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 死海文書の封印を解く―二千年の眠りから覚めたユダヤ・キリスト教の驚くべき真実/ベン・K.・ソロモン

『死海文書の封印を解く―二千年の眠りから覚めたユダヤ・キリスト教の驚くべき真実』/ベン・K・ソロモン (著), Ben K. Solomon (原著)
単行本(ソフトカバー): 204 p ; サイズ(cm): 17
出版社: 河出書房新社 ; ISBN: 4309501478 ; (1998/04)

内容(「BOOK」データベースより)
1947年、死海のほとりの洞窟で、キリスト教とユダヤ教の歴史を根底から揺さぶる古文書が発見された。その公開はなぜか遅れ、「バチカン陰謀説」が囁かれるなど、謎とスキャンダルに満ちた「死海文書」の真相に迫る。


2006年01月26日(木)
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 北風のうしろの国/ジョージ・マクドナルド

『北風のうしろの国』/ジョージ・マクドナルド (著), 中村 妙子 (翻訳)
文庫: 488 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 早川書房 ; ISBN: 4150203989 ; (2005/09/22)
内容紹介
「北風と一緒なら誰だって寒くなんかないのよ」─美しい女の姿をした北風の精は、ダイアモンド少年を幻想的な世界へと誘った。夜のロンドンの空へ、嵐の海上へ、そして北風のうしろの国へ・・・。その不思議な国から戻った少年は、想像力の翼を広げ、産業革命期の生活に疲れた人々に、優しさを取り戻させてゆく。C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンらによって開花した英国ファンタジイの、偉大なる先駆者による古典的名作。



以前に原書で読み始め、あまりに暗くて、寒くて、怖いので、途中でやめていたものだが、実はそうでもないのか・・・と思っていた矢先、やはりそうだったかという感じで読み終えた。

なぜなら、「北風のうしろの国」とは、死後の国のことだからだ。天国だか地獄だかわからないが、主人公の少年ダイアモンドが「見た」という話を信じれば、天国のようなところなのだろう。

そして、はっきりと書いてあるわけではないのだが、北風は「死神」と同義であるようなのだ。とすれば、ずいぶん前からダイアモンド少年は、死神に狙われていたことになる。

それにしても、夜中に巨大な女の人の顔が現れるなんて、それがどんなに美しかろうが、とても恐ろしい。まさにホラーだ!それでも、全く恐怖を感じず、北風を信じ、会うことを楽しみにしていたダイアモンド。結局死の国に連れて行かれるとも知らず、何の疑いも抱かず、純真で穢れのない少年のまま、とうとう「北風のうしろの国」に連れて行かれてしまうのだ。

私がダイアモンドだったら、「北風、騙したな!」と怒り狂うところだが、ダイアモンドは、そこに行けることに、むしろ喜びさえ感じていた。「死ぬ」などということは、かけらさえも思っていなかった。彼にとっては、生きることも死ぬことも、たいした違いはなく、何事にも恐怖など感じていなかったのだ。もっとも、天国のように楽しいところに行けるのなら、死ぬことも怖くないのかもしれないけれど。

これはファンタジーの古典で、剣や魔法といったものには一切関係がない。宗教的な側面もあり、「死」についての哲学的な物語とも言える。また、心の美しいダイアモンドに接する人々が、それに感化されて良い人間になっていくのも、少々教訓的ではあるが、自分もそんな人間になれたら、と素直に思えて感動的でもある。

2006年01月24日(火)
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 グールド魚類画帖/リチャード・フラナガン

『グールド魚類画帖』/リチャード・フラナガン (著), 渡辺 佐智江 (翻訳)
単行本: 414 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 白水社 ; ISBN: 4560027234 ; (2005/06/25)
出版社からのコメント
時代は19世紀、本書の主人公「ウィリアム・ビューロウ・グールド」はイギリスの救貧院で育ち、アメリカに渡って画家オーデュボンから絵を学ぶ。しかし偽造などの罪で、英植民地タスマニアのサラ島に流刑となる。科学者として認められたい島の外科医ランプリエールは、グールドの画才に目をつけ、生物調査として、彼に魚類画を描かせる。ある日、外科医は無惨な死を遂げる。グールドは殺害の罪に問われ、海水が満ちてくる残虐な獄に繋がれる。絞首刑の日を待つグールド……その衝撃的な最期とは?

