの好演があり、憎々しいけど憎み切れない隙や愛嬌を残すカブレラですから、「武士の情け」も納得だし、まさか同じ穴の狢だと思っていた彼らが、男のプライドを賭けて一銭にもならない仕事に、命を賭けるとは思わなかったのでしょう。と好意的に解釈出来る、したくなる力が、この作品にはありました。これって娯楽作(特に大作)には、とっても大事なことだと思います。

ラストの銃撃戦は、昨今至近戦を描く戦争映画が流行っているので、そんなに刺激的ではありませんが、とにかくかっこいいです。ブリンナーはガンさばきが下手くそらしいのですが、もちろん若輩者のワタクシ、そんなことは一切わからず萌えてしまいました。でもやっぱ一番かっこよかったのはマックィーンかな?でも憂いを浮かべるボーンも捨てがたく、飄々としたコバーンも捨てがたく。やっぱり貫禄のブリンナーかしらん?おほほほほほ。こういう大人の男の渋さがわかるのにはね、やっぱり女もそれなりに年を取らにゃー。更年期なんか怖くない!とか思っちゃう。デクスターとブリンナーのラストの会話なんか、若年男子では、あの深みは出せませんことよ。

そう言えば最近、お若い男性は「次に生まれるとしたら、男女どちらがいい?」という質問に、「女!」と答えるパーセントが多いのだとか。私が若い頃は考えられなかったことです。確かに今は女性の社会進出で、伝統的な生き方、新しい生き方が両方認められ選択肢の広がった女性に比べ、男性は古典的な生き方考え方を押しつけられ、生き辛いのでしょうね。しかしこの作品を見よ。ここでは男の美学というものが溢れ、どんなに世の中が変わっても、女性には決して立ち入れない境界があるのだなぁと教えてくれます。
場内は平日のモーニングということでオールドファンばっかりでしたが、若い世代の人にも是非観て欲しい作品だなと、改めて感じました。


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