J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (1)
レイの姉の旦那というのはまだ30前に見えました。 33歳になる私からするとまだ若々しく軽かった。 見知らぬ人たちの中で話し相手のいない私にとっては、 気を緩めることができる相手であって少しホッとしました。
車に近づくとレイの姉の旦那は、 「あ、どうぞ、工藤さん。こちらに。」 と向こうから声を掛けてくれました。
「あ、すみません、えっと。 レイちゃんのお姉さんのご主人さん、ですよね?」 「はい、島田、と言います。さ、どうぞ乗ってください。」 「じゃ、お世話になります。」 と、私は後部座席に乗り込んで。
「他には、誰か?」と私が聞いて。 「あと、僕の嫁さんとレイちゃん、。 けどレイちゃんはお父さんたちと乗るのかな、分かんないです、」 「ああ、そうですか。」
「お墓は近いんですってね。」とまた私が聞いて。 「5分位って言ってましたね、。 もっとも僕も知らないんです、付いてゆくだけだから、」 「ああ、そうなんですか、。」
そのうちにレイの姉とレイが来て車に乗り込む。 必然的にレイは私の隣りに。
乗り込みながらレイの姉が私に挨拶と礼を言う。 私も儀礼的な挨拶をして。 すぐに車は走り出しました。
車中もっぱら話すのはレイの姉夫婦であって、 私とレイはその話を聞いているだけでした。
ですが。 レイが隣りに座っていながら特別話すこともなく、 微妙に緊張感があったのも事実でした。
普通に話せない、そんな私とレイだったのです。
何かを意識して。
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