ほっく。

2004年01月31日(土) 土曜日、音曜日。


アサキの誘いもことわって
午後からずっと聴いている



どうしちゃったんだろう わたし

この音に出逢ってからの
そんな疑問と恐ろしさ


でも それも

この音に砕かれて
はるか後方へ遠ざかってく







2004年01月15日(木) 一日に4ページも。


書けば書くほど離れてく



それでも

残さずにいられないよ






2004年01月12日(月) 世界の端っこで


午前3時
ファミレス
すみっこの席


隣りのテーブル
いちゃついてたカップルは 帰った
本を読む女の人も 帰った
いまは誰もいない

窓の外を通る車もなくなった


ほとんど喋らない
眠くもならない




♪ こえが きこえたのは……

ときおり
タカシ君が歌をくちずさみ
わたしもつられて小さく歌う



♪ すばらしい あなたとの……


「 朝 は、まだですよぉ 」

ツッコミを入れるわたしに

ちっ。
タカシ君は
舌打ちとも 投げキスともつかない音で応えてから


「 来るんだよ。」

「 もうすぐな。 ……来るんだよ 」



おしまいの半分は
じぶんに言い聞かせるみたいに つぶやくみたいに



『 …… 来るんだよ 』

のどの奥 その言葉が脈を打った

胸から熱い何かがこみあげてきて
あふれて  そうして この体を包んだ


じぶんが つよく光るのを感じた

そして タカシ君もまた




いま 世界の端っこのような この席で

まぶしいくらい  まぶしいくらいに








2004年01月11日(日)  ……


わたしたち つまみ出されなかった

タカシ君
ちゃっかりジンフィズなんか頼んでた


彼らの出番は後ろのほうで

もうだめ立っていられない
と思ったころにようやく 現れて
あとは もう




------------

顔は半分しか見えなくて
でも
手は見えた


終わりのほう
わたしたちを指差して
彼は その言葉を

何度も  何度も  くりかえした




うまれてはじめて

愛されてる   と おもった








2004年01月10日(土) 髪はどうしよう


タカシ君と電話

場所と時間と服装を決めた

服は
「 大人っぽくて、しかも動きやすいもの 」


うっ。

キンチョーして おなか痛くなってきた…






2004年01月09日(金) こわい


どうしよう

そんなとこ 私たちみたいな子供じゃ
つまみ出されちゃったりして…?
それに行ったことない街だし…
ちゃんと行けるのかなぁ

あぁ なんだかすごく…





2004年01月07日(水) やべーよ!


お習字の宿題をしていたら 電話が鳴った
タカシ君だった


「 やっべ〜! 」

「 アレやべーよ! 俺どうすりゃいいんだ!? 」


「 もう、耳おかしくなるくらい聴いてる! 」



……うん。
だからあなたにしたんだよ

あなたなら あれをわかるとおもった







2004年01月05日(月) どこに帰るんだよ


姉ちゃんは
タカシの前におかわりの皿を置くと
よいしょ、 と炬燵布団をひっぱって座りながら

そのアタマ…
お兄ちゃんと喧嘩でもしたの?  と訊いた


「にーちゃん居ない。女んとこ。」

そっか… と言って福神漬けをすくう姉ちゃん
    (それで終わるなよっ、もっと訊けよ!)



しばらく
スプーンを使う音だけが響いた

たまらなくなったぼくが
TVのリモコンに手を伸ばしかけたとき
タカシが口をひらいた



「親父。」

「……キチガイだ、あいつ。」




皿を洗うあいだも
吐き捨てるようなタカシのひとことが
ずっと耳のなかで鳴っていた


姉ちゃんは
どーしても帰る というタカシを玄関先で見送り
そのあとは
自分の部屋に入ったきり 出てこなかった







2004年01月04日(日) 初カレー


「えっ」

姉ちゃんが
福神漬けの袋を持ったまま目を丸くした

だってさぁ
こいつ 腹減ってそうだったし
それに
靴も履いてなかったから…



カレーを並べて
突っ立ってるタカシを座らせる



食卓の灯りの下で
はじめて気付いた

こいつの
パーカーの肩口の汚れは
黒じゃなく 赤茶だった

死んだ動物の毛みたいにゴワついた髪は
血でくっついて 束になったものだった







2004年01月03日(土) 初パシリ


「どーしても牛乳が要るのよ、お願い!」

というわけで
ぼくは三つ目のコンビニに来てる
(どこも売り切れでやんの)


めでたくゲットして外に出ると
むこうの橋の上
見たことあるような人物…


「何たそがれてんの?」

びくっと振り向いたタカシは
ほんの数秒間
ぼくがほんとうにぼくなのか確かめるような目をして

それから 返事もしないで
ふたたび運河を 暗い水面を見つめだした






2004年01月02日(金) 大吉・中吉


おみくじを引くときも 願い事をするあいだも
頭の中はそのことばかり

気を抜くと
うっかり口から出ちゃいそう


いつになく無口なわたしに
眠いのか? とアサキ

ううん、と首をふって
おみくじを小さく小さく折る






2004年01月01日(木) 夜でも朝でもない


お蕎麦をつくったら かぎつけて弟が起きた
三人で四人前をたいらげる

弟はふたたび眠ってしまった


タカシ君は帰るという

CDを渡して
がさがさの手のひらに
うちの電話番号を太マジックで書いた



11日だからねっ

わたしが念を押すと タカシ君は

さぁ〜?

というふうに首をひねってみせた





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