いよいよ機は熟し、兵庫山田錦(精米歩合40%)純米大吟醸の、吊るし絞りを行ないました。
昼前から30分ほどかかって吊るしを行ない、1500リットルのタンクに酒袋で40袋ほど吊るし、夕方までかかって斗ビンで4本(80リットル)取れました。
協会1401酵母のモロミなので、ギンギラギンの香りではなく、おだやかで上品な香りで、味わいは透明感がありキレもなかなかです。
3度の冷蔵庫で1週間ほど斗ビンのままで置いておくと、白濁したオリが底に沈殿し、味わいも乗ってきます。
オリに絡ませた期間は、出品酒の最後の調整の時期で、オリ離しは早過ぎても遅過ぎてもいけません。
全国入賞向けの香りの高い酵母を使っていませんので、品評会向けではありませんが、飲むには美味いお酒になりそうです。
ほろよいの蔵の給料日でした。
今は正社員の2名の他に蔵人さんが3人おられるので、支払いをすませると会社の銀行預金の残高がみるみる減ってしまいます。
それに2月末は、12月分の酒税を支払う期日になっていますので、これまた平均月の 2.5倍から3倍近く支払わねばなりません
酒税は、消費税と同じく間接税ですからお酒を販売した先から酒税をお預かりしているはずなのですが、どうしたことかあまり残っちゃいないんです。
仕込み中は、なんやらかんやら出費が多く、節約しているつもりでも、あまりお金が残ってくれません。
3月末から5月のゴールデンウイークまでが、春の需要期で、ここでもうひとかせぎしないと大変です。のんびり専務もそろそろネジを巻きなおさねばなりません。
近くの親戚筋のお婆さんが、お亡くなりになり、ほろよいは、お葬式のお手伝いに行ってきました。
脳内出血で長期間入院しておられ、高齢でもあり、次第に衰弱されての大往生でしたので、御家族もすでに覚悟しておられ、一家の主が突然事故死してしまうような悲しみに満ち満ちたものではなく、淡々と葬儀は進行しました。
正座の苦手はほろよいは、長いお経には閉口ですが、お経が終わった後で朗読される、蓮如上人のお説教「白骨の御文(はっこつのおふみ)」には、いつも惚れ惚れいたします.
これをボイストレーニングしたお坊さんが朗読されますと、その文章のうまさ、節回しのうまさに(もちろんそのお教えの内容にも)恍惚といたします。まさに「声を出して読みたい日本の名文」といっていいでしょう。
少し長くなりますが、以下全文を御紹介いたします(ちょっとお線香臭いのは御寛容のほど)。
それ、人間の浮生(ふしょう)なる相(すがた)をつらつら観ずるに、凡(おおよ)そはかなきものは、この世の始中終(しちゅうじゅう)、幻の如くなる一期なり。 されば未だ万歳(まんざい)の人身(じんしん)を受けたりという事を聞かず。一生過ぎ易し。今に至りて、誰か百年の形体を保つべきや。我や先、人や先、今日とも知らず、明日とも知らず、おくれ先だつ人は、本の雫(もとのしずく)・末の露(すえのつゆ)よりも繁しといえり。 されば、朝(あした)には紅顔(こうがん)ありて、夕(ゆうべ)には白骨(はっこつ)となれる身なり。既に無常の風来りぬれば、すなわち二(ふたつ)の眼たちまちに閉じ、一の息ながく絶えぬれば、紅顔むなしく変じて桃李の装を失いぬるときは、六親・眷属(ろくしん・けんぞく)集りて歎き悲しめども、更にその甲斐あるべからず。 さてしもあるべき事ならねばとて、野外に送りて夜半の煙と為し果てぬれば、ただ白骨のみぞ残れり。あわれというも中々おろかなり。されば、人間のはかなき事は老少不定のさかいなれば、誰の人も、はやく後生(ごしょう)の一大事を心にかけて、阿弥陀仏(あみだぶつ)を深くたのみまいらせて、念仏申すべきものなり。
以前より出荷が少なくなりましたが、まだ「竹生嶋」の総売上の約30%を占める「金紋・本醸造」のビン詰でした。
2月、3月というと売上が落ち込む月で、1.8リットルびん1000本位詰めればいいやと思ったのですが、ろ過済みの原酒が、ちょうど最盛期のビン詰1回分あって中途半端に残すわけにもいかず、思い切って1200本詰めました(9,800リットルはいるタンクに、350リットルだけ原酒を残すわけにもいけいしねえ。いかにも酸化がすすみそうで)。
