petit aqua vita
日頃のつぶやきやら、たまに小ネタやら…

2003年03月31日(月) 大正解(笑)

いつも、AQUA VITAのトップはINDEXと対のカットを使用してます。
先日変えた新しいトップのカットなんですが。
INDEXとAQUAのトップ、両方見た友人がのたまいました。

「…グランゾート狙ったんか?」

はい。
大正解デス。(爆笑)

このカットをセットで見た時、
「グランゾートだ〜!!大地とラビだー!」
と大興奮して、DLしました。
紫宸殿と額田屋小売店、グランゾートのおかげで追っかけてたもんなぁ。
…いや、逆か。
紫宸殿と額田屋小売店のグラン本が面白くて、グランゾート(アニメ)にハマったんだ。
お子様用アニメながら、あの設定の細かさはかなり萌えvv

この魔法陣のカット、あと緑色があれば、グランゾート・アクアビート・ウィンザートのイメージでぴったりだったんだけどねぇ……。
……って、人様の作品使わせていただいているんだから、贅沢は言っちゃいけない。反省。(ぺこり)



2003年03月30日(日) 民族楽器キャンペーン♪

ただいま、脳内、民族楽器キャンペーン実施中♪

……というのも、最近聞くCDが、ヒカ碁の主題歌全集以外、殆ど民族楽器が使われた音楽なんです。

特にハマリ中なのは、アルパというインディアンハープ奏者、上松 美香さんのと、
津軽三味線プレイヤーで、独特の音楽を作り出してゆく、最近NYでもコンサートを成功させた、上妻 宏光さんのCD。

もともと、民族音楽好きなんですが、ここまで「楽器」に惚れ込んで聞くのは久しぶりです。
津軽三味線は、有名な兄弟奏者もいますが、私は上妻さんの方が好きかな。上松さんのアルパについては、とんねるずのノリさんの番組に出演していて、その「コーヒールンバ」に聞き惚れてすっ転びました♪
その他、聞きたいのは……スペイン・ギター(クラッシックやフラメンコ)とか、胡弓(馬上琴も〜♪)とか、和太鼓和太鼓♪♪

お能の音楽…囃子といいますが、あれも、生で聞くと迫力が違います。かけ声とともに絶妙なバランスを見せていて、ひきこまれますね。(下手すっと、地謡や囃子にばかり目がいって、舞の方を見てないことも…あるな)
あれは、テレビじゃひらべったく聞こえますよ。
聞く機会があるなら、笛の場内にまさに「響き」わたる迫力と、
大鼓の、「ホントに革か?!」と思うような金属音とその空気の振動、
そして鼓の音色の多彩さ、
太鼓の刻みのリズムの心地よさに酔うべし!!

CDやテレビとは、全然違うよ。
…ま、何でもそうかもしれんけど。


……ちなみに、今は脳内民族楽器ですが、私もともと、シンセ系の音や音楽が大好きな人間でし。



2003年03月29日(土) 『華と修羅』(佐為小ネタ)

あかき葉影の間より
しろき花こそ咲きそむる
山の花こそ今ははや

風もなきに ひとひら
音もなしに ひとひら
散りゆくは花
愛で惜しむ心は人のみか


人は知るらむ 山にます
隠れ居ましぬ もののある
花は季に添ひ 咲くものを
その季のうつろひ とどめおき
変はらぬその身は たれゆゑに
花のもとにて 其は居りましぬ


花のもとには 何ぞます
花のもとには オニとひと
ひとは散りゆく花の下
我と我が身の姿をうつし
眞たがわぬ己の姿
まなこに映して震ふなる
鬼の姿は ここにあり
オニは微笑み その様を
眺めて居ますばかりなり


あかき葉影の間より
しろき花こそ 愛しけれ
花を愛で居るその姿
姿はやさし 白の衣
扇持つ手もなよやかに


げに恐ろしやな 修羅の坐す

天女の如きその面

げに恐ろしやな 修羅の舞ふ

碁の道行のその果ての

あさましやな かなしやな

哀しかりとて 修羅は舞ふ

碁の道行のその末に

天にぞあがりゆくべしと

そのしうちゃくぞ 恐ろしや

その美はしの面をや



花の下にぞ 修羅の住む

花より艶し 華のます



季に背きつつ 華は坐す
次なる修羅を 華は待つ

華の居ましし 花の下
惜しめや春を 幼子の
花を踏めやなう
修羅が坐すぞな

花が散るやなう
華が笑むぞな



2003年03月28日(金) そろそろ……

小ネタも、卒業シリーズはあらかた書いたんで。
そろそろ別ネタに移行しようと思うのですがね。

ふふふ。そろそろ桜の季節デス♪
ええ。大好きな題材デス。

桜ネタ。いいなぁ………。(うっとりvv)

私が書くので、まぁ、山桜が多いと思うけれど。
散りゆく桜にぴったりのBGMとして、私がいちばん好きなのは、映画「天と地と」のサントラの、小室哲哉作曲、「落花」です。
花びらが、一枚、また一枚と散って行く風情が、目に見えるようですよ♪

春になると、大好きな花たちが咲き始めます。
木瓜の花とか、藤とか、こでまりとかユキヤナギとか………♪
つくし取りに行かなきゃ♪玉子とじしなきゃ♪
ヨモギで蒸しパンつくらなきゃー♪

あああ、自然がいっぱい。
田舎ですなぁ………。
季節感満載。



2003年03月27日(木) 『休まぬ翼3』(三上小ネタ)

一瞬。
その瞳に捕らわれたような気がして、そんな自分が悔しくて、水野は三上を睨み返した。
三上は、大きなボストンバッグを肩にかついだまま、何も言わない。

「……じゃあ……アンタは何処へ行くつもりなんだよ」

先程の問いに、問いで返す。
自分が、先程の交換条件のどちらを選んだのかを伝えるために。

三上は、既に何校かの大学に受かっていた。
その中でも、渋沢が推薦で行くという、サッカーの名門の私立大学に進むだろう、というのは、サッカー部でも既に決まったことのように話されていたのだ。三上に対して関心が薄い自分でも、知っているくらいに。

…しかし、目の前の本人は、違う道をゆくという。
すべて決めてしまったのだという、止められないような、どこか静かな目をして。

「…独逸」

「え?」

唐突に告げられたその単語の以外さに、思わず聞き返した。
三上は眉をしかめる。

「聞こえなかったのかよ。ドイツだ。ドイツ!今から耳が遠くなってるようでどーすんだ、バーカ」
「うるさいなっ!確認しただけだ!!」

ムキになって怒る水野をからかうようにニヤニヤ笑いながら、三上は制服のズボンに手を突っ込んだ。
「ドイツの知り合いが、俺がやりたいことを学ぶんだったら、日本よりもむしろこっちに来い、って誘われてな。…丁度良いから、行くことにした」

