J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年04月30日(水)    違う!それは違う!間違いだ!聞き間違いだ!

J (2.結婚)

8. 酔夢 (6)


私は酩酊して友美さんの傍らで眠ってしまっていたのです。
私は昏睡の中で夢を見ていたのです。

その夢の中で私は、
私はレイとひとつになって、、、イッテしまったのです、、、。


・・

「純一さん!、純一さん!、純一さん!、」

「うっ、だ、だめだ、ううっ、もう、、、」

「純一さん!、純一さん!、、、私よ、友美よ、純一さん!、」


、、(友美さん!?)

気がつくと私は耳元で大きな声で自分の名前を呼ばれていました。
友美さんの必死な声、「純一さん!、純一さん!、」と連呼している。


、、(夢、これは夢?、いや違う?、)

私はうっすらと目を開ける。
私の目の前には友美さんの顔がありました。涙を溜めた友美さんの顔。
私はまだ酔っている、目を開けてもそれが現実と夢との区別がつかない。

「純一さん!、私!、友美よ!、純一さん!、」

(今度の声は間違いない!、、、これは夢じゃない、友美さんの声だ!)

「、、ト、トモミさん、オレ、」 (ああっ!)



その時私の視覚は友美さんの姿をはっきりと捉えました。

友美さんは生まれたままの姿になって私の身体の上に重なっている。

レイとの夢の行いがそのまま続いているかのように、
私の“カラダ”は友美さんの“カラダ”の中に包まれて、、、

そして、、、私は、果てている!



「こ、これは、、いったい、トモミさん、?」 (一体全体、どういうこと?)

「純一さん、、ごめんなさい、私、、」
(私、寂しくって、だって、純一さん、うわごとで、だから、)

「!、うわごと?」 (何だって?、うわごとって?)

「私に、どこいくの?って、」
(私の名前を呼んで、それから、レイちゃんの名前呼んで、、、

「!、、、、。」 (、、、これは、夢!?、)



「だから、ごめんなさい、純一さん、勝手なこと、して、」
(だから、私、不安な気持ちになって、それで、純一さんを、、、)


私と友美さんは結ばれたままの状態で話をしている。
友美さんが話すたびに、友美さんの“カラダ”は私の“カラダ”を刺激する。

ヒクヒク、ヒクヒク、と。

私の“カラダ”は一度果てたのにもかかわらず、
今だギンギン頭をもたげてその刺激に反応する。

ギュン、ギュン、と。



「ごめんなさい、純一さん、」
(私、いけないことしたの、分かってる、)
(純一さんが恥ずかしく思うようなことしたの、分かってる、)
(でも、でも、でも、私、純一さんが欲しかったの、分かって、)

友美さんは泣いている。悲しそうに泣いている。

「私はいけないこと、したの、ごめんなさい、ごめんなさい、」
(私はお口であなたの“カラダ”を、だって、)
(元気になって欲しかったの、だから、なの、)
(そして、眠っているあなたを私、、、ごめんなさい)

友美さんは泣いている。悲しそうに泣いている。

「、、、、、。」 (これは、夢、、、?、朦朧として頭がはっきりしない、)



「、、、でも、眠っている純一さんは、」
(果てようとしている純一さんは、私の名前ではなく、、、ああっ!)

友美さんは私の胸に泣き崩れ、“カラダ”はギュっと引き締まる。




それを聞いて私はカッ!と頭に血が上りました。
上半身を起こして友美さんを抱きしめて、そして怒鳴るように言う。

「違う!それは違う!間違いだ!聞き間違いだ!
 僕は、僕は夢の中でも君といた、君を抱いた、君とひとつになった!」

「違う!違う!違う!どんな名前かって、レイだったら違う!、
 オレは、オレには、トモミさんしか、トモミさんしか!」

友美さんは泣きじゃくりながら私に問い掛ける。

「、、、本当に?、純一さん、、、」

「本当だとも!、トモミさん!、本当だとも!、」


そう言いながら私は友美さんを押し倒しました。


そして、、、

結合したままの“カラダ”を狂ったように上下に動かすのです、、、。



本当だとも!、本当だとも!、本当だとも!、、、



   2003年04月29日(火)    ダメだ!レイちゃん、やっぱりダメだ!

J (2.結婚)

8. 酔夢 (5)


私は酩酊して前後不覚になり友美さんの傍らで眠っている。

・・・昏睡の中で夢を見ている。

酔夢、、、


・・


 (、、、これは夢だ!)


  、、、も、もう、イクょォ、イッチャぅよォ、トモミさ、ん、、、

   ・ジュン君♪・
   ・ワタシはレイよ、友美さんじゃないわ・

  ええっ!レ、レイちゃん、どどど、どうして?


  <いつの間にか友美さんとレイが入れ替わっている>

  <レイは生まれたままの姿で私の身体の上にいる>
  <そして私の“私自身”を両手で握り舌先で愛撫している>



   ・どうして?って・
   ・ジュン君、友美さんのこと、思い出してたんだ・
   ・イヤだわ。こんなにワタシがガンバッテいるのに・

  いや、その、でも、なんで君がここで、
  どうしてハダカになって、そして、その、あっ、

   ・ジュン君・
   ・始めっからワタシはあなたと一緒にいるのよ・
   ・もぉ〜・
   ・そんなことばっかり言っているとこうよ♪・
   ・ウフフ♪・



  <レイは私の“私自身”を口一杯に含み舌を上下する>
  <もう既に快感の極みに至っている私の“私自身”は感涙の雫を洩らす>

  あっ、うぅ、レ、レイちゃん、、、止めて、
  頼むから、ね、ね、止めて、イ、イッチャウから、、、

   ・イッテはダメ!・
   ・イク時は私の中で♪・


 (、、、こ、これは夢だ、、!)



  <レイは私の“私自身”から口を離し馬乗りになる>
  <そして私の顔に自分の顔を近づけて私の唇にキスをする>
  <私は、動けない、されるがままに横たわっている>

   ・ジュン君、ワタシの身体、どう?・
   ・見たかったんでしょう?、ずっと前から・
   ・ワタシの胸、ワタシの乳輪、ワタシの乳首・・・

 (そう、私はレイの身体を知りたかった、以前からずっと、(参照こちら))
 (ああ、これがレイの胸、乳首、乳輪なんだ、、、)
 (乳輪、、、大きくないじゃんか、小さくて淡いピンク色、、、)

   ・食べたい?・
   ・食べてもいいのよ♪・
   ・これはジュン君、あなたのものなのよ♪・

  <そう言ってレイは私の唇に自分の胸を押し付ける>

  <ああ、私は、私は子どもみたいにレイの胸を吸ってしまうのだ!>



   ・優しく食べてね・
   ・そうよ、そうよ、いいわ、いいわ・
   ・もう、ワタシ、ダメになってしまいそうよ・
   ・あっ、もう、ワタシ、・・・

  レ、レイちゃん、オレももう、

   ・したい?・
   ・ワタシはもう十分よ・
   ・ほら♪・



  <そう言ってレイは私の手を取り彼女の神秘の泉へと導く>
  <その泉は悦びの余りに溢れている>

  レ、レイちゃん!


(、、、これは、ゆ、夢だ!)



  <レイは身体をそっと沈めていく>
  <私の“カラダ”がレイの“カラダ”の中に入っていく>
  <“私”はレイの中に包まれる、、、>

  ダメだ!レイちゃん、やっぱりダメだ!
  オレにはトモミさんがいるんだ!
  こんなことを、しちゃ、ダメだ!
  やめろ!やめろ!やめろ!

