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■ スティンガー(上・下)/ロバート・R・マキャモン
『スティンガー〈上〉』/ロバート・R・マキャモン (著), 白石 朗 (翻訳) 文庫: 460 p ; サイズ(cm): 15 x 11 出版社: 扶桑社 ; ISBN: 4594006965 ; 上 巻 (1991/03) 内容(「BOOK」データベースより) テキサスのさびれた鉱山の町インフェルノの郊外に空から巨大な黒いピラミッド状の物体が落下した。その異様な物体は紫の光を発し、町を外部から遮断する。内部から出現したのは"スティンガー"(刺あるもの)―この町に逃げ込んだ逃亡者"ダウフィン"を追って現れた第二のエイリアンだった。"スティンガー"は人間そっくりの分身をあやつり、"ダウフィン"の引き渡しを迫る。対決か、降伏か。閉鎖空間に展開する二十四時間の人間ドラマ。これこそモダンホラーの新時代を拓くマキャモンが放つ絶対の自信作だ。
『スティンガー〈下〉』/ロバート・R・マキャモン (著), 白石 朗 (翻訳) 文庫: 469 p ; サイズ(cm): 15 x 11 出版社: 扶桑社 ; ISBN: 4594006973 ; 下 巻 (1991/03) 内容(「BOOK」データベースより) 地球に不時着した逃亡者"ダウフィン"の引き渡しを迫る"スティンガー"は町の人間を一人ずつ殺しはじめる。日ごろ抗争をつづける白人系とメキシコ系、二つの不良少年グループは"スティンガー"に敢然と立ち向かうが―。異星生物の弱点とはなにか?人間たちと"ダウフィン"に勝ち目はあるのか?まるでハリウッド映画の面白さをすべて詰め込んだような、究極のホラー&サスペンス。「怖くて面白くてハラハラドキドキさせて、カッコよく泣かせる」モダンホラーの最新傑作がやってきた。
※画像は原書 『Stinger』/Robert McCammon ※ロバート・R・マキャモンのコーナー
マキャモンを読み始めたら他はどうでもよくなってしまうので、マラマッド・プロジェクトもあるし、ユダヤ関連の本も読まなくてはならないしで、ここしばらくは「おあずけ」と思っていたのだが、つい魔が差して、手にとってしまった・・・やっぱりマキャモンは面白い!
どんなとんでもない不良でも、マキャモンの手にかかると、いつの間にかヒーローになっている。敵対する不良グループのリーダー、リックとコディ。どちらも実はいい奴で、自分を犠牲にしても、誰かを守り抜くタイプ。これって、どちらがヒーローになるんだろう?どちらもヒーローの資格がある。下巻ももうすぐ読み終えそうなのだが、結末がどうなるかわくわくして、どんどん進んでいく。
状況設定がキングの 『Dreamcatcher』 に似ていないこともないのだけど、それよりはるかに展開がスピーディだし、はるかに品がある。キングのは、もう勘弁してよというくらい場面が汚かった(言葉だけでなくあらゆる意味で)。マキャモンのほうは、たしかに汚い言葉も頻繁に出てくるのだが、その後に必ず、「そんな言葉はダメよ」という旨の発言がある。そういうところが、いつもマキャモンらしいと思う。キャラクターの設定上、そういう言葉を使わざるを得ないから仕方がないのだが、一応注意は促してあるという次第。
最近、面白くて、ドキドキして、途中でやめられないという本にお目にかかっていなかったのだが、久々にそういう本に会ったという感じ。お風呂の中で読んでいると、いつの間にかお湯が冷たくなっている。長風呂になる原因はマキャモンだったのだ。
マキャモンの描くヒーローは、けして偉ぶったりしないし、特に見かけがカッコイイわけでもない。時にはヨレヨレのおじさんだったり、死にかけている中年男だったりするのだが、だいたいが心の優しい人間で、自分がヒーローになるなどとは思ってもいないのだけれど、結局そういう人間が人を救うのだ。そういうところに、いつもぐっとくる。これは個人の好みもあるだろうが、マキャモンの描くキャラクターは、私の感覚にストレートに入り込んでくる。
まだ読んでいない作品もあるので、全部が全部そうだとは言えないし、これまで読んだ中で、共感できない主人公もいるにはいた。それでも、毎回マキャモンっていい人なんだなあと思わずにいられない。ホラー小説なのに、読後がすがすがしく、暖かい気持ちにさせる作家なんて、今のところ他には見当たらない。作品=作家ではないとは言うけれど、フィクションの場合、ある程度は作家の性格は現れると思う。
さて、ヒーローはリックなのか、それともコディなのか?と楽しみにしながら、結末にたどり着いたが、最終的なヒーローは、リックの父親カートなのかな?それまで、全然ダメな親父だったのだが、最後の最後に皆を救う役割。映画『インディペンデンス・デイ』で、自分の命を犠牲にしてUFOに突っ込む、あのダメ親父と一緒である。つまり、美しい自己犠牲の精神てやつだ。
そして、リックとコディは引き分け。これまでいがみ合ってきた不良同士だが、これを境に友情へと変わっていくのだろうという思いを抱きながら、それぞれの街に帰っていく。二人は立派な男になるだろうなという期待をさせながら。
ロバート・R・マキャモンの「R」は、リックである。他の作品にも、リックという名前が出てくるが、リックという登場人物に、マキャモンは自分を投影させているのだろうか?とも思う。巻末の解説には、次のようなことが書いてあった。
「マキャモンは、人間のうちなる善を信じている。「<悪い人>っていうのは、たんに救いの手立てが見つからないだけなんだ。たぶんこんな考え方はナイーブなんだろうけど、でもロマンティックじゃないか、そう思いたいね」とは彼の弁」
やはり、マキャモンっていい人なんだ!
2005年03月24日(木)
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