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2008年05月24日(土) 一焚き十台 1/2



 とあるうららかな春日和昼近く、猫の額程の庭にたまった落ち葉と、夏に向けて切り落とした小枝を燃すために、雨水をためたポリタンク十リットルを二つ用意し、たき火をしていた。幾日か前の雨で葉が濡れていて、煙が少し多く、目に滲みて涙が出た。
やり始めて、十分くらいだろうか、遠くでウーウー・カンカンと消防車の音が聞こえる。寒くもないのに今時火事かと、ぼんやり聞いて居たら、なんだかずんずんその音が近づいてくる。暫く後、足下、奥の家(緩い傾斜地にあるため、我が家の庭の地面位置は大人が奥の家の庭に立てば、頭の位置)が喧しい。
塀のフェンス越しに隣を見たら、フル装備の消防士、何事かと聞いたら、この辺で家が燃えていると通報がありましたとの返事、狐につままれていると、お宅何か燃しているかと言うので、はい、落ち葉焚きしてますと言ったら、見せてくれと言う。いいですよと言い、火に水をかけ、玄関を開けようと表に出たら、玄関が既に全開になっていて、フル装備の全身銀衣装に、ボンベを背負い、粉の消化剤を粉霧する銃のようなものを構えて、火元はここかと言う。その顔真剣である。
 さっき中を見せてくれと言った消防士が来て、上がろうとしたが靴は耐火靴で容易に脱げないらしく、四つん這いで中に入り部屋を横切り、庭まで行進した。
庭に到着後、貧相な規模の焚き火に消防士絶句。何か言いたげだが、20リットルの水が焚き火の両脇を固めている。その焚き火も、玄関に出る時に消していたので、うっすら煙が漂って火のけなし。
で、消防士困って「ちゃんと消していいですか」。勿論、消防士だから消したきゃ消してくれといったら、ポリタンクの水を丁寧に焚き火にかけた。
 発端は、過去に、近所の訴へ好きの爺さんとのもめ事で、うちに相談しに来た事のあるノイローゼ気味のばあちゃんが、煙みて通報。二階から出火している、もし火が回ったら隣の爺さん(訴へ癖のある困った隣人)に何か言われると思ったらしく、よく確かめもせずに即座に通報したようだった。
これで一件落着と思ったが、甘かった。

 この後、家の居間は、大の男五六人にどかどかと陵辱され、三十分近く居て、この襖の向こうは何があるのかとか関係のない事を質問したりした。他人の家に興味津々であった。警察からも二名くらい来ていた。途中で引き返したらしいが最初消防車十台来こちらに向かっていると言っていた。
尋問?始まる。まるで犯罪者。自分ちで焚き火して犯罪者のように言われる世の中は変だ。
「そんなに火事は増えているのか?」
「いや減少している。ほとんどない。」
何だ、無いのか。

先の消防士が
「こんな町なかの家でたき火は危険です。」

え、町なか? 歩いて二分で山に行ける、ここを町中と認識しているのにびっくりした。

「焚き火して、もし軒に火が移ると大変ですから…」。

「その時は横にいるので事前に火を小さくするなり、消しますが。(軒に火が移りそうなのに、黙ってみてる馬鹿はいない)」

他の一人が、本部に連絡している言葉を聞いてあきれた。

「本人に悪気は無いようです」

悪気?悪気を持ってたき火する奴とはどういう輩か。
「たき火しません」誓約書を書けと言う、嫌だったから、とぼけて、最近コンピュータのし過ぎで、漢字忘れてしまって、書けないと言ったら、よっぽど暇なのか、人の良さそうな警察官、自分で書き始め、何しているのかと見てたら、この上をペンでなぞって下さいと言う。普通は後々のために書いたら駄目だが、大まじめな警察官のために三文判を押した。

もし…すれば」、そんな事を言い出すと、普通の家にある出刃包丁他、ライター、携帯ガスコンロ、全部「もし」の対象になる。
十年来やっていた,落ち葉を掃き集め焼くことで、初夏に向かって新緑の予感を、また秋が来た事を感じ、新年を迎える前の大晦日にはそれをすることで今年の縁切りをする。それが、「もし」という仮定で出来た法で全部断ち切られる。

もしも」には「備え」を考える事が真っ当だろう。この場合の正しい推理としては、消火用の水を用意することだ。それで事済むのに「危険なことはやらせないという法律(この場合、消防法)を作り住みにくくしてしまう。憲法九条じゃあるまいし?

消防士たまに燃えなきゃ即失業 

→2/2に続く。










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