2004年11月26日(金) |
■喪服の似合うエレクトラ |
開演時間が6時15分でしたので、9時には終わると思ったけど、 甘かった。。。9時50分。休憩が20分と10分。
関西の友達←たつまちん、(チケット取ってくれて、さんきゅう) と観ることになっていたので、 宿をちゃんと取っていたのですが、よかった。 (って、別に帰れない時間じゃないんですけど、置いといて) キャッチフレーズってあんまり当てにならないけど、 これはその通りでした。
「強烈なまでの愛憎と死が、ここに結実。」
いや、本当にそうだから、脱帽。
登場人物は、全部で7人。 こてこてのギリシア古典悲劇かつ、原案というか、本家、 「エレクトラ」が幕を引いた所、復讐を果たしても、 舞台が終わらないのが、このお話のすごいところ。
その複雑きわまる物語たちの登場人物は、
エレクトラ=主人公、お父様が大好きで、お母様が大嫌い。 その母親が、父を裏切り、不倫しているので、憎しみの炎が 一気に燃え上がる。と、思いきや、実はその憎しみの色は 一色ではなかった。。。。
コリン=その弟、お母様が大好きで、お父様がまあ、嫌い。 マザコンにありがちな繊細な若者で、戦争には向かなかった。 そして、母の不倫相手のアダム船長に、父親の復讐を果たすというよりは、 ボクのお母様を返せー的のりで、男を殺す。 白いシャツがよく似合う。←たちまちん、大絶賛(笑)
マノン夫人=夫が愛をストレートに表現してくれないから、その屈折した 愛を息子にささげる。(と、いうことなんだろうな) そして、息子が出兵したら、寂しさのあまり、 義兄の私生児と不倫関係に。 「どうして、こんなおばあちゃんを?」と、云いつつ 40位なんだけど、まあ、南北戦争の頃だからねえ。
本編一のモテモテの人。だって、実はダンナに愛され、 息子に想われ、船長に惚れられるんだもん。 だが、その惚れた男が、息子に殺されるというエレクトラの復讐に、 自ら命を絶つ。←二幕目の終わりに。
マノン氏=奥さんをひどく愛していたが、不器用にその愛を伝えられず。 戦争行って、帰ってきて、生きているって素晴らしい、 (この辺りは息子に無い、ポジテブシンキング) これから人生を謳歌しようと、妻と本気に向かいあうことを決意するが、 時既に遅し。
「何でも本当のことを云ってくれ」と、云ったので、 奥さんがあらいざらいの真実をぶちまけたら、逆上。 男って奴はよお。(笑)その後、心臓発作に見舞われるも、 妻の差し出したクスリが、実はすりかえられた毒 (多分、奥さんの睡眠薬)で、死亡。 よせばいいのに、今際の際にムスメを呼んで、真相を知らせる。 それさえなければ、一幕で終わったのにね。
アダム=ただのしがない船長とおもいきや、実はエレクトラとは従兄弟。 マノン氏の兄にあたる父親とお手伝いの母親がかけおちした為、 財産を全部、マノン氏に取られ、ついでに、 病気の母親を助けてあげなかったと、深く恨んでいる。。。 って、あんたも忘れて船に乗っていたじゃんというツッコミはさておいて、 はじめは復讐で近づいたマノン夫人に本気でほれ込み、 最後には決闘して、正々堂々と君を手に入れるといきまいていたくせに、 父親の毒殺の片棒を担ぐ。。。はずだったんだけど、 やっぱり彼が入手するクスリは間に合わなかったんだろうから、
だって、彼女も劇中で云っているもんね。 「これで、アダムを私を捨てられないわ」
その後、すっかり罪の意識におののく、へたれ。 最後、夢にまで見た船をあきらめ、 夫人と早々に駆け落ちしようとするが、 コリンの銃弾にあっけなく倒れる。
ピーター=女はイイヒトより、 ちょっとワイルドな男の方が好きなの、 後、愛されるより愛したいのよで、割を見ない典型。 (だってよ・・・) エレクトラが大好き。でも、結婚しても幸せにはなれないかも。 なんつうか、彼女のうわべ=彼女の大好きな父親を模した 凛とした長女の部分で、本質=彼女の大嫌いな母親、 そのもの、しか見てなかったもんね。
ピーターの妹=コリン大好きな、清く正しい少女。 良き隣人であり、自分が善人であることを知らない。 つうか、世界は皆、優しく良いものだと思っている。 だから、善人なのだろう。 決して狂わないオフェーリアは、 だからこそ良き母になれるのかもしれない。
そうか、コリンがちょびっとだけ惹かれたのはその母性か。 と、思ったり。
こんな一癖もふた癖もあり登場人物たちが、皆、 火花を散らしているのですが、、 やっぱ、何よりコワっと思うのは母親と娘だろうなあ。
いや、あの二人は血は繋がっているのだけど、 親子じゃなくて、女と女でだからこそ、凄まじいのだろう。 いや、血が繋がっているからこその痛々しさなのだろう。 テキストにもそれが盛り込まれているし、 役者がそれをちゃんと体現してます。
私はどちからというと、女優に目がいく女なのですが、 久しぶりに、女って恐いと思いました。
娘は父に従順では無い、そして、 本人は最後の最後まで気がつかなかったけど、 恋敵として、母を憎んでいる。 そして、母は父親のコピーの娘をどうしても、 愛することが出来ない。
娘は愛せないけど、ムスコは私の子供に 思えるのって、うっとりと云っちゃえるのは ハハじゃなくて、女だよね。
この親子の闘争で、母親が一瞬だけ勝利するのは、 エレクトラが自分の心情に気がついてないからか。 それをどうしても、認められないから弱いのね。 後、年の功。三田和代さん、流石。
大竹しのぶは20才の処女に化けられるんだから、 やはり大した女優だなと。 OPなんて、ぶりぶりと愛らしいもの。
でも、お母様の役でもいいかなと思った。 すると、娘は、、、たかこ?(←すいません。)
その反面、3幕目の、今まで着ていた喪服を脱ぎ捨て、 母親と同じ華やかな服に着替え、性格も明るくなり、 母親、そのものになり、 最後、弟に言い寄られちゃうことになるんだけど、 そこが、もうちょっと艶ぽく出来ないのかしらと思った。
けど、それは、たつまちん曰く、コリンがというか、 堺雅人が、ある種の清潔感を持っているから、 なんだろうなあ。
ある種の業界用語で言うところの、、、、 ヘタレ?みたいな。
つうか、マノンの一族の男は、なんだかんだ云って、 全員ヘタレなんだけどね。。。。 あのおなご達に比べると。 というか、男と女だったら、 やっぱ男の方がへたれなんだよ。。
後、へたれ繋がりで、←なんて無理やりぽい文章だ(笑) セットなのですが、一番、大事なマノン家の玄関が、 ちょっとちゃちかったのが、いえ、玄関の扉を開ける時が、 なんか軽いのですよ、いかもにセットだ、みたいな感じで、 他のマノン氏寝室と玄関そのものは良かったから、 惜しいなあ。
ラスト場面、その玄関がゆっくりと波のように遠ざかっていくのは、 映画のようで、流石、新国立劇場ならでは。
と好き勝手に、つれつれ書いて思ったことは、 やっぱり面白い芝居は、一杯思うことがあるなあということ。 見ながら、全くって云っていい程、予想がつかないのですもの。
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