J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月31日(金)    アナタはどんな家庭が理想ですか?

J (2.結婚)

2. 引越し (3)


同僚の矢崎は私と同年で翌年の6月に結婚するフィアンセがいました。

私はしばらく前にそのフィアンセを矢崎から紹介されていました。

そのフィアンセと矢崎も同年でした。
大学時代から長く付き合ってのゴールイン、ということでした。



ある晩矢崎は私と酒を飲み、私たちは酔ってこんなことを話しました。


矢崎は言いました。
「工藤はいいな、若い嫁さんを貰って、一種の犯罪だな、」

「何を人聞きの悪い、オレはだな、いいかぁ、
 プロポーズするまで友美さんに指一本触れなかったんだぞ、」

「ふ〜ん、アンビリーバブルなやっちゃな〜、あのクドウクンがなぁ、」

「そうそう、オレも不思議、でも、こうなった、」


「では、そのクドウクンに質問、アナタはどんな家庭が理想ですか?、」

「どんな家庭だって?、なんだい、いきなり、、、
 そう言うときはまず自分から答えよ、ヤザキクン。
 君は順子さんと一緒になって、いったいどんな家庭を作りたいんだい?」



順子さんというのは矢崎のフィアンセの名前でした。

矢崎はちょっとテレ笑いをしてから、急に真顔になって言いました。

「オレはね、何でも話し合って相談しあえる家庭を理想とする。
 家庭のことばかりじゃなく、仕事のことも含めて全てを二人で考える。
 順子はオレの“奥さん”ではなく、人生の“パートナー”として考えている。
 そんなカンジかな、どうだい?、この考え方。」

私は即座に答えました。

「ステキな関係じゃないか、順子さんは聡明だし教養もある。
 君の理想とするところにぴったりの人じゃないか、。
 ま、だから結婚するんだろうがな、つまり、のろけかね、キミ〜。」


矢崎は再びテレ笑いをして、「まあ、まあ、」と言いました。
そして私に聞きました。

「で、工藤はどうなんだい?、友美ちゃんと、」



私は、、、

私は、矢崎のようにはできないな、と思いました。


話し合うと言っても友美さんと私は8歳も離れている。

30歳の私と22歳の友美さん。

同年の矢崎と順子さんのようには決していかない。


私は少し考えましたが、何も思いつきませんでしたので、
このように答えたのです。

「オレは、普通の家庭であればいい。
 トモミさんと、生まれてくる子どもたちが平穏に暮らしている家庭、かな、」


それを聞いて矢崎は言いました。

「工藤らしいな。その考え方。」

「そっか?」

「うん、友美ちゃんは幸せになるよ、きっと、」

「そっかな、そうだといい、それがオレの希望だな、結婚に際しての、、、」



友美さんの妊娠の事実を知ってから、

私にとって友美さんは私の中で特別の存在になっていました。


恋愛や結婚とは次元の違う特別の存在者、

恋人、婚約者、奥さん、という位置付けではなく、

私の子どもを生んでくれる人、

そして、、、

私と共に、その子どもを育ててくれる人、

私はそういう認識を友美さんに持つようになっていました。


私を含めた結婚生活、家庭、というよりは、

友美さんの生活、家庭、を第一義に考える、

そんな私だったのです。



   2003年01月30日(木)    いくら恋愛感情を封印したとはいえ、

J (2.結婚)

2. 引越し (2)


レイと私の間にはあの夜のあのこと以来(参照 こちら)、

依然として見えない溝がありましたが、

表面上はぴったり息の合った上司と部下の関係に見えていました。


それもそのはず、
あの夜のあのことは二人以外には誰も知り得ないことでしたし、
私といえばそのことすら記憶にないとしてウソをついていたからです。



あの夜のあの出来事を知らない同僚たちは、
私の引越しに“当然”にレイが手伝いにくることとして考えていて、
その時点でレイと私とに如何なる精神的苦痛があったとしても、
レイも私もその“当然”の圧力に抵抗することは不可能でした。



私は何日か前に友美さんの実家で一晩を過ごし、自分を取り戻していました。

レイといても以前のような寂寥感に襲われることもなくなってはいました。


しかし、、、

いくら恋愛感情を封印したとはいえ、プライベートな私の引越しを、
当の本人のレイに手伝ってもらうことは、本当は気が進みませんでした。



レイの内心について言えば、その時点では私には分かり得なかった、、、


ただしその数年後、

レイと私が恋愛関係に落ち入った時に聞いた思い出話では、

やはり私の幸せそうな新婚生活を垣間見るようで、

気分的に辛いものもあったそうでした。



そんな私とレイでした。



が、私の同僚たちはそんなことはまったく知る由もなく、、、


みな善き人として、

私と友美さんとの結婚を祝う気持ちが溢れていて、

少しでも力になってやりたいと私の引越しを手伝ってくれるのでした。



   2003年01月29日(水)    2. 引越し

J (2.結婚)

2. 引越し (1)


結婚式を1週間後に控えた日曜日、

私は私自身の家財道具などを引越しすることにしておりました。


友美さんと私との新居は、会社の計らいで、

郊外に新築されたばかりの社宅と決めていました。



友美さんの荷物は、数日前の平日に既に運び込まれ、

新婚生活に必要な新しい電化製品や家財道具は事前に届いていました。


あとは私の身の回りの荷物と、机、椅子、タンスなど、

これまで私が使っていたものを運び込むばかり、というその頃でした。



友美さんはその日も手伝いに来ると言いましたが、

私は妊娠している友美さんが無理するのもいけないと思い、

「いや、会社の連中が手伝ってくれるから大丈夫、」
と、やんわり断っておきました。



実際に引越しには会社の車を借りることにしておりましたし、

同僚たちも頼むこともなく至極当然に助っ人を申し出てくれていました。

私の当時勤めていた会社は本当にアットホームな会社でした。




引越しには同じセクション(参照こちら)の矢崎、宮川、鏑木さん、


そして、、、レイが、手伝ってくれることになっていました。



   2003年01月28日(火)    今度の時は、、、 できるだろうか、、、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (17)