   ・ジュン君はもう“ワタシ”の中よ♪・
   ・“ワタシ”の中のジュン君は正直よ♪・
   ・ほら、ぎゅっと締めてあげると、ウフフ♪・
   ・こんなに喜んでいるわ♪・



  あっ、あっ、イ、イイ、よ、レイ、

   ・イイのよ、もうイッテもいいのよ♪・

  う、違う違う!やめてくれ!レイちゃん!

   ・カラダは正直よ、凄いわ♪・
   ・ホントにやめるの、やめていいの♪・


  あああ、ヤメナイデ、とってもイイよ、レイ、ちゃん、

   ・イイわ、ジュン君、ジュン君、イイ、スゴイ、ジュン君♪・


  くっ、ダメだ!いけない、こんなこと、って!
  レイちゃん!、あっ、オレにはトモミさんが!


  あっ、!


  うっ、!


 (、、、これは夢だ!夢だ!夢、だ、、!)



・・

「純一さん!、純一さん!、純一さん!、」



   2003年04月28日(月)    でも、イッテはダメよ!

J (2.結婚)

8. 酔夢 (4)


私は酩酊して前後不覚になり友美さんの傍らで眠っている。

・・・昏睡の中で夢を見ている。

酔夢、、、


・・


 (、、、これは夢だ!)


 <ふと気付くと私の身体は仰向けに横たわっている>

 <友美さんは私の身体を擦っている>
 <私は身体を動かすことができない>

  トモミさん、トモミさん、何しているの?

   ・気が付いたの・
   ・よかった・・・
   ・私、純一さんに元気になってもらおうと思って・
   ・あなたの身体を擦っていたの・

  ありがとう、、、

   ・もっと元気にしてあげる・
   ・じっとしていてね・
   ・私の“あなた”を強く逞しくしたいから・

  何するの?、、、あっ、あっ、だ、ダメだよ、
  そんなこと、しちゃ、ダメ、だよ、、、あっ、あっ、



  <友美さんは私の“私自身”を口に含んで愛撫する>
  <私は金縛りにあったように身体を動かすことができない>

  ダメ、だよぉ、そんなこと、しちゃ、あっ、
  
   ・身体は正直よ♪・
   ・気持ちよさそうに元気になっていくわ♪・



  <友美さんは身体を私の身体の上に乗せている>
  <私の目の前には薄桃色の可愛らしい花弁が見える>
  <そこには蜜が溢れている・・・>

  トモミさ、ん、ダメだって、ば、ァ、あっ、

   ・カワイイ純一さん♪・
   ・好きにしていいのよ♪・



  <友美さんは私の“私自身”を舐め上げる>
  <両手で強く握り強く扱く>

  ト、トモミ、さ、ん、、、あっ、う、

   ・いいのよ♪・
   ・でも、イッテはダメよ!・
   ・イク時は私の中で♪・


  ト、トモミ、トモミさ、ぁん、、、あっ、もう、


 (、、、これは夢だ!)



   2003年04月27日(日)    私を抱いて、純一さん

J (2.結婚)

8. 酔夢 (3)


私は酩酊して前後不覚になり友美さんの傍らで眠っている。

・・・昏睡の中で夢を見ている。

酔夢、、、


・・


 (、、、これは夢だ!)

   ・純一さん、純一さん、・
   ・誰が好きなの?・
   ・今、誰が好きだといったの?・

  トモミさん!?

  <私はレイの唇にキスをした、しかし、>
  <私の腕の中にいるのは、、、友美さん!?>

  トモミさん!?、いつからここにいるの?
  あのオトコは?、あのケンジとかいうオトコはどこ?

   ・ケンジ?・
   ・ケンジなんてここにはいないわ・
   ・私はずっと純一さんの腕の中で抱かれていたわ・

  ずっと!?

   ・そうよ、ずっと・
   ・ね、純一さん、さっき、誰のことを好きといったの?・
   ・私には、、、レイ、って聞こえたけれど・・・


 (、、、これは夢だ、)


  いや、その、ち、違うんだ、
  トモミさん、それは、チガウ、

   ・嘘言わないで!・
   ・純一さんはレイちゃんのこと、好きなんでしょ!・
   ・私には分っていたわ!・
   ・あなたはいつでもレイちゃんのことを見つめていたわ!・
   ・どんな時も、どんな時も・・・

  それは違う、嘘じゃない、
  僕の好きなのは君、トモミさんだけ、、、
  だから君と結婚したんじゃないかよぉ、、、
  信じて、ね、ね、、、


 (、、、これは夢だ、)


   ・、、、じゃぁ、抱いて・
   ・私を抱いて、純一さん・
   ・私、あなたが欲しいの・ひとつになりたいの・

  抱く、抱くよ、いつでも僕は君のものだよ、
  いつでもひとつになる、君が望むように僕はする、
  だから、僕のことを信じて、僕は君が好きだってことを、

   ・ホントに?・
   ・萎えることなく満足に?・

  、、、ああ、満足に、萎えることなく、君を抱く、君とひとつになる、、、


 (、、、これは夢だ、)


  <私と友美さんはいつの間にか生まれたままの姿になっている>
  <しかし、私の“私自身”は萎えたまま、ものにならない>
  <呆然とする私、泣きじゃくる友美さん>

  ゴメン、トモミさん、オレ、、、

   ・どうしてェェ・・・
   ・どうしてダメなの、好きなのにダメなんて・・・
   ・やっぱり私のことなんか純一さん好きじゃないんだわ・・・

  違うんだよ、好きだから、大切に思うから、
  だからこうなっちゃうんだよ、ああ、何とかならないものか、オレよぉ、、、

  <いつしか私も泣き始める>
  <ふたりしてオイオイと泣いている>

  <二人の涙は深い海の淵に流れ、そして私の身体は沈んでいく>
  <・・もうこれで浮かび上がってはこれない、それほど深く私は沈み消える>


 (、、、これは、夢だ!)



   2003年04月26日(土)    ジュン君はワタシのこと、好き?

J (2.結婚)

8. 酔夢 (2)


私は酩酊して前後不覚になり友美さんの傍らで眠っている。

・・・昏睡の中で夢を見ている。

酔夢、、、


・・


 (、、、これは夢だ!)

  キミは誰?
  朧げに見える、、、ぐるぐる回る、、、
  、、、レイ?、、レイちゃんかい?

   ・そうよ、レイよ、ジュン君♪・

  ジュン君だって?イヤに馴れ馴れしいなぁ、ちょっとナマイキだゾ、
  どうしたんだよ、いったい、こんなとこで、

   ・ジュン君だってどうしたの?・
   ・ワタシはずっとここにいたわ、あなたと共に・

  そんなはずはない、僕はトモミさんと、、、

   ・友美さん?・
   ・友美さんはもういないわ・
   ・いるのは、ワタシだけ・

  そんなはずはない、僕はトモミさんと、、、

   ・ジュン君は夢を見ているのよ・
   ・ここにいるのはあなたとワタシ、ふたりだけよ・

  、、、レイちゃん、、、。


 (、、、これは夢だ、) 
  

  レイちゃんと僕はいつからここにいるの?

   ・始めからよ、ジュン君と最初に出会った日から、ずっと・
   ・ジュン君とワタシはずっとふたりでいるの・

  うそだ!、、、僕はトモミさんと、、、

   ・ジュン君はワタシの恋人・
   ・出会った日からずっと一緒にいるの・
   ・ジュン君はワタシの初めてのキスも奪ったの・

  初めてのキス?

