母校で夏期音楽講習会がありました。 丸々3日間の集中講座。久々の学生気分を味わってきました♪
【演奏に生かすピアノの構造と知識 弾き較べ講座】
1日目:午前中・・・ピアノの発展史と様式学 古典派の場合「ベートーヴェン」 午後・・・・ベートーヴェンの作品 公開レッスン 2日目:午前中・・・3種類のピアノの違い ロマン派の場合「ショパン・シューマン」 午後・・・・ショパン・シューマンの作品 公開レッスン 3日目:午前中・・・ペダルとピアノタッチとアクションの関係 近代の場合「ドビュッシー・ラヴェル」 午後・・・・ドビュッシー・ラヴェルの作品 公開レッスン
朝9時半から5時半過ぎまで、みぃ〜〜っちり講習でした。 かなぁり疲れたけれど、かなぁり面白かった!! 母校がこういったことを企画してくれるって嬉しいです。 これからもどんどん企画して欲しいな。
弾き較べたピアノは、 スタインウェイ・ベヒシュタイン・ベーゼンドルファーの3種類。 公開レッスンも弾き較べながらのレッスンで、 いろんなことが見えてきました。
強く印象に残っているのは、倍音について。 倍音を感じながら弾くってよく聞くことだけれど、 具体的にどんな感じなのかわからなかった。 体で耳で倍音を感じるってどういう感覚なんだろう? それが今回わかり、大きな収穫でした。
まず、それぞれピアノメーカーによって、 倍音のどの音を強調させるか、が違います。 それがそれぞれの音色の違いとなって出てくるのです。 単音での響きは、ベーゼンが最高の音色でした。 すっごく色彩が豊かなのです。 けれど、倍音を多く感じる分、一度に多くの音を鳴らすような曲の場合、 もわぁあ〜〜っと汚くなりがちです。 ペダルの構造も他の2種と違い、扱いが難しそうでした。
ベヒシュタインは他の2種に較べ豊かな響きではないけれど、 とても美しい音色のピアノでした。 単音を鳴らすと、ポ〜〜ンと音が少し上がっていきます。 そのせいか、私は明るい響きを感じました。 また、一つ一つの発音がしっかりしているので、 細かな動きのある曲や、一度に多くの音を鳴らす曲に合っているようです。 協奏曲のような場合、音の響きがオケに負けてしまうかも、と思うけれど、 小さな会場では、美しい音色を存分に生かすことができるし、 音色そのものはスタインウェイより魅力的に感じました。
で、最後にスタインウェイ。 スタインウェイの一番の特徴は、やはり豊かな響き。 大きな会場に対応できるよう作られたものなのだから。 音もとても安定しています。 ぽ〜〜んと、常に一定の音程を保って音が伸びます。 ベヒシュタインは上がっていったし、 ベーゼンは下がっていきました。 響きも豊かだし、音も安定しているし・・・・。 でも、こうやって弾き較べると何かが足りない。 そんな風に感じる音でした。 他の2種と較べると、無機質な音に聞こえるから不思議です。
いずれも倍音がどのように響くのか、 先生がたくさんたくさんわかりやすく試してくれました。 そのお陰で、倍音を感じるということがどういうことなのか、 具体的にわかったのです。 よく倍音の音を抑えておいて弾き、 その弦を共鳴させる実験がありますよね。 でも、それでは感じられなかったのです。 この実験では単音にたくさんの音を感じる、 ということができなかったのです。
でも、先生のお蔭で、 1音の中に、いろんな音を感じることができました。 「本当だ!ドの中にミもソもある!」と。(笑) そして、その後それらを感じながら演奏するということが、 どういうことなのか、具体的に曲で知ることができました。 ショパンのエチュード1番の最初。 あれ、ドの倍音から出来てるんですよね。 ショパンは倍音を上手に使った作曲家なのだそうです。
古典派はオーケストラの音楽。 作曲家はピアノという楽器のために作品を書いたわけではない。 けれど、ショパンやシューマンは、ピアノのために作品を書いている。 ピアノの響きを生かした作曲というものが、どういうことなのか。 それらが具体的に見えてきました。 今まで感じられずにいた響きを、 今後は堪能しながら弾くことができそう!!
また、午後の公開レッスン。 1度に何人ものレッスンを見学できるというのは、 本当に勉強になります。 先生がおっしゃりたいテーマのようなものが見えてくるからです。 この先生は公開レッスンになれていらっしゃるようで、 レッスンするだけではなく、 その意味合いをしっかりと聴講生にもお話してくださる先生でした。
大事なのは、こう弾くのだ・・・と演奏を提示するだけではなく、 その本意を相手が理解できるように説明できる、ということです。 先生は何度も「こう弾きなさい、とは言いたくない。 こういう方法もある、ということだ。」とおっしゃっていました。
2、3日目のレッスンテーマは、以下のとおり。 (公開レッスンで、シューマンとラヴェルを選んだ生徒がいなかった。) ショパンのテーマは、「倍音の響き」「模様のようなパッセージ」 「美しいメロディ」「左右のコントラスト(緊張感)」 ドビュッシーのテーマは、「感覚の表現」「解決しない響き」 「ひとつひとつ独立した響き、色彩」「音域によるコントラスト」
これらがレッスンで具体的に示されるのです。 もちろん今回講習会を受けただけで、 私自身の中にきっちり入り込んだかというと、そうは言えないけれど、 今まで見えてこなかったものが見えてくるような、 そんなきっかけを与えてもらえました。
ところで、この公開レッスン。 私よりずっとずっと目上の方がレッスンを受けられていました。 たぶん大学を卒業してからずっとピアノ講師をなさっているのだろう、 といった方々です。 みなさん、大学を卒業してからもずっとずっと精進してこられた方ばかり。 テクニックもきっと大学時代よりずっと弾けているのだろうし、 なによりも表現力が豊か。 そして、先生のおっしゃることに対する反応のよさに驚かされました。 他の若い人たちは反応が悪かった。テクニックはあっても・・・です。 先生のおっしゃることがすぐにわかるか、わからないか。 これは、表面上で受け止めるか、質的な部分まで理解して受け止めているのか。 その違いなのだと思います。 そして、それらは大学の4年間だけでは学びきれないことなのです。
最近思うのは、大学を卒業するということは、 「音楽の世界へようこそ〜」という入口の鍵をいただけただけで、 まだまだ先は長いということです。 大学は、音楽ってこういうものなんだよ・・・と、 様々な音楽の世界を垣間見せてくれる場です。 そこから先、それらの世界を深めていくのは、 大学を卒業してから、一生かけてやることなのですよね。
ずっとずっと目上の方、 きっと音大などに生徒さんを入学させているだろう、実績のある先生方。 そういった方々が、こうやって丸3日間の講習会に参加し、 レッスンを受けていく。 本当にすごいことだと思います。
生徒を教えることで自分の勉強をやめてしまうのではなく、 自分自身を昇華させていこうと、日々努力している方々。 そういう先生方が、こんなにもたくさんいらして、 こんなにもすばらしい演奏をなさるのだということ。 それは、私にとって最高の励みです。 「私ってまだまだだな。」と思うと同時に、 「これからもがんばっていこう。」と前進するエネルギーをもらえます。
体力のない自分にほとほとまいっちゃった3日間だったけれど、 本当に充実した3日間でした。 たくさんの刺激をもらいました。 これらの刺激を自分の中で消化させるのは、 まだまだ時間のかかることだけれど、 こういう機会を持てたことに喜びを感じます。 楽しかった〜〜〜〜っ!
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