翌朝。

私は時間どおり友美さんに4時半に起こされました。

階下に下りると既に朝食の準備がなされており、
友美さんは甲斐甲斐しくキッチンに立っておりました。


「おっはよっ、早いね、大丈夫?、」

私は元気よく友美さんに声をかけました。

友美さんはニッコリして、
「おはようございます、よく寝られまして?、」と言いました。

「うん、おかげさまで、、、でも、夜中に誰かにオコサレタヨウナ、、、」
私はちょっぴりおどけてそう言いました。

友美さんは顔を赤らめました。そして、
「ごめんなさい、疲れていたのに、、、」と申し訳けなさそうに言いました。


そんなことはない、

私はそう言う顔で首を振りました。
そして友美さんを後ろから抱きしめて、「今度ね、」と優しく囁きました。

友美さんははにかんだような表情をして、ウン、と首を縦に振りました。



今度ね、、、か、


今度の時は、、、


できるだろうか、、、


私は一瞬懐疑的にそう思いました。

子どもができたことを聞いて以来、
私は友美さんに対してそういう気にはなれなくなっていました。

そのことは友美さんには一切話しませんでしたが、
その日以来、私たちはセックスレスの日々を過ごしていました。



今度の時は、、、できるだろうか、、、


しかし私は、いつまでもこれではいけないとも思いました。

そして、今度の時はきっと必ず、と強く心に言いつけたのでした。



私は友美さんの用意してくれた朝食をとり、
友美さんの用意してくれた手作りの弁当を持ち、
一番列車に乗り込むために早々に友美さんの実家を後にしました。


友美さんは駅まで見送りに来てくれました。


別れ際、私は友美さんに言いました。

「いろいろありがとう、ご両親によろしく、ね、」

「うん、いってらっしゃい、気をつけてね、」

「オッケイ、君も身体、大事にして、な、」

「はい、」


私は片手を上げて、「じゃ、」と言って改札口の中に進みました。

そして思い出したかのように立ち止まり、振り返って、

「今度ね!」

と、友美さんに声を掛けました。


友美さんはまた、はにかんだような笑顔で、ウンウン、と何度も頷きました。

そうした友美さんをまた私は愛しいと思いました。


私はすっかり自分を取り戻せました。


これで、いいんだ、

私には友美さんがいる、

これで、これでいいんだ、、、


一番列車の車窓から、

朝日に浮かぶ町並みを眺めつつ、私はそう呟きました。



それは、結婚式まであと僅か、というある日の出来事でした。




(1.結婚前夜、の項 終わり)


   2003年01月27日(月)    友美さんはふとんからそっと出て身繕いをしました。

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (16)


私は友美さんの胸からお腹へ、そして“友美さん自身”に触れてゆくうちに、

性的対象としての友美さんの、性への感情が薄らいで、

私の子どもを産んでくれる、母としての友美さんを感じていたのです。


、、、友美さんのお腹には子どもがいるのだ、、、

、、、ここから、子どもは生まれてくるのだ、、、


そう思う私には、自らの欲望を果たそうという自我は存在しませんでした。

私の“私自身”は、力を失いました。



私が身体を離すと、
友美さんは、じれたように身体を私にすり寄せました。

(どうして?)

友美さんの身体はそういうふうに私の身体に聞いてくるのです。



ですが、

私の“私自身”はもう力がない、

、、、私は、そういうことは、言えなかった、


私は友美さんに背中を向けました。

そして、「今夜はもう遅い、早く寝なくちゃ、」と、つれなく言い放ちました。

友美さんは私の背中に身体を寄せて、
「ね、ちょっとだけ、」と、小声で言いました。


ちょっとだけ、いれて、、、

ちょっとだけ、、、



、、、でも、私の“私自身”は、もうそういう状態には戻らなかった、


私は友美さんに向き直り、固く抱き締めて、優しくキスをしました。

そして言いました。

「大切なトモミさん、愛してる、とっても、、、
 今夜はオヤスミ、ね、オレ、疲れているみたいなんだ、」


ぴたりと合わせた私の身体から、
友美さんは“私自身”に元気のないことを感じとりました。
そして、申し訳なさそうに言いました。

「ありがとう、、、疲れているのに、、、」

「いや、うれしかったよ、来てくれてありがとう、早く一緒に暮らしたいね、」

「うん、」

「じゃ、ね、あした、たのむよ、」

「うん。おやすみなさい。」

「おやすみ。」


友美さんはふとんからそっと出て身繕いをしました。

そして、「もう一回、」と言って私にキスをせがみました。

私が軽く額にキスをしてあげると、うれしそうにして、

「おやすみなさい、」ともう一度言って静かに部屋を出てゆきました。



私はそんな友美さんを愛しいと思いました。



   2003年01月26日(日)    しかし、、、私の指が“彼女自身”に達した時には、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (15)


風呂上りの温かい友美さんでした。

シャンプーの香りが心地よく私を包みます。

私は友美さんに身体を寄せられて、友美さんのオンナを感じました。



「ちょっとだけって?」

私は友美さんの耳もとで囁くように聞きました。

友美さんは私の胸に頭を預け、
「だから、ちょっとだけ、、、」と甘えるように言いました。


でも、この部屋の向こうの次の間には、
友美さんのご両親がお休みになっているんだ、、、


私は優しく友美さんの髪を撫で、頬をよせてキスをしました。

髪、耳、首筋、とキスをして、、、

そして、、、言いました。
「もう、オヤスミ、あしたがある、」と、、、


けれど、友美さんは何も返事をしません。
ただ、じっと、次を待っている。



私は仕方なく、友美さんの胸を開きました。

柔らかなこぶりの乳房を包むように愛撫し、
可憐な乳首を口に含み、やさしく舌をころがしました。

ぴくんっ、っと友美さんの身体が反応しました。

隣りの次の間にはご両親が寝ている、、、

声は、、、だせません。

友美さんは、声を押し殺して、
ぴくんっ、ぴくんっ、と、、、身体で感じていくのでした。


私も、
友美さんの反応に呼応するかのように、“私自身”が感じてゆきました。

私の手は、
友美さんの胸からお腹へ、そして大切なところへと降りてゆくのです。


友美さんのその部分は、もう、十分に潤っていました。


しかし、、、

私の指が“彼女自身”に達した時には、

その時にはもう、私の“私自身”は萎えていたのです。


、、、友美さんのお腹には子どもがいるのだ、、、

、、、ここから、子どもは生まれてくるのだ、、、


そう思うと、私の性欲はすうっとどこかに消え去ってしまったのです。



、、、私は友美さんから身体を離し、「オヤスミ、ね、」と言いました。



   2003年01月25日(土)    友美さんは私の寝息を確かめて、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (14)


これでいいんだ、、、

これで私の人生は確定、

これでいい、、、、。


私は灯りを消した部屋の中でひとりふとんに横になり、
天井を見上げてそう繰り返し思いました。


私は友美さんを大切にしなくっちゃ。
私は友美さんを大事にしなくっちゃ。

生まれてくる子どものために、、、



、、、そうなのだ。

私には私の子どもを産んでくれる、友美さんがいる。


、、、そうなのだ。

私は生まれてくる子どもと、
その子を産んでくれる友美さんのために生きるのだ。


これでいいんだ、、、

これでいい、、、、。


私はそう思い眠りにつきました。




、、、夜も更けて。


静かに、、、友美さんが私の寝る客間に入ってきました。


友美さんは私の寝息を確かめて、

そっと私のふとんに入り私の身体に身を寄せました。


私はうっすらと気がついて、

友美さんの頭を抱き、「どうしたの、、、?、」と、小声で聞きました。



友美さんは、「ちょっと、だけ、」と、甘く小声で言いました。



   2003年01月24日(金)    私は敷いてあるふとんの上にあぐらをかいて、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (13)


