あれは、夕食も終わった頃、
冷蔵庫の中にスイカと梨がある、そんな夜だった。

おかんがどっちがいい？と聞くので、
どっちでもいいよ、と答えたら、
おかんもどっちでもよかったらしく、
決定要因がなくなってしまったのである。

そこでふと思いついて、じゃんけんをすることにした。
おかんが勝てばスイカ、私が勝てば梨を食べる。

じゃんけんをするので、当然、構える。
それから当然、相手を厳しく見据える。
ぎらりと無意味に目が光り、
足はじりりと間合いをはかる。
なんで、と言われてもよくわからんが、
じゃんけんというのはそういうものなのだ。

いざ勝負！
じゃんけんぽんッ！！！
あいこでしょッ！！！
あいこでしょッ！！！
あいこでしょッ！！！
ぐわあーーーー！！！
おかんの勝ち！！

決まった……。
二人の動きは止まった。
三秒くらい。
あまりに激しい戦いだったために、
本来の目的を忘れていたのである。

五秒後、おかんが我にかえった。
「スイカやったっけ」


そんなうちのおかんは本日、
大好きなジェット・リーの新作映画、
「キッス・オブ・ザ・ドラゴン」を見てきた。
さっき奴が吐いたセリフはこうだ。

「おかあさんねー、
　映画館から歩いて帰ってくるとき、
　ジェット・リーやってん」

なんて手頃な。

まいど。たべぱんだです。
今日もよくたべてます。

小姐んちに泊まりに行ってお風呂に入ったら、
降り注ぐシャワーの中、腕に時計がついてた。
……。
いや、ため息をつくのはまだ早い。
ものは考えようなのだ。
これがもし首についていたら、それは間違いなく一大事だ。
でも腕時計が腕についてたなんて、当然のことじゃないか。
納得できる。すごくありえるシチュエーションだ。
がんばれ自分。
ガッツだ自分。
時計を戸のそばへ置く。

さて、お風呂上りに戸をあけたら、
スジャーーーッ
という音がした。
そういう戸なんだと勝手に納得していたら、
ガクチャッ
という音がした。
見ると、スライドさせた戸が腕時計をはさんでいる。
これこれ悟空、放しなさい。

ひろって文字盤をふくと、
時計は無邪気に一生懸命、かちかち針を動かしている。
まるでこう言っているようだった。
「めげてる暇なんかないぜ？
　なーんてよく、俺のじいさんが言ってたもんさ。
　さ、ぼくの顔をおたべ？（犠牲の精神）」

それから部屋に戻って小姐に話したところ、
彼女は軽やかな笑顔を浮かべ、こんな返事をしてくれた。
「またか」

時計を見下ろすと、
さっきとはうって変わって、惰性で針が動いてる。
こう言われているようだった。
「お前、ばかじゃねえの」

ばっかでーーーす。

開かないビンを握り締めると、
人は声を出す。
「んーーっ」とか、
「ああ〜〜！！」とか、
「うぬわあーーーっ！！」とかそれぞれである。

保健体育の教科書には、
声を出すと人間の筋力は、
瞬間的に通常よりもはるかに高くなる、
と、書いてあった。

今日処刑人はまさにそういうふうなことがあって、
なんか声を出した。

「ぬわぁ〜っ！
　むわぁ〜〜っ！
　くおぉ〜！」



なまこ？

あれは2000年09月26日火曜日の日記だった。
「聞き上手になりてえ」
と題をうった処刑人（当時ネル）は、
希望に燃えていた。

あれからもう、１０ヶ月。

昨日ウェブで見つけた心理テストは、
意外な真理をつきつけてきた。

「あなたはまったく聞き上手ではありません」

成仏させてください。

さぼったなあ。うん、実にさぼった。
こうして日記をさぼっていると、
実にすがすがしい爽快感がやってきて、
私を優しく包んで運んでいってくれるのです。
ですからやめられまひぇん。

さぼった言い訳。大阪帰ってた。
まあ、わりと良い理由なんじゃないかと思うんだよ。
ねっ？　どんなかんじ？
おばさんのノートでカキコしてたやんか、とか、
お前日記サイトのＩＤとパス覚えてるやんか、とか、
そういうことは、みんなもう大きいんだから、
いっちゃだめです。しっ！

