short story


2002年05月22日(水)


「雷鳴の元」


雷鳴が雨を呼ぶ前に
外へと歩き出す。
生暖かい風に乗って
懐かしい匂いがした。

たくさんの人の背を
見ながら歩くのは
いつまでも慣れないもので
かと言って振り返ることはしないから
不思議でならない。

信号が変わる度に
無口になっていく自分だって
確かにここにいるのに。


2002年05月14日(火)


「斜めの螺旋」


ひとつ欠けた窓。
斜めの螺旋。
半分の影と
風のざわめきから
昨日のことを思い出す。

意味のない動作を
何度も繰り返して
袖口に流れ込んで来た君。
手元が寂しくて
わずかに目が霞む。

ちょうどその時
机の上の手鏡から
光が当たって
なにかとても安らかなものから
僕らは守られた。



2002年05月09日(木)


「薄暗い方へ」


君が向いているのは僕。
それを背後から見ているのは僕。
一心に君は
一時だけ君は
やって来た者を
拒むことなく
頷いて笑う。

薄暗さを一身に浴びて
なにも視界に入れることなく
光のある方へと
姿を消した。

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日記才人