水野は、三上の肩に担がれた不自然に大きなボストンバッグに目をやる。
「…今……これから?」
その言葉に、三上はへえ、という顔をした。
「サスガ未来の全日本司令塔サマ。よく気付いたじゃねーか」
軽くあしらわれるような感覚。以前の彼は、こんなじゃなかった。簡単に水野のことを「司令塔」なんで、絶対に認めようとはしなかった。

――こんな三上は……知らない。
置いていかれたような感覚に、焦燥感がつのる。


「なんで……」
「ああ?」


「何で、あいつらに黙ってんだよ!!」

あんなに、チームメイトから慕われているくせに。
10番で司令塔の自分より、信頼されているくせに。
何で、彼らに黙って、姿を消すような真似をするのか。
何で、彼らに知らされないことを、自分が知らされるのか。

――何で。





噛み付くような、水野の視線。そして言葉。
三上はその圧迫感に耐えるように、ぎゅ、とズボンの中で拳を握り締めた。

――痛い。

水野からですらこうなのだ。あいつら……渋沢や、辰巳や、中西や、近藤…そして中等部から慣れ親しんだ後輩たち、彼らに問い詰められれば、この痛みはきっともっと、大きいはず。
三上は大きく息をついて、高校の三年間をすごした寮を見上げた。

「……んなもん、決まってんじゃねーか………」

思い出すのは、騒がしくも、楽しかった日々。喧嘩も、葛藤も、すべて。

「居心地が良すぎんだよ…ここは」

――そう。自分にとって、「武蔵森」は…彼らとともにいた「サッカー部」は……この上もなく居心地が良かった。それに甘えて、溺れる自分を知っていたけど、わざと、それには目をつぶった。
――本当は、もっと早くに飛び立つべきだったのだ。
それを留めていたのは……他ならぬ、自分。…そして。

「あいつらに会ったら……また、あいつらと一緒に居たくなる。……そんなのは、ただの惰性だ。安心はしても、満足できねーんだよ」
自分の、行きたい道があるから。
それは、自分が行くべき道だから。

三上は、かすかにうつむいた。

「……だから…ここからは、俺一人で行かなきゃいけねー。そう、思った」




俯いたまま話すその姿は、どこか不安そうで。
しかしその不安を押し殺してまでも、行くのだという確かな意思も、そこにはあって。
チームの誰にも話さなかったのか、話せなかったのか、それは水野には分からなかったけれど。
――もう、止められないのだ。
それだけは、確かに感じることができた。
…しかし、やはり気にかかる。


「でも……いいのか?せめて渋沢にだけでも……行先くらい言った方が……」
「ああん?何で」

問い返されて、水野はさっと赤くなった。こんなことを、わざわざ本人に言わなきゃいけないのか!!
「……こ……恋人……だろう?」
三上は目を丸くする。
「誰が」
反射的に水野が答える。
「渋沢」


瞬間後、その答えに、腹を抱えて爆笑する三上がいた。
声を上げてゲラゲラ笑う三上は初めて見るもので、驚きのあまり呆然とする。
学校内では、結構有名な話(渋沢&三上恋人説)だと思うのだが、違うのだろうか?
三上は、どうにかこうにか、笑いを無理矢理おさめながら笑いすぎて流れた涙を拭く。
「お、お前まであんなウソ信じてたのかよ?…くくくくくっっ」
「違うのか?」
笑いすぎて肩から落ちてしまったボストンバッグを担ぎ直しながら、三上はひらひらと手を振る。
「違っげーよ、ありゃ中西が面白がって女子に流したデマだ」
中等部の頃に流した噂だけど、妙に定着化したらしくてな、と三上は続けた。

「それに俺、恋人いるから」
「え?」
「今、独逸にいるぜ」

その言葉に、水野はしばし固まった。そして疑わしそうに三上を睨む。
「アンタ……もっともらしいこと言いやがって、単にその恋人に会いに行くだけなんじゃないだろうな……」
三上はニヤリと笑う。
「…ま、それも理由の一つだな」
――ドイツ行きの。

この野郎、と思う気持ちを、水野は止められなかった。
売られた喧嘩は高く買う。

「……いいのか?俺なんかを信用してベラベラ喋って。俺、アンタ嫌いだから、速攻部室に走って、あらいざらい全部バラすかもしれないぜ?」
「おぼっちゃまのオマエに、そんな度胸があるなんて思っちゃいねーよ。それに、テメーの鈍足で部室に着く頃にゃ、俺は成田へ向かう車の中さ」
…やれるモンならやってみやがれ。

2人は、お互いに睨み合ったまま、ニヤリと笑った。




やがて、三上は踵を返し、誰もいない裏門を乗り越えてゆく。
脱走に慣れた彼は身軽なものだ。
それを横目で見送りながら、水野も部室へと足を向けた。

そういえば、自分がJリーグでいない間、三上がチームを仕上げてくれたから、自分が武蔵森に帰ってプレーする時も、割とやりやすかったなとか、三上にノートを見せてもらったこととか、言うのを、忘れていた。
礼を言うべきなんだろうけれども……。

「まぁ、いいか」

今更照れくさいだけだし、三上も、そんなこと言われたくないだろう。
だから、いいや。


藤代にどう言い訳するかを考えながら、水野は、ゆっくりと歩み始めた。
風がもたらす、微かな花の香りを感じながら。



2003年03月26日(水) 『休まぬ翼 2』(三上小ネタ)

サッカー部の大半が探している彼を、探す気もなかった水野が見つけてしまった。驚きに足を止めると、向こうも驚いたらしく目を丸くしていたが、一瞬後、顔をしかめた。
…まるで、会いたくなかった者に会ってしまった、という風に。
やっぱり、という思いとともに、やはり面白くない。

「…何やってんだよ、アンタ」
「ああ?」

三上は、ボストンバッグを担いだまま、スタスタと近づいてくる。
気圧される理由は何もないはずなのに、水野は居心地の悪い圧迫感を感じた。

「部のみんなが、アンタの事探してる。早く行ってやれよ。アンタが行かないと、追い出し会が始まらないんだってさ」
「……おまえは?」
「…俺は…別に」
藤代に巻き込まれて、適当に歩いていたらアンタが寮から出てきただけさ。
そう応えると、三上はニヤリと笑った。
――いつもの人を見下すそれではなく、FKの時に見せる、あの顔だ。

「――なら、お前は俺を探しに来た訳じゃないんだな?」
そう問われて、素直に応える水野ではない事を知っていて、わざと問い掛けてみせる。
「…だったらどうだってんだよ」
ぶっきらぼうな水野の返事に、三上はやはり笑った。
「―なら、頼む。このまま俺を見つけなかったことにしてくれ」

予想外の答えに、水野は固まって。三上はそんな彼の様子に、くすくすと笑った。ピッチに立てば、これ以上ないくらいのゲームメイクをしてみせる彼なのに、それ以外では何と不器用な少年であることか。そのギャップが、おかしくて。
普段、ずうずうしい程に図太いチームメイト達を見慣れているせいか、その姿は余計に新鮮だった。