友美さんは、何か知らん?という表情で廊下を歩いてきました。
私は敷いてあるふとんの上にあぐらをかいて、友美さんを待ちました。

客間の入り口から友美さんは顔をのぞかせ、「なあに?、」と聞きました。
私は、「まあ、ちょっと入れよ、」と理由を言わずそう言いました。

友美さんは私の傍らにきました。
そして、「なあに?、純一さん、何か御用?、」と言いました。



、、何か御用?、って、いったい君はなんておっとりしているんだい?、、、



私は、ちょっぴり不服そうな顔をして、
「これでオヤスミ、じゃ、なんだかな、だからさ、」と言いました。


「あ、分かった、タバコね、今灰皿持ってくるわ、」

「うん、ありがと、、、って、それもそうなんだけどさ、」


「あ、飲み足らないんでしょ?、そうねぇ、、、
 いいわ、私、お父さんに聞いてみる、貰い物のウィスキーがあったはずよ、」

「お、それは有り難い、、、、って、やっぱり、それは止めとくよ、
 飲みたいなら飲みたいと自分でお父さんに話したほうがいいから、」


「そぉお?、じゃ、灰皿持ってくるわね、」

友美さんはすっと立ち上がって灰皿を取りに行ってしまいました。




 なんだかな、、、

 ちょっと、イメージが違うな、、、

 オレ、これで、いいのかな、、、


 でも、誰も悪いことはしていないし、

 友美さんはオレのことを大切にしてくれているんだし、、、


 オレはこのまま、このまま、流れていけばいいのかな、、、



私はふとんの上に仰向けになってタバコに火をつけました。



友美さんが灰皿を持って戻ってきました。


「はい、灰皿、」

「ああ、ありがと、、、」

「あと、何かあったら隣の部屋にいるから、言ってネ、
 私、お風呂に入ってくるわ、またあとでね、」


「うん、オレ、もう寝るよ、明日早いし、
 悪いけど朝4時半に起こしてくれるか、始発で行くから、」

「了解、お弁当作ってあげるからね、お楽しみに、」

「うは、そりゃ、楽しみだ、じゃ、オヤスミ、」

「オヤスミナサイ、、、」


「友美さん、」

「ん?」

「身体、大丈夫?、、、えっと、おなかの子どものこととか?、」

「大丈夫、安心していてね、じゃね、」
友美さんはにっこりしてそう言いました。

私もにっこりして「うん、」と言い、
タバコを消して起き上がり、友美さんの額に軽くキッスをして、

「じゃね、またあした、」と言いました。


友美さんはうれしそうに部屋を出て行きました。



 これで、、、

 これでいいのだよ、クドウジュンイチ、



私は自分にそう話しかけ電気を消しました、、、



   2003年01月23日(木)    客間にはふとんがひとつ敷かれていました。

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (12)


友美さんの実家はご商売をなさっているので、
一階に店舗、その奥に居間と食事室及びキッチンと水周り、
二階にご夫婦の寝室と二人の子供部屋、そして客間がありました。

客間として使用している和室は東向きの道路に面したところにあり、
配置としては階段を上がって一番奥にあたるところでした。


私は風呂から上がると居間にいらっしゃった友美さんのご両親に、

「ごちそうさまでした。では一晩ご厄介になります。」

と挨拶をして、友美さんに案内されながら二階へ上がりました。


、、、と、後ろから友美さんのお母様もついて上がってこられました。


(やれやれ、これじゃ、キスもできない、、、)

私は半ば諦めて事の成り行きに身を任せることにしました。




客間にはふとんがひとつ敷かれていました。


案の定、私は友美さんと別の部屋で寝るのだ、、、


結婚前、当然といえば当然、だけど、、、


当たり前のようにそうされているのも、ちとカナシイ。



友美さんのお母様は私の気持ちを察してか察してないか、
「もう少し早い時間だったら、ゆっくり友美とも話ができたのにねぇ、」
というようなことを、ふとんを整えながら言いました。

私が「いえ、今夜は遅いですし、急のわがままでしたから、、、」というと、
お母様は「ホントに、」と肯定表現で相槌を打たれたのでした。


そして、、、

お母様は、「では、ごゆっくり、」と言って、
友美さんを促すようにして、二人で客間を出て行こうとしました。

友美さんはさびしそうな目を私に向けましたけれども、
母親の手前、自分がこの部屋に残ることはできないようで、

「おやすみなさい、何かあったら言ってね、私の部屋、隣だから、」

と言って部屋を出て行きました。



襖は閉められました、、、


私は、これはいかん、と思いました。

とっさに襖を開け、「あっと、友美さん、ちょっと、あれ、」
と、友美さんに声を掛けました。

階段を降りかけていた友美さんは、「え?、」と振り返りました。


私は、チョイチョイ、と手招きをしました。



オヤスミのキスぐらい、しようよ、、、



   2003年01月22日(水)    だって、お母さんが、、、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (11)


そもそも、今夜私がここに来たのは、

レイとばかり一緒にいる毎日、

どうにかすると精神的に揺れて、、、そんな日であったからでした。


友美さんと逢えば私は、

私の心のうちの、誰に話すこともできない寂寥感を癒すことができる、

そう考えて急に思い立ったように特急列車に飛び乗ったのです。


こうして、一緒にいながらろくに話もできないのはツライ、、、。



風呂から上がると、何時の間にか、
私の下着は既に洗濯機に放り込まれていました。

その代わりに、脱衣籠の中には真新しい下着と、
小さ目のスウェットの上下が置かれていました。



「純一さん、召し上がりまして?、」

友美さんが脱衣室のドアの向こうから声を掛けてきました。


「ああ、友美さん、ごちそうさま、あの、オレの下着、、、」

「うん、私、洗濯したよ、Yシャツとズボンはアイロンかけるから、
 そのスウェット、私のだから小さいけど、他にないの、ごめんね、」

「り、了解、これ着りゃぁ、いいんだな、下着はお父さんのかい?、」

「そう、、、でも、新しいのよ、気にしないでね、」

「オ、オッケイ、悪いな、なんだか、」


「それと、、、そこに歯ブラシあるでしょう、使ってね、」

「ああ、これね、アイアンダスタンド、」

「あと、客間におふとん敷いておいたわ、ごゆっくり、してね、」

「ありがと、、、って、あのさ、オレはもう寝ちゃう、ってワケ!?、、、」



友美さんは一瞬黙りました。そして、小声で言いました。


「だって、お母さんが、、、」

と言って、さらに声を潜めて、

「純一さんは明日早いから早く休んでもらいなさい、って、そういうの。」



それを聞いて私は、

大きく、「ふ〜、、、」、と溜息をつきました。



なんなんだよ〜、、、



   2003年01月21日(火)    純一さん、湯加減はどうですか

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (10)


食事が済んで、私と友美さんのお父様は居間に移りました。

友美さんとお母様は後片付けのため台所に入りました。

私は暫くお父様と仕事の話や景気の話などをして過ごしました。


そうこうしているうちに、
今度は風呂の準備が整っているからと、
私は進められるままに風呂を戴くことになりました。


私は完全にお客様扱いでした。


私は友美さんに逢いにきたのに、、、


私は一人湯船に浸かりながら、ふぅ、と、溜息をついたものでした。


「純一さん、湯加減はどうですか?」
友美さんが風呂のドア越しに私に聞いてきました。

「ああ、ありがとう、これから君も入るのかい?」

「ええ、私は一番最後、」
と言って行ってしまいました。



友美さんは人柄もよく、気立てもよく、
誰からも愛される、そんなタイプの人でした。

誰に対しても優しく、誰に対しても柔和でした。

友美さんのことを悪く言う人はいないはずです。


しかし、その反面、
人に意見したり、自分の考えを通したり、
自分で物事を決めたり、、、そういうことは一切できない人でした。


こういう時には、いい人過ぎるのも物足りなくもあります。



私は友美さんに逢いにきたのに、、、


友美さんだって、私と二人で話をしたいだろうに、、、



私は、少し友美さんと二人きりで話をしよう、

と思い、早目に風呂から上がることにしました。



   2003年01月20日(月)    このコが僕の妻になるんだ、、、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (9)