空っぽになった、ろ過済み原酒の貯蔵タンクには、洗浄後、さっそく仕込蔵からろ過済みの古酒が移動してきました。仕込蔵には、いま新酒があちこちのタンクに入っているので、西尾杜氏は1つでも空にして、新酒の調合や貯蔵に使いたい御様子です)。
そうこうしていると、すぐに3月となり、大吟醸のしぼりが、どんどん近づいてきます。香りのしっかり出た大吟醸ができればいいのですが。
2004年02月18日(水) |
壬生(みぶ)をうろうろ |
ちょっと訳ありで五条御前通の京都市立病院へ
府立医大病院や京大病院にくらべるとこじんまりとしていて、スタッフがそんなに威張っていないのがいいですね。
ちょっと耳の遠い、マダラボケっぽいお年寄りのグチにも丁寧に対応されていたドクターがいて好感がもてました。
病院の食堂で650円なりのトンカツ定食をとって、予約時間の1時15分まで小1時間あったので、病院のまわりを散歩です。
快晴で、気持ちのよい風も吹いていましたので、のんびりと碁盤の目を北へ西へと「平安京エイリアン」のようにあてもなくぶらぶら。地番表示をみると「壬生○○町」とあります。はてさて「新選組!」のみなさんが百数十年前に闊歩していたのはこのへんであるかと変に感動いたしました。
予備校時代京都に住み、予備校と下宿の間を自転車で往復しておりましたので、町並みが懐かしく感じます。
昔にくらべると、新建材の住宅や妙にひねこびたデザインの住宅が増えましたが、さすが京都、昔からの町屋も健在です。瓦の葺き方や、格子のデザインなど、よく見ると古都の趣を感じます。
厄除けの「鍾馗(しょうき)」さんの鬼瓦が屋根にかかげてある町屋も、散歩している1時間ほどの間に3軒見つけました。
他にも、「電気温泉」(いかにも感電しそうで、肩こりにはききそうなネーミング)なるネオン看板をかかげた銭湯や、「ドロボー屋」と名乗る服屋さん、生湯葉カレーなるものを供する食堂(夜は居酒屋になるらしい)などなど、ちょっぴり怪しく朗らかな昼休みの散歩でした。
3月上旬に予定している大吟醸の「首吊り絞り」に使う「斗瓶」が到着しました。
昔は、出品酒の絞りくらいしか「吊るし」は行なわなかったのですが、今では(数は限定されますが)通常の商品として市民権を得てしまいましたので、精米歩合50%の純米大吟醸でも「斗瓶取り」を取るようになりました。
今年は、特に「花嵐」の斗瓶取りに人気があり、すでに予約がはいっていますので、斗瓶を買い足さねばならなくなりました(先の日記にも書いたように、滅法脆弱な容器なので、洗浄作業のさいに少しコツンとやると簡単に割れてしまい、欠減も、たまにありますので)。
到着した「斗瓶」は何故か“made in Taiwan”製でした。業者に聞くと、現在「斗瓶」用としてでまわっているのは、台湾製とスペイン製のものらしく、今年はスペイン製のものがあまりよくなくて、台湾製しかないとのことでした。
別に台湾に偏見はありませんが、当方の購入価格ウン千円に対し、輸入業者は現地でいくらで仕入れて、儲かっていないのにお人よしで鷹揚な「造り酒屋」に売りつけているのか、また、現地では何に使っているのか興味のあるところです。
台湾については、(経済学部くずれの)ほろよいが愛読しているこのHPを通読すると愛着がますこと間違いありません(台湾日記のコーナーは特に秀逸)。
台湾がノートパソコンやパソコンのいくつかの周辺機器で、世界1位の出荷額を誇っているのを御存知でしたか?まこと日本のマスコミというのはグローバルな視野が欠けているようです。
2004年02月15日(日) |
ブルーな季節がやってくる |
きのう「にごり酒」の四合ビン1本を豪快にあけたほろよいですが、朝起きたら奥様のご機嫌がナナメ、大酔いして、奥様に何やら放言を浴びせかけた様なのですが記憶がありません。
最近酔っ払うと記憶が欠落することがあって、困ってしまいます。肝臓もお疲れ気味なのかもしれません。
もうすぐ「スギ花粉」が飛ぶようになると、ほろよいはクシャミと鼻水に悩まされ、目は充血し、けだるくやる気が失せてしまい、仕事の効率が50%ほど低下してしまいます(それでなくても仕事をしないくせに)。
