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■ ミッドナイト・ブルー/ナンシー・A・コリンズ
『ミッドナイト・ブルー』/ナンシー・A・コリンズ (著), Nancy A. Collins (原著), 幹 遙子 (翻訳) 文庫: 396 p ; サイズ(cm): 15 x 11 出版社: 早川書房 ; ISBN: 415020229X ; (1997/01) 内容(「BOOK」データベースより) Tシャツの上に黒の革ジャン、懐には銀のナイフを忍ばせ、美しいその顔には常に瞳を隠すサングラス…彼女の名はソーニャ・ブルー。彼女には、人の目には見えぬこの世界の真の姿を見ることができた。この世界に重なって存在する「真世界」―そこは、吸血鬼、人狼、オーグルが人の身体をまとって闊歩する驚くべき世界だった。そして彼女こそ、この「偽装者」たちを次々と倒してゆく、怖るべき力を秘めたハンターであった。英国幻想文学賞、ブラム・ストーカー賞受賞。
主人公のソーニャ・ブルーは、本名デニーズ・ソーンという大金持ちの令嬢だったが、ロンドンで遊んでいたところ、見知らぬ男性にさらわれ、血を吸われて捨てられる。そこからソーニャ・ブルーとしての人生が始まる。つまり、彼女もまた吸血鬼となったのだ。だが、様々な条件が重なり、単なる吸血鬼ではなく、ものすごいパワーを持って、悪い奴らをやっつけるモンスター・ハンターとしても活躍する。
こう書くと、善の側のヒロインみたいだが、実はそうではない。ややこしいのは、もとの姿であるデニーズ・ソーンと吸血鬼ソーニャ・ブルーという二つの人格の裏に、<彼女>というとてつもない人格がひそんでいることだ。<彼女>が表に出ると、とんでもなく凶暴なキャラになってしまうのだ。そして、見境もなく周囲の者を殺戮していく。その殺し方も半端ではない。
ソーニャ自身は、人を襲って血を吸うことをよしとしないし、悪者のモンスターをやっつける「吸血鬼ハンター」あるいは「モンスター・ハンター」と言われてはいるものの、結局は自分を吸血鬼にした男と、自分を探している両親を苦しめる、インチキ伝道師に復讐するために動いているだけだ。つまり、人類のためにモンスターを退治しているわけではないのだ。
解説には「なぜ吸血鬼だけがそれほどもてはやされるのだろう。・・・さまざまな理由が考えられるが、何よりも彼らには<吸血鬼>という属性の前に誇示としての名前があるからではないだろうか」とあるのだが、いくら名前があっても、3重人格では、個人のキャラとしてのインパクトが弱いんじゃないだろうか。ソーニャが主人なのか、凶暴な<彼女>が主人なのか、読者は迷ってしまう。
吸血鬼ハンターと聞いて、『ドラキュラ』のヴァン・ヘルシング博士を思い浮かべていた私は、こんな極悪非道な吸血鬼ハンターなんて、認められない!という感じになってしまった。だって、この人自身がモンスターなんだから。それに、夢の中の話を織り交ぜるというのは、とにかく好きではない。何でもありになってしまうから。
2005年02月02日(水)
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