short story


2001年07月30日(月)


「接点と距離」

あの人は
私には全く関わりのない世界に
生きている人でした。
これまでも、そしてこれからも
おそらく触れることのないだろう世界。

ちょっとした偶然であの人を知り
興味を抱いた。
自分にはない価値観で生きている
あの人の言葉に私は惹かれた。
あの人も同じ想いだったのかもしれない。

やがて私達は当然のように
互いの世界に相手を招き入れようとするが
接点のまるでない二人には
交わるべきものなどないことに気が付き
不用意に近づいてしまったことを後悔する。

相手を気に入ってはいても
それとこれとは別なんだ。
遠くのものは
遠くから眺めるべきなんだ。


2001年07月27日(金)


「移り変わる居場所」

視界の隅をかすめて
何かが水面に飛び込んだ。
今のはなに?
と尋ねても
あなたは答えてはくれない。
全ては水の底に沈んで
戻らないのだと悟った。
飛び込んで行方を捜すほど
僕らはあの頃のままじゃない。
そうだろう。

水面には
もう波紋一つたっていない。

帰ろうか。
僕は独り言のようにつぶやく。
帰るべきところへ。
そこにあなたはいないけれど。


2001年07月25日(水)


「言葉の直線上」

君を必要とし
君に必要とされ
そしてそのどちらも
満たされなかったとしたら
僕らは潔く
あるがままの言葉を伝えるべきです。

それは君と僕とを
なんら無駄のない
直線で結び
その線上にある
唯一つの到達点へと
導いてくれるかもしれない。

恐ろしいのは
不用意な弱音より
慣れてしまうこと。


2001年07月23日(月)


「孤独な愛の探求」

中途半端な好意ならいらない。

突き離したら
もう戻らないだろう。


2001年07月21日(土)


「求める人」

意外なところから現れた君は
僕の前で一瞬立ち止まり
笑いかけたと思ったら
すぐにまた求める人。

惑わされたとは
思わないことにしよう。


2001年07月19日(木)


「それでいいの?」

俺がなにを言ったのか
もう少し考えてから
返事してよ。


2001年07月17日(火)


「行こう」

あの雲の切れ間に向かって。




2001年07月15日(日)


「その優しさを」

私にそれをください。
あなたのその
美しく素敵なところ。
うなじのあたりだと思います。
そう。そこ。


2001年07月14日(土)


「ひととき」
傍らで眠る
あなたに触れてみる。

あなたの髪を吸い込み
あなたの
肘から肩へ
腰から腹へ
指を滑らせ
抱き寄せる。

あなたは気付いているか?
私が感じている背中の痺れに。
あなたは気付いているか?
絞り出した吐息が
うなじを這って落ちるのに。

安らぎの支配する孤独はひととき。
そして私もあなたの世界へ。
一つになって転がるように。

あなたは気付いているか?
私は明日もあなたに触れる。


2001年07月13日(金)


「可愛らしさとは」

原っぱの
小さな窪みで
ちょっとおしゃべり。


2001年07月11日(水)


「全て透明」

目に見えぬものと
その中に潜む清らかさの
恐ろしいまでの霧散能力は
予測のつかない方向へ僕らを走らせ
そして時には殺すだろう。

手に入れたとは言っても
その手とは
やはり曖昧な
殻の中の透明なのだ。


2001年07月10日(火)


「ここから先はまだ」
私は笑うことで
それ以上あなたが入ってこないようにと
逃げ出す。


2001年07月09日(月)


「ひとごみ」

いかなる理由を持って
あなた方はここにいるのでしょう。
わたしは。


2001年07月07日(土)


「その破片を」
与えることが愛だなんて
言い切れるのは神様だけさ。

君は僕に
何をくれるの?


2001年07月06日(金)


「それは誰だって分かっていること」

あまりに不用意に
求めるべきじゃないよね。

傷つきたくはないんだ。


2001年07月04日(水)


「失望」

浅はかな言葉。
深慮に欠けた態度。
子供染みた激昂。
流し見るような当てつけ。
あからさまな不快感。

思わず目を閉じたくなるほど
悲しかった。


2001年07月03日(火)


「高く、広く」

穏やかな水面に
幾筋もの白い矢。
四角い森と交じり合う道。
息づく街は
遠目で見るほど規則正しい。

今、雲へと降りて行く。


2001年07月01日(日)


「ゆりかごに風」

音と共にまどろむ。
日陰はゆりかご。
そしてあなたには冷たい水を。

カーテンが揺れるのは心地よい。




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日記才人