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2003年05月29日(木) 人倫無き戦い



 先日、久しぶりに年下の友人達と集まる事があった。彼等はいつも日本の事を憂いている。ただ憂いているだけではなくて、ちゃんと行動も伴っている。教科書を新しく作り直すという会の幹事をしている。
 その一人から、ビデオを何十本か進呈するという話があり、とてもそんな数のビデオは見る時間もないので、メールで映画名を一覧にしてもらった。
その中に、「スターリングラード」があった。これは、下の淡譚(5月05日)に書いた日独が同盟関係にあった時の、ソ連側の独ソ攻防戦中の話で、実在の人物で英雄に祭り上げられた、天才狙撃兵バシリの物語りである。これを含め、数本もらったのだけれど、ここでまた情け無い病気が出た? 読んだり見たりした本や映画のタイトルをほぼ完全に忘れてしまうことだ。

 今回も、戦記もの以外のもらった三本全部すでに見ていたものだった。多分題名がぼんやり頭の隅に残っているのに誘引されて、無意識に選んだにちがいない。もらって解説を読み、再生して数分で愕然としてしまうのである。
「スターリングラード」に戻る。
スターリングラードはボルガ川沿いにある都市で、ヒトラーは当時のスターリンの名を冠した都市を落とすことに威信をかけていた。独裁者と全体主義者の戦いで、映画と言えども、事実に基づいた展開は、本を読む以上にその時の兵隊の様やスターリンが主導する、共産主義の怖さが至るところに出てくる。
 
 最前線で、一人置きに銃を渡し偶数番目の兵隊は弾丸だけを握らされ、前の兵隊が倒れたらその銃を取り、突撃する。そんな突撃だから、ドイツの強力な重火器にかなうわけがない。ほぼ突撃兵の全部がやられそうになり、不利と見た兵隊は退却しようとする。
そうしたら、ソ連兵はソ連兵に向かって機銃掃射して、只でさえ貴重な兵を殺してしまうのである。敵前逃亡は、どこの国も軍規に反し軍法会議に後かけられるが、自国兵を片端から殺してしまうのは、過去支那の南京攻防戦で、日本軍から逃げる支那兵同士でそれがあった、それを見て、日本人兵士が驚いている記録が残っている。
 
 主人公バシリは、ドイツ軍の、狙撃兵の雄(メーニッヒ)と渡り合い、最期には勝つが、世話になっていた家の小さい息子や、友人が犠牲になる。ソ連の立場から描かれたものだけれど、この映画の優れた点は、いかに戦争が悲惨なものかという陳腐な事を言っているのではなくて、戦下に生きる人達、身近に死を見つめて生きる人達の「生」の輝きは、ある意味、平和下で、我欲の塊と化した人々より輝いているということがわかる仕掛けになっている事だ。
 
 総入れ歯のある老狙撃兵は、まだドイツ・ソ連が同盟国だった頃、ドイツに軍事留学を命じられ留学中に、ドイツの侵攻で状況が変わる。帰ってくるとスパイ扱いされ拷問を受け、前歯を全部折ってしまったと語る。そして「騙されるんじゃない、幸せを築く社会主義の紛れもない現実さ」と言いながらも飄々としている。バシリの友人で兵隊を高揚させるための新聞を書いている友人は、ドイツ文学に興味があり、ゲーテが好きなようだった。この友人も、ドイツ狙撃兵がどこにいるかバシリにわからせるために、犠牲になる。世話になっている家の、父のない子供は、敵兵と懇意になり情報を取ってくる。それはやがて発覚し、殺される。
こういう事は、どこの国の戦争下に置いても起こりうることである。ただ、共産主義やファシズムの下の戦争、すなわち道徳(人間性)を欠いた戦いというのは、人にとってまったく不毛なものだと言える。
 
 米国が一人の傷ついた兵士を助ける事に全力を尽くす事が、映画(プライベート・ライアンやブラックホークダウン他)などでいろいろ作るられるのも、戦っているのは日々地味に暮らし、事あって志願した人々、徴兵された人々が、基本となって国が成り立っているという事を示す(忘れない)ためでもある。イラクでの救出劇の映画化も同じである。

 自国の兵に自国の軍が武器を向けるような体制は、遠からず崩壊するだろう。では他(国人)ならいいのかということになるが、それが健全な精神だろう、ゆえに健全というのはいやなものだと、山本夏彦はいっている









2003年05月20日(火) 史上最低の横綱



 相撲が好きで毎日見ている。夢は枡席で、枡席の客についてくる、お楽しみ袋の中に入っている焼き鳥と、持参の銘酒でいっぱいやりながら、観戦することである。金さえ払えばできるぢぁないかと言いなさんな。
見る側にも格がいるのである。相撲は単なる格闘技ではない。背後に日本の歴史を背負っている。こちらも、自分に、それ相応にふさわしい容貌と迫力が出たと見たら直ちに実行する。若造に見えてしまう自分が枡席なぞ百年早い(と思っている)。
なにせ最近の高画質のテレビは、観客の顔の表情、立ち居振る舞いの全部が見えてしまうのである。
中にほれぼれする貫禄のある中年紳士初老紳士、あでやかな着物姿の夫人がいる、外国人がいる。
時には天皇が御観戦される。世界中探したってこういう興業はない。