訳が分からないままに三上に笑われて、水野は顔が熱くなるのを感じた。たぶん、もう真っ赤になっているだろう事も、想像がつく。
「何笑ってんだよっ!」
水野の様子に、三上は何とか笑いをおさめた。
「あー、ワリワリ。…んじゃな。さっき言ったこと、頼むわ」

三上はくるりと踵を返すと、そのままスタスタと水野の前を立ち去りかけた。

「待てよ」

思わず、三上の手を掴む。
「…んだよ」
さっきの笑みとは違う、面倒くさそうな目で、睨み返された。
「皆…待ってるって言ったろ。――行かないのかよ」
「……ああ。行かねーよ」

三上のさらりとした答えに、先程、騒ぎながらも三上を探そうと動いていた藤代たちの姿を思い出す。こんなに性格が悪いくせに、何故かあんなに慕われていて。……なのに、三上はあっさりそれを切り捨てるような言い方をする。
「何で……っ!」
「俺は――ここから、あいつらと同じ道を行く訳じゃねーから」

噛み付くようにくってかかった水野に返されたのは、皮肉げなものでもない、見下すものでもない、先程のからかうものでもない…何かを決めた人の、表情だった。

「同じ道を行かないって…何だよ。アンタは、渋沢と同じ大学に行って、サッカー続けるはずじゃ……」
「ストップ」

三上は、水野に掴まれた手を振り払い、ポン、と水野の胸を叩いた。

「ここから先が聞きたいのなら、交換条件だ」

風がざわめき、三上の黒髪と、水野の薄茶の髪を揺らす。

「もし聞くんなら、俺に会ったことは誰にも話すな。聞く気がないんなら、とっとと帰れ」

お前次第だ――と。
三上は、水野から目をそらさずに、言った。



2003年03月25日(火) 出〜た〜!(今週のヒカ碁。ネタバレ注意)

ふふふ……。

来た来た来た来た来たぁ〜〜〜!!

ついに来てくれました!あの男が!!
…だめです!最後の3ページのおかげで、それまでヒカルが読み勝ちで永夏をちょっと焦らせた事に喜んだり、全然まったく素直じゃない、やっぱり受系のお父さんに萌えたり(やっぱりそっちかい)してたのが、全部ブッ飛びました!

そう!やっぱり、北斗杯の会場に現れたんです!!
搭矢 行洋元名人が!!
アキラの勇姿を見に、デジカメ持って!(←持ってへん持ってへん)

それにしても、なぜ洋服?!
着物じゃ目立つと判断したんでしょーか。
それにしても、なんであんなにくたびれたジャケット着てるんだ?!
まるで着たきりスズメ。
明子さんとケンカして、クリーニングも出してもらえなかったのかなー。
それとも、中国から直行?飛行場からタクシー飛ばして?!
それなら納得もいくけれど。
それでも、搭矢センセイ、なんて似合わない格好………。

しかし貴重なモノは見られましたよ。
目を真ん丸くして驚く搭矢行洋の「驚く顔」!!
「大将が、進藤くん?」
そりゃまー、我が子の実力知ってりゃ、「アキラ→大将」と思い込むのは間違いないと思いますが。それに、高 永夏に、遠まわしに「自分の息子と対戦してみろ」とけしかけたのは本人ですからね。

……まさか暴れ出すことはないと思うけれど……(笑)。

さて次回、大盤解説の先生が、真っ先に彼の存在に気がついて凍り付くシーンを希望!!(笑)
社の師匠でもいいけど。
パニックになる前に、誰か行洋先生を観戦控え室まで連れ出せ!!
そして、そして行洋先生の解説を聞きたいぞ私は!!
そーなったら楊海さんともご対面♪というオイシイ場面だってあるじゃないか!

火花散る盤面!!
それ以上に場外も大荒れの予感!!
さぁて、次週まで、萌えネタ爆裂で退屈せずに済みそうです!(←仕事忘れてるだろオマエ……)



2003年03月24日(月) 『休まぬ翼』(ホイッスル!高等部森小ネタ)

武蔵森高等部卒業式は、何とか無事に終わった。
「何とか」というのは、在校生代表の送辞を、誰が決めたのか天然ボンバーマンの現Jリーガー、藤代誠治が読んだせいだった。
巧妙にも、教師たちに提出用の送辞としてダミー(いや、こっちが笠井が書いた本番用)を用意していたらしい。
厳粛な雰囲気は一変、爆笑の渦に変わってしまい、両手をつき上げて観衆に応える藤代を笠井がハリセンでしばき倒し、その隙に間宮が足を持ち上げ、

「ゴン」

…という鈍い音とともに、彼らはステージを後にした。
一瞬鎮まりはしたものの、これも演出だろう、と勘違いした生徒たちの拍手喝采をさらに浴びたのは言うまでもない。

それによってざわついた雰囲気は、卒業生代表の渋沢克朗が登場したことによってしん、と静まった。U−21代表GK、大学進学は決めたものの、Jリーグからもお呼びがかかっているという、未来の全日本A代表正GK。
皆、彼の言葉を待ち望んで。
渋沢は、ピッチでもよく通る声で、穏やかに在校中の思い出を語り、ふわりと感謝の言葉を述べた。
聴衆はつられてうっとりと微笑み、……内実を知るチームメイトは恐ろしさに寒気を覚えた。内心で、「こぉの、スーパー猫かぶり!!」と叫ぶ者もいたかもしれないが、それはあくまで一部の話。
とにかく、大半は…特に教師陣は、ようやく卒業式らしい雰囲気に安堵したのであった。

そして、何とか無事に卒業式は終了した。




「キャプテーン、三上先輩はー?」
「…ああ、俺も探しているんだが…さっきから姿が見えなくてな」
「もうすぐ部室で追い出し会が始まるのに、どこに行ったんでしょうね」
「どこかで一服してんじゃねーの?俺も行けば良かった」
「卒業生が揃わないと、始められないぞ。俺の手製のケーキも披露できん」
「間宮…ちゃんと食えるもの作ったんだろうな……(汗)」
「とにかく、屋上とか中庭とか…心当たりを探そう。見つけたら部室に連行してくれ。手段は問わん」
「らじゃりましたぁ♪」
「……渋沢……お前な………」
「ほらー!水野!お前も三上先輩探すんだってば!!」
「何で俺が……」
「問答無用ー!」

卒業式後、部室で集って追い出し会をしよう!と言い出したのはやはり藤代だった。中等部の頃からイベント好きなメンバーが多いこともあり、それはすぐに通達されたのだが……肝心の主役たちの一人、三上 亮がの姿が見えなかった。
三上の気まぐれは今に始まったことではないので、誰も大騒ぎをする者はいない。…が、彼がいないとサッカー部卒業生が全員揃わない。
これでは追い出し会も始められないので、準備係以外は、それぞれが三上を探しに散っていった。真っ先に携帯にもかけてみたのだが、つながらないらしい。

藤代に引きずられながら、水野も、この三上捜索隊に強制参加させられた。
自分は屋上に行くから、お前は寮の辺りな!と言い捨てて、藤代は駆けて行く。時折上がる女の子の歓声に手を振りながら。