歴史、伝記、メタフィクション、マジックリアリズム、ポストコロニアルなどの趣向を凝らした、変幻自在の万華鏡。奇怪な夢想と、驚きに満ちた世界が展開される。「大傑作」(『タイムズ』)、「『白鯨』の魚版」(『ニューヨーク・タイムズ』)、と世界で絶賛され、今年度、「最高」の呼び声も高い、タスマニアの気鋭による力作長編。4色魚類画12点収録。



えーと、これはピカレスク小説なんだろうか?グールドは、一応刑務所に入っている悪漢なわけだし・・・。ともあれ一言で言えば、残念ながら私の好みじゃない。一時、この本を購入しようかとも思ったが、買わなくて良かったというのが正直なところ。値段も高いし。

とはいえ、この本が高いのには理由がある。グールドの魚の絵はカラーだし、その絵が生きるように、紙質も良い。インクの色にも凝っている。しかし、原書の文章部分は6色で刷ってあるらしいが、日本語版はたったの2色だ。

グールドがいろいろな色の文字を書くことにこだわっていたとあるから、できれば再現してほしかったなと思う。たしかフランチェスカ・リア・ブロックの 『「少女神」第9号』 だって何色ものインクが使われていたし、不可能なことではない。

たしかに、リチャード・フラナガンの文章はすごいと思ったのだが、描かれた世界が暗くて、ジメジメしていて、不衛生で・・・(海のそばの刑務所が舞台だから)というのが手に取るようにわかるというのは、描写が素晴らしいということなんだろうが、そういう世界は、あまり好んで浸りたくないなという感じなので、深く入り込めなかった。というか、なるべく関わり合いにはなりたくなく、できれば避けて通りたい感じ。

フラナガンの文章は、「○○は、○○である」あるいは「○○が、○○である」という、「○○である」の部分が予測不能な場合があって、え?と思うことがたびたび。そこが面白いのだが、この人、かなりひねくれているのじゃないかしら?とも思える。

本のカバーに掲載されているフラナガンの写真を見ると、なるほど変な人だと思う。サルバトール・ダリを思わせる、特異な風貌だ。この顔(本物ではないだろう)なら、この文章も納得できる。主人公のグールドの性格も、フラナガンに似たりよったりなんだろうと思う。

グールドは実在の人物だが、両親が出会ったその日に、父親が腹上死し、それで身ごもった母親は、グールドを生んだあと、救貧院にグールドを預けたきり。恐らく間もなく死亡したと思われる。ウィリアム・ビューロウ・グールドも、本人が勝手につけた、でまかせの名前だ。

とにかく、そうした不幸な生い立ちと環境が(誰の愛も知らないといった状況)、彼の人生を悪へと導いていくわけだが、魚の絵に対する彼の目だけは、非常に純粋だ。悪口雑言が並ぶ文章の中で、こと魚のことに関しては、真摯に語るグールド。それがそのまま絵の中に生き生きと現れているのは確かだ。


ちょっと補足。

この小説は、「章ごとに一匹の魚をあて、その魚が描かれた経緯を語り、絵の本当のモデルを明らかにするという手法で小説を書くというアイデア」であると訳者あとがきに書いてあり、まさにそのとおりなのだが、ここに書かれている史実などはほぼ正確であるということだから、虚実ないまぜの荒唐無稽な小説だ。

グールドは、悲惨な環境下で教育を受けていないにも関わらず、たびたび歴史や哲学に言及し、おや、これは哲学書か?とも思わせるようなところが、なんとも奇妙な感じ。だいたい、おれが魚だったら・・・などというのは、もう哲学の部類だろう。

しかし、読んでいてだいたい理解していると思っていたのだが、最後の最後に書いてあるグールドのプロフィールを読んで、全くわからなくなった。これって、どういうこと?

