ケイケイの映画日記
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2005年04月03日(日) |
「エターナル・サンシャイン」 |
才人チャーリー・カウフマンが脚本です。カウフマン作品は、この作品の監督ミッシェル・ゴンドリーが携わった「ヒューマン・ネイチャー」以外は全て観ています。大変話題になり高評価だった「マルコビッチの穴」は、才気溢れる作品だとは理解は出来ましたが、どうもツボが私と合わず楽しめませんでした。しかし次に観た「コンフェッション」は、胡散臭さ満点ながら妙な魅力のある作品で、煙に巻かれてやろうじゃないかと、楽しみました。そして「アダプテーション」は、前半退屈でやっぱ合わない人かなぁと思っていたら、後半の怒涛の展開に、おぉそういうことかと感激。段々と私の中で評価の上った人です。今回は芝居巧者のジム・キャリーとケイト・ウィンスレットの共演の恋愛ものということで、すごーく楽しみにしていました。結果今まで観たカウフマン作品の中で、初めて大好きだと言える作品でした。
バレンタインデーを目前に、ジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)のカップルは、ケンカ別れしてしまいます。仲直りしたかったジョエルですが、ふとしたことからクレメンタインが自分の記憶を消したと知ります。カッとしたジョエルは、自分も彼女の記憶を消そうと、彼女ど同じラクーナ医院を訪れます。一晩で彼女の記憶は消え去るはずでしたが、彼の脳は、必死になって彼女の記憶を守ろうとするのです。
最初大まかなストーリーだけを頭に入れて臨んだので、二人の出会いから描くのかと思いましたが、ちょっと「メメント」風に、時間を遡って描いています。時々「現在」が挿入されるのが味付けです。わかりにくければ、個性的なクレメンタインの髪の色で見分けられます。合計三色ですが、それで彼と彼女のその時の関係がわかるようになっています。
ジョエルの脳からクレメンタインの記憶を消し去る装置から、彼の脳が逃げ回るシーンに半分以上費やしています。この辺りがカウフマンの真骨頂と言う感じで、ユーモラスだったりドキドキしたり、意表をつく表現が満載です。「マルコビッチの穴」でもこのような表現方法はありましたが、あまりに才気走った感じが馴染めなかったのですが、ちょっと冴えなく感じていたファーストシーンの二人が、どんどん生き生きする様子に、今回は好感を持ちました。
設定にしてはいくら演技に定評があるといえ、主役二人はちょっとトウが立った人ではないかと思いましたが、その後描かれるラクーナ医院の若い受付嬢メアリーのエピソードは、切なさを越えて心がうずく痛さを感じます。恋愛に付きものの切なさ愛しさには、年齢などまるでないのだと感じ、恋愛ものと言うと、どうしても若い人向きという概念を払拭してくれる脚本とキャストでした。
そのキャストですが、ジム・キャリーが渋く落ち着いた感じで、とても印象が良かったです。またしてもオスカーのノミネートすらないのが不思議なくらいの好演でした。ケイト・ウィンスレットは、私はこういう不思議チャン系の役は不似合いだと今でも思っています。それでも破天荒なのに純粋さを持ち合わせるクレメンタインを絶妙に好演して、改めて上手い人だと感心しました。メアリー役のキルスティン・ダンストは、「スパイダーマン」シリーズでは、失礼なヒロインブス説があちこちで聞かれましたが、この作品ではとても魅力的でした。最初のイマドキの若い子風から、恋に疲れた女心を見せる終盤まで、キルスティンだからこそアピール出来た役だったと思います。
特筆はラクーナ医院の助手役イライジャ・ウッド!ストーカーまがいの青年で、客のクレメンタインに恋します。ちょっと気持ち悪い男の子役を、あの「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの後に選んだ彼にびっくりするやら感心するやら。フロド役はホビットなので小柄な彼も引き立ちますが、綺麗だけど濃いお顔と小柄な体からは、年齢からはいささか未成熟な感じがする彼が、その自分の個性を逆手にとっての怪演は好感すら感じ、自分を良く知るクレバーささえ感じました。今後もすごーく期待してます!
記憶は消えても、人の感情は消えるものではないという結論に、月並みですがとても胸をうたれました。ラスト再会する二人が、お互い相手の罵詈雑言を吹き込んだテープを全部聴いて選択した結果には、反省して学習した二人がいました。
あんまり書くとネタバレになるので、これ以上は書きませんが、今までのカウフマン脚本では、一番万人向けの作品ではないかと思います。多くの方に観ていただきたいです。とても大好きな作品です。
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