水野は、ひとつ、ため息をついた。
「何で俺が……」
あの、三上を探さなくてはならないのか。
中学の頃からの、因縁の相手。
ポジションも同じ。求める背番号も同じ。
…しかし、その10番…そして司令塔の役目を与えられたのは、自分だった。
三上は、左サイドのMFとして出場し、水野がJリーグの試合等で不在の場合のみ、その代りにトップ下のポジションについた。

そんな三上が、自分をどう思ってるかなんて、考えなくても分かる。
自分を見る彼の目は、いつも険しく、固いものだった。
まだ慣れていなくて人見知りしているだけだ、と渋沢は言ったが、どうにも信じられなかった。
自分が風祭みたいな素直な性格や、シゲみたいな清濁呑み込めるしたたかさがあれば、やがて慣れていったのかもしれないけれど。
――結局、必要以上の会話もしないまま、今日でおしまい。

JリーグやU−19等の都合でよく学校にいない為、成績が超低空滑走の藤代のために、補習や試験などの面倒をみていたのは三上だ。しかし同じように試験を受ける自分には、
「オマエはこのノート見りゃ十分だろ」
…と、何冊かのノートを渡されたきりで。
三上はひたすら、藤代をこづきまわして怒鳴りながら勉強をさせていた。
―実際、教科書とノートを見れば自分には何とか理解できたし、藤代はあれくらいやらなければ頭に入らないだろうけど。
――ちくり、と、小さな痛みを感じたけれど、それは三上の怒鳴り声と藤代の悲鳴が煩いせいにした。

その時点で、水野は立ち止まる。
「――ちょっと待て」
(もしかして、かまわれたかったのか俺は?!)

自分の思考が行き着いた結果に心底驚いて、思わず口に出しそうで、水野は慌てて口に手をやった。
…気がつけば、既に寮の近くまで来ている。
サッカー部専用の寮は、部員が全員出払っていて、いつもの騒がしさなど、どこにもない。

「じゃーな、おばちゃん。元気で」

そして、どこか別の建物のように静まった寮からボストンバッグを担いで出てきたのは、三上 亮本人だった。



2003年03月23日(日) 高校野球が始まって。

久しぶりのまともな休みにくつろいで、ぼーっとテレビ見てたら、

「藤代高校」

…という茨城の高校がありましてね。
ホイッスルつながりで、ついムキになって応援してました……。
あああ。どこまでいっても同人女。

地元からは何高校が出たのかも知らないのにね。(苦笑)


…でも、私高校野球はセンバツより、夏の高校野球の方が見てて好きなんだよなぁ…。
スポーツ観戦は大好きです。
……興奮し過ぎて地が出るので、言葉は恐ろしく乱暴になりますが。(笑)

学生の頃、夏休みに母と2人でテレビにはりつき、オラオラで盛り上がって応援して、父が引いたくらい……かな。
サッカーになると、好きなチームが出てたら大騒ぎですね。F1……ミハエルが絡むと突然騒ぎ出します。そうです。今夜はF1マレーシアGP。深夜なので、ヘッドホンかけて盛り上がります♪
叫べないのがちとつらい……。

F1といや、テレビ放送のテーマソングの「Truth」。
実は近所のスーパーでかかるんだよねぇ………しょっちゅう。
…でも、かしこい選択だとは思いますよ。
何か今から、「走るぞ、買うぞ〜〜っ!!」って意欲をかきたてられる曲ですから。

ただ、着信音を「Truth」にしてたら、おばちゃんに、
「あ、この曲知っとる〜。マツ●トでかかってるヤツやろ〜vv」
って言われたのにはちょっとショックでした。
なので、「Truth」は目覚ましアラーム用に使ってマス。



2003年03月22日(土) 「怒る」事って疲れる。

自分は、その人のことを注意しなきゃいけない立場で。
何度か注意したけれども直らなくて。
……とうとう、その子を怒らなければならなくなって、怒ったけれど。

ものすご〜〜〜〜く!!疲れた!!!

人に対して怒って、本人に厳しく叱るのは、……私にとってものすご〜く、大仕事です。
…言ってあげて、改善がみられるような人を相手にするならともかく、言っても言っても直らないような相手ならなおさら。
……通常であれば、そんな奴に私は注意なんかしません。
怒りもしません。
そんな、自分の感情を動かすのすらもったいないですから。
こんな場合、とっとと切り捨てます。
…つまり、「ソイツはそんなもんだ」…とばかりに、見限る訳です。

……ただし、今回はそうもいきませんでした。
なぜなら、立場上、ソイツを指導する立場に私がいたからです。

なので、「やむをえず」怒りました。厳しく叱りました。
……でもさぁ。
叱ってる内容が、仕事上や人間関係ならともかく。

何で寮生活の過ごし方、なんて、常識的かつ基本的な事を叱らなならんの?!
ウチの寮、20歳以上の人しかいないから、もう良い大人だよ?!成人だよ?!給料もらってるりっぱな社会人だよ?!
ったく、怒りを通り越して馬鹿馬鹿しくて、情けなくて、頭が痛いです。

……泣きそうな顔されてもさ。
こっちが泣きたいわよまったく!!
ただでさえ怒るの嫌いなのに、あまりの情けなさに叱りながら涙が出そうだったわよ!!
あんなことが、いちいち口に出さなきゃできない、という事に!!
あんなことが、他の寮生が使用するから、と気遣いができないその自分勝手さに!!

……いきなり叱ったわけじゃありません。
4月の入寮から、ずっと、注意してきました。一回や二回どころではなく。
返事は良かったよね。
…なのに全然直らなかった。


寮長じゃなかったら、こんなに親切に注意したり怒ったりしませんよ。
放っておきます。
怒る価値もないもん。
今回は、親切心ではなく、ただの寮長としての義務感のみで無理矢理自分の感情をひっぱり出したので、よけいしんどいです。

……もし、全ての権限が寮長の私にあるのなら、こう言いたいです。

「そんなに気ままな生活がしたいのなら、出て行け」

――と。
寮を出て、一人でアパートなりマンションで住んでくれ。
そうしたら、ウチの寮生の誰にも迷惑がかからないから。



2003年03月20日(木) 『花と修羅』(ヒカ碁小ネタ)

陽射しはやわらかいそれになったものの、風はまだ冬のように冷たい、3月。
校庭のかたすみでは、気が早いタンポポが2,3、その冷たい風に揺れながら咲いていた。

葉瀬中の卒業式が終わって、とごかしんみりした雰囲気から、それぞれ談笑するような明るいざわめきに変わる頃。
母親の立ち話に付き合うのに疲れてきたヒカルは、幼なじみに声をかけて、その人込みからそっと脱け出した。