注)プロフィールを読むことは、ネタバレの可能性があるので、 内容を知りたい方はこちらへ 。知りたくない方は、素通りしてください。

これから読みたいという人がいたら申し訳ないので、詳しくは書かないが、このプロフィールで、全くの理解不能に陥った。もう一度読み直す時間もないし、暗さと湿気と悪臭に満ちた内容を、再度読み直すのはしんどい。

昨日も、これは私の好みではないと書いたように、すごい小説だとは思うものの、また読みたいと思えるほど気持ちのいい小説ではないから。だが昨日は、一応可もなく不可もなくといった感じで書いておこうと思ったのだが、それではやはりこの小説について書いた意味がないような気がしたので、補足した。

ちなみに、作者のリチャード・フラナガンについてだが、カバーに掲載されている写真(絵?)とは全くの別人で、本人は「スキンヘッドに近く、がっしりとした体格で、スーツより作業着、カクテルグラスよりビールのパイントグラスが似合う印象の男」だそうな。サルバトール・ダリみたいな写真(絵?)は誰よ?

2006年01月20日(金)
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 魔の都の二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー1>/フリッツ・ライバー

『魔の都の二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー1>』/フリッツ・ライバー (著), 浅倉 久志 (翻訳)
文庫: 321 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 東京創元社 ; ISBN: 4488625088 ; 定訳版 版 1 巻 (2004/10/28)
カバーより
北国生まれの大男ファファードと南国生まれの小男グレイ・マウザー。本巻ではこの二人の英雄が、名高い古の首都ランクマーで運命的に出会い、まんまと<海賊結社>の上前をあねたものの妖術によって互いに愛する者を喪い、復讐に燃えて大殺陣を繰り広げる顛末までが語られている。もっとも優れたヒロイック・ファンタジーの連作にしてヒューゴー・ネビュラ両賞を受賞したシリーズ開幕編!

はしがき
別世界のこと、知らぬ同士が出会い、おたがいを結ぶ縁に気づくこと。

雪の女
女たちの氷の魔法と、両性のあいだの冷戦のこと。三人の勝気な女に取り囲まれた機略に富む若者の苦境を、父子の愛情、役者の美々しさ、愚者の雄々しさについての適切な意見と併せて物語る。

灰色の魔術
田舎道士と男女二人の弟子の間柄を叙した説話と、それに加えて、武器としての憎悪の用法に関する考察。また、いかにして鼠(マウス)が灰色の猫(グレイ・マウザー)になったかの唯一真正の説明も含む。

凶運の都ランクマー
ファファードとグレイ・マウザーの二度目にして決定的な出会い。終わりなき煙霧と盗賊組織の害毒のこと、愛し合う男女の酔態と虚栄のこと、十と四万すじの煙の都の迷路にまつわる驚異と恐怖のかずかず。


2006年01月17日(火)
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 ダ・ヴィンチ・コード(上・下)/ダン・ブラウン

『ダ・ヴィンチ・コード (上)』/ダン・ブラウン (著), 越前 敏弥 (翻訳)
単行本: 334 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4047914746 ; 上 巻 (2004/05/31)


『ダ・ヴィンチ・コード (下)』/ダン・ブラウン (著), 越前 敏弥 (翻訳)
単行本: 318 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4047914754 ; 下 巻 (2004/05/31)

Amazon.co.jp
ダン・ブラウンは本書『The Da Vinci Code』で、世界を舞台にした殺人ミステリーの醍醐味と、2000年に及ぶ西洋史から選り抜いた魅惑的な謎の数々とを組み合わせた、知的で明快なスリラーを見事に創造した。

閉館後の静寂に包まれたルーブル美術館で起きた殺人事件をきっかけに、明るみに出た不吉な筋書き。それは、キリストの時代以来、ある秘密結社により守られてきたベールをはがすものだった。殺人の被害者は、古くから連綿と続くその秘密結社の総長。彼は死の直前、不気味な暗号を犯行現場に残していた。その暗号を解くことができるのは、被害者の孫娘で著名な暗号解読者でもあるソフィー・ヌヴーと、高名な象徴学者のロバート・ラングドンのみ。ふたりは事件の容疑者となる一方で、ヌヴーの祖父の殺人事件のみならず、彼が守り続けてきた、古くから伝わる驚くべき秘密の謎をも調べ始める。警察当局と危険な競争者の追跡を間一髪ですり抜けながら、ヌヴーとラングドンは謎に導かれるまま、息つく間もなくフランスとイギリスを、そして歴史そのものを駆けめぐる。

