short story


2001年08月31日(金)


「体温」
雨の粒が
風に乗ってやってくる。

二重に響く
流線の吐息。


2001年08月29日(水)


「君と森で」

目的が目的を生み
今、僕らのいる場所は
星も見えない森の奥深く。
笑っちゃうほど単純なことが
ここでは命取り。
手探りでは限界があるよね。
そこにいるのは君?


2001年08月27日(月)


「もうすでに過去」

覚えていないということは
おそらく
どうでも良いことなのだろう。

そして
記憶から消したいと願った。

印象を振り切るように
あの人は歩き出す。


2001年08月24日(金)


「故郷」

砂の川を渡って
滝へと続く道をゆこう。
音色は美しい唄となり
深く心に響くだろう。
それは新たに訪れた十の津波。
蒼緑の沢を見渡す岩の上で
二人で茶でも飲もうか。

赤く平らな月の形が
入り江で僕らを別つまで。


2001年08月22日(水)


「その涙に」

泣いているあの娘にくちづけるのは
少し息が苦しそうで
少し唇が冷たい。

なにかとても澄んだものがあって
思わず引き寄せた。


2001年08月20日(月)


「待ってな」

届かないなら
見ていたい。

見ているくらいなら
少しは近づいてみせるさ。

そこで待ってな。


2001年08月17日(金)


「すっと撫でるように」

あの人を知らない。
あの人のことはなにも知らない。

ただその言葉でもって
あの人はそこに在る。

あの人がどんな人間で
どんな生活をし
どんな時に
ああいった言葉を思い浮かべるのか
わたしはなにも知らないけれど
その中にある
わずかな・・・
「何か」が
わたしの中に入り込んでゆくのが
心地よくて
わたしは今日もあの人の言葉を
聞きに行く。

きっと
頬をすっと撫でるように
優しく笑う人なんだと
思っておこう。


2001年08月14日(火)


「涙で見えない」

返り血さえ浴びずに
笑いながら人を殺せる時代なんだよ。

奪われることなく
奪うことだけがまかり通る世の中なんだよ。

死はそれほど遠いものかい?
死を与えられるのは恐ろしいかい?
じゃぁ、死を与えるのはどうだい?

本当は
与えるのも奪うのも
同じくらい恐ろしいことなんだけど
君達はまるで気付いていないようだから
そうやって簡単に他人を否定するんだ。

あなたが後生大事に抱えているものの価値が
どれほどのものか。
死があなたに与えられるその時になるまで

教えてあげない。


2001年08月12日(日)


「だからもっとそばへ」

私に触れることも
くちづけることも
貴方の自由。
いつでも
どこでだって
私はそれを拒んだりしない。


2001年08月10日(金)


「待ちわびる」

午前4時の時計の針は
思いの外はやく
裸電球の灯かりは柔らかい。

布団に顔をうずめたりしながら
あの人の匂いを思い出す。


2001年08月03日(金)


「眠りがけのおまじない」

眠っているあなたに
キスをする。

眠りがけの
ちょっとしたおまじない。

そうしてから
僕も静かに目を閉じる。

おやすみ。

「昨夜、あなたとキスをする夢を見た。」

そう言って
僕を起こしてください。



2001年08月01日(水)


「手を伸ばす」

まるで
千切れ飛ぶように
後ろへと消えてゆく。

そしてなにも残らない。
あの時触れたはずの
頬の冷たさ。

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日記才人