友美さんにはお姉さんがいて二人姉妹でした。

お姉さんは結婚して家を出ていました。

そのため、友美さんのご両親は、

友美さんに婿を取って家業を継いで貰いたいと願っていたのでした。



そこへどこの馬の骨とも分らない30前の私が、

まだ二十歳そこそこの友美さんとの結婚を申し入れたですから、

当初頑なに反対されたことも分らない事ではありませんでした。



また私は長男でした。


何もそんなオトコとよりによってこんなに若いうちから、、、

それが友美さんのご両親の本心であったかと思います。



こうしてこの晩のように、
私が家族のようにもてなされるようになったのには、

もう既に友美さんのおなかには新しい命が宿っており、
そして私たちの結婚式がもう目前であり、
全てが確定的であるからに違いありません。


友美さんのご両親はアルコールを一切やりませんでした。
タバコも、、、まったく飲みません。
そして、私はアルコールが大好き、タバコはヘビーでした。


私は窮屈に食事を戴きました。



友美さんが気を利かせてビールを買って来てくれましたが、
一人で飲んでいるっていうのも味気ないものですし、
一人で酔ってしまって、また思わぬ失態をしてもまずいので、
結婚式や新婚旅行の話をしながら、私はおとなしく食事をしていたものです。

友美さんはもっぱらご両親と私の話を聞いているばかりで、
なんやかやと私の面倒をみながら、黙って食事を取っていました。



実家に戻ってくつろいだ雰囲気の友美さんは、
表で見ていたころよりも、ずっと柔らかく見えました。


まだ22歳の友美さん、

あどけなさが残っている友美さん、

性格もカラダも柔和でふくよかな友美さん、


、、、そんな友美さんでした。



このコが僕の妻になるんだ、、、

僕の子どもを産んでくれるんだ、、、


僕はこのコを愛していかなくっちゃ、、、



   2003年01月19日(日)    来て、いきなり帰る、という話

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (8)


もう8時近くになって、列車は友美さんの住む町に到着しました。

駅には友美さんが迎えに来てくれていました。


思っていた通り、友美さんは優しい笑顔で迎えてくれました。

思っていた通り、友美さんはまた喜んでくれました。


そうなのだ!

この人は私の子どもを産んでくれる大事な人なんだ!

私はこの人を、大切にしなくっちゃ!

私はこの人を、幸せにしてあげなくっちゃ!


友美さんはにこにこして私に話し掛けてきました。
「純一さん、おつかれさま、びっくりしたわ、急で、どうしたの?」

私もまたにこにこして答えました。
「なんでもない、でも、なんだか急に顔を見たくなって、さ、」


友美さんは言いました。
「夕ご飯、まだでしょ?、うちで一緒にご飯食べましょって、
 お母さんと話していたの、いいでしょう?」

「う、うん、それこそ急でワルイなぁ、お母さん、怒ってないかい?」

「ううん、そんなことないわ、さ、行きましょ、」


私は、、、

友美さんの顔を見たら、とんぼ返りするつもりでした。



そのため私は、いささか、困惑しました。


こんな時間に伺ったら失礼だろうに、、、。



しかし、準備されているというものを、

ここでまた無下に断るのもよろしくないと思いましたので、

では軽くご挨拶程度して帰ろう、

と心に決めて友美さんの実家に向かいました。



友美さんの実家は商店街でご商売をされており、
毎晩午後7時に店を閉めて、
それから食事をされることになっていました。

私がお邪魔をすると、もう食卓には食事の準備ができていて、
私の到着を皆で待っていた様子でした。

私は恐縮して、「どうも、急で申し訳ありません、」と言うと、
友美さんのお父様が、
「そんなことありませんよ、もうすぐ他人じゃなくなるのだから、
 どうぞ、ゆっくりして行って下さい、」
と言ってくれました。

ですが時間も時間です、私は内心、
(これは困ったぞ、ゆっくりしていたら帰りの電車がなくなっちまう、、)
と思いましたので、
「いえ、お父さん、今日は急だったので、余りゆっくりも出来ないのです。」
と言ってしましました。

友美さんのお父さんは怪訝そうな顔をして、
「何かこれから用事でもあるんですか?」
と聞かれました。

「いえ、用事はないのですが、電車がなくなってしまうと、、、」
(明日は会社ですし、、、)

私が言い訳がましく話をしていると、友美さんのお母様が、
「工藤さん、来て、いきなり帰る、という話は失礼な話ですよ、
 それも、こんな時間に、、、お父さんはあなたをお待ちしてたんですよ、」
と、おっしゃいました。

「は、はい、」(すみません)

「せっかくですから、ゆっくりしていらして下さいね、
 結婚式もあと僅かなのですし、友美と話すこともあるでしょう、」

「はあ、」(でも、明日も会社が、、、)

「工藤さん、今夜は泊まっていったらいかがです?
 ここから通勤している人もいますよ、朝の5時の電車もあるのですよ、」

「はあ、」(どうしよう、、、)

「友美だって、毎日寂しい思いをしているんですよ、
 もう、一人じゃないんですからね、少しは思いやってあげて下さいね、」

「はあ、」(いえ、いつも、思いやっているつもりですけど、、、)

「そうと決まったら、どうぞ、ゆっくり召し上がれ、
 といっても、急に来られたからあり合せのものしかないんですよ、
 今度からは早目に連絡してから来て下さいネ、」

「は、ははー、すみません、」(なんなんだよ〜)

「そうそう、ご実家にお電話されたらいかがです?
 今夜はこちらに泊まること、早目に連絡しないとご心配なさるわよ、」

「は、はい、じゃ、ちょっと、電話、お借りします、、、、、」



こうして私は、

友美さんのお母様にポンポンと話を決められて、

今夜は友美さんの実家に泊めていただくことになりました。


私はなんだか面白くなかったです。



   2003年01月18日(土)    こんな時間にお伺いして、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (7)


そうした寂寥感に囚われると私は友美さんを想いました。


友美さんに逢えば、、、大丈夫、なんだ。

私は何度も自分に言い聞かせ、その寂寥感と戦いました。



友美さんは結婚の準備のため早くに実家に帰っていました。

私の住む町から特急で2時間余り、
海沿いの港町に友美さんの実家はありました。

すぐに逢うのにはちょっとの距離がありました。



今のように携帯電話があれば、毎日のように電話ができたでしょう。
しかし、この頃はまだ携帯電話も出始めた頃で一般的ではなかったのです。


私は電話を一日一回、決めた時間にかけました。

それ以外の時間にはかけませんでした。

何でかって言うと、
つまり、その、友美さんのお母様に厭味を言われそうでしたので、、、。



とある日のこと、

私はそうも言っていられない想いに駆られました。

レイとばかり一緒にいる毎日、

どうにかすると精神的に揺れて、、、そんな日でありました。


私は夕方友美さんに電話を掛けて、

「今からそっちに行くから、」と言って、

仕事を早々に切り上げて特急列車に飛び乗りました。


友美さんはまた優しい笑顔で迎えてくれる、
友美さんはまた喜んでくれる、
友美さんが大事なんだ、
友美さんを大切にしなくっちゃ、


私は夕闇に消え行く町並みを車窓から眺め、そう何度も思うのでした。


友美さんはまた優しい笑顔で迎えてくれる、
友美さんはまた喜んでくれる、
友美さんが大事なんだ、
友美さんを大切にしなくっちゃ、


、、、
、、、、、、

果たして、こんな時間にお伺いして、
友美さんのご両親はなんと思われるか知らん、、、


一抹の不安は、ありましたが。



   2003年01月17日(金)    レイとのことは、私はどうかしていたのだ、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (6)


