ケイケイの映画日記
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2005年10月01日(土) 「がんばれ!ベアーズ/ニューシーズン」(吹き替版)

別の病院の検診の帰り、梅田で観てきました。その日は予定通り入院なら「いつか読書する日」をモーニングで観る予定でしたが、日記に書いた事情により早急に筋腫の状態を診察して欲しかったので、涙を呑んでパス。しかし意外な見通しの明るさに気を良くしての、その後の鑑賞です。元作の方は、中3くらいの時観て大層気に入り、先日書いた「映画バトン」でも、何故名前が浮かばなかったのかと、後で不思議でした。しかしラストのラストまで観て、どうして忘れていたかが胸にズシンときました。

害虫駆除の仕事をしている飲んだくれの不良中年バターメーカー(ビリー・ボブ・ソーントン)は、一度だけメジャーリーガーとしてマウンドに上がったことがありました。少年野球チームの監督を頼まれ、こずかい稼ぎがてら引き受けた彼ですが、想像を絶する子供達のヘタレ具合に、全然やる気がありません。しかし最初の試合でぼろ負けして猛烈に悔しがる子供達に、彼の中で何かが変わります。別れた妻の連れ子であったアマンダ(サミー・ケイン・クラフト)や、少年院上がりと噂されるケリーをチームに招き入れるや、ベアーズは快進撃を続けます。

「スクール・オブ・ロック」のリチャード・リンクレイターが監督なので、どんな出来かと思いきや、ほとんどオリジナルといっしょ。そういえば「スクール〜」も、一見破天荒に見えて、むしろオーソドックスに先生と教え子の絆を描いていたように思います。

ボールもろくすっぽ投げられないくせに理屈ばっかりいい、バターメーカーに悪態ばっかりつくヘタレの悪ガキたちが、屈辱的な最初の試合の大敗に、身分不相応に猛烈に悔しがるのがいいです。この気持ちをバネにするかあきらめてしまうかでは大違い。大げさに言えば、彼らの人生にも関わる出来事です。子供達の選択はあきらめの方。しかし彼らの情けない様子に、人生あきらめきったバターメーカーの心に火がついたのは、まさに「負うた子に教えられ」で、ストーリーは先刻ご承知の私も、やっぱり嬉しくなります。

ウォルター・マッソー以上の適役はないと思われるバターメーカーを、実に自分に引き寄せて演じているビリーボブにびっくり!元は善人だろうムードのあったマッソーに対し、こちらはやさぐれた不良中年がぴったり。ダメな男のセクシーさ全開で、子供映画でこんなにフェロモン出してどうするなんですが、子供達に段々と愛情を持つ人間的な魅力と、男としての魅力も兼ね備えたビリーボブのバターメーカーは見事でした。

母と自分を捨てた元義理の父に対する、アマンダの気持ちの描き方がいいです。演じるのは元作はご存知最年少オスカー受賞女優テイタム・オニールで、ほんの子供の容姿ながら見事な娘心を見せたの対し、今回のサミーは体格が良くぱっと見はローティーンには見えませんが、最初は自分たちを捨てた義理の父に突っ張っていますが、本心は彼を慕っておりまだ幼いのだという気持ちが観ていてドンドン湧いてきて、心に染みます。サミーは野球経験者だそうで、堂々のピッチングでした。

バターメーカーがやる気になる様子、アマンダとケリーの関係など、細部の心の移り変わりに、元作はもう一息工夫があった気がしますが、もう20年以上観ていないので、定かではないです。この作品から観た方は、気にはならないと思います。一球の判定やアウト・セーフの判定に子供以上に大人がエキサイトする様子は、うちの息子達もラグビーをしているので、とってもわかるなぁ。私が一番好きなセリフは、チビで喧嘩っ早いターナーが、チーム一の弱虫が悪ガキどもに痛めつけられているのを助ける時の、「こいつをいじめていいのは俺だけだ!」。同じ釜の飯を食った仲間はこうでなくっちゃ。

ラストは知っているのにウルウルしました。初めて観た方は意外な印象を受けた後の爽快感が、とても心に残ると思います。勝負はどんな手を使っても勝てばいいのではなく、されど勝ち負けを意識せず、全力を出せば参加することに意義がある、も違うのです。最後のベアーズの弾けた姿は、勝つ気持ちを持ち続けるのが大切、そう教えてくれているようです。勝つ対象は人それぞれ。仕事、スポーツ、お金、病気、家庭不和、長い人生でそれぞれ対象は変わるはず。子供から大人までが一丸となったベアーズがそう教えてくれます。そんな気持ちを失っていたから、私はこの作品を忘れていたのですね。「勝ち組・負け組み」という言葉がもてはやされ、一見多様化したように見える価値観の中、実は経済的に潤ったものこそ一番の考えが、広くはびこっているように思います。そんな考え方を木っ端微塵にしてくれたラストでした。さしずめ私の対象は病気。ベアーズの子供達に負けないよう頑張ります。


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