読書の日記 --- READING DIARY
 ⇒読書日記BLOGへ
  schazzie @ SCHAZZIE CLUB



 ドラゴンランス セカンドジェネレーション(上・下)/マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン

『ドラゴンランス セカンドジェネレーション(上巻)』/マーガレット・ワイス (著), トレイシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 414 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: エンターブレイン ; ISBN: 4757714289 ; 上 巻 (2003/04/25)
月刊アスキー(第312号)
ドラゴンランス全6巻で語られた「竜槍戦争」(以下本編)から20年後の物語が中編で描かれている。本編続編「〜伝説」のネタバレ的な記述も含まれているのだが、読もうか読むまいか、という逡巡を完全に吹き飛ばしてくれる、驚愕の事実が冒頭に! 「ンなバカなー!」と天を仰ぎたくなること請け合い。(2003年6月号)


『ドラゴンランス セカンドジェネレーション(下巻)』/マーガレット・ワイス (著), トレイシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 340 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: エンターブレイン ; ISBN: 4757715161 ; 下 巻 (2003/07/23)
内容(「MARC」データベースより)
謎と興奮に満ちた壮大な剣と魔法のファンタジー。下巻には、若き日のレイストリンを描いた短編、タニス親子とダラマールを巻き込んだエルフ王国の闘争を描く中編、資料ほか、今後刊行予定の「夏の炎の竜」第一部を収録。


(1)キティアラの息子
現役を引退したキャラモンを、ある夜、謎の女が訪れる。彼女が語る驚愕の事実に、キャラモンはタニスをともなってドラゴンに乗るが、その行く先で彼らが目にしたのは悪神<暗黒の女王>の新たなる巨大要塞だった。そしてそこで出会った青年の面影はあまりにも<彼>に似ていた─。

(2)受け継ぎしもの
キャラモンの末息子パリンには、愛する両親に秘めた思い─叔父である大魔法使いレイストリンへの憧れ─があった。白・赤・黒の魔術師の総帥達を巻き込んで、明らかになるレイストリンの新たなる邪悪な野望、そして戦乱の予感─そのとき、パリンは?

(3)賭けるか?
世界創世記に神レオルクスによって鍛えられた<灰宝石(グレイジェム)>。<善>をも<悪>をも超えた<混沌>から強大な力を引き出されたその石の謎にキャラモンの3人の息子が挑むが、新たに仲間となった奇妙なドワーフのおかげで事態はとんでもない展開に─。

(4)レイストリンの娘
<大審問>を経て魔術師となった直後の若き日のレイストリンと兄キャラモンは、たまたま止まった宿で奇妙な客と出会う。その素顔を見た後、レイストリンは恐怖といらだちにかられ、猛吹雪の中にひとり飛び出すが・・・新シリーズへつながる驚愕の事実が、いまこそ明らかに!

(5)わが子のために
邪悪な女神<暗黒の女王>につかえる“黒ローブの魔術師”の総帥ダラマール。ある日、彼の元へ、善の体現者であるはずのエルフ王国の指導者たちが訪れる。彼らがダラマールにもちかけた相談とは?そしてその策謀の渦中で葛藤するタニスとその病弱な息子ギルサス─彼らの、そしてエルフたちの運命は?

(6)特別付録『ドラゴンランス 夏の炎の竜』より第一部を収録。また、ヒューマの歌の楽譜、TRPG『ドラゴンランス』用資料「タキシス騎士団〜暗黒の戦士たち」を特別掲載。


この2冊は(というか1冊にまとめたっていいんじゃないの?)、「ドラゴンランス」の登場人物にまつわるエピソードを集めた中編集という感じ。まとまったひとつの話ではない。だが、キティアラの息子とか、レイストリンの娘といった話も出てきて、え!と思わされることは間違いない。

ではキティアラの息子の父親は?・・・まさかタニス?タニスだったらがっかりだなあと思っていたが、男女間のことでも歴戦の強者であるキティアラのことだから、父親候補は数え切れないほどいるはず。しかし、ここには驚愕の事実が。父親は、あの高潔で勇敢な騎士スターム・ブライトブレイドだったのだ。スターム、若き日の過ち。けれども、息子スティールは、スタームの精神を受け継いでいながらも、暗黒の女王の側についてしまったのだ。

またレイストリンの娘は、この世から忘れられた存在であるイルダ族の娘とレイストリンの間にできた子とされる。二人は「ヴァリン」という魔法の絆で、会ったその瞬間からそうなることが運命づけられる。だがその後、母親はレイストリンの目の前から消え去る。彼女は赤ん坊を産んだときに亡くなり、産まれた娘はイルダ族の男が連れ去った。

さらに、タニスとローラナの息子ギルサス(弱々しくて、とてもタニスの息子とは思えない)と、エルフ族の陰謀の話や、キャラモンの息子たちとドワーフのダウガン・レッドハンマー(実はレオルクス)の<灰宝石>を取り戻す話など、タイトル通り「ドラゴンランス」の主要登場人物の子どもたちの話がメインである。子どもたちの話だから、その父親や母親のようなわけにはいかず、まだまだ幼さが感じられるものばかり。これが新シリーズにつながる伏線だとすれば、なるほどと思える。

2005年04月29日(金)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 The Amulet of Samarkand (Bartimaeus Trilogy, 1)/Jonathan Stroud