「……あの……進藤センパイ!」
「……?……何?」

それを待っていたように見知らぬ女子生徒から声をかけられた。
本当に、顔も名前も見覚えがない。
学年章を見ると、一年生だった。
……ますます分からない。

「えっと……俺に、用事?」
人違いではないかと訊ねたヒカルに、目の前の少女はぶんぶんと首を振った。
そして、後ろに持っていた花束をガサッと、勢い良くヒカルの前に差し出す。
「進藤センパイ……卒業、おめでとうゴザイマスっ!」
それと同時に、少女は俯いたまま、祝福の言葉を口にした。
ヒカルは呆然として花束と少女を見つめる。
ピンクとオレンジのガーベラを一輪ずつ……たった2本だけの、しかし可愛らしい花束。目の前の小柄な彼女を思わせるそれは、とても自分のためのものとは思えなかった。

「これ…オレに?」
「はい!!」
ヒカルが何か喋るたびに、少女の顔は真っ赤になっている。俯いてはいるものの、ショートカットの髪からのぞく耳まで赤くなっていることから、それと分かる。
……受けとって貰えるかどうか……不安に、震えているのも。
何か小動物を相手にしているようで、ヒカルはくすりと笑った。そして、その柔らかそうな髪をぽんぽん、と叩いてやる。
「サンキュな」
そう言いながら、花束を受け取った。
名前も知らない後輩。…しかし、必死になってこの花を渡そうとしてくれた、その気持ちは嬉しいから。

「……あの…あの……もっと大きな花束とかにしたかったんだけど……でも、花って結構高くって、私が買えたの、それくらいしかなくて……」
ごめんなさい。…そう、ちいさく呟くのが聞こえたような気がした。
「ヘーキ。名前は知らねぇけど、カワイイ花だよな、コレ」
そう言ってやると、少女は泣きべそ寸前だった顔をぱっと上げた。
「ホントですかっ?!」
「うん。男のくせにって思われるけど、俺、結構花が好きなんだ。…変かな」
「ぜんっぜん!ソンナコトないですっ!」
少女の反応は、まるでびっくり箱のようにぎくしゃくしていて。それがおかしくて、つい、笑ってしまった。

「…以前は、さ。花なんて全然興味なかったんだけど……身近にいた奴が、花が好きでさ。花屋にある花も、そのへんに咲いてる花も、みんな「きれいだ、きれいだ」って喜んで。…よく、土手や空き地の花を摘みに行かされたよ」
ヒカルの言葉に、少女の表情が固まった。

「その…人は?」

先輩の彼女ですか…?言外に、そういう問いを含ませたが、ヒカルはその問いに、目を細くした。
…確かに微笑んでいるのに、どこか、苦しそうに。

「いないよ」

あの、どんな花でも愛し、愛でた人は。

「もう…いない」


少女は、それ以上何も聞くことができなくなった。
ほんとうは、せめて、いつも遠くから見ていた憧れの先輩に、自分の想いを伝えたかったのだけれど。
こんな泣きそうな顔の人に、そんなこと、言えない。

…彼女の初恋は、口にされることなく、終わった。



「先輩は…囲碁のプロなんですよね」

「ああ……うん」

うつろな答え。少女は、きゅ、と手を握り締めた。
「いつか…先輩が何かの大会で優勝した時も、また花束持って行っていいですか?」
「え?」

「……がんばってください。…その、花の好きな人のぶんまで」
少女の言葉に、ヒカルは驚いたように目を見開き、そして微笑んだ。
「サンキュ。楽しみにしてる」

そう言って小さな花束を揺らしてみせると、少女は短く、「それじゃ」と呟いて、走り去って行った。
彼女の頬に光るものに、ヒカルは気づくことなく。


ヒカルは手にした花束を見つめる。
何かの棋戦で優勝したら、また、くれるという花束。
それは、優しくはかなく、華やかに愛らしく、折から吹く風にゆらゆらと揺れる。
しかし、それを手にするためには……戦わなくてはならない。
数々の棋士を相手に、それこそ死闘を繰り返し、相手を打ち負かし、蹴落として。…それを拒むなら、はじめからその世界にいることすらも許されない。
棋士は戦い続ける。
…そう、いにしえの、修羅のように。

……きっと、あの少女には想像もつかないことだろう。
自分が渡す花束が、そういった死闘の結果であることに。
渡される花束の影に、幾多の挫折や絶望があることに。

……以前は、自分もそのひとりだった。

――あの、花の様な修羅と出会うまでは。

知らないまま、一生を過ごしていたかもしれない。

――修羅と出会い、囲碁への道を、指し示されるまでは。






風が、花の香りを乗せて吹く。
(帰ったら、この花をあの碁盤の前に生けよう)
…少しは、喜んでくれるだろうか。

囲碁に全てを捧げた、千年の時を超えた修羅は。

ヒカルもまた、同じ道をゆく修羅となったことに。



2003年03月18日(火) 佳人対決(今週のヒカ碁)

結局、先週のヒカルの台詞、
「俺が…碁を打つのは……」
の続きは飲み込まれてしまったようです。
まぁ当たり前か。コンナとこでその答を口に出されたら、「もしかして最終回近いのか?!」って私がびっくりしますよ。(笑)

さて、韓国戦、大将戦は佳人対決です♪
韓国のビジュアル系vs日本のジャニーズ系!!(爆笑)
いやん、服がスーツなのがちょっともったいないかも。いや、やはりそれ「らしい」、似合う服装してくれてたら、どれだけ萌えたことか……と考えると。

ヒカル、良い顔で打ってますよ♪
冷静な集中力を宿した、良い表情です。
高 永夏は、まだ沈黙してあまり目立った動きを見せません。
……けれど、盤面は確実に動いているようです。
高 永夏が放った、一見悪手に見える一手。
観戦者は、それを見て「たいしたことない」とざわめきますが、彼と対局しているヒカルだけは気がつきました。その無造作な一手に、隙がないことを。
不安に傾きそうになる心を、ヒカルは必死でコントロールしようとしています。
そうです。まだ、序盤です。
それがどう変化してくるかは、まだこれからなのです。

がんばれヒカル!!
高 永夏が指してきた手を冷静に読んでいるのは、ヒカルだけです。
つまり、それだけ対等の位置にヒカルが立っている、という証拠にほかならないのだから。
森下戦で経験した、「食らいついていく強さ」…今されが、試されようとしています。


その盤外では……なんか、本当に倉田さんが良い団長してるよ………。
勘にしろ思惑があるにしろ、選手が勝つことを疑わないどころか、
「三勝を狙ってますよ!オレは」
と大マジで言い切っちゃうところに、倉田さんの侠気を見た!ってカンジ。
ヒカルたちの状態を、勘でも雰囲気でも、とにかく「正しく」読み切っているからこそくる自信!そして、そう読んだ「自分」を疑わない自信!!いや、スバラシイです。
……そういえば、倉田さんが少年時代の頃は、脅威の確率で競馬の結果を当てまくってたんですよね。その倉田さんが、「全勝」を言い切ったのです。……くふふ♪楽しみ〜♪
大盤解説の人(名前忘れた)に、ステーキを奢る約束までとりつけるあたりがステキvv

そして、倉田さんには「何で進藤を大将にしたのか」とくってかかった解説の人も、スポンサー側の人に、今まさに自分が言ったことを責められて、倉田さんと同じように返事をしちゃったあたりが笑えました。…ああ、こんなもんよねー、と。
倉田さんと違って、確信できてないので、言い切っちゃった後に冷や汗ものだったのが凡人ゆえの可愛らしさというところか。(…はっ、だからオヤジに「可愛い」なんて使うなよオレ!)