仕事については、多忙極まりなくなってきました。

私はレイと得意先ごとの綿密な引継ぎをし、
私の不在中に全てが滞ることなく進むように配慮しました。

セクション内での打ち合わせも何度も行ってもらい、
経験のないレイをフォローしてもらうよう十分に手回しをしました。


日中は相変わらずレイと同行しました。

二人は一緒にいながら、離れているようでした。

レイとは仕事上の話をするのみで私的な会話は一切しませんでした。


仕事の話は私が一方的に話しました。
レイはメモを取り、分かりにくい点は質問しました。

仕事の話が終わると私たちは無言になりました。


得意先を訪問する直前に、二人は急に近づき、
示し合わせたように笑顔を作りあってから、訪問するのでした。


私の中にある気まずい感情も、レイのよそよそしさも、
次第にそれに慣れてきて、それが当たり前の関係になりつつありました。


これで、いいのだ、


私はそう思いました。



私には、生まれてくる子どもがいるのです。

私には、その子どもを産んでくれる友美さんがいるのです。



それに、、、

結婚式はもう目前なのです。


レイとのことは、私はどうかしていたのだ、

そう思って、闇の中へ葬り去ろう、、、


しかし。

本当は、、、私は、なんとなく寂しさを感じていたのです。

誰にも言うことができない、

自分でも認めることができない、

心のうちの寂寥感、、、


、、、ケッコンシキハモウモクゼンナノニ、!



   2003年01月16日(木)    私のその気まずさは、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (5)


レイと私は、あの日以来特別なことはありませんでした。

ただ、私の中に気まずいものが残っていたこと、

そして、レイの態度によそよそしいものがあったこと、ぐらいのことでした。



それは当然のことでした。

私は私の心のうちにレイへの恋愛感情の芽を見出し、
もう二度と芽が出てこないように固く閉ざすことを選択したのですし、

レイは初めて二人で飲んだ夜に私がレイを抱きしめた行為について、
私の酒に酔った上での勢いによるものであって、かつ、
その夜の一切を記憶にないとした私の卑怯なウソを間に受けていたからです。(参照 こちら



しかし、私のその気まずさは、

私がレイ対してついたウソによるものではありませんでした。


私は、

私の心に芽生えたレイに対する恋愛感情を、

当人のレイに悟られたように感じ、

そのことが気持ちの上でレイに一札取られたような、

そんな後ろめたさ、気まずさ、を持っていたのです。


(このレイに一札取られたような、後ろめたい私の心理は、
 今後の私とレイの関係に微妙な力関係を与えていくのです、)



レイは友美さんの妊娠について知っている。
レイは私のレイに対する恋愛感情を知っている。
レイはあの晩私に抱きしめられたことを知っている。

そして私が記憶にないとしたウソも、、、
本当はそれがウソであるということも、、、レイは知っている、のではないか、?



けれど、、、

そのような後ろめたさ、気まずさ、

そして、レイが私に取っているよそよそしさ、も、

この期に及んでは、私にはそのまま忍受するよりないことでした。



私には、生まれてくる子どもがいるのです。

私には、その子どもを産んでくれる友美さんがいるのです。



それに、、、

結婚式はもう目前なのです。


私の内部の感情など、どうでもいいことなのです。



   2003年01月15日(水)    結婚式を上げるまでは、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (4)


友美さんのご両親、特にお母様はそのことを心良くは思われませんでした。

いえ、子どもが生まれるということには大きな喜びを持たれましたが、

婚前にそうしたことになったことに対して、不満を持たれたのでした。



私と友美さんとの結婚は、以前にも書きましたが、
当初、友美さんのご両親にかなりの反対をされました。(参照 こちら

半年の月日を要して、やっと結婚の許しを得た日にも、
私は友美さんのお母様からきつく釘を刺されていたのです。

「工藤さん、せっかくですが、結婚式を上げるまでは、
 子どもを作るような振る舞いはしないで下さいね、
 いまどきの人は節操がないから、申し上げておきます、
 お父さんが結婚を許したからといっても、まだ友美はうちの娘です、
 あなたも友美と結婚するまでは他人です、
 何が起こるか分からない世の中ですから、そのことは忘れないで下さいね、」

友美さんのお母様はこのように私に話されていたのです。


この時の私は、一にも二にもありませんでした。

ただ結婚の許しを得たという喜びが先に立ち、
こうした話にも、ははー、と頭を下げて聞いたものでした。



少ししてから考えてみると、随分と失礼な話でもありました。


私はそんな節操のない人間じゃぁ、ありませんですぜ、

とばかり、ひとこと言っておけばよかった、と後悔もしました。


しかし、、、

それが実際に、婚前に妊娠させてしまったという事実の前には、

どう言葉を並べようが友美さんのご両親から私への信頼は、

金輪際、得られるものではなくなってしまったのですが。



私は友美さんのお母様とお話する都度に、
その言葉の端々に冷たいものを感じました。

私はちょっとツライものも感じました。


ですが、

そんなことは私にとってささいなことでした。


私には、生まれてくる子どもがいるのです。

私には、その子どもを産んでくれる友美さんがいるのです。



それに、、、

結婚式はもう目前なのです。


なんのかんの、言ったり、考えたり、
そんなことをしている場合ではなくなってきていたのです。



   2003年01月14日(火)    いつしか私は、性的なものに興味がなくなって、

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (3)


当時の私はまだ30歳でした。

当然その方面の欲望がないわけではありません。

正常な機能と精力を有している正常な男でした。


ただ、
友美さんの前では、その欲望は忽然と消え失せた、のです。



私は友美さんを大切にしなくっちゃ。
私は友美さんを大事にしなくっちゃ。

生まれてくる子どものために、、、



私は何をしても、そのことが頭に浮かびました。


、、、いつしか私は、

性的なものに興味がなくなって、

生まれてくる子どものことばかりに興味を持つようになっていくのでした。



私は妊娠や出産についての本を買い、
夫としての役割はこうあるべきだ、というようなことを勉強し、
それを友美さんに話しては実践しました、


私にできることならなんでもやりたい、、、

私はそう思いました。


私は必死にすがっていたのかも知れません。

レイとのことで自分の存在意義を失っていた私にとっては、
これ以上にない私の存在価値を見出したかのようでしたので。



そうした私の変化を、友美さんはうれしそうに見ていました。

私が友美さんを気遣うたびに、
にこっと微笑みながら、「ありがとう、」と言ってくれました。



私は私で、そうしてうれしそうに友美さんに言われると、
また、より一層友美さんを大切にし大事にしました。

そうすることが私にとって大きな喜びとなっていったからです。



   2003年01月13日(月)    それ以来しばらく、私は性欲を感じなくなりました。

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (2)


友美さんの妊娠が確実だと聞かされて、
私の友美さんに対する見方は大きく変わりました。


友美さんにとっての私の存在は、
友美さんにとって、それ以前と変わらぬようでしたが、
私にとっての友美さんの存在は、
私にとって、それ以前とは別の認識を持ったのです。