『The Amulet of Samarkand (Bartimaeus Trilogy, 1)』/Jonathan Stroud (著)
ペーパーバック: 464 p ; 出版社: Disney Pr (Juv Pap) ; ISBN: 0786852550 ; Reprint 版 (2004/05/22)
Amazon.co.jp
ナサニエル少年は魔術師の卵。5歳のとき、実の両親によって政府に売り飛ばされ、ある師匠の下に弟子入りさせられた。有力な魔術師たちがイギリスとその領土を支配し、ナサニエルは、彼自身が、ある「崇高なる運命」のための「最高のいけにえ」なのだ、と教えられている。両親と別れ、過去の暮らしを捨てるのはまだ我慢できるとしても、国家保安省の役人でもある師匠アーサー・アンダーウッドは、非情で残忍で恩着せがましい中流の魔術師だ。ナサニエルの唯一の救いは、師匠の夫人マーサ・アンダーウッド。夫人はナサニエルに心からの愛情を示し、彼もひたむきな献身でそれに報いている。何年ものあいだ、アンダーウッド家でどうにかうまくやってきたナサニエルだが、12歳を目前にした夏、すべてが一変する。冷酷な魔術師サイモン・ラヴレースに人前で恥をかかされ、おまけに師匠にも裏切られてしまう――臆病者のアンダーウッドは自分の弟子をかばおうともしないのだ。

復讐を誓うナサニエル。全知全能を望んで悪魔に魂を売り渡したファウストを思わせる熱意で、魔術の教本をむさぼり読みひたすら腕を磨きながら、一方では努めて従順な弟子を装う。強力なサマルカンドのお守り(アミュレット)をラヴレースから盗んで恨みを晴らそうと、力を振り絞って、よわい5000歳の妖霊バーティミアスを呼び出すとき、少年魔術師ナサニエルは、自らの想像を絶するほど危険きわまりない状況に身を投じてしまう――。

このすばらしい小説『The Amulet of Samarkand』(邦題『バーティミアス〜サマルカンドの秘宝』)は、イギリスの作家ジョナサン・ストラウドの「バーティミアス3部作」の1作目にあたるもので、バーティミアスの1人称の視点とナサニエルをめぐる3人称の語りを交互に繰り返すかたちでストーリーが進んでいく。このバーティミアスが傑作で、はじけるウィットで大いに笑わせてくれる。本文に収まりきれず脚注にまであふれ出した彼の辛辣で不遜な独白も、まともな読者なら決して読み飛ばしはしないだろう。おしゃれでサスペンスたっぷりの、じつに良くできたすこぶる愉快な1冊。続きを読むのがきっと待ち遠しくなる。


Amazonのレビューには、すごく面白いとあるけれど、私は好きじゃなかった。とにかく終わり方が気にいらない。

私はよくロバート・R・マキャモンの作品を読んで、「マキャモンてほんとにいい人なんだなあ」と書いているが、「バーティミアス」の場合はその反対で、「この作家の性格って、もしかして悪い?」と思ってしまった。

話の内容は、まぎれもなく善と悪の戦いと言ってもいいと思うのだが、完璧に勧善懲悪というわけでもないし、主人公のナサニエルなどまだ12歳のくせに、誰に言われたわけでもなく、役人におべっかを使うなんてのは、ちょっといただけない。

そりゃ、大魔法使いをやっつけたことを自慢したい気持ちもわからないわけじゃないが、それをやっちゃうところが子どもだなと。もちろん、そもそも子どもの話ではあるんだけど、「指輪」や「ドラゴンランス」に比べると、やっぱり幼い感じ。あとは、ドタバタも好きじゃないから、全体の雰囲気も気にいらなかった。

主人公のナサニエルと書いたが、ナサニエルに召喚されたジンであるバーティミアスも主人公だ。この二人(というか何と言うか)の話が交互に語られている。舞台は現代のロンドンだが、魔術師が社会を支配しているという設定。

バーティミアスのユーモアも、いかにもイギリスだなあという感じ。ほら、ここは笑うところですよ、とご丁寧にも教えているような、そんなわざとらしさを感じる。それに、注釈をあんなにたくさん書くなんて、もともとの文章の組み立てが悪いんじゃないの?という感じだ。<これって、「文学刑事サーズデイ・ネクスト」にも言えるのだが、あちらはまだその効果が有効だと感じる。いかにもイギリスというのは同じだが。

というわけで、長々とかかって読了したはいいけど、個人的には面白くなかった。


2005年04月28日(木)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ドラゴンランス伝説〈6〉<奈落>の双子/マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン

『ドラゴンランス伝説〈6〉<奈落>の双子』/マーガレット・ワイス (著), トレイシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 272 p ; サイズ(cm): 22
出版社: エンターブレイン ; ISBN: 4757721374 ; 6 巻 (2005/01/28)
内容(「BOOK」データベースより)
〈奈落〉でついに暗黒の女王と対峙したレイストリン。一方、パランサスの攻防戦のまっただなかへ、キャラモンとタッスルが帰りつく。タニスと再会した2人は、キティアラ軍団に苦戦を強いられたソラムニア騎士団を残し、浮揚城塞で、(上位魔法の塔)をめざす。レイストリンの帰還が目前に迫っていたのだ。すでに〈塔〉では、レイストリンを迎えるためにやってきたキティアラとダラマールが壮絶な死闘をくり広げていた…。双子の愛をみごとに描きぬいて大団円を迎える〈ドラゴンランス〉シリーズ、感動の完結篇。


<竜槍戦争>以来、息を潜めて機を狙っていたキティアラが、とうとう動き出した。死の騎士ソス卿の軍勢を伴い、パランサスを襲う。黒ローブの魔術師ダラマールの助けを借り、それを迎え撃つつもりでいたタニスは、キャラモンとともに上位魔法の塔に向かうのだが、そこでレイストリンと結託しようとしていたキティアラの死に出会うことになる。

