short story


2005年03月30日(水)


「些細な解放」


空を見上げて
真っ直ぐな飛行機雲があったら
そんな日は
雲ばかり見て
過ごしてしまう一日。

陽に照らされた雪が
あっという間に溶けてゆくのが
妙に嬉しかったので
そんな日は
ずっと観察して過ごす一日。

子供が公園で
何度も滑り台を滑り降りるのを
思わず目で追ってしまって
眺めてばかりで過ごす一日。

普段はあまり気にしないような
とても些細なことで
変わらない日常の
あまりにくだらない事から
私は穏やかに
解放される。


2005年03月29日(火)


「かかと行進曲」


その先は良く見えないけれど
声はよく聞こえる。

春の北風は
もうすぐ側まで近づいている。

足取りはいつだって
快調さ。


2005年03月25日(金)


「きしみ」


その裏腹さは
ひどく妖艶で
心から愛しい。


2005年03月23日(水)


「特別な宵の囁き」


素足にかかる言葉は
二人を包んだ。

うなじにゆれる湯気は
何も隠すことなく
何にも隠れない。

この時ばかりは
特別な宵に
特別な僕ら。

頬に当たる雨粒は
共に行こう。
傍にいるよ。
そう囁く。


2005年03月17日(木)


「静寂」


陰と共に終わり
雨と共に始まる。

佇むものは壊れやすく
最近ではもう見なくなった。

気付くことと
気付かないことの差は
世界が変わるほどの出来事で

眉を流れる水滴に
僕はただ耳をすませる。


2005年03月14日(月)


「ひとつになる」


私の世界はあるひとつを中心に回る。
それは依存ではなく
同化でありたい。


2005年03月08日(火)


「見えない実験室」


刺激と反応。
原因と結果。
予想通りにしか進まない事は
目に見えて分かりやすく
良くも悪くも物事を常識に縛り付ける。

考え付く全ての要因を入れ込んで
この見えない実験室は動くけど
結局は明日の私さえ知ることができない。

でもだからこそ
不意な幸福に浸ったりもする。



2005年03月04日(金)


「確定事項」


ふとした時にあの人を思い出す。
そしてすごく申し訳ない気持ちになるのだ。
僕はそんなつもりじゃなかったし
あの人もそうだったはず。
なるべくして今になって
それは当然の帰結だったかもしれないけど
できればもう少し
うまく振舞えなかったのかと
そう思う。

僕は間違った。
たくさん間違った。


2005年03月02日(水)


「留まれない」





久しぶりにあの街を歩いた。
ほんの1年前のことだけど
あの人やあの人やあの人と
この道を一緒に歩いたと思うと
なんだかえらく昔のことのような気がした。

例えそこが居心地のいいところであっても
やはり一つの所には留まれないんだろうけど
なにかしら残す事ができただろうかと考えると
それもどうやら
あまり上手くいかなかったようだ。

あの時、笑って昇った駅の階段を踏みながら
遠くなり過ぎたという事を想う。



2005年03月01日(火)


「今日の終わり」


今日の終わりを告げるのはいつだって
太陽でもなく
時計でもなく
かわいいあの子の
おやすみという言葉。

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日記才人