私にとっての友美さんは、婚約者、というだけではなく、

私の子どもを生んでくれる人、

そして、、、

私と共に、その子どもを育ててくれる人、

私はそういう認識を友美さんに持つようになったのです。


恋愛や結婚とは次元の違う特別の存在者、

それが私の中に生まれた新しい友美さんの存在認識でした。


ともかく大切にしなくちゃ、いけない。
ともかく大事にしなくちゃ、いけない。
ともかくおだやかな気持ちで過してもらわなくちゃ、いけない。

ともかくいたわって、優しくしてあげて、守って、安心してもらわなくちゃ。


、、、私はそのことばかりに没頭しました。

レイのことはまったく頭から消えてなくなっていきました。



私は友美さんを大切にしなくっちゃ。
私は友美さんを大事にしなくっちゃ。

生まれてくる子どものために、、、



、、、それ以来しばらく、
私は友美さんに対して、性欲を感じなくなりました。

もともと友美さんも、
その方面はおとなしい人でしたので、特別に支障はありませんでした。



私は友美さんを大切にしなくっちゃ。
私は友美さんを大事にしなくっちゃ。

生まれてくる子どものために、、、



、、、

私たちのセックスレスの日々が続きました。



私は友美さんを大切にしなくっちゃ。
私は友美さんを大事にしなくっちゃ。

生まれてくる子どものために、、、



   2003年01月12日(日)    《第二章 結婚》 1. 結婚前夜

J (2.結婚)

1. 結婚前夜 (1)


私の結婚は差し迫っていました。

こよみをめくればもうその日は目前でした。

レイとのことはその忙しさの中で埋もれていきました。



その間、友美さんの妊娠は確実なものとなりました。


そのことで、私の中での友美さんは、

今までと違った存在感を持つようになりました。


こんな私の子どもを産んでくれるという、ただ一人の特別な存在、、、

トモミさん、、、


レイとのことで自分の存在意義を見失っていた私にとって、
友美さんの妊娠は、私に大きな喜びを与えてくれたのです。


私の子ども、、、

私の子どもを産んでくれる友美さん、、、


私は生涯を費やして、
子どもと友美さんの幸せのために生きるのだ、


私はそういう生きがいを見出しました。

そして私の結婚への迷いは徐々に消えていきました。



もとより、私の迷いとか、レイへの恋愛感情とか、は、
誰も知ることのない私の心の中だけでおこっていたことです。



表面上は、
幸せな結婚を控えて前途洋々たる私、でした。



   2003年01月11日(土)     INTRODUCTION (1) : 参照 : 忘備録

J ( INTRODUCTION 参照 & 忘備録)(1)

1. AUTHOR

   Jean-Jacques Azur

2. CAST

   main+++

   工藤純一:主人公(私)。第一章が終わった時点で30歳。
         婚約者友美さんと10月に結婚予定。
         中規模の輸入商社の営業社員。(参照 1 2 )

   樋口レイ:ヒロイン。新入社員。第一章が終わった時点で18歳。
         3月生まれ。工藤純一の部下(アシスタント)。(参照 1
         身長160cm以上、日本人形のような目鼻立ち。
         豊かな胸、締まったウエスト、均整のとれた体型。(参照 1 2 3 4
         好きな人がいるらしい。(参照 1 2

   友美さん:工藤純一の婚約者。第一章が終わった時点で22歳。
         元総務部社員。結婚の為退社。
         誰からも愛されるかわいいタイプの人。(参照 1 2
         アルコールは飲めない。(参照 1

   友美さんを呼び捨てにする男:第二章以降に登場。主要CASTの一人。

   レイの結婚相手:第四章以降に登場。

   sab+++

   杉野佳菜:レイと同期の新入社員。総務部。(参照 1 2

   安田:大卒の新入社員。業務部。(参照 1

   部長:営業部部長。工藤純一の上司。

   その他の同僚:矢崎、宮川、鏑木、顧問の先生。。(参照 1


3. 忘備録

   + 友美さんに対する愛しいと思う心

   + レイについての二つの疑問

   + レイの見方が変わった生涯忘れ得ぬ日

   + 友美さんとの馴れ初め

   + 友美さんとの初めてのキス

   + 友美さんへのプロポーズ

   + 友美さんと初めて結ばれた夜

   + その後のレイとの関係に影響を及ぼしたレイとの記憶にない会話

   + 新しい命が生まれた夜

   + レイを抱きしめた夜の出来事

   + 卑怯なウソ



xxxxx

<作者・Jean-JacquesからのMESSAGE>

私の稚拙な文章をお読み下さいましていつも有り難うございます。
特にMy日記リストに入れて下さっている方には心から感謝致しております。

この日記は私の長年温めてきた恋愛の物語を纏めたいがために、
思うに任せて書き綴っているものであります。

今日は第二章に入る前に、自分なりに整理をさせていただきました。

明日より、第二章“結婚"を書かせていただきます。

今後とも宜しくお願い致します。

                              03/01/11  Jean-Jacques


   2003年01月10日(金)    私は卑怯なウソをつきました、、、 《第一章 新入社員 終わり》

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (17)


翌朝。

私はどこをどう帰ったかも分りませんが自宅で目覚めました。

昨夜のことを思い出そうとすると、頭が割れるように痛い。

私はシャワーを浴び、身支度をしましたが、
一晩飲んだアルコールは残ったままでした。


私はフラフラと会社に向かいました。

私の心の中は空虚でした。


何も考える気力もありませんでした。



事務所に入ると、果たしてレイは既に席に着いていました。


じっと下を向いているレイ。

私は一瞬どうしていいのか、分りませんでした。

(なんて声を掛けよう、、、)
と、息を飲んでぼんやり立ち竦んでしまいました。


レイは私に気付いて顔を上げました。
そこには硬い表情のレイの顔がありました。

「おはよ、、、樋口さん、昨日は、おつかれさん、」
私はなんとか笑顔を作って声をだしました。

「おはようございます、昨夜は、有り難うございました、」
言葉を切るように話すレイ。


何か言わなくっちゃ、レイに昨夜のことを詫びなくっちゃ、、、


私はそう思うのですが言葉がでてきません。

そして、、、会話はそれだけで途切れてしまいました。



部長が出社してきたので、
「部長、昨夜は樋口君とすし秀で食事させていただきました。
 有り難うございました。」
と私は昨夜の礼を言いました。

部長は、
「工藤君、随分酒臭いじゃないか、ドレくらい飲んだんだ?、」
と聞きました。

私は、
「それが、あまり覚えていないんです、、、すみません、」
と答えました。
(昨夜のことは殆ど覚えていないのです、
 ドレくらい飲んで、どこでどうやって帰ったさえも、)
私は小声で言いました。

部長は呆れた顔をして、レイに声をかけました。
「樋口君、大丈夫か?、ちゃんと帰れたか?、
 工藤君は全然覚えていないそうだ、もう、困った奴だ、な、」

レイはまじまじと私の顔を見てから、笑顔を作って、
「大丈夫です、部長、私、ちゃんと電車で帰りました、
 昨夜はごちそうになりました、有り難うございました。」
と答えてくれました。

