世界征服日記…TITAN2


世界征服日記
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2001年01月24日(水):ピアノ
MILETはピアノを弾く。
歌も歌う。
俺様はピアノも歌も結構好きだ。
だが、下手くそなのは勘弁してもらいたい。
最近MILETはいつになく気合いが入っている。
なんでも、来月の17日に発表会があるらしい。
課題曲に四苦八苦している。
ピアノはメンデルスゾーン、
歌はシューマンだそうだ。
…無茶をするもんだ。
ピアノの方は、少し上達したようだ。
誉めてやると、MILETはかなり浮かれて俺様を
撫でくり回した。
それはやめろといつも言ってるだろ…
歌は、といえば。
なんだか、苦悩の声のように聞こえてならない。
ドイツ語だと言い張っているが…
俺様にはそうは聞こえない。
ちょっと前の、イタリア語の方がまだましだった。
まぁ、どっちにせよ…
聴けたもんじゃないがな。



2001年01月25日(木):雨の日
雨が降ると、何故か俺様は眠くなる。
今日は雨だ。
MILETがレッスンに行くというので、俺様は玄関まで
見送った。
その直前まで、俺様は布団に潜り込んで寝ていた。
だが。
MILETまで眠くなるとはどういうことだ?
あいつは今日は出かけるというのに寝坊した。
俺様が起こすとでも思っていたんだろうか。
自分で起きてくれねば、困る。
MILETの相方を毎朝起こすのは俺様の朝食の為だ。
用もないのに、俺様が起こしているわけではない。
それを、どう勘違いしているんだか。
「起こしてくれたっていいじゃんよ〜」
と、きた。
…お前の相方が、6時半頃モーニングコールしただろ。
それで起きなかった、お前が悪い。
そう言ってやりたかった。
だが、俺様も眠くて仕方なかったので、MILETからの
いわれのない抗議にも黙っていた。
うるさいヤツがいなくなると、雨音だけが静かに鳴る。
俺様は、雨の日がまんざらでもない。
雨のニオイはいい匂いだ。
なんだか、ゆったりと落ち着いた気持ちになれる。
思い返してみれば、MILETと初めてあったのも雨の日だった。
雨の日は俺様をノスタルジックに浸らせるらしい。
まぁ、おおざっぱで芸術を解せないMILETにはわからない
感性だろう。
そんなヤツが、よくピアノだの声楽だのをやっているものだ。
ヤツの先生が俺様は気の毒でならない。



2001年01月26日(金):テレビ
テレビ。
人間どもの娯楽の一つ。
MILETの相方はテレビが大好きだ。
仕事から戻るなり、真っ先にやることはテレビのスイッチを
入れること。
MILETは人間らしからぬことに、テレビが好きではないらしい。
俺様はといえば、テレビの上に乗ることは好きだが、積極的に
見ようと思ったことはない。
だが、サッカーの試合は別だ。
ボールが画面を右往左往するのを眺めるのは、気晴らしになる。
特に、何と言ったかな…
せりえあー
とか、なんとか…
イタリアのプロサッカーのリーグだとMILETは言っていた。
日本のサッカーリーグもあるらしいが、MILETはそっちを見せて
くれない。
理由はよく分からないが、MILETはせりえあーとやらの「ユベン
トス」のファンだからといっていた。
まぁ、それは置いておくとして、と。
たまにMILETがテレビの前から離れなくなるときがある。
「スタートレック」と、ハリウッドの映画をテレビでやってい
るときだ。
その二つのために、わざわざケーブルテレビとかに
入ったらしい。
無駄遣いをさせたら、MILETは天下一品だろう。
俺様にその金を寄越してくれたら、もっと有意義に使ってやる。
「スタートレック」はよほどの魔力をMILETに
与えていると見える。
MILETに「スタートレック」を語らせると、半日はしゃべり
続けるだろう。
MILETが夢中になっている間、俺様は暖かくなったテレビの上に
丸くなる。
このテレビが、また小さい。
俺様には少々、窮屈だ。
どうしても、足が画面の上にはみ出してしまうのだが、
MILETは気にしていないようだ。
聞いた話では、テレビの上に乗ることを禁じられている猫も
いるという。
気の毒な話だ。
暖かくて居心地が良いというのに。



2001年01月27日(土):あらし
ひどい風。ひどい雨。
陋屋の近辺の高速道路は全て通行止めだそうだ。
デンシャはかろうじて動いているものの、そこまで行くのに
バスがない。
と、MILETが言ってた。
バスやらデンシャやらには乗ったことがないので
それがどれほどのことなのかは俺様には分からない。
だが、高速道路が使えないというのは確かに大した問題だろう。
俺様は生まれて初めて、こんな嵐にあったような気がする。
なんでも、陋屋付近以外は大雪だそうだ。
ということは、噂に聞く吹雪というヤツなのだろうか。
MILETとその相方は今日は「オフ会」とやらに行くはずだった。
…俺様を差し置いて出かけようとしていたらしい。
天罰だな。この天気は。
先ほどテレビを見ていたら、突然画面が暗くなった。
MILETはスイッチをぱちぱちしていたが、事態に変化はない。
MILETの相方がテレビ局に電話してみると停電との話だった。
電気はすぐにも復旧して、テレビが元に戻った。
「電話までやられなくて良かったよ。去年の夏は電話線、切れたからね」
MILETが安堵のため息をもらした。
夏、確かに落雷がひどかった。
一度など、MILETの仕事中に雷が落ちてMacのデータが一瞬にして
消えたことがあった。
俺様は傍でずっと「そろそろ来るぞ」と警告していたのだが…
俺様の言うことをきかなかった結果、MILETは徹夜した。

