1975年ソウル。 9歳のジニ(キム・セロン)は、新しいワンピースと靴を履いて、大好きな父(ソル・ギョング)とともに郊外のある場所を訪れる。 そこは、高い鉄格子に囲まれた庭の中で、子供たちが遊ぶ場所だった。 その状況が理解できずに外へ飛び出すジニ。 だが、目に飛び込んできたのは、門の向こうに去ってゆく父の後ろ姿。 彼女が連れてこられたのは、孤児が集まるカトリックの児童養護施設だった。 父に捨てられたという現実を受け入れられないジニは、自分は孤児ではないと主張し、父に連絡を取るよう院長に頼み込む。 そして、出された食事にも手をつけず、反発を繰り返す始末。 やがて脱走を試みるものの、門の外に出ても途方に暮れるだけだった。 健康診断のために施設を訪れた医師(ムン・ソングン)に、なぜここに来たのかと質問され、ジニはぽつりぽつりと話し始める。 父親と新しい母との間に生まれた赤ん坊の足に安全ピンが刺さり、それが自分の仕業と誤解されたから。 話すうちに、ジニの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていく。 それでも必ず迎えはくると信じるジニは、祈るように父を待ちつづけるのだった。。。
昨年末、いつも聞いているラジオのシネマコーナーで、映画評論家の方が「2010年のベスト1は『冬の小鳥』!監督の自伝的な映画」と言っていたのを聞いて、ずっと気になっていた作品でした。
ジニが預けられてから、フランスの里親に引き取られていくまでの施設での様子を淡々と描いています。
カメラのアングルも常に子供の(ジニの)目線で捉えているのが上手くきいています。
孤児をテーマにした話なので、基本的には暗い。 施設の仲間達や、少し年上のお姉さんのエピソードもとても切ない。
見ていて、全く明るい気持ちになれないけど、ラストのシャルルドゴール空港でのシーンは、「お願い!どうか幸せになってっ!」と、心から願わずにはいられない印象的なカットでした。
送迎ゲートで待ち受けるフランスの義両親。 そして、1人で見知らぬ場所へ旅立ったジニの表情。
「これからどうなるんだろう…」という余韻を残しつつも、希望の光を感じる瞬間で、凄く印象に残ったラストシーンだったなぁ。
人は誰しも「孤独」を抱えていると思います。
1人っ子でも兄弟姉妹がたくさんいる子でも。 独身でも既婚でも。 1人暮らしでも大家族でも。
人間、誰にも「孤独」はある。
でも、9歳で親に捨てられてしまった「孤独」と、孤独な部分を抱えている「孤独」とは、やっぱり種類が違うと思う。
ひとことで言うと「切ない孤独」というか…。 ジニを演じるキム・セロンちゃんが、その辺を本当に素晴らしく演じていました。
セリフがとても少ない役なのに、表情やしぐさで、その切ない孤独を上手に表現していて、あっぱれでした!
キム・セロンちゃんありきの作品だなぁ。
92分とコンパクトな作品ながら、中身は濃い映画でした。
うん、確かに。。。これは上位作品に選ばれて納得。
今作も、またまた会員になっている小さな映画館での鑑賞でした。
<<昨日は『小さな村の小さなダンサー』
■感想予告■(映画見済・感想暫待) 『ソーシャルネットワーク』 『英国王のスピーチ』
2011年01月20日(木) |
『小さな村の小さなダンサー』 |
1961年、中国山東省の小さな村。 リー・ツンシン(ツァオ・チー)は、貧しいながらも、しっかり者で愛情深い母(ジョアン・チェン)のおかげで、気丈な少年に育つ。 11歳のある日、学校に視察に訪れた毛沢東夫人の目に止まったリーは、北京の舞踏学校に入学する。 だが入学後、レッスンに馴染めず落ちこぼれてしまう。 そんな彼を見かね、密かに持っていた古典バレエのテープを渡してくれるチェン先生。 バレエの美しさを知ってほしいという思いからだった。 これをきっかけに、バレエにのめり込んでいくリー。 だが、チェン先生は江青夫人の方針に逆らった疑いで捕えられてしまう。 時は流れて改革開放路線の中国。 青年に成長したリーに、米国のバレエ団の研修に参加するチャンスが舞い込む。。。
私が今まで見た映画の中で3本の指に入るのが2001年に公開されたイギリス映画の『リトル・ダンサー』。
本当に大好きな映画で、ロンドンのウエストエンドまでミュージカル『ビリー・エリオット』も見に行ったくらいの思い入れがある作品です。
新聞の評で、この『小さな村の小さなダンサー』という作品を知った時、「中国版のリトルダンサー?」と思い、ずっと気になっていました。
前者との大きな違いは、実話であるということ。 なので、バレエの話しと共に、政治的な展開も多く含まれています。
昨今、ニュースでもよく目にする、中国の(中国人の)イケイケ振りを見ると、この作品の中の出来事がホンの40年ぐらい前の事とは思えません。
今の中国の様子を(テレビや雑誌で)見ると、文化大革命や毛沢東の共産主義が1世紀ぐらい前のことのように思えてきます。 (でも世界から見たら、敗戦かた立ち上がったひと昔前の日本もきっと同じような状況だったんだろうな…)
この時代、1人でアメリカに渡り、言葉の壁や人種の壁…。 映画の中で、このあたりの差別や苦労はほとんど描かれていなかったけど、相当に大変だったはずです。
バレエに賭ける情熱や恋人と祖国や家族を天秤にかけなければいけないなんて…。 そして、亡命を選ぶなんて…。 並大抵の決意で出来ることではないと思う。 あまりに凄い次元すぎて、自分では置き換えられません。
目の前にあるのは「踊ること」のみ。
バレエシーンもとても素晴らしくて、中国の両親が招待された公演のシーンは本当に感動的でした。
そして、故郷の村に奥さんを連れて凱旋帰国した時の2人のダンス。 恩師の先生との再会もシーンも涙・涙でした。
中国では今も、全土から優秀な子をスカウトしてきて、オリンピック選手の育成教育とかやっているのかなぁ?