前作『Angels and Demons』(邦題『天使と悪魔』)に続く本書は、ページを繰る手が止まらないスリラー作品に仕上がっていると同時に、西洋史の驚くべき解釈をも披露している。主人公のふたりは、モナリザの微笑みの意味から聖杯の秘密にいたるまで、西洋文化の大いなる謎をめぐる知的かつ魅力的な探索に乗り出す。ブラウンの解釈の真偽に難癖をつける向きもあるかもしれないが、その推測のなかにこそ、本書のおもしろさがあるのだ。思わず引き込まれる『The Da Vinci Code』は、豊かな思考の糧となる1冊だ。(Jeremy Pugh, Amazon.com)


<上巻>

これは評判に違わず面白い。というか、非常にテンポがいいので、淀みなく進む。テレビでダ・ヴィンチの特集をやっていたりして、すでになんとなく内容が見えているのが残念なのだが、ここに書かれているモチーフは、私には結構馴染みのあることなので、学術的なことや専門的なことが出てきても、特に引っかかるようなこともなく、読み進められる。

人間て、やっぱりこういう謎とか秘密が好きなんだよねと思う。特に史実と組み合わせて書かれていると、「え、ほんと!?」という気になる。ただし、内容を全く知らずに読んだら、例によって「神=宇宙人」という秘密だろうか?などと、違った方向に期待を抱いたかも。(^^;

ここに出てくるシオン修道会は、「アラブとイスラエル」の授業にも出てきた記憶があるのだが(一般にシオンはユダヤを意味する)、近藤先生は、ユダヤに関係があるとおっしゃったか、全く関係がないとおっしゃったか、すっかり忘れてしまっているのだが、ともあれ、ユダヤ人は勤勉で真面目な民族で、世に渦巻いている陰謀説などは、根も葉もない話だということだけは覚えている。

ちなみに、この『ダ・ヴィンチ・コード』に沿った「ダ・ヴィンチ・コード・ツアー」というのが人気だったそうだが、そこまで夢中にはなれないだろうなあ。私にとっては、特に真新しい謎じゃないし。といっても、謎は謎のままで、真実を知っているわけではない。また、この本の結末も知っているわけではないから、どういう結末になるのか、下巻も楽しみではある。

ダン・ブラウンの作品は、これを読む前に、新作『デセプション・ポイント』を読んでいる。こちらもそれなりに面白かったが(シドニー・シェルダンっぽかった)、『ダ・ヴィンチ・コード』ほどではなかった。やはり『ダ・ヴィンチ・コード』の、「謎解き」が人気の秘密かと。


<下巻>

下巻も一気に読めた。全く淀みなく一気に読める本は、エンターテインメントとはいえ、賞賛に値すると思う。久々に気持ち良く一気読みできた本で、そのことでまず、すがすがしい気分になれた。

キリスト教の聖杯をめぐる謎解きの話だが、謎を辿っていくうちに、アーサー王伝説や、ケルト神話のほうまで話が広がるのが面白い。こんなことを言うと怒られるかもしれないが、言ってみれば、私の好きな「トンデモ本」に近いのかもしれない。

キリスト教という世界の三大宗教のひとつをバックに、世界最大のベストセラー「聖書」についての疑惑や、ヴァチカンの陰謀、名画に隠された暗号などなど、謎や秘密好きにはたまらない題材だろう。謎に巻き込まれる主人公のラングドン教授は、ヒーローというわけでもなく、控えめなキャラだが、好感が持てる。

そういえば、マキャモンも聖書についての疑問をあげていた。キリストの生涯が書いてあるはずの聖書に、性に目覚めた頃のキリストのことが全く書かれていないのはなぜか?というものだ。だから、若い聖職者がそのような衝動を感じた時には、一体どうしたらよいのでしょうか、イエスさま!というわけだ。この本は、そんなことにもちょっと関連している。