さて。
明日にはこの悪天も終わるらしい。
天気が回復するというのだが…
MILETは今日、本当に出かけたかったらしい。
いい気味だと思っていたのだが、あまりにもがっくりしているので
なんだか気の毒になってきた。
膝の上にでも乗って、慰めてやることにする。



2001年01月28日(日):アソビ
俺様が気に入っているオモチャがいくつかある。
一つはレーザーポインターとやらだ。
目に入ると危険だとのことで、MILETはそれをあまり
持ち出さない。
赤い点が目の前を行き来する。
そいつを捉えようとすると消えて無くなる。
また追いかける。
追い付くと、消えるのだ。
これがなかなか、予測不可能で面白い。
ウサギの毛で出来た猫じゃらしも陋屋には沢山ある。
何故沢山あるかというと、俺様が片っ端から壊してしまうからだ。
昨夜も一人で遊んでいるとMILETが起きてきた。
「も〜。赤ちゃんは寝る時間でしょ〜?」
誰が赤ちゃんだ。
お前の方がよっぽど…
その先はMILETの名誉のために飲み込んだ。
だが、無視して俺様は明け方近くまで遊んでいた。
俺様は昨夜遊んでいたのはネズミの形をした猫じゃらしだ。
中になにか入っているらしく、しゃかしゃかと音がする。
その音が聞きたくて、俺様は激しく転がす。
いつの間にか、俺様は夢中でドリフトし、MILETの相方を
ゴールキーパーになぞらえて見たりした。
ゴールは自分のベッドだ。
気持ちよくシュートが決まったので、俺様はサッカーをやめにし、
ちゃんと「ボール」をもってホームに帰った。
夜が明けてMILETがオモチャに気が付くようにわざと枕元に
置いておく。
案の定、MILETはオモチャに気が付くとパジャマのままで俺様と
遊びに耽った。
…やっぱり、MILETの方がどう考えても子供だ。



2001年01月29日(月):メール
MILETが久しぶりにまじめに仕事をしている。
こう言うときはなるべく見張っている。
だが、時々俺様も退屈になる。
そういうときは、ピアノをつま弾いてみる。
MILETは怒って俺様に「無理矢理」ピアノを弾かせるが
そういうときはとっとと逃げるが勝ちだ。
さて、MILETの気晴らしはといえば、
親しい友人にメールを書くことらしい。
相手にしてみればいい迷惑である。
そういえば、ポストなんたらというメールを書く道具に
俺様の名前を付けていた。
正確には俺様の先代様の名前だ。
書いたメールをペットが運んでくれるというそのソフトは、
MILETのお気に入りである。
よせばいいのに、何匹ものペットを今はMacの中で飼っている。
あのずぼらが、良く管理しているものだ。
本物の生き物だったら、とっくに殺しているだろう。
俺様にしたところで、MILET一人では食事の支度すら
ままならないに違いない。
そんなMILETにもメールをやりとりできる友人がいる。
奇跡だ。
友人達はMILETとどんな話をしているのだろう。
よもや、俺様の悪口ではあるまいな。
気になって、ちょっと覗いてみた。
…殆どが仕事の愚痴だった。
人様にいわせれば、MILETなど遊んでいるようなものだろうに。
とことん、怠け癖のあるヤツだ。
今日も俺様が見張っていなかったら、仕事をしなかっただろう。
正直なところ、俺様はMILETが羨ましい。
外に出ていかないのは俺様とMILETの共通項だが
俺様にはメールをやりとりできる相手がいない。
俺様専用アドレスでもとってくれれば話は別だろうが…
MILETにそんな器量があるようには思えない。
そのうち、ネットも俺様が支配してメールもやり放題だ。
それまで、しばらく不便を我慢しよう。



2001年01月30日(火):花粉症
今日はとても天気が良かった。
暖かだったし、空は良く晴れていた。
俺様はMILETをたたき起こすと、ベランダへの窓を
開けさせた。
ベランダから屋根へ飛び移り、風の匂いを嗅ぐ。
春はまだ遠いが、気のせいか花の香りがした。
MILETは、といえば寝室でしきりに鼻をかんでいた。
咳をしているようだ。
痰も絡んでいるのか、俺様を呼ぶ声が掠れている。
MILETは花粉症だ。
一昨年まではそうでなかった。
去年の三月半ばぐらいに、突然花粉症になったのだ。
かなりひどいらしく、粘膜という粘膜が
腫れ上がるらしい。
挙げ句には、体中に発疹が出るそうだ。
特に、喉と鼻がひどい。
この時期、MILETはいつも咳をしている。
俺様は気の毒に思いつつも、やはり外に出ていきたい。
窓に俺様用のドアを取り付けるとかすればいいだろうに。
そんな器用な真似は、ここの住人に出きるはずないか。
不器用なヤツらを選んでしまったのが、俺様唯一の後悔だ。
しかし、俺様が自由に出入りしたがるのを知っているMILETは
自分が苦しい思いをするというのに、窓を開け放ってくれる。
その点は、感謝せねばなるまい。







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