short story


2001年12月20日(木)


「一本道」



一緒に来てくれると
言ってくれてありがとう。
ほんとは心細かった。

吹雪になったら
逃げ場もないし
後戻りもできないけど
君と一緒なら
一本道の外へと
足を踏み出せる。


2001年12月15日(土)


「挫かれぬよう」

光さえも届かぬ
遠いところ。
そこから運ばれてくるのは
ただ一粒の涙。

私はそれを額に受け。
来るべきその日まで
想いを隠しつづけようと誓ったのです。

何度も言うように
私はあなたに抱かれたい。
あなたはそれを笑って済ますから
私の言葉は
いつまで経っても本気にはならないの。


2001年12月09日(日)


「溢れた瞬間」

好き。
という感情が
ゆっくりと時間をかけて
心の中で育っていくものだとしたら
それがある所まで到達した時
私たちの口から
その言葉が零れるのだと思うのです。
まさしく
溢れ出るように。

その瞬間は
なかなか予期できるものではなくて
本人も気が付かないうちにやってくる。
友達だと思っていた人に
自分は恋したのだと
私たちはその時、ようやく知って
そして知った時にはもう
どうしようもない。


二人で街を歩いて
とてもいい雰囲気の骨董屋を見つけ
あそこに入ろう。
と振り向いたあなたに抱き付いて
キスをしたのは

あの時ちょうど
溢れ出たからなんです。



2001年12月02日(日)


「静けさに足跡」

空と山の境界線。
朝日が澄んだ空気を照らす。
世界が気高い白になる。

木を縁取る冷たさ。
その美しさ。

この静かな足跡が
残らなければ
私はとうに
立ちすくむしか
なくなっていたはず。


足音があなたを追う。


雪が音を吸い込んで。
あなたの声が
すぐ真近に聞こえる。


2001年12月01日(土)


「水溜まり」

素足で歩きたい。
土の上を。

できるなら
石などが乱雑に転がる
荒れた道が良い。

あの時、彼女は
まるで母親のように
真っ黒になった僕の足を洗ってくれた。
今なら
気がつかない振りなどしない。

痛みよ。
僕の中にあるものを
呼び起こせ。
痛みよ。
水溜まりを避けて通るのは
もうやめよう。

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日記才人