short story


2002年12月10日(火)


「瞬拍の火」



あの時僕は
冗談など一言もいってはいない。
僕の口から出た言葉は
真実と
そしてその裏返しだけ。

君と同じように。


2002年12月02日(月)


「月の暗示」


段階を経て下り行く太陽。
目の前で輝く月の暗示は
白ではなく沈黙となる。

人の集まる温かいところ
その割れ落ちた綿毛から
砂へと伝わる微かな音を
指先で捕らえては
また一つ巡って
輪は閉じる。

目に見えることを信じないで
目に見えないことを望まない。

私と貴方は
隔絶された壁の向こうで
声のみを響かせて
互いを確認した。

いつの日か
今、自分のいる場所も
すべて空気に溶けて
心さえ消えたら
誰かとに語るのもいい。

そうして混在するだろう
二人の距離に
私はいま少しだけ想いを巡らす。

それは月の暗示。

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日記才人