   ・そう初めて二人で飲んだ夜・
   ・ジュン君はワタシの唇を奪ったわ・
   ・あなたは覚えていないと嘘をついた!・

  嘘じゃない、あの時は、
  あの時は悪かった、だけど、キスはしてなかった、(参照こちら

   ・ホントに覚えていないの?・
   ・なんだか悲しくなっちゃうナ・
   ・ワタシ、こんなにジュン君のこと、思っているのに、、、・

  そうじゃなくって、
  おい、泣くなよ、レイちゃん、レイ、、、ちゃん、


 (、、、これは夢だ、) 
  

  レイ、泣かないで、僕は君にキスをしたのかもしれない、
  でも、その時は正直言って、酔っていたから、

   ・酔っていたから、それだけでキスをしたの?・

  いや、違うんだ、実はその、、、

   ・ジュン君、ワタシのこと、好き?・

  そ、それは、、、言えない、、、

   ・ワタシはジュン君のこと大好き・
   ・ジュン君はワタシのこと、好き?・

  、、、レイ、、、。


 (、、、これは夢だ、) 
  

  <レイは私の腕の中。>
  <私はレイを抱きしめる。>

  、、、レイ、、、。
  
   ・ジュン君はワタシのこと、好き?・
   ・好きならば、ちゃんと言って・
   ・ちゃんと言って、キスをして・

  、、、。

  、、、好き、

  、、、だよ、レイ、、、。

  <私はレイの唇にキスをする。>


 (、、、これは夢だ!)



   2003年04月25日(金)    8. 酔夢 

J (2.結婚)

8. 酔夢 (1)


私は友美さんの傍らで前後不覚に眠ってしまったのです。
酩酊の上にまたウィスキーをがぶ飲みして朦朧としたまま横になり、
ふとんを被ったと同時に私は深い昏睡へと落ちたのでした。


・・・そして私は昏睡の中で夢を見る。


酔夢、、、


・・


 (、、、これは夢だ、)

  お前は誰だ?
  朧げに見える、、、ぐるぐる回る、、、
  、、、長谷部健二?か?

   ・ソウ、オレハハセベケンジ、お前は誰だ・

  俺は工藤、クドウジュンイチ、ちっ、
  、、、なんなんだ!お前にお前なんて言われる由縁はないぞ、
  あぁっ、そのセーターは、

   ・そうさ、これは友美に編んでもらったセーターさ・
   ・オレハお前より友美のことをよく知っている・
   ・オレハ友美と付き合っていた・

  トモミさんを呼び捨てにするな!気安く呼ぶな!こら、てめぇ!

   ・ははははは、満足にセックスもできないくせに、イキガルナ、クドウ!・

  くっ!そぉ〜、

   ・オレハお前より友美と深い関係にあった・
   ・お前はオレノ彼女を横取りにした・

  違う、トモミさんはオレが初めてだった、
  お前なんかより俺のほうが好きだから、だから俺と結婚したんじゃないか!

   ・友美に聞いたことがあるのか、オレよりもお前のほうが好きかと?・

  、、、。


 (、、、これは夢だ、) 
  

  あ、トモミさん、いいところに、あのさ、君は俺のことが好きなんだよね、
  だから、俺と結婚してくれたんだよね、
  ハセベケンジとは何の関係もないんだよね、

   ・ごめんなさい、純一さん、私、あなたに妊娠させられたから・
   ・だから責任取って貰うよりなかったの、それで結婚したのよ・
   ・本当はケンジが好き、一番好き、誰よりも好き、あなたよりずっと・

  うそだ!

   ・ホントなの・
   ・私の初恋はケンジ、初めて付き合ったのもケンジ・
   ・初めてキスをしたのも、、、ケンジ・

  うそだ!

   ・ホントなの・
   ・ゴメンナサイね、純一さん、これでお別れ・
   ・私はやっぱりケンジを選ぶわ・
   ・あなたとはこれっきり、さようなら・

  トモミさん、何言っているんだよ、
  あ、どこにいくの?待って、待てったら!

   ・さようなら、純一さん、さようなら・・・


  待って、待ってよぉ、俺どうなっちゃうんだよぉ、、、、
  
  
  トモミさぁん!ト、トモミィィィィ...!


 (、、、これは夢だ!)




   2003年04月24日(木)    友美さんは、、、吐瀉しました。

J (2.結婚)

7. 初夜 (17)


私は友美さんの身体から自分の身体を離しました。
今もうまさにそういう状態にある“私自身”はギンギンしていました。
友美さんはうつろな目で私を追い、そして言いました。

純一さん、して、お願い、私大丈夫よ、

「そんなこと言ったって、」

ね、お願い、、、


と、そう言った途端友美さんは口を押さえ、、、。
そして、、、
苦しそうに起き上がり、ふらふらとトイレに向かおうとする。
呆然と見ていた私もその姿にはっとして、
「おい、大丈夫か、」と言いながら友美さんを支えて一緒にトイレに。



友美さんは、、、吐瀉しました。

私は、、、

彼女の背中を擦りながら、なんとも言い難い虚脱感に襲われていました、、、。


・・


すっかり胃の中のものを吐くと友美さんは幾分すっきりしたように見えました。
私は彼女に浴衣を羽織らせ、口に水を含ませて、横になるように言いました。

友美さんは言われるままにふとんの中に入り、
叱られた子供のような顔で私の次の言葉を待っている。

私は「今夜はもうおやすみ、」とだけ言いました。


、、、純一さんは?

、、オレは、もう一度飲み直す。

、、、もう随分飲んでるのに?

、、うん、飲まないと、(寝られないだろうに、このままじゃ、)

、、、


私は友美さんの顔をふとんで覆い、
「もう、寝ろ、な、」と言い話を止めました。


・・


一人で水割りを作って飲む私。
ふとんを被せられどうしていいのか分からずにじっとしている友美さん。

時計の針の音だけが聞こえる部屋。



私の頭の中では昨日の結婚式から今までの出来事がぐるぐる回っている。

、、、そう言えば昨夜も随分と飲んだなぁ、、、

、、、オレ、吐いてまで飲んだんだったよなぁ、、、(参照こちら


酩酊している私は前後が朦朧となりながら、
ひとりぶつくさ言いながらいい加減にウィスキーをがぶ飲みして。


、、、う〜、そうだった、あいつ、あのおとこ、くっそ、、、ぉ、


私はこの時にまた思い出してしまう、
友美さんを呼び捨てにしたあの男のことを。(参照こちら


、、、なんということだ!

、、、この期に及んで、最後の最後にジェラシーが私の心を被うなんて、、、!


