short story


2002年04月30日(火)


「影の残像」


音を立てずに羽ばたいて
突然に方向を変える。
暮れかけた空を背にしか
見られることもなく
風がそのまま
運び去るまで
すれ違っては行く。

雨雲は東へ。
残像は西へ。


2002年04月20日(土)


「そうして独占する」


机の木目に沿って
居眠りをしている
君の呼吸に
そっと
視線を走らす。

数えるようにして
流れる時間と君を独占。


2002年04月14日(日)


「すじ」


光の濃淡が
あなたの体を表す。
遮るものを
どうか置かないで。
触れられるはずのその手も
今は。

許されるなら
僕は欲張りになる。
あなたはどうだろう。

すれ違い様
抱き寄せることも叶わない僕を
どうか笑って。
僕と。


2002年04月09日(火)


「陸の灯台」


陽の落ちる方角にも
慣れてないで
あの道より向こうに行く。

木の枝の形まで覚えていた
僕の帰り道には
もう桜は咲いただろうか。

星の光の代わりに
街頭が煌々と灯って
やがて人込みの中へと
僕を追いこむ。

立ち止まれない。



2002年04月06日(土)


「立ち上がる」


自分が必要とされるのを
ひたすら待って
目の前を流れていく
花びらを眺めているくらいなら
初めからひとりでいる。

なにかひとつを愛することは
素晴らしいことであるが
固執というものは一方で
自由を奪うことでもある。
こうして待っていると
そればかり目に付いて
そして私がそれを嫌うということに
あなたはそろそろ
気付かなければならない。
気が付かなければいけない。


2002年04月03日(水)


「どうかそのまま」

大切だと思う人ほど
時に残酷な仕打ちができる。
どうでも良い人になら
私はこんなにも
悲しんだりはしない。

あなたは言う。
大切なものがある。
あなたは言う。
君と同じように。


隠れていたのは
一つだけじゃなくて
その大きさは深く
私だけじゃない。
知りたいと思うことは
それを知るよりも
確認する方が恐いと
はじめて分かった。

優しい声が
嬉しかった。
真面目な声に
少し戸惑った。

あなたが大切な人だからこそ
それは残酷な私への愛。

あの時と違って
あなたの体温を頼るには
もう遠すぎるから
ただせめて
大切な存在でいて欲しいと願っているのだけど
それは
無理なことなのでしょうか。

辛いのは
あなたもですか?

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日記才人