ダラマールとの戦いで、致命傷を負ったキティアラは、愛していると言いながらもタニスを殺そうとする。昔の愛人の死を目の前にして、タニスの心は動揺するが、読んでいるほうは、キティアラなどに関わりをもたないでほしいと思いつつ、ハラハラしながら読んでいる。

ついにキティアラが絶命した時には、安堵にも似た気持ちがわいてきた。キティアラには魅力があるのだろうが、高潔なはずのタニスが、なぜこんな邪悪な女に惹かれてしまったのかと、そこに人間のまたは男の弱さを見た気がする。二人の間には、実のところ真の愛など存在しておらず、単に欲だけしかなかったのだから。

さて、<奈落>に入り込んだレイストリンだが、ここまで読んでも、彼の本当の野望とは何なのか?どうもはっきりしない。神に代わって、世界を支配したいためなのか?だが、最初に思ったとおり、レイストリンは心の底まで邪悪ではなかった。結局自分自身を犠牲にし、世界を救ったのだ。兄のキャラモンも、最後に弟への愛を犠牲にし、レイストリンを残したまま<奈落>の扉を閉じる。この選択により、やはり世界を救うのだ。

レイストリンと一緒に<奈落>に入ったレディ・クリサニアは、ここまで真に信仰心があるとは言えず、レイストリン同様、心に野望を持っていたのだが、レイストリンに代わって<奈落>で瀕死の状態にあるところを助け出されるが、彼女の目は潰れてしまっており、永遠に闇に閉ざされることとなった。だが、そのおかげで、真実が見えるようになったのだ。

ともあれ、レイストリンが真に邪悪でなくてよかったとほっとした。暗い話に、ケンダーのタッスルホッフ・バーフットが明るさを加えてくれたのが救い。それと、タニスはもうキティアラに悩まされずにすむのだと思ったら、これもまたほっとした。

2005年04月26日(火)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ドラゴンランス伝説〈5〉黒薔薇の騎士/マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン

『ドラゴンランス伝説〈5〉黒薔薇の騎士』/マーガレット・ワイス (著), トレイシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 322 p ; サイズ(cm): 22
出版社: エンターブレイン ; ISBN: 4757720696 ; 5 巻 (2004/11/19)
内容(「BOOK」データベースより)
僧侶クリサニアを伴ったレイストリンは、〈暗黒の女王〉に挑戦すべく、ついに〈奈落〉の扉へ入る。一方、キャラモンとタッスルは、魔法の時間遡行装置で無事逃げだしたものの、着いたところは、すべてが荒廃した未来のソレースだった。そこには、ティカの石碑が立ち、キャラモン自身の死体が横たわっていた…。折しも、〈竜槍戦争〉の英雄タニスは、差出し人のない一通の書状を受けとる。サンクションで力を得たキティアラが、再びパランサスを襲撃しようとしていたのだ…。ダラマール、ソス卿など異色の登場人物を絡めて、ますます白熱する渾身のシリーズ第5弾。


この「伝説」は、キャラモンとレイストリンの双子に焦点が絞られた話ではあるが、この5巻目は非常にやりきれないような感覚に陥る。レイストリンの野望は果てしなく、そのための犠牲も大きい。兄弟の溝は、とうとう埋められることなく、ついに絆も切れてしまったかのように思われる。結局、キャラモンとレイストリンの愛と憎悪が中心に描かれており、特にキャラモンの葛藤の深さがうかがえる。これによって、キャラモンは大きく成長するのではあるが。

ここでは、あのハーフ・エルフのタニスも登場し、再び活躍するので嬉しいのだが、これまでの「ドラゴンランス」のイメージに比べると、死や犠牲などというテーマが重くのしかかり、暗い1冊となっている。しかし、<奈落(アビス)>に入り込んだレイストリンは、一体どうなるのだろうか?

2005年04月25日(月)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 崖の国物語〈5〉最後の空賊/ポール・スチュワート

『崖の国物語〈5〉最後の空賊』/ポール・スチュワート (著), クリス・リデル (著), Paul Stewart (原著), Chris Riddell (原著), 唐沢 則幸 (翻訳)
単行本: 548 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: ポプラ社 ; ISBN: 4591082288 ; 5 巻 (2004/08)
内容(「BOOK」データベースより)
トウィッグ船長とカウルクエイプが崖の国を救ってから五十年―崖の国には、新たな危機が訪れていた。「石の巣病」の流行で、浮遊石が浮力を失ってしまった。空賊の時代は終わった―。地下の図書館司書学会下級司書の少年ルークは、思いもかけず司書勲士に選ばれた。深森の奥にある「自由の森」へとおもむき、訓練を受けて深森の謎を探る学究の旅にすべてを捧げるのだ。しかしその自由の地にも邪悪な「闇の守護聖団」の魔手が忍び寄っていた。困難を乗り越えてようやく探索の旅に出発したルークが、深森の深奥で出会ったのは―!?予想を超えた新たなる展開でますます目が離せない“崖の国物語”感動の第五部!