そろそろアルコール漬けの生活から足を洗い、本格的に体の体質改善をしなくてはいけないようです。
大吟醸の仕込みが終わり、早くも今日から絞る準備がはじまりました。倉庫から斗瓶を持ち出し、洗浄のために水をはりました。
ごらんのように、18リットル(一升瓶10本分=一斗)はいることから、斗瓶といっています。
大吟醸の出品酒は、モロミを酒袋に入れて何十本も吊して絞ることから、俗称「首吊り」といい、酒袋からポタポタ落ちたしずくを斗瓶に集めます。
しぼりたてのお酒は、うっすらと滓がからんでいますから、斗瓶に満量入れて、冷暗所に静置しておくと1週間程度で滓が底に沈んでしまいます。これをサイフォンで滓と清酒に分離するのですが、このときに混ざらないように観察するためにガラス製でなければならないのです。
かく言うほろよいは、10年ほど前、本命の大吟醸出品酒をふとした衝撃で割ってしまって以来、斗瓶に対してトラウマを抱いています。
そもそも、肉厚が場所によっては3ミリ程度しかない脆弱な容器に虎の子の出品酒を入れることが間違っているのです(中に入っている大吟醸斗瓶取りは、末端小売価格10万円以上もするのに)。
ほかの業界で18リットル入る丈夫で安いガラス容器を使っているのを知っていたら、そっと、ほろよいまでメールでお知らせください。
2004年02月08日(日) |
浮島現象〜ほろよい淡路島へ行く |
甑倒しが終わった最初の日曜。午前8時からの蒸し取りもなく、すこしゆっくりできるかなと思ったら、マキノ町内の酒屋さんの懇親日帰り旅行がはいりました。
午前7時半にマキノを出発し、明石海峡大橋を経由して洲本温泉で温泉につかったあとで昼食会というスケジュールです。
6時起きで琵琶湖を見ると、急激な冷え込みで、琵琶湖の対岸の山々が浮いて見えます。冷えた日にはよく見られる現象ですが、今日の浮島現象はけっこうハッキリと浮いていて、早起きしてちょっと得した気分でした。
予定通りの時間にお迎えのバスがやってきて、今日参加する8名の酒販店さんを全部ひろって、一路淡路島に。会長さんのあいさつが終わるいなや、もう乾杯です。
郡内の造り酒屋さんや、酒問屋さんからいただいた、カップ酒やらビールを朝8時すぎから呑んでいるのですから、ほろよいを含めまったく始末に終えない面々です。
もうかっていた昔はもっともっとハデで、山代温泉や山中温泉に繰り出して夜通しドンチャンやっていたのですが、DSの出現や、スーパーの台頭でお酒の販売が低迷するようになってからは先細りの一途です。
郡内の他の町村の酒屋さんの会にくらべると、組織力は強く、まだまだこうした組合の行事への出席率はよいほうなのですが。
人間って奴は、忙しいから仕事に都合をつけて遊ぶ時間を作るようで、商売がヒマだと、時間に余裕はあっても遊びにはいけないもののようです。
参加しておられる酒販店さんにしても、ほろよいより年配の方ばかり。これからもお酒を中心に商売していこうと決めている後継者をお持ちの方は、誰一人おられません。
店舗をコンビニ化された方、大学を卒業した息子さんは会社勤めの方、夫婦共稼ぎの空き時間にお酒を近所に販売されている方、そんな酒販店さんばかりです。
楽しい一日でしたが、酒販業界の行く末を案じて、少し悪酔いしたほろよいです。
2004年02月06日(金) |
“bamboo raw 嶋” ? ? ? |
ほろよいが利用している「エンピツ」には、どのサイトから日記に入り込んできたのかを分析してくれる便利な機能があって、けっこう興味深くながめています。
最近では「鴨」「丁子屋」をキーワードにヤフーやゴーグルで検索し、ほろよいの日記を見つけて入り込んでくる方がチラホラおられまして、なるほどそういう季節だわいと一人納得していたのですが、今日は驚きました。
外国の方でしょうか、“babelfish”という自動翻訳のサイトを経由して拙サイトにおいでになった方がおられました。こんな片田舎の蔵元にも1年に数人程度は好奇心半分で御来店されるのですが、ホームページに足跡を残されたのはこれが初めてです。