 昨日もBSで太い方バージョン(なぜかBS1とBS2では、同じカメラだと思われるのに、片チャンネルは太めに、もう一方はほっそり写るのだ。だから綺麗なお姉さんがニュースを読み上げるときには、ほっそりバージョンで見てあげている)で、横綱朝青龍(あさしょうりゅう)と同郷の旭鷲山(きょくしゅうざん)との取り組みを見て非常に不愉快になった。
朝青龍がはたき込まれて旭鷲山が勝った、その直後の横綱の態度である。旭鷲山側の土俵にうつ伏せに倒れて起きあがり、自分の陣に帰るときに、旭鷲山と肩が触れた。
そしたら振り返って、怒りをあらわにし、町のちんぴらのように、眼を飛ばし睨み付け、さがりで旭鷲山をはたいた。まるで喧嘩である。ボクシングの試合には時々ある。相撲には絶えてなかった。
本当に不愉快であった。かって貴の花が満身創痍で、武蔵丸に勝ったとき、唯一「よし!」というすごい形相をしたのが印象に残るくらい、横綱が表情を露わにするのはめずらしく、又はしてはならないとされている。この場合は自分に対しての気合いであると、見ていて、武蔵丸に対して行ったものではないと誰の目にも明かであった。
 が、この度、負けた相手に目で威嚇するなぞ、もうそれだけで横綱失格である。本来、横綱は名誉職で、相撲取りの最高位は「大関」でお仕舞い。そこが終着点であった。それでもなを、心・技・体に優れた人を「横綱」としたのだ。外国の格闘技にみる、ただ強ければチャンピオンという訳にはいかなかった。
昨日の取り組み前にも、これまた同郷の力士を押し出した後、勝ちが明らかなのに、土俵下で突き飛ばすと言う行為に出て、後であやまったりしている。
 旭鷲山もかって、勝敗が決して土俵際で負け力士が力を抜いているのに、土俵下に突き飛ばしている行為を何度も見た。その旭鷲山が今は「人前でああいう行為はやっちゃいけないね」といっている。
この人は往年の力はすでにないが、相撲がわかっている立派な力士である。朝青龍の師匠が「人間的にまだまだ…」とテレビで言っているのを聞いて、始め謙遜で言っているのかと思っていたら、本当のことを言っていたのだと今になってわかった。
今までの横綱の中で、最も相応しくない横綱である。力士は、相撲学校に通い、基礎を勉強する。なぜ相撲学校で教えないのだろう。









2003年05月05日(月) 04月20日(日) 高貴について質問あり



 高校時代の同級生、今は徳島のA高専の先生をしている友人から四月二十日の文中の一箇所について質問メールがあった。問題の箇所は、
「敗戦の年一月に米国に「「降参する」」意思を文章で問うたが突き返され、その夏に原爆が落とされる、そして敗戦降伏の日を迎えた。」という所。
初耳だというわけである。コラムやエッセイは短ければそれに越したことは無いと思い、極力削って書いている。
細かい事共ははしょり大筋で書く、で、言葉が足りないところも出てくる。

 手元のコンピュータや本に、資料があるときは直ちに示せるけれど、無い場合は、記憶に頼って書いている。そこでいい機会だから、あっちこっち調べたけれど、元のねた本がわからない。しかし、ノートが出てきたのでやや詳しく書いておきます。

 敗戦の一月に、一度に事がなされたのではなく、続く、敗戦決定3ヶ月前にも、日ソ中立条約を結んでいるソ連を通じて米国に平和停戦、平和交渉を依頼している最中に 、米国は広島、長崎に原爆を落とした。
 それから数日後、ソ連は日ソ中立条約を破って、突如満州へ侵略した。ソ連がヒトラーに追いつめられて危ない時、ヒトラーは、ソ連を背後から衝くように日本に頼んだ。しかし日本は日ソ中立条約を守って攻めなかった。
 にもかかわらず、さらにソ連はΓポツダム宣言に違反して、日本人50数万人を俘虜として抑留した。抑留者(実際上の強制連行)に徹底した思想教育をほどこし、最後には「天皇島敵前上陸」まで「敢行」させた。
 長い人は10年にわたって奴隷労働を強制され、栄養失調その他による死亡者は7万人にもおよぶ。終戦時、蒋介石は在支那邦人軍人200万人もの日本人を無償で帰してくれたが、ソ連が侵略した満州が大混乱となり、残留孤児がたくさんできた。
 
以上の内容が以下の本のどれかに書かれていると思う。

「大東亜戦争はなぜ起こったか 」 中村粲 日本政策研究センター事業部
「大東亜戦争への道」 中村粲 展転社
「 真説・南京攻防戦 」  前川三郎 近代文藝社
「検証・従軍慰安婦■従軍慰安婦問題入門■」 上杉千年 全貌社
「明らかにされた神武以前 」 山本健造 福来出版
「日本起源の謎を解く」 山本健造
「パール博士の日本無罪論 」 田中正明 慧文社
「 南京事件の総括 」 田中正明 謙光社

友人Oは、淡譚をすべて、さかのぼって読んでくれているらしい。とても嬉しい。これからも忌憚なき疑問・意見をよせてください。












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