団長たちは控え室で観戦ですが、安 太善が楊海さんに、例の秀作事件を話したようです。そして出てきた言葉が、
「熱いね―――っ!」
俺にはもうそんなことでムキになんかなれないよ、若いねぇ、と。
そんな表情をしてました。
ひとコマだけど、すっごい嬉しかったです!!
だって、すごく楊海さんらしい台詞と表情だったんだもん!!
こんな台詞がサマになるの、楊海さんくらいだもん!!はぐれ雲みたいな、飄々とした雰囲気で、いつのまにか相手を飲み込み、翻弄してゆくんです!!気がついたら、もう楊海さんの手の内……みたいな。
(そういや、浮浪雲(はぐれぐも)って剣客マンガあったっけ。主人公がすごいぬらりひょんなんだけどやたらと強くて、奥さんとすんげぇバカップルな……おおう、まさに楊海×伊角!!)(←妄想爆走中)
あまりのイメージ通りに、一コマだけで激萌えvv

何か、エピソードのひとつことつに盛り上がってます。



2003年03月17日(月) ひとは、何故足りることを知らないのか。

……また卒業ネタの小ネタでも書こうと思ったけれど、どーにもこーにも、世間がキナ臭くて、そんな気分になれません。

人は、どうして「足りる」ことを知らないんでしょうかね。
必要なぶんだけで、満足しようとしないのでしょうかね。
「だからこそ人類は進歩したのだ」
…という論もあるかもしれないけれど。
それが破壊を産み、昔から受け継いできた貴重な文化や、かけがえのない命を大量に死にいたらしめているのでは、何にもならないのではないかなと。

よその国が、強力な武器を持っているらしい。
…それを恐れて、自国でさらに強い武器を開発してみたり。
「周囲の国が虐げられるから」…ともっともらしい理由をつけて、攻撃する正当性を見出し、「正義のため」と自己暗示をかけてまで、他者をつぶそうとする、その心。
……これじゃ、ある子が石を持っているから、「いじめられる」と思い込んで先に棒で殴る幼い子供と変わりませんよ。
「目には目を」のハンムラビ法典の時代から、「進歩してませ〜ん!」って、堂々と世界に宣言するようなものですよ。それを「恥ずかしい」と思えない事もすごく問題があると思うなぁ。精神構造的に。
そんな人間が、世界の中枢に位置しているというのだから、寒い話です。

命令する人間は、椅子に座って一言言うだけです。
利益のために、選挙のために、国家が、他の国より優位に立つために。
それで戦地に向かわせられる人々やその家族、何の関係もないのに戦争にまきこまれて負傷したり、親をなくしてしまう子供たちにとっては良い迷惑ですよ。
命令する人間は、「戦いの現場」を分かっているのでしょうか。
ひとの命について、その責任を負わなくてはならないことを分かっているのでしょうか。
目の前で、自分の近しい人が自国の軍の地雷にやられても、同じ事が言えるのでしょうか。
命令する人間は、椅子に座って一言言うだけです。
戦場から、遠く離れた場所で。


何故、疑うのか。
何故、信じられないのか。


何故、そんなにも他よりも自分が優位に立ちたがるのか。
誰も、そんなこと頼みも強要もしないのに。

自分の力で上に登らず、
他人をおとしめることで、相対的に優位に立とうとする、この図式。


悲しいことです。
――あまりの盲目さに。

寂しいことです。
――「少し足りない」くらいで我慢して、その中から工夫する知恵が、次第に消えてゆくのは。



2003年03月16日(日) 実はこれが本音だったりする。

本日、市の伝統文化体験プログラムの総仕上げの「白梅大茶会」がありました。
小学生50人くらいが、楽焼きで皿に絵付けをして絵皿を作り、さらにそれをお菓子器としてお茶会に使用し、子供達はそのお茶会のお運びまたはお点前をするというものです。
去年から、何回かに分けて皿に絵付けをしたり、何も知らない状態の子供達に茶道の基本を教え、お運び(お菓子とお抹茶を運んだり空のものを下げたりする)ができる状態にまでお稽古してました。少しかじったことがある子には、お点前ができるように指導します。

んで、その総仕上げに、梅林にて、「白梅大茶会」として、お抹茶の接待が今日行われたのです。
あいにくの雨で、野点のはずが、梅林に面した建物の中でのお茶席となりましたが、梅林側の窓を窓枠ごとすべてとっぱらい、パノラマ状態の梅林を眺めながら、お客さんに梅林と、お菓子とお抹茶・そして一生懸命にお運びをする子供達の姿を楽しんでいただきました。

雨の日でしたが、我が子・我が孫の晴れ姿を一目見ようと、お客さんが来るわ来るわ……とても盛況でしたvv
子供たちも、本番とあって、お稽古の時とは違う、かしこまった、しかしどこか照れくさいような、良い表情してましたvv
子供達の服装は、指定していないので着物の子、洋服の子といろいろでしたが、やっぱり着物の子は可愛かったなぁ……!男の子も女の子も♪
こういったお茶席では和服って良いものですよ。
…ただ、子供の場合、すぐ着崩すので、時々掴まえては直してあげないといけないんですが(笑)

そんなこんなで、お茶会は大成功でしたvv
お菓子落とさなかったし!
お抹茶こぼさなかったし!
お茶碗割らなかったし!!
いやもう、上等上等vv
あくまで体験なんだから、少々の事は目をつぶってよし!(きちんとお稽古するなら、その時に先生から教わるだろうし)


そして子供達は解散。
私ら係員は片づけをし、打ち上げに「どこかに食べに行こう」という話になりました。
……が、私は「ちょっと……」と、断りました。

寮に風邪で2日ほど寝込んでる子がいるので、様子を見がてら食べられるようならお粥でも作ろうと思ってたし(その子は以前、私が風邪の時栄養ドリンクを差し入れてくれたのだ。それに…オイラ一応寮長だし)、
19時から劇のお稽古があったし。

……なーんて。コレは表の理由。
では本音は?