事の真実はともかく、作者はこのあたりの事情をよく調べてあるし、何度もドンデン返しがあって、ともすれば退屈になりがちな学術的な描写でも、読者の好奇心が勝って、ミステリとして全く飽きさせない作りになっている。

ただひとつ真実を知りたくて先を読み急ぐのだが、その結末は・・・。ううむ、個人的にはちょっと欲求不満。

ちなみに、フリーメイソンはユダヤの秘密結社のように扱われているが、あれは実際、単なるその土地の名士が集まるライオンズクラブとかロータリークラブのようなものだそうで、もちろんユダヤ人の会員もいるが、陰謀などとは全く関係ないということを、「アラブとイスラエル」の授業で聞いた。


2006年01月16日(月)
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 オリヴィア・ジュールズ―彼女のたくましすぎる想像力/ヘレン・フィールディング

『オリヴィア・ジュールズ―彼女のたくましすぎる想像力』/ヘレン・フィールディング (著), Helen Fielding (原著), 池田 真紀子 (翻訳)
単行本: 457 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: ソニーマガジンズ ; ISBN: 4789725243 ; (2005/04)
出版社 / 著者からの内容紹介
『ブリジット・ジョーンズの日記』ヘレン・フィールディング最新作。世界中が待っていた次なる主人公!オリヴィア・ジュールズ─職業、フリーランスの記者、好きなものはプラダとD&Gとティファニー。きれいに整えられたホテルのベッドもハンサムな男性も大好きだが、硬派なジャーナリストを目指している。オリヴィア流<生きるためのルール>その1はパニックに陥らないこと。しかし、たくましすぎる想像力のせいで、つぎからつぎへと事件に巻き込まれ……。マイアミからアラビアの砂漠まで、オリヴィアの暴走はとまらない!



ヘレン・フィールディングの 『オリヴィア・ジュールズ─彼女のたくましすぎる想像力』 を読書中。例の、一昔前の歌舞伎町のホステス風の表紙のやつだ。

『ブリジット・ジョーンズの日記』は大好きだったので(ブリジットがとてもかわいいから)、表紙はともかく、今回の作品にも期待していたのだが、どうかな、これ?ほんとに想像力がたくましすぎる・・・というか、有り得ない?

まだ途中なのではっきりとは言えないけれど、ニューヨークの同時多発テロを引き合いに出し、マイアミで出会った気になる男が、ウサマ・ビン・ラディンに似ているなんて設定、ちょっとどうなんでしょう?という感じで、胡散臭く思いながら読んでいる。



『ブリジット・ジョーンズの日記』 が大ヒットしたおかげで「BJ系」の本が星の数ほど出たせいか、本家本元のヘレン・フィールディングの「BJ系」の本は、今や特別でも何でもなくなってしまったようだ。

この本は、全体として言えば「BJ系」の話にサスペンスとコメディをプラスして、有り得ないような設定で無理矢理ドタバタにしているといった感じ。「BJ」の時のような、女性のかわいらしさとか、恋愛の切なさとかといったものは全然ない。

主人公のオリヴィア・ジュールズ(フリーのライター)のたくましすぎる想像力のおかげで、国際的テロ組織に関わり、なんとMI6(007ジェームス・ボンドが所属している組織)のスパイにまでなってしまうという荒唐無稽な話。有り得ない!そんなことがもし本当にあったとしたら、イギリスのMI6とは、とんでもなくヘボなスパイ組織だ。

そういえば・・・と思い出したのが、フィールディングが「BJ」の前に出した処女作 『セレブリティを追っかけろ!』 。これも、あれ?という内容だった。結局「BJ」の成功は、下敷きにした『Pride and Prejudice』が優れていたと言うべきか?