主な登場人物・動植物

●ルーク・バークウォーター:主人公。13歳の孤児の少年。「図書館司書学会」下級司書。
●アルクウィス・ヴェンヴァクス:司書学者の長老。
●ヴァリス・ロッド:高名な司書勲士。幼いルークを深森で拾った恩人。
●フェリックス・ロッド:司書助手。ルークの親友で、ヴァリスの弟。
●フェンブラス・ロッド:「図書館司書学会」上級司書学者。ヴァリスとフェリックスの父。
●ストブ・ラムス:司書勲士に選ばれた青年。やや知識を鼻にかけるところがある。
●マグダ・バーリクス:司書勲士に選ばれた少女。率直できっぱりとした性格。
●トーラス・ペニタクス:闇博士。「夜の守護聖団」の無法ぶりに怒りをおぼえて「図書館司書学会」に加わる。
●アルバス・ヴェスピウス:光博士。闇博士とともに、「新サンクタフラクス」を出て「図書館司書学会」に加わる。
●テーガン:司書勲士の旅の案内役(ノクゴブリン族)。
●パーティフュール:司書勲士の旅の案内役(ヨマヨイ族)。
●ヘックル:司書勲士の旅の案内役(オスのオオモズ)。
●デッドボルト・ヴァルプーン:元空賊船長。オオモズたちに捕らえられた。
●コブシ:飛翔機<モリスズメバチ>をたくみに扱う飛翔機乗り(ホフリ族)。
●パーシモン:自由の森の「湖上発着場」最高指導者(ノクゴブリン族)。
●オークリー・グラフバーク:飛翔機作りの教官(ウッドトロル族)。
●トウィーゼル:飛翔機のニスがけの教官(アシナガバッタ)。
●ブリスケ:飛翔機の帆の張り方とロープさばきの教官(ホフリ族)。
●オービクス・ザクシス:「夜の守護聖団」最高守護者。神聖都市「新サンクタフラクス」の事実上の支配者。
●ザンス・フィラーテン:「夜の守護聖団」オービクス・ザクシスの弟子。
●ヴォックス・ヴァーリクス:「新サンクタフラクス」の最高位学者。策略でその地位についたが、オービクス・ザクシスに実験を奪われる。
●トウィッグ:伝説の空賊船長。
●カウルクエイプ:元「新サンクタフラクス」最高位学者。ヴォックスに地位を奪われた。
●ウーメル:まだ若いメスのオオハグレグマ。
●ウラーロ:メスのオオハグレグマ。鋳物工場地帯で奴隷として働かされていた。
●ガーラ:年老いたメスのオオハグレグマ。賢者・長老のなかの長老と呼ばれる。
●ウィーグ:肩に大きな傷あとのあるオオハグレグマ。かつて空賊船に乗り組んでいた。
●ラメル:黒くて大きなオオハグレグマ。オオハグレグマたちの代表格。
●ミール、ルーム:双子のオスのオオハグレグマ。浮遊石を扱うストーン・パイロットの助手をしたことがある。

◆オオグチハイカイ:車引きや護衛、騎士の乗り物として好まれる動物。
◆ウィグウィグ:オレンジ色の毛玉のような外見とは裏腹に鋭い牙を持ち、群れで獲物に襲い掛かって食い尽くす獣。
◆テツノキ:鉄の代わりとして用いられる、利用価値の高い樹木。
◆シズノキ:熱すると浮き上がる性質を持つ深森の浮揚木の一種。
◆ヌマノキ:浮揚木の一種。モグラニカワをぬると大きな浮力を得、飛翔機を作ることができる。


これまでの4巻までは、主人公トウィッグに関連する事柄が書かれていたが(トウィッグが登場しなくても、その父親が主人公だったりする)、この5巻は、全く違う話で、なおかつこれまでの「崖の国」とは様相も違う。これまで同様、メインは主人公の冒険話なのだが、どちらかというと、トウィッグが活躍した頃から50年くらいたった、新しい「崖の国」の描写のほうに重きが置かれているといった感じも受ける。

あらすじは上記の内容説明の通り。ただ、思わぬところで、なつかしのトウィッグが登場する。もちろんずいぶん年月がたっているので、あの若く血気盛んなトウィッグではないが。

新主人公ルークと旧主人公トウィッグが共に協力して、「石の巣病」によって今では飛ばすことも不可能ないにしえの空賊船を飛ばすところは痛快。だがトウィッグは、「石の巣病」に感染し浮力を失った空賊船と共に、またもや世界の果てへ。後を追うシュゴ鳥に守られて。

4巻目までは一気に読んだし、話にもどこかに繋がりがあったので楽しめたが、今度の話は、ちょっと違和感を感じた。主人公がこれまでの「空賊」とは違い、「図書館司書」というキャラなのも関係しているかもしれない。トウィッグや、その父親の雲のオオカミはヒーローだったが、ルークはヒーローというタイプではないし、また今後もそうはならないだろうと思うからだ。

これまでは、さまざまな動植物が出てきて、それも楽しかったのだが(もちろん今回もいろいろ登場はする)、残忍なオオモズたちの出番が多く、オオモズがキャラとしては好きではない私としては、ちょっと残念。このシリーズは好きなシリーズだが、どんなシリーズでも、全ての話が面白いというわけにはいかないのだなと。

2005年04月21日(木)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 鏡の森/タニス・リー

『鏡の森』/タニス・リー (著), Tanith Lee (原著), 環 早苗 (翻訳)
単行本: 493 p ; サイズ(cm): 19
出版社: 産業編集センター ; ISBN: 4916199642 ; (2004/10)


タニス・リーって、昔から名前を知っている割に、読んだのはこれが初めて。ちょっとダメな世界かも。白雪姫がモチーフだが、これだったら、アン・ライスの眠り姫のほうが、まだ面白いんじゃない?って感じ。表紙の絵も気にいらないし、これを見ていると、なぜかイライラしてくる。でも、これまで読んだことがなかったから、この機会にと思ったのだが、やっぱりダメだった。


2005年04月19日(火)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ドラゴンランス伝説〈4〉レオルクスの英雄/マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン

