♀つきなみ♀日記
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2005年04月01日(金) 木蓮

木蓮が咲いている。

乳白色の花が
ちょうど西へ沈む下弦の月のうてなに乗って
久しぶりに冷え込む空に
浮き立っている。

生まれ育った家の近所の庭にあった木蓮も
やはり白い花を咲かせていて
私は長いあいだ
木蓮と言えば、純白で清純な印象を強く持っていた。

ちょうど20才の春に
玉川園から少し川沿いに入った
瀟洒な一戸建てのレストランで
食事をする機会があった。

私はまだよく男を知らなくて
そして女にはなっていなかった。

パウダールームで鏡に写る私は
耳触りの良い言葉と少し飲んだお酒で
頬が少し上気していた。

化粧を直して席に戻る時
右手の一枚ガラスの向こうの中庭に
闇に溶け込む紫暗色の花があった。

それは見慣れた形なのだけれど
月明かりの中で例えようも無いほど妖艶に見えた。

木蓮という名の花が、
白い花だけではない事が
何故かとても恐ろしかった記憶が
未だに残っていたりもする。



テキスト庵

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