ともあれ、これは気楽に読むエンターテインメント。エンターテインメントに徹してます!といった感じの小説。あまり真剣に考えるような類の本ではない。「BJ」のような小説を期待していたわけではないが、個人的には、この主人公オリヴィア・ジュールズは非常に「BJ」的ではあるけれど、ブリジット・ジョーンズほど魅力的ではなかった。

でも、もうそろそろ「BJ」のイメージから脱皮してもいいんじゃないかとも思う。作家にとっては、とても難しいことかもしれないけれど。「BJ」のような作品を書いて欲しいと言われるのかもしれないし。なんだか、読んでいて気の毒にも思えてしまった。

2006年01月12日(木)
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 ベアトリス・ベイリーの冒険 ドラゴンと冬の森/サンドラ・フォレスター

『ベアトリス・ベイリーの冒険 ドラゴンと冬の森 ベアトリスシリーズ』/サンドラ・フォレスター (著), 篠原 レイコ (翻訳)
単行本: 256 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: ソフトバンククリエイティブ ; ISBN: 4797331534 ; 1 巻 (2005/09/29)
出版社からのコメント
人間界に住むやせっぽちで赤毛の女の子、ベアトリス・ベイリー。ちょっとした天気をあやつる魔法しか使えない未熟な魔法使いだけど、おとうさんやおかあさん、それに猫のトンガラシと楽しく暮らしている。そんなベアトリスも今日で12歳。仲のいい友達や家族と一緒に誕生日を祝っていたところ、とつぜんやってきた魔法使い審議会の理事長から、とんでもない試練を言い渡されてしまった。

かつて魔法界で繁栄していたベイリウィック王国を邪悪な魔法で封じ込めたダリー・ランプの魔法を打ち消し、とらわれている善き魔術師ブロムウイッチと4人の姫を解放しろというのだ。ブロムウィッチはベアトリスの祖先で、ベイリー家に伝わる魔法の歴史書によれば、彼らを助けることができるのはベアトリスただ一人。そしてベアトリスと仲間3人+1匹の冒険が始まった!



たぶん原書はとても楽しいのではないかと思えるが、やはり日本語が幼い。幼いというのは、訳が間違っているとかいうことではなく、表現が幼いというべきか?

もともと魔法使いである女の子の冒険ものだが、刃傷沙汰があるわけでもなく、あくまでも魔法で解決するところが、他の剣と魔法ものとはちょっと違うところで、だからこそ小さな子にも読めるように、表現を幼くしたのだろうと思うのだが、逆にそこが残念なところ。だから、原書で読んだほうが、自分なりの言葉で入ってくるのでは?と思う。

「ハリー・ポッター」には内容的には全然似ていないが、全体としてかなり意識しているのではないかと思える。




2006年01月10日(火)
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 青の聖騎士伝説〈2〉LAMENTATION OF THE EVIL SORCERER/深沢 美潮

『青の聖騎士伝説〈2〉LAMENTATION OF THE EVIL SORCERER』/深沢 美潮 (著)
単行本: 252 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: メディアワークス ; ISBN: 4840231982 ; 2 巻 (2005/09)
出版社より
深沢美潮が描く、伝説の「青の聖騎士」クレイ・ジュダ・アンダーソンの冒険譚、第二弾。伝説の名剣シド──そのシドの剣が鍛えられた背景には、魔法戦士シド・ダージェンと魔道士グラシェラの物語があった。すべての歯車が今、シドの剣とグラシェラ、そしてクレイ・ジュダを結びつけようと動き出す──。魔法使いサヴァランの若き日を描く、書きおろし作品<サヴァランの章>も収録。『新フォーチュン・クエスト』『デュアン・サーク』シリーズともリンクする、深沢美潮のハイファンタジー・ワールド!



特に子供向けではないはずだが、読んでみると内容はエミリー・ロッダの<ローワン>シリーズ程度のもの。幼い。挿絵もマンガだし、重みがない。作者が日本人だからというより、「これはゲームか!」という感じで、本という感じがしなかった。

クレイ・ジュダというヒーローが、シドという伝説の剣を探しに行くのだが、それがあまりにもあっけなく手に入ってしまうのにがっかり。結局それを持って、モンスターを倒していくという話で、それがゲームのステージ1、ステージ2みたいな感じ。「ファイターレベル16」なんていう記述も、ゲームならではの感じがして、どうもね。あんまり中身がない話だった。

それと、問題なのがやはり日本語。「っ!」「ったく!ぁにやってんだよ!」なんてのは、話し言葉として「あり」なんだろうが、文字として読むのは辛いし、そこですっかり嫌になってしまう。それにしても、2冊もよく読んだものだと我ながら感心してしまう。

