short story


2005年06月28日(火)


「干されたグラス」


私はあの人が
笑うのも、泣くのも
止めることができなかった。

彼女はそう呟いた。

それがどういう意味なのか
咄嗟には分からなくて
気付いた時には
彼女は夜の街へ。

そして隣には
空いたグラスひとつ。


2005年06月24日(金)


「連続反応」


全ての現象は
互いに干渉し合った結果生じる
一つの状態であり
取り込み、分かれ、変化しながら移ろう
連続した反応のある時間における総称である。

無から有は生まれないのと同時に
変わらないものなどない。

そして人間においては
形を持たず内面で生じる
感情という自由な能力によって
さらにその反応は劇的なものへとなる。

それがこの世界で生きているという事であり
間違っても永遠を求めるのは
即ち、生命としての死を選ぶことなのだろう。


2005年06月20日(月)


「向こう側。こちら側。」


脇目も振らず追いかけて
無様にすがり付いて
それでもどうにもならないことこそ
そう簡単には諦めきれない。

一度あったということに
簡単に戻れないのも
また逆につらいだけだ。

ただ、時々思い出すから
僕は苦笑するだけ。


2005年06月14日(火)


「手招いて」


情熱的な愛があるなら
穏やかな愛だってある。

心の欲求があれば
理性の欲求だってある。

どれも切り離せないし
いつもごちゃ混ぜになって
すっきりと分かり易くは
なかなかならない。

だからと言ってどっちかだけなんて
いつか必ず無理が出るから
「焦ることはないと思わない?」
と、私は君を手招いて頭を撫でた。
君は、にゃぁ、と一声鳴いて
ゴロゴロとノドを鳴らした。

そもそも私と君のことだもの
きっと、どっちだって
楽しいに決まっているしね。

にゃぁ。


2005年06月08日(水)


「微笑」


耳たぶに落ちる
囁きをかわして
冷たい手を差し出す。

楽しげな視線で
熱を奪うまでは
ひとときも離れない。


2005年06月03日(金)


「雨上がりあの子のおうちへ」


あのぶかぶかの長靴は
もう随分まえに
小さくてはけなくなってしまったことを
思い出した。


2005年06月01日(水)


「存在の証」


認識されてから初めて
存在できることがある。

自分だけが知っていて
いかに存在を確信していようと
それがあの人に伝わらないなら
あの人にとってこの存在は
ないものと同じだ。

あの時、わたしは
次々と何時の間にか生まれていった
大事な大事な不確かなものを
しっかりとあの人の中で
存在させたかったから
あの人に会うべきだと思ったんだ。

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日記才人