そこで大阪ネタでつなぐ。

うちのじいさんち。
じいさんちは下町のぼろ屋の木の狭い家で、
ここに暮らす者は多様なサバイバル能力を要求される。
以下にその攻略法を記す。

最大の難関は風呂である。
ここの壁は、昭和の時代の質の悪い、
タチの悪いコンクリートが、
べた、と塗ってあるだけである。当然シャワー無し。
あまり壁の上のほうを濡らしたり、
強く手をついたりすると崩壊する。
そのために人類は、
湯が高くはねないように気をつけなくてはならない。

脱衣所となるのは、戦前からある木の戸で区切られた、
廊下からの入り口と、風呂場の入り口までの、
訳９０センチ四方の空間である。
棚があるのでさらに狭い。
ここで服を脱ぐのは実は簡単だが、
それから風呂に入るとき、人類は必ず頭をぶつける。
高さ１．２ｍほどの入り口をくぐる度胸が試され、
星が見える風呂として名が高い。
……わけあるか、あほか。

続いて、じいさんちの風呂場は何故か、
着る服とかバスタオルとか乾いたものを置いておくカゴが、
風呂場の中にある。
名探偵コナンもこの謎に挑んだが挫折した。
じいさんち最大の難関である。
ここを攻略できないレーサーに明日はない。

つまり入浴者は、
端に置いてある自分の服がぬれないように、
細心の注意を払う必要があり、
同時に高いところまでお湯がはねないように、
むちゃむちゃ注意を払う必要があり、
さらにうっかり覗かれないように窓を閉める必要がある。
全てが終わって風呂をあがるとき、
人類はほっと気が抜けて、再び頭をぶつける。

この技術指導が役立つ日は、
きっと永遠に来ないだろう。
君たちもはやく寝なさい。

ティム・バートン好きのさっかと
ティム・ロス好きのおかんで、
一緒に「猿の惑星」を見に行った。

帰り道。
ティム・ロス（猿）の真似がしたくなったので、
「うきゃーーっ　きゃっきゃっきゃ！！」
と言っておかんを脅した。
おかんは、ハッとした。
そんなに猿っぽかったかな、てへっｖ
とか思いきや。

おかんはこう言ったのだ。

「今のお前の顔……
　おかあさんの若い頃にそっくりやったわ！！」

あんた猿やったんか？

今日、おかんと一緒にビデオ返しに行ったんだよ。
そしたら途中で、
二人ともビデオ持ってないことに気付いたんだよ！

帰ってきて、おかんがフロに入るって言うんだよ。
「風呂はいるよーー。風呂はいりいーい」
とかまた、アホなこと言うから、
「ゆってんと、早よ入れや！」
って怒ったんだよ！
そしたら調子のりやがって、
「はいるよーー。風呂はいりんぐーー」
とか言いやがるんだよ！！
だから、言ってやったよ！！

「入浴心理学、フロハイリング」って！！

普通ってなんだよ！！

普通って言葉の意味を、
後世にしっかり伝えろよ！！

さてさて、処刑人は中学の頃、
ゲームのやりすぎで異様に目が悪くなった。
その時「空を見ると目にいい」と聞いてまんまと信じ、
可能な限りの全ての時間を空にささげてみたところ、
なんとも目がよくなった、という経験がある。

んで、また最近目が悪いので、
また空をみはじめてるってわけよ。
おわかりかな？

まずRPGを始めたら、
戦闘を自動化して音を聞きつつ空を見る。
歩いていたなら、空を見る。
とまってみたなら、空を見る。
呼吸してたら、空を見る。
どうしてこんなに、空を見る。
おなかが空いたら、スニッカーズ。
これであなたもマイクロ遠視ドカンってわけだ！

だいたいよく考えてもみろ、
空はこの世で一番遠くて広いんだぜ？
頭の上に宇宙が広がってるってえーのに、
フェンスとか道路とか電信柱とか、
そんなもん見てる暇はねえーーー！！

ごんっ。

痛かった。

みんな、前みよう。