何で好きこのんで苦手な奴と一緒に食事せなならんのじゃ

…というもの。
普段なら、巨大なネコひっ被って、にこやかにソイツとも食事してみせますがね。
そうするには、今日は私が精神的にくたびれていたので。
断ることができる正統な理由が2つもあったので、私しゃ喜んで利用させていただきましたvv(笑)

我ながら黒くなったなぁ……と苦笑いしつつ、
しかしこれも、ストレスを溜めないための生活の知恵。
ちょっとかしこく(要領良く)なった自分に、拍手してみたり。(大笑)



2003年03月15日(土) 『桜、散る』(乾海小ネタ)

「合格したよ」
そう告げられた言葉で、覚悟していた別れが、現実になったことを知った。

卒業式が終わった後も、高等部へ進学が決定している卒業生は、相変わらず青春学園の中等部のテニス部に顔を出していた。外部への進学を決めた者も、たまにではあるけれど顔を出す。お互い、4月になれば、それぞれ別々の道をゆく――その別れを、惜しむかのように。

乾は、公立高校には受かっていたのだが、もうひとつ、別の私立高校も受験していた。そこのコンピューター環境と、大学と共有しているという巨大な専門図書館に惹かれたらしい。
あまりに楽しそうにその高校について語る乾に、海堂は、胸の辺りにこみあげてくる痛みを、握り締めた手の中で爪を立てて、こらえた。
「離れたくない」なんて自分の感情は、単なる我侭だと、分かっていたから。
出会った時から、乾は自分よりも年上で。
いつか、離れる時が来る。
――それは、分かっていた事だった。
乾に、「好きだ」と告げられて、自分も、「好きです」と伝えた日から、ずっと。
ただ、それが、できるだけ遠い日の事であればいいなとは、願っていたけれども。

学生服のまま、テニスコートにやってきた乾は、淡々とデータを告げるように、言った。
「合格したよ」
その言葉に、いち早く反応したのは菊丸だった。
「乾おめでとーーっっ♪」
言葉と一緒にジャンプ一番でダイビングアタックしてくる。
身長が高いから細身に見られがちな乾だが、しっかり鍛えられた彼の体は、今さらそれくらいでは揺るぎもしない。
「おめでとう、乾」
にこにこと不二も微笑んだ。珍しく裏のないそれで。
「これでみんな進路決まったにゃーvv」
「そうだな。だいたい皆、希望通りに進むことができて良かった」
はしゃぐ菊丸に、大石がふわりと笑ってみせる。
「祝勝会しようか?良かったらウチで」
まだ修行中だけど、俺が作った巻き物食べてほしいな、と、河村が控えめに申し出る。
「良いっすねぇ〜!俺たちも行きたいっす!なぁ、越前!」
「うぃ〜〜っス」
「お前達は寿司が食べたいだけだろう。参加するなら、後輩たちは何か一品持ち込み制とする」
祝勝会の話に盛り上がる桃城と、寿司の話に興味深々な越前に、手塚がピシリと釘を打った。そして菊丸をはりつかせたままの乾に向き直る。
「おめでとう、良かったな、乾」
すい、と差し出された手に、乾は口元をすこし笑みを浮かべて握り返した。
「…何か、照れるね。ありがとう」

皆が、乾の前途を祝して、喜んでいる。
自分も、そうしなくてはいけない――意識しないと、そう思えそうにない自分に、海堂は無性に腹が立った。
こんなこと、ずっと前から、分かっていた筈なのに。
何度も何度も頭に描いて、その時は、きちんと、お祝いを言いたかったのに。
――どうしてこんなに、足が、手が、口が動かないんだろう。
こんな、ことでは、いけないのだ。
動け、動け、動け!!

「……セ・ンパイ」
そう口にした時、微かに唇がふるえた。悔しくて、もう一度拳を握り締める。
その手の中で、爪を立てながら。
「何?海堂」
乾の、平坦な声が応じる。低くて、すごくよく響くくせに、平坦な喋り方。
この声で、名前を呼ばれるのが好きだった。今も、それだけで嬉しいと感じる自分がいる。もっとも、その喋り方はわざとで。自分を抱きしめ、キスをした後に囁かれる声は、もっと濡れていて、思いにあふれたものであることも……自分だけが、知っている。

いつの間にか、菊丸は乾から離れ、乾は海堂の目の前に立っていた。かつてのテニス部のレギュラーメンバーは、2人を見守るように、たたずんでいる。
「その……高校合格、おめでとうゴザイマス!」
それ以上、乾の顔を見ていることができなくて。海堂は、一気に頭を下げた。
「うん…ありがとう」
乾は、相変わらずの表情のまま眼鏡を押し上げる。

…何か妙に緊張した雰囲気を察した菊丸は、慌てて海堂の背中を叩いた。
「なーなー、かおちゃんも祝勝会来るんにゃ?何か持ってきてくれるなら、おかーさんの手作りそばがいいなー♪すげぇ美味いもん♪」
とはしゃいで、じゃれついてみる。
「…あ、それ僕も食べてみたい」
まだ食べた事ないんだよね、と、不二が微笑む。

…海堂は……俯いたまま、それに応えることはできなかった。

「………スンマセン………今日は………弟が風邪ひいてて……早く帰らないといけないんス」
そう告げて、もう一度ぺこりと一礼すると、海堂はそのままテニスコートから走り去った。
そこにいたら、間違いなく乾の目の前で泣いてしまいそうだった。







走って、走って、走って。
ムチャな走り方をしたせいで、息が苦しい。
立ち止まったのは、いつも練習していた、公園の中。
よくその木陰で休憩していた大きな木は、今、満開に咲いていた。
春が来て、ようやく気がついた。この木は、桜だったのだと。
かなり気が早い桜らしく、他の木は二部咲きほどなのに、この花だけが、今を盛りと咲いていた。
――乾の合格を、喜ぶように。

「散れよ……」
その木の幹を叩いて、呟いた。
「散れよ……桜なんて、散ってしまえ!!」
乾が高校に行ってしまうことを喜ぶ花なんて、いらない。そんな花は、いっそ散ってしまうと良い。

海堂は、桜の木の幹を掴んだまま、ごつん、と額をその木にぶつけた。
妙に生暖かい木の皮が、流れてくる涙に濡れていく。















「……さて」
乾は、ふう、と一息ついた。
「じゃ、ちょっと行ってくる」
そう言い残して、乾は海堂が残していったラケットを取り上げ、部室へと向かった。
「…何処へ行く気なんだろう?」
「決まってるにゃ〜♪海堂のトコだよん♪」
「海堂、着替えもラケットも置いたまま行っちゃったからね」
「え、でもマムシの奴、弟が風邪って……」
「そんなの嘘に決まってるじゃないっスか」
「そうか。乾が卒業したら、離れ離れになってしまうから」
「素直には、乾の合格を喜べないだろうな」
皆の視線の先には、海堂のバッグを背負い、ラケットを持った乾の背中がある。
その背中は、ゆっくりと、遠ざかって。

テニスコートには、強い風がふきつけてきた。
「卒業か………寂しくなるな」
ふと呟いた大石の言葉に、なんとなく沈黙が落ちた。
それを破ったのは、表情の読めない笑みを浮かべた不二周助。
「姉さんが好きな歌にあるんだけどね」
何の話だ、と皆が注目する中、彼はにっこりと笑った。
「『卒業できない、恋もある』んだってさ」
あの2人のように。
「…かも、しれんな」
手塚の呟きに、反論するものは誰もいなかった。