『ドラゴンランス伝説〈4〉レオルクスの英雄』/マーガレット・ワイス (著), トレイシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 320 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: エンターブレイン ; ISBN: 4757720068 ; 4 巻 (2004/09/30)
出版社/著者からの内容紹介
シリーズ本編ともいえる三部作のひとつ「ドラゴンランス伝説」のシリーズ第4巻。多くの魅力的なキャラクターが登場する、剣と魔法のファンタジー。注釈付き完全版。


<新たな登場人物>

●ニムシュ(ニムシュマリゴンガレセフラフート・・・
なぜか発明品がすべて完璧に成功してしまう“落ちこぼれ”のノーム。次元界を移動する発明が成功し、<奈落>へと移動したところで幽閉されてしまった。前巻でタッスルと出会い、彼の持つばらばらになった時間遡行装置を修理し始めたが・・・。


この巻では、一時兄弟の仲を取り戻したと思えたキャラモンとレイストリンが、再び離れてしまう。なぜなら、山ドワーフの国にある<奈落>への「扉」(ザーマンの要塞)を開けるために、レイストリンは際限なく冷酷になっていたからだ。

一方ハーフ・オーガーを倒し、野盗団に丘ドワーフや平原人を加えたフィスタンダンティラスの軍隊の将軍となったキャラモンは、より一層弟に不審の念を抱くようになり、二人の行き方や、進む道は完全に違うのだと知ることになる。この兄弟の反目が、とても辛い。

キャラモンやレイストリンは、ドワーフたちと戦争をしたかったわけではない。ただそこに「扉」があるため、また歴史に残る「ドワーフ戦争」を忠実に繰り返すために戦うのだ。

ここで、ケンダーのタッスルホッフが<奈落>から戻ってくる。歴史では、この戦いで大爆発が起こり、フィスタンダンティラスもそこで死ぬことになっているのだが、それを阻止しようとして、レイストリンは躍起となる。果たして歴史は変えられるのか?

だが、この巻の最後で、レイストリンとクリサニアは「扉」を開けようとする。同時に、レイストリンにあいそをつかし、ティカの待つ家に帰る決心をしたキャラモンが、タッスルとともに時間遡行装置を作動させる。双方の魔法がぶつかり合い、魔法の場が激しく変化する。レイストリンが阻止しようとしたあの大爆発が起こり始める。フィスタンダンティラスの死は、やはりやってきた。フィスタンダンティラス=レイストリンは、果たして魔法の場を守りきれるのか?レイストリンは、<暗黒の女王>に勝つことができるのか?

2005年04月18日(月)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ドラゴンランス伝説〈3〉黒ローブの老魔術師/マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン

『ドラゴンランス伝説〈3〉黒ローブの老魔術師』/マーガレット・ワイス (著), トレイシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 347 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: エンターブレイン ; ISBN: 4757719388 ; 3 巻 (2004/07/23)
内容(「BOOK」データベースより)
〈大変動〉から百年後、大魔法使いになったレイストリンは、兄キャラモン、クリサニアを伴ってパランサスの〈上位魔法の塔〉にいた。クリンを手中にすべく野心を抱いて、奈落へ通じる〈扉〉を探し求めていたのだ。だが、それはすでに神官王が〈塔〉の支配をもくろんだ時に、他に移されていた…。年代史家アスティヌスとの交換条件にやむなく応じるレイストリン。一方、〈運命の日〉に一人とり残されたタッスルホッフは、炎のように輝く空の下、荒涼とした大地のまん中にぽっんと立っていた。〈暗黒の女王〉が住んでいる界だ!恐怖におびえるタッスルの前に女王が現れる…。フィスタンダンティラスの将軍になったキャラモン一行は、再び荒廃したクリンの旅を余儀なくされる―。待望のシリーズ第3弾。


<新たな登場人物>

●年代史家アスティヌス
大都市パランサスの大図書館の館主にして偉大なる歴史家。書物の神である中立神ギレアンの化身とされ、世界創始のときより世界の歴史を記録し続けている不老不死の男と言われている。冷徹で歴史に干渉しない。

●英雄カーラス
戦場での豪遊を讃えられる山ドワーフの偉大な戦士。名高い<カーラスの槌>をふるう。戦争を嫌い、山ドワーフの王ダンカンと丘ドワーフ代表のレガール・ファイアフォージ(フリントの祖父)の仲を取り持とうとするが・・・。

●ハーフ・オーガー<鋼鉄足(スティールトウ)>
人間女性とオーガーの間に生まれたハーフで、30〜40名の野盗団を率いる首領。片足が鋼鉄の義足。幼い頃母に捨てられ、不憫に思った人間の貴族に育てられたが、成人するとその貴族を殺して金を奪い、無法者となった。


いよいよこの巻で、あの<大変動>が起こり、レイストリンと大魔法使いフィズタンダンティラスとの一騎打ちが描かれる。歴史に記された<大変動>は避けようがなく、だがレイストリンはフィスタンダンティラスに打ち勝つ。そうしてレイストリンはまた、フィスタンダンティラスとして生きながらえることにもなる。そして、時は<大変動>の百年後、<竜槍戦争>の百年前、まことの僧侶が一人もいない時代へと移る。ここでレイストリンは、野望を達成しようとするのだ。

タイムトラベルの話は、だいたい途中でややこしくなってくるのだが、やはり歴史の掟(歴史は変えられない)は守られており、だからこそレイストリンがフィスタンダンティラスになったりして、余計にややこしくなる。