近年だと、シンクロの躍進が目立つけど、勉強であれスポーツであれ芸術であれ、人口が多い分だけ優秀な芽が出る可能性も高いわけで…国を挙げて育成していくシステムが整っているのかな〜。
今も、もしかしたら山奥の小学校までスカウトしに行っているかもしれない。 でも、この映画の頃とは時代が違う。 中国の躍進を目にする機会が多い今だからこそ、余計にこの作品のメッセージや良さが分かったような気がします。
主人公のリー・ツンシン役は、「子供時代」「北京時代」「現代」と、子役を含む3人の役者が演じていて、回想劇になっています。
子役からの移り変わりのスムーズだったし、アメリカ時代の恋人やバレエシーン、政治に翻弄されていくスピーディな展開もひきつけられ、期待どおりの素晴らしい作品でした。
ただやっぱり私は、イギリス北部の炭鉱町を舞台に、ジェイミー・ベルの少年期の1番ステキな時が凝縮された『リトル・ダンサー』の方に軍配は上がるかなぁ〜。
今作も、またまた会員になっている小さな劇場での鑑賞。 なかなかの盛況で、あちこちからすすり泣きが聞こえてきました。
<<昨日は『バーレスク』
■感想予告■(映画見済・感想暫待) 『冬の小鳥』 『ソーシャルネットワーク』
歌手になる夢を追いかけているアリ(クリスティーナ・アギレラ)は、アイダホの田舎町からロサンゼルスに出てくる。 そして、あるバーレスク・クラブで働き始める。 そこは、セクシーなダンサーが毎夜ゴージャスなショーを繰り広げる、大人のためのエンターテインメント・クラブである。 女性オーナーのテス(シェール)のもと才能を開花させたアリは、その抜群の歌唱力と突出したダンスの才能で人気を博し、クラブも大盛況を極めていく。。。
田舎町の女の子が都会に出て来て、才能を開花させる。 ・・・いたって単純明快なストーリーだけど、登場人物のキャラクターも演じる役者も話のテンポもチョッとしたラブストーリーも、もちろん歌も素晴らしくて、予想以上に満足の作品でした。
ここ近年見た、この手のミュージカル映画の中では満足度は高いかも。
ヒロインを演じるクリスティーナ・アギレラありきの作品だけど、パワフルな歌は圧巻だったんじゃないかな〜? (ダンスはもうチョット頑張れ〜)
シェールの存在感はもちろん、ライバルを演じたクリスティン・ベル、衣装係りのスタンリー・トゥッチも、最近は『OC』のお父さん役でしか見ていなかったピーター・ギャラガーも、みんなみんな好演でした。
劇場の受付係りで出演していたトニー賞俳優アラン・カミング。 ホンの少しの出番しかなかったけど、さすがの存在感だったな〜。 雰囲気も、『キャバレー』のMCっぽくてお似合い!
ミュージカル映画のわりに、お芝居(セリフ)部分がわりと多くて、シェールとアギレラの2人の関係の成長過程が上手に表現されていたと思います。
<<昨日は『2010年 トップ5』
■感想予告■(映画見済・感想暫待) 『小さな村の小さなダンサー』 『冬の小鳥』
2011年01月01日(土) |
2010年 トップ5 |
2010年に見に行った映画の中で、個人的な年間トップ5です。 当方、田舎住まいの為、主に単館上映系の映画の公開が大幅に遅れる時が多々あります。 実質的には一昨年の映画かもしれませんが、私が見たのは2009年という事で、その辺は御了承願います。
1位『闇の列車、光の旅』 2位『さんかく』 3位『牛の鈴音』 4位『17歳の肖像』 5位『オーケストラ!』
以上です。
2011年は、どんな作品に出会えるでしょうか。 本年も宜しくお願いします。
以下(10月後半からのレポ)↓まとめてアップしました!
小さな命が呼ぶとき⇒up☆
闇の列車、光の旅⇒up☆
氷雪の門⇒up☆
SP 野望編⇒up☆
<<昨日は『2010年 下半期映画』
■感想予告■(映画見済・感想暫待) 『バーレスク』
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