部長は私の顔を見てニヤっとし、
「そうか、しっかりしろよ、工藤君、」
と私の肩をたたき行ってしまいました。



レイが私に聞きました。

「工藤さん、ホントに覚えていないんですか、、、?」

私は、「うん、ゴメン、」とウソをつきました。

「オレ、酒を飲むと記憶が飛んじゃうんだよ、ゴメン、、、」


レイは拍子抜けしたような顔をして、
少し軽蔑的な目を私にむけながら呟くように言いました。

「そうなんだ、、、」


「、、、うん、そうなんだ、よ。だからオレと飲む時は、注意、だよ。」

私は居直ったような言い方をし、その話を打ち切ってしまいました。



私は卑怯なウソをつきました、、、

もう、私には昨夜のレイに対する行為を、
酒の上での間違いとするよりなかったのです。

そうすることによって、私の人格がレイに軽蔑されようとも、
その時の私には他に選択肢がないように思われたのです。

私はすでに婚約者がいて、そして子どもも生まれてくるのです。

如何に私がレイに好意を持ったとしても、
それは実ることのない恋愛感情の芽なのです。

私は私の心の奥深いところにこの恋愛感情を封印して、
もう二度と芽が出てこないように固く閉ざすことを選択したのです。




、、、それから3年後、

この固く閉ざした恋愛の芽が封印を解かれ、

私とレイが恋愛によって結ばれようとは、

この時点では思いもよらなかったことでした。




(6.初めてふたりで飲んだ夜、の項 終わり)



《第一章 新入社員 終わり》



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この日記は全てはフィクションであり、
実在する人物をモデルにして書くものではありません。

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<作者・Jean-JacquesからのMESSAGE>

私の稚拙な文章をお読み下さいましていつも有り難うございます。
この日記は私の長年温めてきた恋愛の物語を纏めたいがために、
思うに任せて書き綴っているものであります。

第一章が終わりましたこの機会に、私のこの恋愛の話について、
自分なりに整理をしておきたく思いますので、
明日の日記は忘備録のようなものを書いておきたいと考えております。

予めご了承下さい。

今後とも宜しくお願い致します。

                  03/01/10  Jean-Jacques
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   2003年01月09日(木)    今度は私のレイを抱く力が見る見る抜けていきました。

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (16)


レイの瞳から溢れんばかりの涙を見た瞬間、

今度は私のレイを抱く力が見る見る抜けていきました。



レイはその瞬間のスキをつくように私を追いやり、

「おやすみなさい、、、!」と言って私から去ろうとしました。


私は我に帰りました、

そして、「レイちゃん!、待って!」と声を大きくして呼び止めました。


しかし、、、

レイは振り向きもせず走っていってしまいました。



悄然とそこに立ち竦む私、

私は取り返しのつかないことをしてしまった、、、

こんなオトコは最低だ、、、


私は自分を辞めたく思いました。

こんなオトコは何もかも失うべきなのだ。
こんなオトコは人を愛したり人に恋をしたりする資格はない。
こんなオトコは人から愛してもらう価値はない。


ともかくも、レイに詫びよう。

レイの部屋に行こう、、、


いや、それはダメだ!
そればっかりは絶対にダメだ!

一人暮らしの女性の部屋に、
この深夜に行くなんて、、、絶対にダメだ!


ぐるぐると頭の中に渦巻く否定の言葉。

その言葉の渦の中に、見え隠れしている何かがある。

それは何?


、、、トモミさん、、、

、、、生まれてくる子ども、、、


私はその場に硬直して動けない、、、

私は自分を失ってしまいそうでした、、、



、、、「お客さん、お客さん!、どうするんですか、」

タクシーの運転手さんが硬直した私を呼び覚ましました。

「うん、ゴメン、、、ナサイ、、、」私はタクシーに乗り込みました。

「どちらへ行きますか?」と運転手さんは聞きました。


私は、、、

私は、自宅には指示をせず、夜の繁華街にお願いしました。


私の精神状態は、もう酒に逃れるよりなかったのです。



その夜私は、朝まで、自分が無くなるまで、酒を飲みました、、、



   2003年01月08日(水)    だんだんとレイの力が抜けていく

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (15)


私のこの突然の破廉恥な行為、

常識的には決して許されるものではなかったはずです。

上司が酔った勢いで部下の女性を抱き締める、

客観的にはセクハラにしか見られない私の恥ずかしい行為でした。



ただ、私もレイも酔っていたのです。


特に私は随分と酔ってしまっていた、、、

私は自分の気持ちを押さえることができなかった、、、


私が突然にレイを後ろから抱き締めた時に、
レイは驚いて「きゃっ、」と声をあげました。

そして私の手を振りほどき、「いやっ、」と言いました。


、、、「いやっ」、そう言われて私の心は悪魔になりました。

私は力を込めてレイを抱き寄せました。
そしてレイを私向きにし、今度はしっかりと抱き締めました。

だんだんとレイの力が抜けていくのが分かりました。

観念したかのように、、、。


じっとしているレイ、

ぎゅっと抱き締めている私、



私はキスをしたくなりました。
そうすることが自然な状況になった、と感じました。


しかし、、、

しかし、私はレイに唇を重ねることはできませんでした。


なぜなら、、、

なぜなら、レイの瞳には涙が溢れていたからです。



   2003年01月07日(火)    次の瞬間、私は、、、レイを抱き締めていました。

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (14)


暫く沈黙が続きました。

私もレイもフロントガラス越しに前を見ていました。

徐々に近づいて来る別れの場所、、、。



私はとてつもなく寂しい思いに駈られながら、

とは言え、どうにもできないことを痛感していました。



私には友美さんがいて、そして来月結婚する。
友美さんは既に妊娠している(可能性がある)。

私は友美さんが愛しい。大切にしたい。
友美さんは私を愛してくれている(らしい)、心から。


レイに対するこの狂おしい思い、、、

この我侭で身勝手な心情は今夜ここで封印すべきなのだ。


しかし、、、

しかし、これでオレはもう確定、、、か、


これで、、、

これでオレはいいのだろうか、、、?



沈黙を破り、運転手さんが聞いてきました。

「お客さん、どの辺ですか?」

レイが答えました。

「その先の角を左に曲がって、、、そう、そこで結構です。」


タクシーは左に曲がって、すぐに止まりました。

レイが言いました。
「工藤さん、今夜は有難うございました。
 とっても楽しかったです。ここで私降ります。」

私は、レイには「ああ、」とだけ言い、
そのまま言葉をつなぎ運転手さんに向かって、
「ここで一人降りるから、」とドアを開けてもらいました。


私が後から乗っていたので、
私はレイを降ろすために一旦車を降りました。

レイも続いて降りました。



私の目の前をレイが通り過ぎていく、、、


その瞬間、

私は、、、私自身をどうにもできなくなりました。



次の瞬間、

私は、、、通り過ぎようとするレイを後ろから抱き締めていました。



   2003年01月06日(月)    もうじきレイを車から降ろすという頃になって、

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (13)


レイが一人暮らしだから、、、

だからといって、

私が何かを考えた、ということは決してありません。



レイは、、、

ちょっと躊躇したように見えました。


私はそういう雰囲気をすっと感じましたので、

「レイちゃん、オレが送り狼になるかも?、なんてことは絶対無いぜ。
 妙な心配は無用だよ。、、、へへ、それともなって欲しいかい?」

と、おどけて言いました。


レイは、「そんなぁ、」と言ってクスクス笑い、
「でも、工藤さん、遠回りになっちゃうでしょう?」と言いました。


私は、「大丈夫、それより君が心配だから、」と言いながら、
大通りに出て、タクシーを停めました。


「さ、乗って、乗って、」
私はレイをタクシーに乗せ、
「、、、えっと、運転手さん、○×町のほうに、」と行き先を告げました。



タクシーの中では運転手さんがしきりに話しかけてきました。

私は運転手さんの話に適当に応対をしていました。

その間は、先ほどのレイへの狂おしい思いも薄れていました。


しかし、いよいよレイの住む町に入り、

もうじきレイを車から降ろすという頃になって、

私はとてつもなく寂しい思いに駈られたのです。



私は急に無言になりました。


レイも、、、

黙っていました。



   2003年01月05日(日)    婚約者の友美さんとレイの比較

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (12)


私とレイ、

この時はまだ恋愛の関係ではありません、

ただの上司と部下の関係でした。


如何に私がレイに対して恋愛の情を持ったとしても、
結婚をひかえた私がレイに対して何をできるわけでもありません。

ただその時、私は初めてレイを恋愛の対象として意識し、
そして、私は初めて婚約者の友美さんとレイを比較したのでした。


私はもとより友美さんに対して、
愛しいと思う心はありましたが、恋愛の情はなかったのです。


ただ愛しいトモミさん、、、

私のその思いは確実で、私はここまで来たのです。


誰からもオープンに認められ、
誰もが祝福してくれる、私と友美さんの結婚。

私はそれを恋愛であると信じていました。



しかし、レイに対するこの狂おしい感情は何だろう?