しかし、ここで歴史を変えうるものがある。ケンダー族のタッスルホッフだ。キャラモンが魔法使いパー・サリアンから渡された、いわゆるタイムマシンには、ケンダーはご法度だったのだが、タッスルはそれを破ってしまった。ゆえに、神々のあずかり知らぬところで、歴史は変えられるかもしれないのだ。だが、今のところタッスルは、歴史をそのまま繰り返している。<奈落>に行ったタッスルは、果たして歴史を変えることができるのか・・・。

この3巻目では、キャラモンとレイストリンの双子の愛憎が、より深く描かれているのだが、

「剣をつかみ、弟と目くばせを交わす。この一瞬、二人のあいだにあった長年のよそよそしい闇が、嫉妬が、憎悪が──すべて消え去った。ともに危機に直面し、二人は母親の胎内でそうだったように、ひとつになっていた」

という部分を読み、胸が熱くなった。自分にも弟が二人いるので、その弟たちが喧嘩などせず、こんなふうにひとつになれたらどれほどいいかと思わずにいられない。血のつながりの深さというものを、この文章は痛いほど表していると思う。

2005年04月16日(土)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ドラゴンランス伝説〈2〉イスタルの神官王/マーガレット・ワイス&トレーシー・ヒックマン

『ドラゴンランス伝説〈2〉イスタルの神官王』/マーガレット・ワイス (著), トレーシー・ヒックマン (著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 348 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: アスキー ; ISBN: 4757718969 ; 2 巻 (2004/05/22)
内容(「BOOK」データベースより)
パラダインの僧侶クリサニアは、キャラモン、タッスルと共に仮死状態のまま大変動前のイスタルへ転送され、神官王によってぶじ蘇生する。美しいはずの宗教都市イスタルは、その陰に問題を抱えていた。一方、狼籍者として捕えられたキャラモンとタスは、奴隷市に出されて、体格を見込まれたキャラモンが見世物の剣闘士にされる。王宮にフィスタンダンティラスが出入りしているのを知った彼は、弟レイストリンの運命を変えた大魔法使いを殺そうとするが…。レイストリン、クリサニア、キャラモンは、それぞれの思惑を抱いて〈運命の日〉を迎える。やがて、大音響と共に大地は裂け天から火の山がふり注ぎ始めた…。ファンタジーRPG小説の大ベストセラー『ドラゴンランス戦記』続編。


<新しい登場人物>

神官王
約300年前、アンサロン大陸全土を支配していたイスタル帝国の最高権力者。悪の駆逐を目指す善の僧侶。歴史では“神々の怒りを買い、<大変動>をもたらした張本人”とされるが・・・。

フィスタンダンティラス
永遠に命を保つ技法、神に挑む秘法すら見出した史上最強の黒魔術師。<黒きお方>と呼ばれ、神官王の宮廷にも出入りする。レイストリンは彼に学ぶべくタイムスリップをしたのだが・・・。


『ドラゴンランス伝説』(以降『伝説』とする)の1巻目は、<竜槍(ドラゴンランス)戦争>から2年後の設定だが、2巻目では一気に300年前の過去へとタイムトラベルをする。このタイムトラベルには、僧侶や魔法使いの様々な思惑や陰謀が渦巻いており、一体何が真実なのか読者にも不明。

1巻目の感想に、最初のシリーズ『ドラゴンランス(戦記)』(以降『戦記』とする)よりも宗教的と書いたが、2巻目はさらに、ギリシア神話やローマの剣闘士などの影響が加わる。ほとんど映画「グラディエーター」の世界。このあたり、あまりオリジナリティがないので残念ではある。

しかし、2巻目でもやはり<パラダインの聖女>クリサニアの胡散臭さは消えない。個人的に受け入れられないだけなのかもしれないが、『戦記』に出てくる善悪それぞれの女性キャラを見ても、作者がクリサニアを純粋に「善」のキャラとして描いているとは思えないので、今後どうなっていくのか楽しみなところ。

それにひきかえ、レイストリンはずいぶん人間らしくなってきた。邪悪な魔法使いとなった割には、全く邪悪さを感じない。たしかに兄やクリサニアを利用して、野望を達成しようとしてはいるが、クリサニアに欲望を感じたりするところなど、これまでのレイストリンにはなかった部分。

2巻目では、レイストリンが大魔法使いフィスタンダンティラスと戦って、勝利をおさめたと書かれているが、その詳しい戦いぶりは3巻目のお楽しみ。この大魔法使いは、「暗黒の女王」と手を結んで不死になる術を修め、何百年も生きている、まさに邪悪な大魔法使いなのだが、それをレイストリンが破り、その生命と知識を全て吸収するのだ。

またここには、宗教と政治の両面を治める君主「神官王」というのが登場する(一応善玉)。彼はかの「大変動」を起こしたとされているのだが、果たして真実はどうなのか?「大変動」が起こったいきさつについては、非常に宗教的なので、個人的にはあまり興味がない。「神官王」をはじめとして、ここに登場するパラダインの僧侶たちは、本当に神と対話ができるのか?神の声が聞こえるのか?どうも疑わしい。そういう部分が、宗教的な話の嫌いな所以でもある。

おかしかったのは、奴隷として売られたキャラモンが、剣闘士として鍛えられる間、ダイエットをさせられること。これはどの世界でも一緒のようで、厳しいエクササイズと食事制限。ティカのマフィンが食べたいと言って泣く大男キャラモンが、なんともかわいい。他人事とは思えず、思わず同情。(^^;

2005年04月15日(金)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ドラゴンランス伝説〈1〉パラダインの聖女/マーガレット ワイス&トレイシー ヒックマン

