J (3.秘密の恋愛)
4. 無常 (20)
「おー、いたいた、こんなとこにいた、 探したぜぇ、クドちゃんよぉ、何やってんだよぉ。」
振り返ると鏑木さんが。 「あ、いや、」とびっくりして私。
「部屋に戻ってちょっと飲みなおそうって思ってな、 電話掛けても出やしない、さては、と思ったら案の定、てか。」 「ずいぶん早く戻ってきたんですね。」 「おうさ、明日もある、そこらへんはキチンとしてるんだ、俺だってな。 けど、もう1時だけどな、。」
1時、!
と言うことはここでレイと2時間以上も話していたんだ、、、
「もう1時ですか、そりゃいかん、明日に、いや、今日の仕事に差し障る。」 「おいおい、俺にもちょっと飲ませてくれ、な、レイちゃん。」 と鏑木さんはレイの顔を覗き込む。
レイはにこっと微笑んで、うん、と頷きました。 いつものレイに戻っていました。
「で、おふたりさんよ、何話してたんだ、 遠目には深刻そうな顔して話していたように見えたが。」 「あ、いや、ちょっと。」 「また仕事の話だろ、やめろって、飲んでいる時は。な、レイちゃん。」
レイは、うんうんと話を合わす。 私もそれでいい、そういうことにしておこうと腹に決めて。
「なんかね、うん、さすが鏑木さん、読みが深いですね、、、。 さて何飲みます。僕たちはジントニック飲んでますけど。」 「おお、それでいい、それを貰おう。」 「一杯だけですよ。」 「おう、一杯だけ、な。」
・・
こうして私とレイの話は中断しました。
どこか中途半端な、尻切れとんぼのような思いを残して。
ですが、私は鏑木さんが来た途端、 急に酔いが廻ってしまい、 後の事はほとんど覚えていないのです。
悲しいかな、いつもの酔っ払い。
大阪の夜はかく更けたのでした。
(4. 無常、の項 終わり)
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