・・

もう私の心の中はぐちゃぐちゃでした。
アルコールでぐらぐらになり、心の中はジェラシー、
努力の甲斐もなくひとつになれなかった虚脱感。


ごろん、と寝転んで。
ふう〜、と一息吐いて。
私は私のふとんに潜り込みました。


、、、寝てしまおう、これで今夜はジエンドだ。


私はガバッとふとんを頭から被って眠りにつく。


友美さんには一声も掛けずに、、、。



(7.初夜、の項 終わり)


   2003年04月23日(水)    ところが。友美さんは濡れていなかったのです。

J (2.結婚)

7. 初夜 (16)


酔った私はもう冷静さを失っていたのです、、、。

本能的な肉欲のみによって友美さんを扱っていたのです、、、。

肝心なときにこの私の行いは愚かというよりありませんでした、、、。



部屋に戻ると私は友美さんをふとんに寝かせました。
友美さんはぐったりと横になりました。

、、、「大丈夫?」
、、「うん、ゴメンネ、純一さん、

そう言葉を交わしながらも、
私は友美さんの浴衣を脱がせ抱き寄せている。

熱い友美さんの身体を肌に感じていよいよ私の肉欲は高まる。


、、、「トモミ、さん、」

私は彼女の名を呼びながら、
小さくもふくよかな胸にむしゃぶりつき、
重なった肌と肌、
股を広げさす私の腰と手、

、、、そして、

ああ、これでもう、

ことの前にする優しい愛撫もそこそこにいきなり!


猛る“私自身”を、
動物的な欲望のままに、

私は、、、。

私はやっと友美さんとひとつに、、、。

、、。



ところが。

友美さんは濡れていなかったのです。

当たり前のことですが。


私の“私自身”が彼女の入り口に差し入らんとしたその時に、
私は“彼女自身”が迎え入れる状況にないことを知りました。

そのことを知り、私は混乱しました。


どうして?

、、どうしたっていうの?

、、、せっかくひとつになれそうなのに!


・・

今思い起こせばそんなことは判り切ったこと。
体調の悪い友美さんであるからこそそうなのに、
そして十分な愛撫もせずにいきなりではそうあって当然。


ですが酔った私にはそういう頭は働かなかったのです。


そして、、、私は友美さんを責めてしまうのです。

「なんだよ〜、せっかく、せっかく、××なのにぃ、どうしたんだよ!」



可哀想な友美さん、、、。



   2003年04月22日(火)    ああ、なんということよ!

J (2.結婚)

7. 初夜 (15)


果たしてその時にこそ私に冷静さが必要だったのだ!

身重の妻の身体を慮る慎重な推量をすべきだったのだ!

その時にこそ!

、、、その時にこそ、、、!



、、、ところがその時、

私は酩酊の一歩手前だったのです。


友美さんを満足に抱きひとつになって至福の時をふたりで過ごす、
それがためにこそ私は私の深層心理を麻痺させようと、
酔って自分を酩酊へと仕向けていた、その時の出来事だったのです。


「純一さん、もう私、酔ってしまったみたい、そろそろお部屋に戻りましょ?」

友美さんの顔色は少し蒼褪めていたかもしれません。
しかし私にはそれが判別できなかった、焦点の合わない私の眼。

「ん?、なんだ、なんだ?、これからっていう時にィ〜、」

「ええ、でも、あしたもあるし、それに、、、、ちょっと気分が、、、

「なんだぁ、相変わらず弱いなぁ、君は、」

ゴメンナサイ、、、

「へへ、いいよ、じゃ、戻ろうか、オレも元気になったみたいだし♪」



私は笑顔で立ち上がって会計を頼みました。
部屋番号を伝えてキーで確認してもらいサインをする。

友美さんは、、、

立ち上がれない、ぐったりした様子。


「しょうがないなぁ、そんなに飲んでないのにぃ〜、ほら、つかまれよ、」

私とても足元がフラフラになっているところに、
酔った友美さんを抱きかかえてグラグラして歩き出す。



酒に酔って弱った友美さん。

もうあなたしか頼りがないのよ、とそういううつろな目。

私に抱きかかえられながら、

ゴメンネ、ゴメンネ、と繰り返す。



抱きかかえて感じる友美さんの身体。

、、、熱い。


その友美さんの乱れた姿態に、、、


私の“私自身”は猛々しく反応していたのです、、、。



ああ、なんということよ!

酩酊の一歩手前の私は、、、

友美さんの体調に注意を払う精神的な私よりも、
本能的な肉欲に駆られる動物的な私が勝ってしまった、、、!



部屋に戻ったらすぐに抱こう!

これなら大丈夫だ!

友美さんと満足にひとつになれる!


、、


酔った私は弱った友美さんを抱きかかえ、


ぐいぐいと引っ張るように部屋に連れ込むのです、


本能に任せて。



   2003年04月21日(月)    湯上りの友美さんは艶っぽくて、

J (2.結婚)

7. 初夜 (14)


湯から上がり、待ち合わせ場所のソファーでしばし待つ私。
タバコを燻らしていると友美さんも上がってきました。

ホカホカして、にこやかに、、、。


「お待たせ、純一さん、」

「いや、ぜんぜん、」、、、。

私は友美さんにつられてにこやかに答えました。



「身体も温まったところで、少し飲みなおそうか、」

「え?、また飲むの、」

「うん、喉渇いちゃったしさ、それに、」

「それに?、」

「それに、夜はまだ長い、バーにでも行ってふたりの夜を楽しもうよ。」

「うん、、、、いいわ、」

友美さんは私とならば何をしてても楽しいのよ、とそんな表情でした。


私は友美さんに、
酔えば、きっと君とひとつになれるからねと、
心の中で手を合わせ誓いをたてるのでした。

酔って、肉欲の本能に己を委ねれば、きっと、、、と。


・・


バーは一階のロビーの脇にありました。

と言っても都会にあるようなシャレたバーではありません。

みやげ物やのとなりにある、昼はコーヒーショップとして営業している、
温泉旅館によくあるようなカウンター・バーでした。

私は一見してこれは色気が無いと思い、
寿司でもつまみに表に出ようかとも考えましたが、
あいにく私たちは湯上りで浴衣姿の着の身着のまま、
タオルをぶら下げての外出もこの時間からでは不自然なので、
仕方なくこのカウンター・バーに席をとりました。

友美さんはさして気にすることもなかったのでよかったです。


私はビールを頼んで、君も少しだけ付き合えよ、
とグラスをふたつ貰い友美さんにも勧めました。

先ほど食事の時にはやっと一杯のビールで酔ってしまった友美さんですが、
湯上りの友美さんは喉が渇いていたのでしょう、
グラスのビールをコクコクと飲んで、珍しく「おいしいわ、」と言いました。


私は酔いがかなり回ってきていましたので、
ビールをぐいっと飲んで、ウイスキーを飲み始めると、
いい加減に酔っぱらったようになったものでした。


酔って楽しげに会話するふたり、でした。

結婚までの思い出話、今日のエピソードや明日の行程、
ふたりで始める新生活、これからの楽しい生活の話、

そのうちに、、、

ちょっとエッチな話、努めてそういう話をする私、

湯上りの友美さんは艶っぽくて、
酔った私に性的魅力を感じさせるに十分で、

そして、


私の深層心理は麻痺してきた、

これなら友美さんを満足に抱ける、

そう思えてきた頃に、、、


友美さんは気分が悪くなってしまった、、、


飲めない酒を無理して飲んだがために、、、。



   2003年04月19日(土)    酔わなければ、友美さんを抱けない。

J (2.結婚)

7. 初夜 (13)


二人は再び最上階の大浴場に。

友美さんは女湯に、私は男湯に分かれます。

「そうだな、30分位かな、出たらあそこで待ってるよ。」

私は通路脇にあったソファーを指差してそこを待ち合わせ場所にしました。



浴室は湯気で立ち込めていました。
前面に大きなガラス窓、その向こうが露天風呂。

団体の泊り客が声高らかに談じ合う浴室内を避け、
私は扉をくぐり抜けて露天風呂に向かいました。

そして、身体を流してからすっと足を湯に浸す。


(熱い!、)