『ドラゴンランス伝説〈1〉パラダインの聖女』/マーガレット ワイス (著), トレイシー ヒックマン (著), Margaret Weis (原著), Tracy Hickman (原著), 安田 均 (翻訳)
単行本: 372 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: アスキー ; ISBN: 4757718020 ; 1 巻 (2004/03)
内容(「BOOK」データベースより)
ドラゴンランス戦争終結から2年後、〈竜槍の英雄〉タニスはパラダインの僧侶クリサニアを伴って故郷ソレースに立寄る。リヴァーウィンドにウェイレスへ向かう彼女の護衛をたのむためだった。〈憩いのわが家〉亭で再会を喜び合ったのも束の間、レイストリンに去られたキャラモンのていたらくに驚く二人。翌日、タッスルホッフがクリサニアに依頼されたブープーを連れて到着するが、彼女は一人ウェイレスへ旅立ったあとだった―。一方、パランサスの〈上位魔法の塔〉にいる黒摩術師レイストリンのもとへ異父姉キティアラが訪れる。〈暗黒の女王〉タキシスの第一の将として失地回復をはかるため、彼と手を組もうとするが…。キティアラが恐れをなしたレイストリンの野望とは?"ドラゴンランス戦記"続篇、待望の第1弾。


<主な登場人物>

レイストリン・マジェーレ
<竜槍(ドラゴンランス)戦争>を経て、最強の魔術師となった双子の弟。頭脳明晰。ローブの色を赤(中立)から黒(悪)に変え、さらなる野望を抱いてパランサスの<上位魔法の塔>に住む。

キャラモン・マジェーレ
<竜槍戦争>では心優しき怪力の戦士として活躍。レイストリンの双子の兄で、虚弱体質な弟のことを常に気遣ってきたが、戦争後、力を得た弟は冷酷に去っていった。

クリサニア・タリニウス
善神パラダインを信奉する僧侶で、復興しつつある教会を導く<パラダインの聖女>のひとり。宗教的リーダーである老エリスタンの後継者と目されている。裕福な名家の出身。

キティアラ・ウス=マタール
キャラモンとレイストリンの異父姉で、<竜槍戦争>では悪のドラゴン卿として活躍した凄腕の女剣士。美しく、官能的な魅力にあふれる。いまだ世界征服の野望を抱く。

死の騎士<ソス卿>
嫉妬心ゆえに<大変動>で焼死し、死後、のろわれた姿で蘇った死霊。別名<黒薔薇の騎士>。強力な魔術の使い手。触れるだけで人を殺す骸骨戦士軍を率いる。キティアラと手を結ぶ。

ダラマール・アージェント
法を犯し、エルフ王国(シルヴァネスティ)を追われて黒エルフ(ダークエルフ)となった黒ローブの魔術師。師(シャラーフィ)であるレイストリンの強大な力に魅せられた忠実な弟子だが、実はある秘密の任務を帯びて活動する。

タッスルホッフ・バーフット
恐怖の感情と無縁な、好奇心の塊であるケンダー族の男。手先が器用で、錠前破りの名人。いたずら好きで、他人の持ち物を勝手に“借りる”こともしばしば。放浪癖もある。

<ハーフ・エルフ>のタニス
<竜槍戦争>で、レイストリンやキャラモン、タッスル、ティカといった<竜槍の英雄>達を率いたリーダー。人間とエルフの混血児で、種族間の和解に奔走する。弓と剣の名手。

ティカ・ウェイラン・マジェーレ
<竜槍戦争>では、陽気にして天真爛漫な、かわいらしい赤毛の少女戦士として活躍。現在はキャラモンと結婚し、ふたりで<憩いのわが家>亭を取り仕切っているのだが・・・。


『ドラゴンランス伝説』は、スカッとする冒険活劇がメインではなく、邪悪な魔術師レイストリンが主役の歴史タイムトラベルものといった感じ。私の好きなハーフエルフのタニスは、脇役になってしまっている。

レイストリンは戦士キャラモンの双子の弟で、もともとはタニスたちと行動をともにしていたのだから、私も嫌いじゃないのだが、個人的には強いヒーローのほうが好みだから、脆弱で邪悪な心を持った主人公(とはいえ、レイストリンは心底邪悪とは思えないのだが・・・)というのは、ちょっととまどう。

この物語の世界では、僧侶と魔術師が力を持っているのだが、そもそもそういった宗教がらみの話は、あまり好きではない(『指輪物語』は宗教的でないので良い)。でも、それを補って余りあるくらいの面白さが『ドラゴンランス』にはあるので、宗教部分は目をつぶろうという感じだったのだが、『伝説』のほうはそれが前面に出ているので、あれ?と思ったが、魔術によるタイムトラベルも加わってきて、やはり単なる宗教ものじゃないよねという感じ。

『伝説』はまだ1巻目だから、この先どうなることやらなのだが、レイストリンはけして悪者ではないと信じている。レイストリンが抱いている大きな野望も、最終的には善なのだと。たしかに冷酷ではあるが、頭脳明晰なレイストリンにとっては、すべて計算づくでのこと。それに、兄キャラモンや、タニスたちには何の恨みもないはずで、自分を犠牲にしても、結局は彼らを守ってくれるはず!

むしろ、この『伝説』から登場する高潔な僧侶である「パラダインの聖女」クリサニアのほうが、実は悪のように思える。世のため、人のためと言いながら、実は自分のことしか考えていないというのは、世の中にはよくあることだから。キャラ的に、このクリサニアには胡散臭いものを感じている。「あなたは邪悪」と言いながら、レイストリンに深く惹かれているし。

そして、レイストリンの兄キャラモンだが、赤毛のティカと結婚したのはいいが、弟が黒ローブをまとって離れていってからというもの、酒に溺れる毎日。立派な体躯の怪力の戦士だったのに、今ではぶくぶくになっていて、鎧も入らないらしい。だが、クリサニアを助けるために、不承不承ながらも旅に出て、徐々に昔のキャラモンらしさを取り戻していく。これには、ケンダー族のタッスルホッフが一役買っている。

さらに、『ドラゴンランス』での仲間のその後だが、タニスはエルフのローラナと結婚して上手くいっているらしいし、ゴールドムーンとリヴァーウインドには子どもが三人(二番目は双子)になったらしい。

2005年04月14日(木)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.