御興味のある方は、“babelfish”の表紙に拙サイトのアドレスhttp://www11.ocn.ne.jp/~sekka/を打ち込み、Japanese→Englishの翻訳を指定すると、あら不思議!10秒程度考え込んだあとに英訳されたHPが出てきます。
それにしても自動翻訳の悲しさ
「竹生嶋」が“bamboo raw 嶋”(俗字や旧字体は対応できていない様子)
「海津ほろよい日記」が“kaizu top good dairy”(逐語訳ですな)
「竹生嶋 辛口純米 無濾過生原酒」に至っては“bamboo raw 嶋 spicy pure American non filtation raw malt”だそうです(日本のアイデンティティーともいうべき漢字である「米」が“American”とは噴飯モノ)。
まあまあ当たらずとも遠からず雰囲気は理解できますし、間違った理由も推測できます。よくここまで翻訳したと褒めてやるべきなのでしょうが、なんだかねえ。ヒマなときにお気に入りのサイトを英訳してみると1時間は楽しめそうです。
でも、もう10年もすれば、きっとすごい翻訳をするのでしょうねえ。
2004年02月04日(水) |
ほろよい大トラと化す |
今日は「甑(こしき)倒し」のお祝いの日、蔵人さんたちは3時半で仕事を終え、早めのお風呂に入って夕刻を待ちます。
吉田酒造の甑倒しの会場は、いつも3軒となりの「湖里庵(こりあん)」です。
5時半に「お疲れさま」の乾杯をして酒宴がはじまり、御馳走をいただきながら、蔵人さん達と杯をやりとり、あっという間にほろよいは出来上がってしまいました。
西尾杜氏はカラオケ好きなので、2次会はマキノ駅前の「よもぎ」へ移動。少女Aから始まって、デザイアー、加藤隼戦闘隊といつものパターンにはまるともう止まりません。
シメは「よもぎ」の裏の「独楽」でラーメンを食べ、御店主のO氏にちょっと絡んで(訳アリなのですが)、午前様で帰宅と相成りました。いったい誰を慰労する宴会なのやら、真性オヤジの大トラには困ったもんです(都合の悪い記憶が抜け落ちているのが御愛嬌)。
2004年02月03日(火) |
甑(こしき)は倒れた |
↑もうもうと蒸気をあげて米を蒸す甑
けさ最後の仕込み作業がありました。
きのう手洗いした吟吹雪(精米歩合50%)460kgを蒸して、放冷機で6度まで冷却、仕込みタンクに投入を済ませ、仕込第22号/純米大吟醸を留めました。
仕込みを開始した11月から累計し、原料白米23.470kgを仕込みに使ったことになります。
明日からは米を蒸す作業がなくなりますので、蒸す道具である「甑(こしき)」を片付けてしまうことから、この日を「甑倒し」といい、造り酒屋にとっては大きな節目の日です。
本来ならこの日の夕食は大宴会なのですが、いつも使わせていただく三軒となりの「湖里庵」さんが定休ですので、仕切りなおして明日が宴会の日になりました。
これで杜氏さんをはじめ、蔵人さんはひと息つけます。ほろよいも明日は久しぶりに大酒を呑みましょうか。
今日最後の洗米をすませました。
手洗い用に10kgに小分けされた吟吹雪の白米(精米歩合50%)を、午前中いっぱいかかって46袋(全部で460kg)洗いました。
これで今酒造年度の洗米はおしまい。米蔵はすっからかんになり、明日は甑倒しです。
ほっとした気持ちが半分、なんだか物足りないような気持ちが半分、変な気持ちです。
あさってからは仕込みがなくなりますが、蔵人さんたちはモロミ管理と新酒のろ過、大吟醸の袋絞りのための、斗ビンの洗浄や酒袋の手入れなどの仕事が残っています。
ほろよいも新酒をお金にかえるべく、小売屋さん巡りをはじめねばなりません。
なかなか安息の日がないですなあ。
今日は、今年の蔵体験ツアーで最大の5名様が蔵においでになりました。
ちょうど「純米大吟醸の米の手洗い」と「粕むき」がありましたので2名ずつ分担してお手伝いいただき、もう1名の参加者である主催者である京都の酒販店さんはデジカメで記録写真をとったり、新酒の品定めをされたり、西尾杜氏とお酒の話をしておいででした。
写真はその様子ですが、さすがに5名というと、ほろよいも気を使います。
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