、、、私は熱い湯が好きでした。

ですからこのぴりぴりする感触が堪らなく嬉しくなりました。
私はひとりニヤリと笑み、静かに身体を沈めていくのでした。


見上げれば僅かな空間から星空が。

じっと星を仰ぎながら私は、「さてと」と、どうしたものか考えるのです。


どうしたものだろう、、、。

ものにならない“私自身”を手で弄り、何とかならぬかと問い掛けてみる。


答えなど、ないのに。


・・

熱い湯は私の中にあるアルコールを身体中に回しました。
しばらくすると私の頭はぐらぐらしてきました。

(これは悪酔いするかも知れぬ、、、)

そう考えて私は早々に上がることにしました。



湯から出た私は一瞬くらっとして、
酔いがかなり回っている自分に気づきました。

酔うとまた冷静さを失う私。
何度も繰り返す失態を、この期に及んでまた繰り返す、、、のか。


しかし、本当は、、、


ここはもう飲むしかない、
もっと飲んで酔っ払って、深層心理が働かないようにするよりない、
そういう意識が酔った頭の中で働いていたのだと思います。


酔わなければ、友美さんを抱けない。

酔えば、きっと友美さんとひとつになれる。


酔って、肉欲の本能に己を委ねれば、きっと、、、



   2003年04月18日(金)    イッテいないのに、イッタことにして、、、

J (2.結婚)

7. 初夜 (12)


私としては精一杯の嘘をついたつもりでした。

イッテいないのに、イッタことにして、、、

私は、

友美さんには私が萎えてしまった事実を知られたくはなかったので。



私としてはそれが思いやりと考えた、、、

彼女を傷つけたくはなかった、

そうと知ればきっとまた友美さんは自分を責めるであろうから、、、


私はそっと友美さんの頬を撫で、
身体を合わせ、ぎゅうっと抱きしめて、
そして落ちついた声で言いました。

「ごめん、久しぶりだったから、、、でも、すぐにまたできるから、
 ちょっとひとやすみしよう、ね、」


友美さんはコクっと頷きました、、、。


・・


私は友美さんにふとんをかけてやり、立ち上がって灯りを点けました。

友美さんはじっと私を見詰めてる。

私はニヤっと笑い、
「どうだい、オトコのストリップ、」とおどけて見せました。

友美さんは明るさを取り戻し、
「イヤだわ、」と言ってふとんの中に顔を隠しました。


私はほっとして、それからちょっと思案して、そしてこう言いました。

「そうだ、温泉に入ってこよう、さっきの散歩で身体も冷えたし、
 さっきは家族風呂だったから大浴場に行ってみないか、せっかくだから、」


友美さんは再びふとんの中から顔を出し、

「ウン、」

と明るい声で答えました。



   2003年04月17日(木)    ごめん、トモミさん、オレ、君の感じる姿を見ているだけで、、、

J (2.結婚)

7. 初夜 (11)


私は萎えていく自分を友美さんに悟られまいと、

身体を下にずらして丹念に彼女の蜜園を愛撫しました。

そこはもう甘い蜜で溢れていました。


私の舌が秘密の隆起を優しく転がすごとに、
友美さんは身体を震わせて小さく喘ぎ声を上げるのです。


、、、友美さんはいつも声を抑えました、それが恥ずかしいと言って。


私は友美さんの身体中を手、指、舌で愛撫する、

髪の先から足の先まで、、、

いつしか友美さんの抑えていた声も大きくなって、
私は彼女が甘美の世界に入ったことを知る、、、


もう十分になっている友美さん、
なのに私は力なくうなだれている、


そのうちに友美さんは身体を、ビクンビクンと大きく震わせて、
今やもう絶頂に昇ろうとするのです、


そして、

、、、じゅん、いち、さん、


と、ねだるような甘え声で私自身を呼ぶのです、

、、、じゅ、ん、い、ち、さ、ん、、、きて、、、


(くっ、どうしよう、、、)





私は観念して友美さんに言いました、

もう、そういうふうに言って誤魔化すよりない、

そんなその場逃れの口実を思いついて咄嗟に言いました、、、


「ごめん、トモミさん、オレ、君の感じる姿を見ているだけで、、、」

(イッチャッタんだ、、、)


はっとして友美さんは私にしがみつきました、

むしゃぶりつくように、強く。


そして、

、、、もっとぉ、もっとぉ、もっとぉ、、、


と、


焦れたように言うのでした、、、



   2003年04月16日(水)    友美さんはすでに十分潤っていました。

J (2.結婚)

7. 初夜 (10)


私の指は友美さんの胸から浴衣の帯へと移動して、、、。

友美さんは身体をずらし私が帯を解くのを助けてくれて、、、。

やがて友美さんは生まれたままの姿になったのです。


私もするりと浴衣を脱いで生まれたままの姿になり、
ふたりはまたふとんの上でぴったりと肌を合わせ、
お互いのぬくもりを感じ合い、そして、、、

お互いがそれを望んでいることを認め合うのです。



友美さんは仰向けになって目を閉じました。

私は彼女の閉じた瞼ににキスをして、
耳元で愛の言葉を囁いて、
唇にキスをして、

そして、

胸元へと舌を這わせるのでした。

、、

友美さんはすでに十分潤っていました。

私も十分に猛ていました。

いつでも、もう、いい、そういう状態にありました。


しかし、、、。

私がゆっくりと友美さんの胸を愛撫して、
その下の茂みへと舌を移動しようとした頃に、
私の脳裏に再びあの晩の記憶が蘇ってしまった、

私の“私自身”がものにならなかった、あの晩の記憶が。(参照こちら


胸から茂みへと舌が移動する、

その間には、

友美さんのお腹がありました、、、


友美さんのお腹には子どもがいるのです、、、


妊娠して2〜3ヶ月は妊婦にとって非常に不安定な時期、
そんな時に果たして私は肉欲によって彼女を抱いていいものか、


考えまいとすればするほど、


、、、私は萎えていく自分を見出しました、、、。



   2003年04月15日(火)    そう言って友美さんは頭をずらし私の腕の中へ。

J (2.結婚)

7. 初夜 (9)


部屋に入ると私たちは子どもみたいにふとんの上に転がりました。

ふかふかで柔らかいふとん。

私は仰向けに、友美さんは横向きに寝転んで。


「気持ちいいネ、トモミさん、」 横を向き私は話し掛ける。

「ホント♪」 そう言って友美さんは頭をずらし私の腕の中へ。



友美さんは私の匂いに包まれて。
私は友美さんの香りに包まれて。

私は友美さんの髪を撫でる。
友美さんは私の胸を指でなぞる。

ふとんの上でぴったりと、身体を寄せ合って。



、、、ね、純一さん、

、、ん?

、、、私のこと、好き?

、、好きだよ、だから結婚したんじゃん、

、、、そうだよね、

、、そうさ、なに言ってんだよ、



、、、私ね、ちょっと心配してたんだ、

、、何を?

、、、何でもない、もういいの、

、、変なの、



髪を撫でていた私の手はやがて友美さんの胸元へ。
浴衣の合わせからそっと忍ばせる、、、。

柔らかな膨らみ。
そおっとそおっと撫でている。

ふとんの上でぴったりと、身体を寄せ合って。



、、トモミさん、は?

、、、なあに?

、、えっと、オレのこと、どうなの?

、、、大好き、


、、よかった、

、、、何で?