 ハードシェル/ディーン・R・クーンツ、エドワード・ブライアント、ロバート・R・マキャモン

『ハードシェル ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション』/ディーン・R・クーンツ、エドワード・ブライアント、ロバート・R・マキャモン (著), 大久保 寛 (翻訳)
文庫: 476 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 早川書房 ; ISBN: 4150405735 ; (1990/03)

内容(「BOOK」データベースより)
英米ではホラー・アンソロジーがブームだが、中でも〈ナイトヴィジョン〉シリーズは独自の編纂で知られる。つまり、3人の作家がそれぞれ250枚の中短篇を各巻に書き下ろすことで、一作家一短篇に限られた従来のアンソロジーにつきまとう物たりなさを解消したのである。本巻には、ベストセラー作家ディーン・R・クーンツ、SF界の実力派エドワード・ブライアント、クーンツをしのぐ人気作家ロバート・R・マキャモンの3人を収録する。

目次
●ディーン・R・クーンツ集
「フン族のアッチラ女王」、「ハードシェル」、「黎明」

●エドワード・ブライアント集
「捕食者」、「バク」、「フラット・ラット・バッシュ」、「亡霊」、「荷物」、「コルファックス・アヴェニュー」

●ロバート・R・マキャモン集
「水の底」、「五番街の奇跡」、「ベスト・フレンズ」

※原書 『Hardshell (Originally Published As Night Visions 4)』/Dean R. Koontz, Edward Bryant, Robert R.McCammon


ホラー・アンソロジー『ハードシェル』を読み終える。正確に言えば、「ナイト・ヴィジョン」というシリーズの4巻目で、副題が「ハードシェル」といったところか。

このアンソロジーが他のアンソロジーと違うのは、各作家がそれぞれ1編ずつというものではなく、250枚という枠を設けて、その中でいくつ書いてもいい、あるいは250枚の作品1編でもいいという形式になっているところ。なので、当然収録されている作家の数も少ないし、お気に入りの作家がいれば、たとえ他の作家が好きでなくても、それほど物足りなさはないだろう。

実際に、以前ディーン・R・クーンツ(現在はミドルネームのRはつけない)には結構はまっており、長編をいくつか読んでいるし、マキャモンは言うまでもない。エドワード・ブライアントは知らない作家だが、万一クーンツとブライアントが面白くなくても、マキャモンさえ読めればいいといった感じ。

読んだ感想としては、クーンツの文章はやはり上手いと思うのだが、明らかな寓意を感じて、それにちょっと引いてしまった。トールキンが言うように、寓意を感じさせる小説は好きじゃない。今まで長編しか読んでいないので、クーンツの短編は初めてだったのだが、寓意さえなけば・・・と残念。

殺しても死なない殺人犯(実は宇宙人)を追う刑事が、絶体絶命の時に明かした真実は、実は自分はもっと強い宇宙人だったとかって、それあり?って感じで、驚きもしたけれど、あきれもした。でも、いくらなんでもそこまでは考えつかなかったなあと、やっぱり感心した。

ブライアントは、まったくダメ。作風が私の好みには全然合わない。ホラーの中に精神異常者の怖さというのも含まれるとは思うが、それって、正常者(何が正常かわからない場合もあるが)と異常者の対比があって、初めて怖いのであって、異常者ばかりの世界を書かれても、ヴァージニア・ウルフ状態だ。

もちろん、そんな話ばかりではないのだが、作品に必ず「作者付記」というのがついていて、そこで作者の意見を言ってしまっているので(それもフィクションなのだが)、読者が自由に解釈できないといううっとうしさがある。

マキャモンは、今さら「やっぱりマキャモンだよね」と言っても、またか!と思われるのがおち。でも、やっぱりマキャモンはいい。短編の場合、マキャモン特有の善のヒーローは出てこないのだが、独特の怖さ(怖さについては、むしろ短編のほうが秀逸)を醸し出している。

「水の底」という作品では、プールで溺死した少年の父親が、あのプールには何かがいる、息子は溺れたのではなく「それ」に殺されたのだと信じ、一人で誰も泳がなくなった汚れたプールに入っていくという話なのだが、誰もいない夜のプール、しかも手入れもされていないから、得体の知れないものがそこここに浮かんでいる。その中を泳ぐ恐怖は、読んでいるほうも一緒に水の底に潜っているみたいで、非常に怖い。常々水の中は怖いと感じているだけに、その恐怖はなおさらだ。

実際に、プールの中にはとんでもない怪物が潜んでいて、父親は「それ」と対決したわけなのだが、汚れた水の中の描写はものすごくリアルで、二度とプールでは泳げないかも・・・なんて。

マキャモンの3編は、ここから『スティンガー』や『狼の時』に繋がっていったのだろうと思わせる部分もあり、そういう意味でも興味深かった。他の二人はともかく、マキャモンの3編を読めたことがうれしい。

2005年04月03日(日)
Copyright(C) 2000-216 SCHAZZIE All rights reserved.
初日 最新 目次 MAIL HOME


↑参考になったら押してください
My追加

Amazon.co.jp アソシエイト