最近読んだ本 - 2014年06月19日(木) 「日本の路地を旅する」 上原善広著 文春文庫 日本全国の路地(被差別部落の事を上原氏はこう呼びます)を旅してその歴史と今を明らかにするルポルタージュ。路地の教室の上原氏の出世作で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞してます。兄への思いを重ねた「沖縄の路地」の章で語られるエイサーの歌詞の意味を知り、ちょっと震えました。 「差別と教育と私」 上原善広著 文藝春秋 教育に焦点を当ててて語られる路地をめぐる物語。同和教育の盛り上がりと衰退。そのなかで転換点になったいくつかの場面が描かれます。「八鹿高校事件」「広島の校長自死事件」など論争の多い場面も描かれます。相変わらず著者は冷静で中立的な記述を目指していますが「路地の教室」よりは熱いです。 同和教育は時代の流れの中で退潮していきますが、その精神や同和教育を担った人材は現在も人権教育としてさまざまな「しんどさ」を抱える子どもと向かい合ってもいるのは事実ではないかと思います。 「英国一家、日本を食べる」 マイケルブース著 亜紀書房 日本全国を食いまくりながら旅して歩くイギリス人一家の旅行記。日本の料理や食べ物屋文化って異国からそういう風に見えるのですか!っていうディスカバージャパン的な面白さがある。各地域の案内人が割と個性的。大阪の案内人のフレンドリーぶりがすごい!あと、すますまの収録風景を見学して、スマップの5人が筆者にどう評価されたかも興味深かったす。 「英国一家、ますます日本を食べる」マイケルブース著 亜紀書房 前著で収録しきれなかった文章をまとめた続編です。「味の素」潜入記大変面白かったです。また読み終わったと、城崎温泉に行きたくなりました。あと「ぬちまーす」の塩や香川の「かめびし屋」の醤油製品をアマゾンでポチしてしまいたい衝動を覚えました。あと和田金の農場で伊賀牛に焼酎ふきかけてマッサージするとかビールを飲ませているとか音楽聞かせているとか都市伝説と真実の境目を明らかにしてるところが面白かったです。 「雑文集」村上春樹著 新潮社 エッセイ集などに収録されてない、スピーチや短文を集めた文字通り「雑文集」。結婚式のスピーチとか文学賞の受賞スピーチとかなかなか味わいのある文章がいっぱい。しかしエルサレム文学賞の「卵と壁」のスピーチと思わぬところで再会しました。今でも読むと、やっぱりちょっと泣ける名文です。 「祖国と母国とフットボール」慎武宏著 朝日文庫 最後は世間がW杯で盛り上がってるので、ちょっとそれに関連してサッカー本。これは在日コリアンの青年たちのサッカー奮戦記。在日コリアンのサッカー青年たちが朝鮮高校や朝鮮大学校、朝鮮蹴球団などで幻の「日本で一番強い軍団」(でも公式戦には出場を許されない)と恐れられた時代から、公式戦に出場できるようになり、進路も日本のJリーグ、韓国のKリーグ、ヨーロッパのクラブチームへと多様化していく時代の移り変わりと、時代ごとに新しい局面を切り開いていく第1世代の若者たちの群像が描かれます。そしてサッカー界の頂点ともいうべき「代表チーム入り」も北朝鮮代表、韓国代表、日本代表といろいろな道を切り開こうとするとき若者が向かい合わねばならない、おまえは(あるいは自分は)どこの国の人間かというアイデンティティへの問い。作者は彼らの祖国は地上には実在しないボーダーを超えたネットワークの上に結ばれた「在日という国」を提示します。日本と韓国、日本と北朝鮮、韓国と北朝鮮いろいろなボーダーを乗り越え、あるいは間に立ち、2つの文化集団を媒介し双方に理解を促す顔の見える存在として日々を戦った在日コリアンフットボーラ―群像記になっています。 W杯を語るとき国境の中に納まる人々を想定して本質主義的ナショナリズムに陥った世界観が勢いを持ちますが、それだけではとらえらえられないボーダーを超えて生きる人々の姿がとても鮮やかに浮き上がる本です ...
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