目次|過去|未来
映画「アーサー王」を見た。こういう英雄譚は昔から好きでよく見ている。 アメリカの西部劇など、小さい頃からよく見ていて、大人になってから、過去いろいろ見た西部劇がかなり史実に忠実で、悪漢、主人公も実在したと知ってびっくりしたことがあった。 今回見た「アーサー王」はちょっと変わっていた。ありゃ、「七人の侍」です。 その「七人の侍」の監督 黒沢明は日本映画の代表視されてるが、黒沢映画はハリウッドスタイルの日本映画である。特に*ジョンフォードに影響を受けている。
アーサー王と言えば「聖剣伝説(エクスカリバー)」と「トリスタンとイゾルデ」が話を膨らませ面白くする。ところがエクスカリバーもトリスタンとイゾルデの恋愛話もなし。期待していたエクスカリバーのシーンなんて、火事場の泥棒野郎見たいにささっと持ってってしまう。 ローマがヨーロッパを席巻していた頃。今のイギリスも支配下にあった。帝国の運命でその力は徐々に弱まり、イギリスからも撤退をはじめる。撤退時のローマ人達を守り送り届ける仕事をアーサー達が引受ける…。詳しい物語は映画で見てもらうとして、で、アーサーを慕う円卓の騎士達、映画で見ると日本の武士と重なるが、実の所は、これはもう天と地ほどちがう。長々と違いを書き連ねるより一つの事でまったく異な物だと分かる、当時当たり前にあった挿話がある。
ある日の午後、野試合があった。日本ならば粛々と事が進み、一つの統制された下、試合が進んでいく事はまちがいない。 では、西洋の騎士達はどうしたか。戦って負けた相手から馬、甲冑、金品を奪い取って自分の物にする。剛胆な騎士は、戦利品を金に換えるための計算をさせるため、僧侶を雇って供としたりした。殺し合いが目的ではなかったが、死傷者は出る。野試合の後は負傷者が血まみれで呻いている、死骸は放ったらかしであった。*2本当の所は、趣味と実益を兼ねた悲惨な遊びの延長でしかなかったようだ。
円卓の騎士の一人トリスタン、ダンテの新曲にも出てくる、南フランスペリゴールの城主で騎士だったベルトラン・ド・ボルンという人も今に名を残しているが、ともに、トリスタンは、恋愛譚で、ベルトランは、文学に「吟遊詩人(トルバドール)」で名を残したからである。「騎士道」の士としてではなかった。 12世紀頃、「騎士道」としての儀式の肝心は、先輩騎士による「峰打ち」だった。その他、司祭の祝福、武具の通夜などあったようだか、「道」と呼べるような思想的のものはなかった。
*ジョンフォード 「西部劇の神様」職業:製作者、監督、俳優、脚本家、撮影監督、美術監督、編集者、スタントマン 代表作:『駅馬車』(39)『怒りの葡萄』(40) 他 太平洋戦線(海軍少佐)やヨーロッパ戦線で戦争ドキュメンタリー映画製作。ミッドウェイでは零(れい)戦の空爆を撮影中に負傷、野戦撮影班を率いて撮影したドキュメンタリー『ミッドウェイ海戦』(42)と『真珠湾攻撃』(43)はアカデミー短編ドキュメンタリー賞。戦後、戦争での敗者の美学を描いた『コレヒドール戦記』(45)、OK牧場の決闘を描いた『荒野の決闘』(46)を発表
*2「フランス中世史夜話」渡邊昌美
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