J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年08月23日(月)    聞きたい、だが、この車の中では聞けない。

J (3.秘密の恋愛)

8. 誤解 (2)


私としてはレイに聞きたいことがあった。
それはもっぱら気になっているレイの彼氏のこと。(参照こちら

どこかにいるのか、それとも帰ったのか、
それとも、来ていないのか、。
そして。
直会に同席するのか、否か。

聞きたい、、、。
だが、。

この車の中では聞けない。


聞けば何故そんなことを私が気にしているのか、
その下心を暴露するようなものだ。

私がレイに恋愛の情でもって好いていること。
そしてそれを消し去る努力をしていること。
このことは決して誰にも知られてはならないことなのだ。

まして。
今は葬式の最中じゃないか。
またしてもそんなことに頭をめぐらす自分を恥じるべきだ。

私はそんなことを思いながら車に乗っていたのです。


・・

墓につくとまた私はひとりになりました。
私は誰が誰やらまったくわかりませんでしたので、
レイの親族と思しき集団の後方に立って、
納骨が済むのを待つのでした。

納骨の後、手渡されたお線香を墓前に供え、
やがて全てが滞りなく済んで。

一同が場所を移すままに私も移動するのでした。


直会の会場へと。


   2004年08月22日(日)    8. 誤解

J (3.秘密の恋愛)

8. 誤解 (1)


レイの姉の旦那というのはまだ30前に見えました。
33歳になる私からするとまだ若々しく軽かった。
見知らぬ人たちの中で話し相手のいない私にとっては、
気を緩めることができる相手であって少しホッとしました。

車に近づくとレイの姉の旦那は、
「あ、どうぞ、工藤さん。こちらに。」
と向こうから声を掛けてくれました。

「あ、すみません、えっと。
 レイちゃんのお姉さんのご主人さん、ですよね?」
「はい、島田、と言います。さ、どうぞ乗ってください。」
「じゃ、お世話になります。」
と、私は後部座席に乗り込んで。

「他には、誰か?」と私が聞いて。
「あと、僕の嫁さんとレイちゃん、。
 けどレイちゃんはお父さんたちと乗るのかな、分かんないです、」
「ああ、そうですか。」

「お墓は近いんですってね。」とまた私が聞いて。
「5分位って言ってましたね、。
 もっとも僕も知らないんです、付いてゆくだけだから、」
「ああ、そうなんですか、。」

そのうちにレイの姉とレイが来て車に乗り込む。
必然的にレイは私の隣りに。

乗り込みながらレイの姉が私に挨拶と礼を言う。
私も儀礼的な挨拶をして。
すぐに車は走り出しました。


車中もっぱら話すのはレイの姉夫婦であって、
私とレイはその話を聞いているだけでした。

ですが。
レイが隣りに座っていながら特別話すこともなく、
微妙に緊張感があったのも事実でした。

普通に話せない、そんな私とレイだったのです。


何かを意識して。


   2004年08月17日(火)    私は所在無くその場に残る。

7. 葬式 (13)


その後葬儀は恙無く終わり、施主の挨拶も済み。
参列していた弔問の客も散り散りに帰り始める。

私は所在無くその場に残る。

(直会に出て貰え、って言ったって、、。)(参照こちら

勝手知らぬこの土地のしきたり。
いったいこれからどうするというのだ。

と、そこへレイが近寄ってくる。

「工藤さん、今日はありがとうございました。」
「あ、いや。辛いね、レイちゃん。気、しっかり持ってね。」
「はい、。でも、もう大丈夫です。泣くだけ泣きましたし。」
「そうか、。」

私はじっとレイの顔を見る。
レイは恥ずかしそうに首を傾げる。

「泣き腫らした顔、ヘンでしょ?」とレイ。
「い、いや、そんな、。」と私。

・・それよりも。
  これからどうするんだい?
・・・これから?
   お墓に納骨に行くの。

・・お墓?
・・・すぐ近くなの。
・・俺も行くのか?
・・・だって、直会に出て貰えるんでしょ?
・・ああ、まあ、それはいいのだけど。

(だけど、どうしていいのかわからんのだよ、)
(あの車に乗って。)

(あの車?)
(そう、あの車。あの車、お姉ちゃんの旦那さんの車なの。
 さっきお話しておいたから。)

と、レイは小声で言って私から離れる。


なんとも。
なるようになれって感じになっていきました。。


(7. 葬式、の項 終わり)


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