泣いてる人は 笑ってる人よりも幸せそうだと思った
そういう幸せなら要らないと思った
自転車に油をさした 磨くのはやめた
もっとサビさせて 勇太のチャリみたく渋い感じにするんだ
きのうのお父さんは昼になっても起きなくて
しょうがないので ティッシュをちぎって丸めて お父さんの鼻に詰めたら、姉ちゃんが来た
げっ 怒られる… と思ったら 姉ちゃんは ティッシュをちぎって丸めて お父さんの耳に詰めた
ぼくたちがキッチンでアイスを食べてると お父さんが起きてきて 「ハナが痛い…」と笑った
あのティッシュ団子、大きすぎたらしい
きのうは駅ビルでとんかつ食べた
お父さんが食べれきれないって言うから ぼくはヒレカツを1個もらった
姉ちゃんはキャベツのおかわりしてて あんたウサギかよ、って思った
それからお父さんは床屋に行った 「カッコ良くしないとな」って
朝、うんと早くに目覚めて 夕方になると、アクビがいっぱい
でも、おとうさん寝るまでわたしも起きてる
寝ちゃったらもったいないもん
「おとうさん明日帰ってくるよ」 「ホント!?」
「うん、さっき電話あって。はやく顔みたいって言ってた」 「んじゃ新しい顔にしないとっ」 「あはは、どんな顔よ」
ずっと使ってる青のお茶碗 (欠けてから可愛くなった)
あたらしい消しゴム (はしっこ欠けるもん)
勇太のチャリ ポンコツなんだけど おまけに 弟と共用らしいんだけど なんかすっげカッコイイんだ 渋いっつーかさ
ついでに ブレーキきかない(怖えー)
そこがまた カッコよかったりするんだ
「雑巾もってこいってさ」 「えっ」 「ひとり3枚」 「3枚…」
「あ、やっぱいーよ。テキトーに言っとくし」 「まって。」 「え、縫うの?」 「んと… 明日買ってくる」
「風呂掃除かんりょうっ」 「うむ。」 「で、あとは?」 「買い物ね。 水もの持ってもらいます」 「らじゃ」 「やっぱ男の子っていいわねぇ♪」 「ババァかよっ」
あざやかに裏切るための今のやさしさ
ね、タンポポさん
あなたも 散ってしまうのでしょ?
ああいうことを 「あ、枝毛」 みたいに さらりと言うからすごい
永久凍土とか 断崖に松が一本 みたいな雰囲気だから こわがってだれもアサキに近付かない
アサキがそれをどう思ってるのか分からないけど
できれば ずっとそのままでいてほしい
なんか憎たらしんだよね
でもうちのクラスじゃいちばんマシ
と、アサキ(女)に言われてドキッとした。
わたしは どう答えたらいいのかわからなくて はひ… と曖昧にわらった
ちょうちょ 見ちゃった
紙みたいだった
ちょうちょって元々そーだけど 今日は もっと
んと お習字の半紙みたいな
風きたら やぶれちゃいそうな だった
なんでか知らないけど
すらすら読めるときと ぜんぜん進まないときがある
「おぅ、すっかり常連だな?」
職員室に入るとこで 隣りのクラスの担任が ぼくの頭ワシワシしてった
担任のサトセンは ぼくを叱ったついでに コーヒーを出してくれたりする
それがまた でっかい湯呑みなんだ
ピーマンの絵がついてて 『仲ナントカき事は うつくしきナントカ』 って書いてあるんだ
おとうさん、大丈夫だよ 家の事だって全部できるし なんにも平気だもん
あたしたち、二人だもん
甘いから
しんじゃいそうな気になる
「黄桃のクリームがけ」 「おれ、バナナ」 「えーーっ」 「なんだよ」
「だって。 曲がってるし」 「そ」 「なによ」 「そんなの… 可哀相じゃんか!」
「揚げパンかな」 「わたしシナモントースト」 「えーーっ」 「なによ」
「だって。 薬みたいな味じゃん」 「そこがいいんじゃない」
「マカロニサラダまだある?」 「んー」 「ない?」 「これぶんと、それぶんしか」 「…そっかぁ」
「あげる」 「いいの?」 「でも、マカロニ呼吸やめてね。 苦しくなっちゃう」 「おれも苦しいよ?」
空のウソツキ。
もう信じてあげないよ
雨はイーヤーだー
ぼくの自転車がサビる ついでにぼくもカビそう
はやく晴ーれーろー
部屋のすみっこに オムツした犬がいて
ぼくが マントみたいなのから手をだして 「チュチュッ」と呼んでみたら
「もうね、ボケちゃってて…」 代わりにおばさんがこたえた
ときおり だれかに自分の名前を呼ばれたような顔で 通りに向いたドアのほうを見る
その目はとても水っぽくて 片方は白く曇ってた
飴をすすめられて
(そんな子供じゃないもん) と思って断ったら
オトナのおばさん達にもすすめてた
美容師の人はわたしにどの雑誌を渡そうか
いっぱい迷って いっぱい探して
non-no をくれた
「姉ちゃん、うちのクラスに」 「留学生?」 「ちがくて」 「なに」 「転校生だよ!」
「おとこ?おんな?」 「女子!」 「へぇ」 「にひひ」
「可愛いの?」 「ん〜〜」
「の?」
「ふつう。かな」
国語の教科書をパラパラして いい匂いなのを確認
社会の偉い人の顔に ちょっとだけ落書き
算数は… ひらかない
いちばん好きなのは図工 気に入った絵のページを折ってみたり
一年生 ちびっちゃくて可愛い
うわ 泣いた すんごく泣いてる あらら 鼻水
あんなに伸びちゃって うくく
すごいなぁ どこまで伸びるんだろ
「姉ちゃんたいへん!」 「なに」 「うちのクラスに留学生が!」 「へぇ」
「留学生が!」 「うん」 「がっ!」 「うん」
「もっと驚いてよぉ」 「驚いたよ」 「ぜんぜん足りないよぉ…」 「そかそか」
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