、、なんでも。

、、、変なのぉ、



長い時が短く流れて。



   2003年04月14日(月)    「どこにいくの、純一さん?」

J (2.結婚)

7. 初夜 (8)


テーブルに並べられた料理は食べきれない量でした。

もともと私はアルコールが入ると殆ど食べませんし、

友美さんもどちらかと言えば少食のほうでしたので。



「じゃ、カンパイ、」


テーブルを挟んで向き合ってビールを注しつ注されつ。

アルコールの駄目な友美さんもこの時ばかりは少しだけ、
コップ一杯でほんのり赤くなり酔ったように見えました。

私はと言えば、2本のビールを暫くの間に飲み干して、
どうしますかという友美さんの問いに、
じゃぁウィスキーでもと、氷と水を頼み水割りを作って飲みました。


結婚第一日目、新婚旅行の初めての夜、ふたりっきりで水入らず。



何も書くことはありません。

静かに時は流れました、、、。


・・


食事が済んで私たちは散歩に出ました。

浴衣姿で。


私は水割りを結局5杯飲んで上機嫌に酔っ払い、
友美さんもたった一杯のビールでほんのり酔って上機嫌。

「どこにいくの、純一さん?」

「そりゃぁ、温泉っていったら射的じゃんか、」

「射的?、」

「そうさ、これが男同士だったらストリップ、」

「ストリップ?、、、ま、イヤラシイ、」と頬を膨らませる友美さん。

「あ、チガウチガウ、イヤラシイんじゃないの、温泉っていったら、
 そういう決まり事っていうのかなぁ、ストリップを見なきゃ始まらない、
 昔っからそうなっているんだって、僕が決めたわけじゃない、」

「ふ〜ん、そうなんだ、」

、、何事も私の言うことは素直に受け入れる友美さんでした。


・・


私たちは射的で遊んだ後、海岸まで足をのばし、

そして、

湯上りの身体が少し冷たく感じた頃に旅館へと戻ったのです。



部屋には既にふとんが並んで敷かれていました、、、。


ぴったりと。



   2003年04月13日(日)    湯から上がったふたりは互いに身体を拭き合って、

J (2.結婚)

7. 初夜 (7)


湯から上がったふたりは互いに身体を拭き合って、

裸のまま抱き合いキスを繰り返す。

友美さんのほのかな甘い香りが私を包み込む。


もう我慢できないくらいに充実している私の私自身。

どうかするともうイッテしまうかもしれないくらいに、、、。



「、、純一さん、時間、、、」

ん、もう?、、、



時計の針は6時半を指していた。


・・


部屋に戻ると食事の支度が既に整いつつありました。

しばらくして女将さんが挨拶にきました。

そして料理の口上を述べはじめるのです。


友美さんはその間洗い髪を乾かしていました。
私はその後姿を見ながら女将さんの話に相槌をうったり。

内心、私は女将さんの話なんかどうでもよかった、
ただ友美さんの髪を乾かすその後姿に見とれていたかった、


、、そんな私の心のうちを見て取ったのか、
女将さんは早々とごゆっくりといって下がっていきました。


私はビールを注文しました。


2本。



   2003年04月12日(土)    私は友美さんの髪を洗ってあげました。そして身体も。

J (2.結婚)

7. 初夜 (6)


湯船にふたりで浸かる。

並んで。

肩触れ合って。



岩風呂風の家族風呂、生まれたままの姿でふたりきり、、、



僕は友美さんを見ずに上を向いている。
友美さんも僕を見ずに前を見ている。

浴室内は薄ら暗くって、、、

僕は、

湯を両手で掬い顔をザバンと洗い、そして友美さんに話し掛ける、



、、ねえ、トモミさん、生まれてからこれまでに何回泣いた?

、、、どういうこと?

、、えっとね、赤ちゃんのころの話じゃないよ、
 人知れず涙するっていうのかなぁ、ひとりで泣いたこと、ある?

、、、うん、一度や二度はあるけど、、、

、、そっか、

、、、なんで?

、、これからは一人で泣くことはないよ、僕がいる、

、、、うん、

、、嬉しい時も、悲しい時も、だ、

、、、うん、ありがと、



、、身体の調子はどう?

、、、大丈夫、

、、無理するなよ、君の身体は君だけのものじゃないんだから、ネ、

、、、分かってる、



、、トモミさん、



そう言って私は友美さんの唇にキスをしました。

友美さんは目を閉じました。

長いキスです。


でもね、お風呂のお湯は熱くって、キスもほどほどにして上がりました。



私は友美さんの髪を洗ってあげました。

そして身体も。

友美さんも私の髪を洗ってくれました。

そして身体も。


ふたりは互いに身体を洗いあってとっても豊かな気分になりました。

もちろん、私の身体は反応していました。

そそり立つように。


友美さんの身体も反応していました。

しっとりと。


お互いにそのことを確認して認め合い、そして、、、


へへ、エッチはなし、です。

友美さんはやっぱり、「夜に、おふとんで」と言うものですから、、、



++


しかし、、、

今思い出せばあの時あの風呂の中でひとつになっていれば、

その後の苦労はなかった、はずです。

あとの祭りですが。



   2003年04月11日(金)    浴衣を脱いだ友美さんは、どうしていいか分からない。

J (2.結婚)

7. 初夜 (5)


友美さんの胸はさほど大きくはありません。

ウエストもくびれているわけでもありません。

中肉中背、普通の日本女性の体型、それを友美さんは恥じていました。


でも。

色白で柔らかい彼女の肌、
穢れを感じさせない淡い桃色の乳首、
小さくても形のよい胸のふくらみ、
たるみのないきゅっと締まったヒップ、、、


それらは、

友美さんが恥じるような魅力のないものでは決してない、

キュートでした。



浴衣を脱いだ友美さんは、どうしていいか分からない。
タオルを前に当て、じっと私が言葉をかけるのを待っている。

私は、、、

私はそんな友美さんの緊張感を和らげるように愉快に振舞う。


私はさっさと浴衣を脱いで素っ裸になる。

前をタオルで隠すこともせずに、
「じゃ〜ん、どうだ、」などと子どもの悪戯のようなことを言う。


そして、すっと手を延ばして、、、

友美さんが身体を隠しているタオルをさっと取り上げました。


「きゃっ、」友美さん。

「あはは、丸見え、、さぁあ、子どもみたいに恥ずかしがってないで、
 風呂に入ろうよ、このままふたりで、ね、」と私。

「もう〜、ひどいんだから、」と言いつつ、顔は笑ってる友美さん。

「なぁに言ってんの、風呂は裸で入るもの、だゾ、」にこにこ顔の私。



、、そう言いながら、私は友美さんに近づいて、、、。

友美さんの身体を後ろから包み込むように抱きしめて、、、。

素っ裸の友美さんは素っ裸の私に押されて、、、。


静々と浴室に入るふたりでした、、、。


・・

湯船は岩風呂風でした。



   2003年04月10日(木)    そして、、、。私と友美さんは浴衣を脱ぎはじめる。

J (2.結婚)

7. 初夜 (4)


