「残して」
賢明な旅立ちのために残すべじゃないものを残さないよう後ろを振り向いて確認した。残すべきものはなにかと言うとその多くは物ではないから確かめるのは難しいだろう。分かるのはまだ先のこと。気が付けばまた冬が来て先回り。行こう。僕をあの人に残して僕はあの人を残して。
「高揚」
外は青くて風ももう暖かい。上着を脱ぎ捨てたらもうどこへでも行けるだろう。自由になる多くの可能性は気分を高揚させてさてこれから自分はなにをしようかと人をこの上なく楽しくさせるけど「余裕」を人生のモットーとする僕にとっては気ばかり焦るのもどうかと思うし一人で遠出をするのも望むところではない。だからまずこうやって貴方に尋ねているんだ。この煙草が吸い終わるまでどこへも行かないってば。
「芽吹く」
大きく一息ついてから歩き出す方向にはあの人が待っている。そこへ向かうことで失うものがないとは言わないけどそれらを順に並べてみて自分の選択が正しいと思えるなら自信を持って別れを告げられる。さして重要ではないこともその時には少し心に焼き付けようと思ったりしながらこれまでの手紙を整理しよう。
「愛撫」
風がなだらかにして空気が透明にする。その様子は僕の想像力が及ばないところにあってなにか距離感を失わせるようなそんな夜でした。無邪気な時期が過ぎて僕は大人になったんだと思う。
「青い方へ」
迫り来るんだ。雪の花へ。集めるんだ。大切なところ。傷ついたものなんかこの世にはいくらでも溢れてる。見ずに済めばいいとも思うけど染まった蔦は足枷。だからこそ飛び立てればと思うよ。