♀つきなみ♀日記
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木蓮が咲いている。
乳白色の花が ちょうど西へ沈む下弦の月のうてなに乗って 久しぶりに冷え込む空に 浮き立っている。
生まれ育った家の近所の庭にあった木蓮も やはり白い花を咲かせていて 私は長いあいだ 木蓮と言えば、純白で清純な印象を強く持っていた。
ちょうど20才の春に 玉川園から少し川沿いに入った 瀟洒な一戸建てのレストランで 食事をする機会があった。
私はまだよく男を知らなくて そして女にはなっていなかった。
パウダールームで鏡に写る私は 耳触りの良い言葉と少し飲んだお酒で 頬が少し上気していた。
化粧を直して席に戻る時 右手の一枚ガラスの向こうの中庭に 闇に溶け込む紫暗色の花があった。
それは見慣れた形なのだけれど 月明かりの中で例えようも無いほど妖艶に見えた。
木蓮という名の花が、 白い花だけではない事が 何故かとても恐ろしかった記憶が 未だに残っていたりもする。
テキスト庵
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