「トモミさん、あのさ、ここ、」

私は“家族風呂”を指差して友美さんに話しかけました。

「“家族風呂”だってよ、つまりぃ、ふたりっきりで入れるんだ、
 どう?一生に一度の思い出作りってことで、ふたりで入ってみる?」

、、友美さんは、うん、と言うのは気恥ずかしそうにして、
え?、という顔をしました。でもそれは拒絶のようではなかった、、。


「ちょっと覗いてみよう、誰か入っていたらダメだしね、」

私は努めておおらかに言って、“家族風呂”の扉を開けました。
中には誰も居らず、ちょうど空いているようでした。

私は友美さんを促して中に入り、お風呂の様子を窺いました。

友美さんも、やっぱり興味があったのでしょう、隅々見回して言いました。




「純一さん、ここって勝手に使っていいの?」

「いや、勝手にはダメなはずさ、ことわってからじゃないと。」

「じゃぁ、やめ。だって恥ずかしいわ、人に知られるの。」

「どうして、何もエッチなことするんじゃないんだからさ。
 ふたりっきりで水入らずに温泉を楽しもうって趣向なのに、、、。」



そうこう言っている時に風呂の係りの人がタイミングよく顔をのぞかせました。

「あ、お客さん、どうされました?ここお使いになるんですか?」

私はとっさに言いました。

「そう、でも予約していないから、どうかなって思ってね、
 今から使ってもいいものかお聞きしようと思っていたところなんですよ、」


風呂の係りの人は私たちをじろじろと見、そして言いました。

「お部屋はどちらでしょうか?ちょうど今空いているようですから、
 お使いになってもよろしいですけれど、、、ただ、料金がかかりますよ、」

「うん、料金はいくらでもいい、部屋につけといて下さい、」

「分かりました、ちょっとこちらでお待ちになっていて下さい、
 フロントに連絡してきますから、、、」

そう言って係りの人はいったんそこを下がりました。



私は友美さんを見て「お願いしちゃった、」と言いました。

友美さんは観念したような顔をしていました。
が、嫌そうでもなかったように見えました。

・・


しばらくして係りの人が戻ってきました。

「結構ですよ。時間は6時半までですけれど、どうぞごゆっくり。」

「ありがとう、」


(でね、僕たちは新婚旅行なんだ、だからエッチなんじゃないよ、)

私はそう付け加えようとしましたが止めておきました。
言ったところで何も意味をなさないからです。




そして、、、。


私と友美さんは浴衣を脱ぎはじめる。


“家族風呂”の狭い脱衣場で。


ふたりっきりで。



   2003年04月09日(水)    私と友美さんは二人で入浴したことがありませんでした。

J (2.結婚)

7. 初夜 (3)


私たちは連れ添って廊下を歩きます。

私たちは連れ添ってエレベーターを待ちます。

私たちは連れ添ってエレベーターに乗り、最上階にある大浴場に向かいました。



歩きながら私は友美さんに話し掛けます。

「露天風呂っていっても形ばかりのものかもね、」

「でもいいの、私、あまり旅行したことないでしょう?、
 どんなのかなって思うだけでわくわくするわ、楽しみ、♪」


ちょっとのことで感動する友美さんです。

「じゃさ、あした河津に立ち寄ろうか、そこに海を一望できる露天風呂がある、
 確か、、、そう、早く行けば朝日が昇るのが見える、そうする?」

「ええ、でも、明日はゆっくりした方が、純一さん、辛くない?」

「大丈夫だよ、、、でも、やっぱり今度にしよっか、
 何も新婚旅行であくせく動き回ることもないしな。」

「うん、」

「またいつだって旅行はできる、いつだってね。」

「うん、」


・・

もうすぐ大浴場というところで、私の目にふとある表示が目に入りました。


その表示は、“家族風呂”、と書いてありました。


どうする? 


、、、思案する私です。


私と友美さんは二人で入浴したことがありませんでした。
友美さんは私の前で裸体を露にするのを好みませんでした。
身体に問題があるからではありません。

ただ、恥ずかしい、それだけの理由でした。

私とても別に友美さんと一緒に風呂に入る、
そんなことに執着心をこれっぽっちも持っていませんでしたので、
これまでもそれならそれで、と無理に勧める事はありませんでした。


ベットでも友美さんは必ず「灯りを消して、」と言います。

私は彼女をいつでも尊重しました。

そんな私と友美さんでした、、、。



しかし今日は新婚旅行の初日、

そして私たちはもうすぐその時を迎えるのです。

結婚して初めての身体の交わり。

初夜を、、、。


私は“私自身”を力づける為に、

こうした刺激も必要かなと思案したのです。



   2003年04月08日(火)    私はそれが静まるのを待ってから着替えました。

J (2.結婚)

7. 初夜 (2)


私は番頭さんに名前を告げ、今日の予約を確認してもらいました。

番頭さんは私たちの荷物を受け取り、部屋まで案内してくれました。

しばらくして係りの女性が宿帳を持ってきて、私はそこへ記帳しました。



工藤純一、そして、妻、友美、と。


書きながら私はちょっと照れて、
友美さんに「妻、だって、」と笑顔を向けました。
友美さんもまた顔を赤らめて、ただ下を向いたものでした。

係りの女性に私は「新婚旅行なんです、よろしく、」と、
弁解するようにことさら大きな声で話しました、照れ隠しのように。



部屋は和室でした。


記帳がすむと私は立ち上がり、窓を開け外の景色を眺めました。
そこは街中でしたので、向かいの旅館が見えるだけでしたが。

食事は6時ごろでよろしいでしょうか?という係りの女性の問いに、
私は、ええ、それで、とお願いをし、ちらと時計を見ました。
5時を過ぎたころでした。

私は少し考えてから、やっぱり7時に、と訂正しました。
ゆっくり温泉に浸かりたい、そう考えたからです。



・・やがて係りの女性は茶を入れてから下がりました。


「やれやれ、っと、友美さん、くたびれた?、」

「ううん、大丈夫、純一さんこそ、運転おつかれさま、」

「まあね、ちょっとくたびれたかな、昨日の今日だし、、、
 さ、温泉に入ろう、食事の時間まで時間あるからさ、」

「露天風呂、あるんだよね、楽しみ〜、、」


・・

お茶を飲み、一服つけてから、私たちは浴衣に着替えます。

友美さんは恥ずかしそうに部屋の隅で着替えました。

私は部屋の真中で「なんだよぉ〜、こそこそとぉ〜」とか言い、
そう言いながらも顔は笑って友美さんを眺めていました。


実は、、、。

新妻の着替える一部始終を見ながら私の気分は高まり、
私はなんとかものになりそうな“自分”を見出していたのです。


私はそれが静まるのを待ってから着替えました。


浴衣では目立ってバツが悪いものですから、、、。



   2003年04月07日(月)    7. 初夜 

J (2.結婚)

7. 初夜 (1)


結婚して初めての身体の交わり。

そのことに対して友美さんは大切にしたいと考えていました。

いつもとは違う、そう、ひとつの儀式のように捉えてたのでしょうか。


朝方、昨夜のアルコールが大いに残っている私が、
ジェラシーから異常な心持ちになり彼女を抱こうとした時、
彼女はきつい態度で私を拒んで「夜に、」と言ったのでした。(参照こちら


そして私たちは今まさにその時を迎えようとしている。

初夜を、、、。


私には不安がありました。

私の身体はものになるだろうか?