2006年01月09日(月)
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 青の聖騎士伝説―LEGEND OF THE BLUE PALADIN/深沢 美潮

『青の聖騎士伝説―LEGEND OF THE BLUE PALADIN』/深沢 美潮 (著)
単行本: 193 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: メディアワークス ; ISBN: 4840220433 ; (2002/02)
内容(「MARC」データベースより)
月光を照り返す、冷たい光。見たこともない文様が刻みこまれた柄。もしや、これが…シドの剣なのか? 「フォーチュン・クエスト」「デュアン・サーク」に続く、もうひとつの冒険譚。



2006年01月08日(日)
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 城塞(ザ・キープ) (上・下) /F・ポール・ウィルソン

『城塞(ザ・キープ) (上) 』/F・ポール・ウィルソン (著), 広瀬 順弘
文庫: 290 p ; サイズ(cm): 15
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4042592015 ; 上 巻 (1984/07)
カバーより
1941年、ドイツ軍の一部隊が、トランシルヴァニア山脈を縫う山道脇の、小さな城塞に駐屯した。前方は峡谷、広報は弾劾の天然の要害だった。変わっているのは、城塞の所有者は不明ながら、毎年維持費がスイスの銀行から送られてきていることと、城内至る所に、奇妙な形の十字架があることだった。異変は駐屯2日目に起きた。壁石を動かした兵士が、首を引きちぎられた死体となって発見されたのだ。そして、完全な密室の中で、もう一人の兵士が喉を引き裂かれて死んでいた。パルチザンの仕業か、それともこの城には何者かが棲みついているのか?やがて創造を絶するかたちで、第三の殺人が発生した・・・。

『城塞(ザ・キープ) (下)』/F・ポール・ウィルソン (著), 広瀬 順弘
文庫: 310 p ; サイズ(cm): 15
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4042592023 ; 下 巻 (1984/07)
カバーより
最初の兵士の死から一週間あまり。ナチスが拉致したユダヤ人学者クーザとその娘、マグダの力によって、城塞の謎は徐々に解明されつつあった。二人は一夜、不思議なものを見たのだ。それこそまさしく、この城塞の主にちがいなかった。だがその姿はあまりにおぞましかった・・・。そして今、グレンと名乗る、正体不明の男が現れた。城塞について詳細な知識を持つこの男は何者なのか?男に次第に惹かれはじめたマグダは、ある日、男の部屋で不思議な物を見た。だがそれが、城塞の秘密を解く重要な鍵であることは知る由もなかった・・・。吸血鬼伝説が息づくルーマニアの古城を舞台に、斬新な手法で描く恐怖小説の傑作。

※画像は原書 『The Keep』



昨年末から楽しみにしていた、F.P.ウィルソンの<ナイトワールド>シリーズ1作目、『城塞(ザ・キープ)』を読み始め、スローペースだが、とりあえず上巻を読み終えた。これは、私の大好きな(?)吸血鬼もの。

予定では、今頃ステファニー・メイヤーの『トワイライト』(これも吸血鬼)を読んでいるはずなのだが、11月に図書館に予約した時、4番目ですと言われたのに、今もって、まだ4番目のままらしい。なぜ?

たまたまコンピュータ操作が下手なおじさんだったため、それ以上聞くのは無理だったのだが、そろそろ2ヶ月になるというのに、なぜずっと4番目のままなのか、依然として不明。

というわけで、ウィルソンのほうを読んでいるわけだが、<始末屋ジャック>のシリーズもそうだったが、ウィルソンはシリーズの出だしがあまり上手くない。シリーズ全体はそこそこ面白いのだが、どのシリーズも1作目は説明が多くて、うんざりな部分がある。

この作品でも、あらすじも何も知らなければいいのだろうが、吸血鬼ものであるということを知っているだけに、上巻の終わりごろになって、やっと吸血鬼らしきものが出てきたので、待ちきれなくて息切れしそうだ。

だいたい、重要人物のドイツ軍の大尉が、絵を描くのが趣味で・・・なんて、なんか意味があるわけ?と思う。「この景色は水彩ではなく油絵だ」とか、どうでもいいや、そんなこと!早く吸血鬼を出せ!という感じ。

