short story


2002年03月25日(月)


「残して」


賢明な旅立ちのために
残すべじゃないものを
残さないよう
後ろを振り向いて確認した。

残すべきものはなにかと言うと
その多くは物ではないから
確かめるのは難しいだろう。
分かるのはまだ先のこと。
気が付けば
また冬が来て先回り。

行こう。

僕を
あの人に残して
僕は
あの人を残して。


2002年03月18日(月)


「高揚」


外は青くて
風ももう暖かい。
上着を脱ぎ捨てたら
もうどこへでも行けるだろう。

自由になる多くの可能性は
気分を高揚させて
さてこれから自分はなにをしようかと
人をこの上なく楽しくさせるけど
「余裕」を人生のモットーとする僕にとっては
気ばかり焦るのもどうかと思うし
一人で遠出をするのも望むところではない。

だからまずこうやって貴方に尋ねているんだ。

この煙草が吸い終わるまで
どこへも行かないってば。


2002年03月13日(水)


「芽吹く」


大きく一息ついてから
歩き出す方向には
あの人が待っている。

そこへ向かうことで
失うものがないとは言わないけど
それらを順に並べてみて
自分の選択が正しいと思えるなら
自信を持って別れを告げられる。

さして重要ではないことも
その時には少し
心に焼き付けようと思ったりしながら
これまでの手紙を整理しよう。


2002年03月05日(火)


「愛撫」


風がなだらかにして
空気が透明にする。

その様子は
僕の想像力が及ばないところにあって
なにか距離感を失わせるような
そんな夜でした。

無邪気な時期が過ぎて
僕は大人になったんだと思う。


2002年03月01日(金)


「青い方へ」


迫り来るんだ。
雪の花へ。
集めるんだ。
大切なところ。

傷ついたものなんか
この世にはいくらでも溢れてる。
見ずに済めばいい
とも思うけど
染まった蔦は足枷。

だからこそ
飛び立てればと
思うよ。

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日記才人