私は確かに今朝もジェラシーから欲情したのです。
しかし実際に事が進んだ場合、はたしてきちんと結合できたかどうか、
そう考えると不安を覚えるのでした。

私の“私自身”は友美さんの妊娠を知ったその日より、
友美さんに対して満足な男になることがなかったのです。


自分にはこう言い聞かせていました。
妊娠して2〜3ヶ月は、妊婦にとって非常に不安定な時期でもあります。
だから、自分は友美さんのためにそうした欲望を抑えているのだと。

彼女のために、深層心理が働いて、そして身体が自己制御している、
そんなふうに私は自分に言い訳をしていたのです。


そして私たちはもうすぐその時を迎えるのです。

結婚して初めての身体の交わり。

初夜を、、、。


・・

私の運転する車は熱海市内の温泉旅館に着きました。

そこは近代的な建物でした、しかし由緒ある旅館であるようでした。

入口で番頭さんが立っていました。



   2003年04月05日(土)    しかし、なんとかしなくては。

J (2.結婚)

6. 錦ヶ浦にて (5)


一歩一歩、階段を下る私と友美さんでした。

潮風が友美さんの肩までのびた髪を揺らします。

私は彼女の髪を撫で、またキスをしたくなるのです。

黒く艶やかな友美さんの髪。


私は大好きでした。


私は今ならば友美さんを満足に抱けるのではないか、
そんな精神状態に自分がなったことを悟りました。

何故なら、何故なら私の“私自身”が強く反応していたからです。

熱く、熱く、熱していました、、、。


実は私は友美さんの妊娠を知って以来、
彼女とひとつになることを避けていました。

あの晩私の“私自身”はものにならなかった、
それが繰り返されるのを恐れていたからです。(参照こちら


しかし。

そう思った瞬間、私はまた萎えてくる自分を感じました。

さきほど思ったことを思い出してしまったからです。



  友美さんのお腹には、、、

  生まれたばかりの命が静かに息づいている。

  私たちが景色に見とれている間も、
  私たちがキスしている間も、
  私たちが、そう身体を重ね合う時も、、、



そのことは友美さんには内緒にしてありました。

それを言うと彼女はまた、

自分のせいだと彼女自身を責めそうでしたので。


しかし、なんとかしなくては。

もうすぐ、私たちは初夜を迎えるのだから、、、



(6.錦ヶ浦にて、の項 終わり)



   2003年04月04日(金)    生まれたばかりの命は静かに息づいている。

J (2.結婚)

6. 錦ヶ浦にて (4)


少し肌寒さを感じた私は友美さんにジャケットを着せてやりました。

「大丈夫よ、純一さん、」

「いや、君は君だけじゃない、だから、ね、」


友美さんとともにいる私たちの子ども。
生まれたばかりの命は静かに息づいている。

私たちが景色に見とれている間も、
私たちがキスしている間も、
私たちが、そう身体を重ね合う時も、、、


そう、そうなんだ、
だから君と僕は忘れていてはならない、
僕たちはもう僕たちだけじゃないってことを。


友美さんはにっこり微笑んで、「うん、」と言いました。



「さ、行こう、ちょうどいい時間だよ、」

私はそう言って坂を下り始める、

友美さんの肩を抱きながら。



   2003年04月03日(木)    ありがとう、と言いかけた友美さんの唇に

J (2.結婚)

6. 錦ヶ浦にて (3)


「、、、」無言で友美さんは恐る恐る絶壁を見下ろしました。

私の手をぎゅっと握り締めて、、、。



私は彼女の肩を抱き、肩越しに海を見る。

岩肌に砕け散る波、大きな飛沫が舞い上がる。

「きゃ、」

友美さんは小さく叫び私の中に顔を埋める。

、、、。


「さ、今度は上に行こう、」

私は友美さんの肩をぽんと叩いて歩き始める、、、。



きつい階段でした。
国道を渡ってさらに上へ上へと続く階段。
私たちは汗をかきながら一歩一歩上っていくのです。

ふたり手をたずさえて、、、。


階段を上り詰め、振り返ると大きな海が広がりました。

私たちは肩を寄せ合って飽きることなくその海を見ていました。

心奪われて、、、。



私はふっと気づいたように友美さんに話しました。


「友美さん、」

「何?、純一さん、」

「よかったね、ここに来て、だって、とっても素敵じゃないか、すべてが!」

「うん、」

「オレ、南の島なんかより、ここの方がずっといい、」

「、、、うん、」


ありがとう、と言いかけた友美さんの唇に、

私はやさしくキスをしました。



   2003年04月02日(水)    「ここは自殺の名所なんだよ、」

J (2.結婚)

6. 錦ヶ浦にて (2)


伊豆には友美さんと結婚前に何度も来ていました。

私たちは夏には海水浴に、秋には釣りに、冬には温泉にと、

伊豆を隈なくまわったものでした。


ですが熱海はいつも素通りでした。
車での旅行はこの先に道があると思うとなかなか途中で止まれないものです。
私たちはいつでも熱海を朝早くか夜遅くに通過するのが主でした。


そう、一度だけ熱海に立ち寄ったことがあります。
熱海の夜景を友美さんに見せてやりたくって。

山から下る時、ぱあっとひろがる熱海の市街は美しいものです。
友美さんはその時の印象を今でも目を輝かせて私に語ります。



錦ヶ浦の展望台でも、友美さんはその時の夜景のことを思い出して、
楽しそうに私に語るのでした。

「純一さん、あの時の夜景、今でも忘れないわ。きれいだったよね、、、」

「うん、きれいだった、あの時はさぁ、、、」

(あの時の君の目の輝きのほうがもっときれいだったよ、
 そして今そう語る君の目も輝いて、とってもきれいさ、)

話を続けながら私は友美さんを愛しく感じ、そう思うのでした。



高校を卒業してすぐに就職した友美さんにとって、
ほうぼうを旅行する機会はありませんでした。

修学旅行で東北に行ったことぐらいが最も遠い旅行だったのです。

そんな友美さんのちょっとの感動は、
私なんかには比べられないほどの大きな感動として息づいているのでしょう。

旅をして得る感動は、遠くに行ったからといって得られるものではなく、
その旅人の心が如何に純粋であるかによって得られるものが違うのです。


旅についていえば友美さんは純粋であった、ということです。



絶壁を見下ろしながら私は友美さんに言いました。

「ここは自殺の名所なんだよ、」と。


ちょっぴり恐い話も交えて。



   2003年04月01日(火)    6. 錦ヶ浦にて

J (2.結婚)

6. 錦ヶ浦にて (1)


熱海の市内を抜け、私たちは3時過ぎに錦ヶ浦に着きました。

切り立った断崖絶壁、投身自殺の名所も今は昔、

遊歩道も整備され観光客で賑わう熱海有数の景勝地です。


私は学生時代に自転車で一人旅をしていました。

初めてこの地を訪れたのも自転車ででした。

雨模様のその日、観光客も疎らで私はとぼとぼ遊歩道を歩き、
初島が霞んで見える絶壁の展望台で、永い時を過ごした思い出があります。

青年のひたむきな情熱を心に秘めていたその頃。

私には様々に考えるべきことが多くあったのです。



駐車場に車を止め、私と友美さんは連れ立って遊歩道に向かいました。
その日は晴れ渡ったいい天気でしたので、遠く水平線が望まれました。

私は友美さんの足元を気遣いながら、一歩先を歩き、
そして振り返るようにして目に入るものを説明してあげました。

観光ガイドのように。


友美さんの先ほどの涙の跡はもう消えていました。
私が楽しそうに話し掛けると、楽しそうに答える友美さんでした。

私の心の中の葛藤ももう消えていました。
ただ目の前にいる友美さんをのみ気遣う私でした。


いや、正確には友美さんともうひとり。

友美さんのおなかの中にいる新しい命を気遣う私、、、でした。


歩きながら私は何度も何度も、

大丈夫?

と声を掛けました。



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