で、やっと出てきた吸血鬼らしきもの(まだ吸血鬼と断言されていない)は、あの吸血鬼の祖ブラド・ツェペシュ(串刺し)候のお友だちらしい。これが出てくるまで、まさかこれも<始末屋ジャック>に出てきた化け物「ラコシ」じゃないだろうな・・・と嫌な予感がしていたのだが、どうやら「ラコシ」ではないみたいなので、とりあえずほっとした。

でも何となく、ただの吸血鬼ものではないという感じもしている。ということは、のちにこのシリーズにもジャックが出てくるところから考えても、何か「異界」に繋がりがあって、やっぱり「ラコシ」が出てくるんじゃないか?と。。。

しつこい化け物は、物によっては嫌いではない(「エイリアン」とか)のだが、ラコシには魅力を感じていないので、またラコシが出てきたら嫌だ。うんざりだなあ。知能もあまり高くないみたいだし、ジャックひとりにやられてしまう程度の化け物だし。

でも、私はなんで吸血鬼が好きになったのかな?「吸血鬼」が好きなわけじゃなくて、「吸血鬼もの」が好きなのだが。ブラム・ストーカーの 『吸血鬼ドラキュラ』 と、マキャモンの 『奴らは渇いている』 のおかげかな?それと、キム・ニューマンの「ドラキュラ」の続編(『ドラキュラ紀元』『ドラキュラ戦記』『ドラキュラ崩御』・・・どれも絶版だなんて、絶句!)も忘れてはいけないだろう。

人間て、根本的に怖いものが好きらしい。怖いものは苦手という人も、実は自分で気が付かずにいるだけで、本当は好きかも。でも「ドラキュラ」などは、まず身近にいないという前提があるから、わくわくして読めるのだが、稲川淳二の怪談なんかは、自分の経験範囲内でリアルに想像できてしまうので、より怖い。というか、全然聞けない。聞いたらもう、トイレに行けなくなる。<意気地なし。。。(--;


だいたい下巻は一気にいくのだが、これもその例に漏れず。内容はホラーのはずなんだけど、だんだん「剣と魔法のファンタジー」みたいになってきて、最後は結局ロマンス?え?という感じだった。それはそれで、それなりに面白かったけど。(^^;

で、問題の吸血鬼だが、ブラド・ツェペシュのお友だちではなく、今の人類以前の古の時代から生きている悪(混沌)の存在で、ブラドをたぶらかして、串刺しの刑とかをやらせていたという話。なーんだ!

ここに出てくる吸血鬼というのは、もちろん人間の血も吸うのだが、それよりも、人間の悪の心や精神、恐怖や憎悪などを主として栄養分としているらしい。そういったものは実体として見えないので、昔の人たちは、血を吸われるということのみを伝説として残してきたというわけだ。

ちなみに、ブラドのお父さんがブラド・ドラキュル(竜王)と呼ばれ、その息子のブラドが、ブラド・ドラキュラ(竜の息子)と呼ばれた。その彼が「串刺しの刑」を好んで使ったので、「ドラキュラ=吸血鬼」となったらしい。ツェペシュ(テペシ)は、「串刺し」という意味のあだ名。

これをやっつけるのが、その吸血鬼と同じ時代から何千年も宿敵としていき続けてきたグレーケンという善の存在。当の吸血鬼を倒せるのは、グレーケンよりもはるか昔に作られた、ルーン文字の剣のみ。グレーケンはその使い手として、何千年の時を生きてきたのだ。いわば、時代を超えたヴァン・ヘルシングといったところか?

というわけで、このあたりから、にわかにファンタジーめいてくる。善と悪、魔法の剣、人類よりも昔に栄えた別の古代文明・・・。個人的には全然嫌いじゃないし、ナチス相手の人道無比な話より、こっちのほうがいいと思うくらい。逆に言えば、こういう展開で良かったとさえ思う。

最後には、吸血鬼と一騎打ちをして勝ったグレーケンと、ユダヤ人の娘の恋愛が実るところで終わるのだが、いろいろ疑問は残るものの、まあ良かったんじゃないかと。(^^;

2006年01月07日(土)
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