私の一生が確定的になったこの今になって、
私は失いかけている何かを見出した、そんな思いに駈られている。


いったい私はどうしよう、、、



私は心の中でそんなことを考えていたのですが、
実際にレイと話していることは当り障りのない会話をしていました。

「うまいだろ、この爆弾巻、」とか、
「遅くなっちゃったから、明日大変だね、」とか、

レイもまた私の心のうちを知ってか知らずか、
他愛もない話をしていました。

「おいしいです、これいろんなものが入っているんですね、」とか、
「大変、もうこんな時間、」とか、、、



私とレイはだいたいを平らげて、一服つけてからすし秀を出ました。



表に出て私はレイに、

「もうこんな時間だから、車(タクシー)で送っていくよ、」

と声をかけました。


レイは一人暮らしをしていました。



   2003年01月04日(土)    う、うん、、、そうだね、電話しなくちゃ、

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (11)


レイのことで頭がいっぱいになってしまった私。

レイが欲しい、、、


そのことで何かを感じたかのように席を立ったレイ。



「クドちゃん、どうする?、何か握ろうか?、」

マスターに声を掛けられて、私ははっと我に帰りました。

「もう11時だよ、あの娘、電車大丈夫?」

「んっと、そっか、もうそんな時間か、
 あ、じゃ、太巻き作ってよ、爆弾巻。」


もう11時か、、、

どうしよう、、、

オレはいったい、どうしよう、、、


「クドちゃん、彼女には電話しないでいいの?」

「彼女って?、」

「何言ってんの、クドちゃん、来月結婚すんだろぅ?
 恋人が首を長くして待ってるんじゃないの?」

「う、うん、、、そうだね、電話しなくちゃ、」


確かに友美さんはオレの電話を待っている、いつでも。

でも、、、


「はい、爆弾巻、上がりは?」

「あ、頂戴、」


爆弾巻をひとつ口に入れ、上がりを啜る私。

そこにレイが戻ってくる。


「失礼しました、工藤さん、」

「いやなに、そろそろ食べて帰ろう、ね、、、」



   2003年01月03日(金)    私の人生はもう確定なんだ、、、

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (10)


私はどうかしてしまったかのようでした。


レイが欲しい、

その時私は、、、そういう、
猛るような思いに駈られてしまったのです。



トモミさんとの結婚で、私の人生はもう確定なんだ、、、

そのようにレイに指摘された私は、
取り返しのつかない縛りのようなものを感じ、そのことから逃れたい、

と、そう思ったのかも知れません。



いけないことに私はまた、
ずいぶんとアルコールが入っていました。

冷静であれば、私の理性は十二分に働き、
そのような思いに駈られることはなかったかと思います。

いずれにせよ、
私はレイに対してその時初めて恋愛の情を感じました。

熱く、狂おしいほどの恋愛の情を。



私は言いました。

「レイちゃん、実はさ、オレ、迷っていることがあるんだ、、、」

レイは私のその言葉を聞きながら、真顔で私を見ました。
けれど、それは一瞬のことでした。


レイは私の態度に何かを感じたのかもしれません。

急にニコッとして、
「工藤さん、ちょっと、、、」
と言って、トイレを借りに席を立ってしまいました。


残された私。
いよいよもって、レイが欲しくなる。

どうしよう、、、

オレはいったい、どうしよう、、、



しかしそこで私は、天の声の如く、私に話し掛ける声を聞いた、、、


そう、私は忘れていたようでした。

ここがすし秀のカウンターであることを。


マスターは私に言いました。



   2003年01月02日(木)    その時、何かが私の中でうごめきました。

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (9)


私はレイがよく理解していないのかと思い、もう一度、

「いや、トモミさんはまだ確定じゃないって、、、さ、」

と言い、レイの意図することを窺うようにレイの顔を見ました。


レイは、ウィスキーのグラスを見つめていました。
そしてホッとするような表情でひと口ウィスキーを飲みました。


「ハイ、そうですよね、工藤さん、
 もう私、今の話忘れましたから、心配しなくても大丈夫ですよ、」

「うん、そっか、ありがとう、じゃ、話題変えようか?、」

私もホッとして水割りをごくりと飲みました。



ただ内心は、微妙に心が揺れていたのです。

というのは、
先ほどのレイの言った「確定」の意味が、
どうも友美さんの妊娠とは違う意味にも取れましたので。


それは、
私と友美さんがそういう関係であると言うこと、

つまり、
私は友美さんと結婚をし、子供をもうけ、
これからの私の一生を結婚という枠の中で友美さんと共に過していく、

そのことをレイに向かって明らかにした、


レイは、そのことを聞いて、

これからの私のそういう一生について、これで確定した、

と言った、


私にはそのようにとれたのです。



これで確定か、、、

そう言われてみれば、そうだな、、、



その時、何かが私の中でうごめきました。


それは、

レイに対する、狂おしいほどの恋愛の情、でした。



   2003年01月01日(水)    トモミサンの妊娠はまだ確定じゃないって

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (8)


友美さんはそのことを「誰にも言わないでね」と、
念を押して私に話していました。

レイについ、話してしまった私。

しまった!、、、と思いましたが後の祭りです。



こうした場合、私は誤魔化すことが苦手なタイプです。


というより、

正直にありのまま伝えて相手に理解を求める、
そうすることにより自分自身に整合性を与えたい、
そういう“バカ正直”とも言えるタイプの人間でした。


レイは私の顔を見て、とてもビックリした表情をしました。


私は、
「思い当たるふしがあってね、たぶんそうだと思うんだ、
 トモミさんはまだ確定じゃない、っていっているんだけどね、」
と付け加えました。

レイは、急に無理な作り笑いをして(私にはそう見えました)、
「そうなんですか、、、おめでとうございます、」と言いました。

私はさらに付け加えて、
「でね、この話は極秘中の極秘だよ、内密に頼むね、」
とレイに口止めを依頼しました。

レイは、
「ハイ、分っています、マズイですものね、結婚前じゃ、」
と言いました。



少しして、レイはボソッと言うように話しました。

「でも、これで確定ですね、、、工藤さん、」



確定?、、、何が?、
トモミサンの妊娠はまだ確定じゃないって言ったじゃないか、、、


私はレイが何を意味しているのか一瞬には理解できなかった、、、



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この物語はフィクションです。

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