「こんな花……散ってしまえばいいんだ………」
そんな海堂の願いを叶えるかのように。
一陣の風が、満開の桜に襲い掛かった。
桜は音もなくその花びらを散らせ、風に舞う。
中心にいる少年は気付かない。

花びらが雨のように散る。
その下で泣く少年を、覆い隠すように。

そして、彼は知らない。


今、そこに近づく、たったひとりの、足音を。



2003年03月13日(木) 『卒業』(掛川小ネタ)

梅の花が満開になって、散りはじめ。
桜のつぼみがふくらんだ、晴れた日に。
掛川高校の、初めての卒業式が、行われた。

…それは、ほんとうに「ごく普通の」卒業式で。
思い出に涙する者、退屈な話にうんざりする者、入試の結果が分からず、卒業式どころではない者と、反応は様々だった。
在校生の送辞は、現サッカー部キャプテンである平松 和宏によって、優等生らしく無難に終わり、答辞は、写真部の元部長によってされた。…それは、型通りのものではない、自分たちの記憶や体験を思い出させる、それなりに感動できるものだった。最後に、「ありがとうございました」と、頭を下げた時に、形式ではない、心からの拍手が送られたくらいに。

卒業式に臨むとき、大塚は一足のシューズを、赤堀は古びたキャプテンマークを手に持っていた。
それについて、誰も、教師ですらも何も言わなかった。
自分たちと一緒に卒業する筈だったふたりの存在を、皆知っていたのだ。

夏の日に、超新星のような輝きを残して、散っていった、久保 嘉晴のシューズと。
その後をを受け継ぎ、掛川高校を高校サッカーの頂点まで押し上げた後、今度は次の夢へと、欧州に旅立っていった、神谷 篤志のキャプテンマーク。

三年前の今ごろ、一緒にこのできたての学校の門をくぐった彼らは、今、ここにはいないのだ。
だけどせめて、その彼らの一部くらいは、一緒にこの卒業式に参加したいのだと。サッカー部一同からの願いに、校長は快く頷いた。


やがて、式は終わり、在校生が歌う「ひとりぼっちのエール」が響く中を、胸に白い花をつけた卒業生たちが退場していく。
最近の曲が良い、という在校生たちの訴えは、音楽教師の趣味により却下された。そしてその教師の趣味だという誰も知らないというこの曲が選ばれたのだが、その曲の歌詞はまさに「卒業」するこの瞬間にぴったりくるもので、体育館に響くメロディは、それなりに感動的だった。
卒業生の殆どが、この曲の大合唱に目を赤くする。男子ですらそうなのだから、女子などは泣き崩れる者までもいた。
涙もろい大塚は、もう既に涙を流しており、しかしそれを隠そうともせず、久保のシューズを持って、退場してゆく。
赤堀も、目に涙をうかべながら、穏やかに退場していった。最後に、卒業生が通る通路側にいた和宏に、久保、神谷と受け継いできたキャプテンマークを手渡して。
矢野は目や鼻を真っ赤にしながら。小笠原は、涙を必死に堪え、俯いたまま。
彼らは、ゆっくりと退場していく。
掛川高校から、去ってゆく。














そして、彼ら、掛川高校サッカー部第一期生が、正門前で目にしたものは。

数ヶ月前、一足早くこの高校を巣立って行った、親友の姿だった。

「よぉ」

いくぶんか照れた笑みを浮かべながら、ズボンのポケットに手を突っ込んだ、見慣れた姿勢。見慣れた姿。その足元には、白と黒とのサッカーボール。


「神谷!!!」


彼らは、一斉に走り出し、その反応にニヤリと笑った彼は、くるりと背を向けて、走り始めた。
彼らが3年間走り続けた、あの、グラウンドへと。



2003年03月12日(水) 卒業ソング

さて、卒業シーズンですねー。

卒業ネタで欠かせない(?)のは卒業ソングだと思っている私。
ずうっと前…私らが小・中学生の頃は、「贈る言葉」が定番だったような気がするけれど、その他にも色々ありました。(尾崎 豊の「卒業」とか、長渕 剛の「乾杯」とかね)

さて、「この歌で書いてみたいな〜」という曲をちょいとまとめてみました。

『卒業』(渡辺 美里)
『ひとりぼっちのエール』(安全地帯)
『青春の影』(チューリップ)
『夢を信じて』(徳永 英明)
『世界にひとつだけの花』(SMAP)
『休まぬ翼』(ZABZDAK)

……多大にシュミが入ってるのは否定しません。(苦笑)
全部書けるか分からないけれど、いくつかは書けると良いな♪
ちょうど好きなキャラが結構卒業ネタの年なので。



2003年03月11日(火) 『PHOTOGRAPH 3』(ル神小ネタ)

俺が手紙を読んでいる間も、ルディは一枚の写真を握り締めたまま、動かなかった。
手紙を読んだ後、それを封筒にしまい、テーブルの上に散らばってしまった写真をまとめる。そこには、まだ中学から上がったばかりの、幼い顔した俺たちがいた。大塚も、矢野も、石橋も、赤堀も、小笠原も、そして…久保も。
笑ったり、泣いたり、時には喧嘩して過ごした……先輩も後輩もいない、俺たちだけの時間。
その時間は決して戻ることはないけれど、こうした写真は、あの頃の事を鮮明に思い出させてくれる。一年前なら見ることもできなかっただろう久保の笑顔も、今はなつかしく思える。…少し、鼻の奥が痛いけれど。矢野のやつ、このフィルムを見つかったから現像したんじゃなくて、現像できなかったんじゃないか?ふざけているようで、結構優しい、あいつの事だから。


ルディは、相変わらず一枚の写真に見入っている。
そうだよな、こいつは、このくらいの年の久保には一度も会ってないんだから。
「そんなに気に入ったのか?その写真」
「アツシ……頼みがアル」
「何だよ」
「この写真、俺ニくれないカ?」
「別にいいぜ。…そんなに良い顔して写ってんのか?それ」
「アア……最高ダ!」
いやにどきっぱり言い切ったなコイツ。そう言われると気になる。久保がそんなに良い顔で写ってるなんて、いつの時のだろ?
「ちょっと見せろよ」
「…え、ダメだ!これはもう俺の写真ダ!」
……そうきたか。…なら、こっちも容赦しねぇ。
写真を持っている方の腕を素早く掴み、ルディが身構えたところを……腕の裏側から脇の下にかけて微妙に指をすべらせる。要はくすぐったのだが。

「うわっっ……アツ…シ……ヤメロ…ッッ……く、ヒャヒャヒャ………!」
「おらおら、大人しく写真よこしな」
ルディは結構くすぐったがりだ。特に腕の裏側あたりは特に弱い。デケェ身体をよじらせてジタバタする姿は、存外可愛いかったりする。
……あまりやると夜の仕返しが怖いから、ルディの手の力が弱まったところでひょいと写真を奪い取り、体を離した。さて、どんな写真か………


………げ。


「返セっ!コレハもう俺がもらった写真ダっ!!」
その写真を見た瞬間呆けてしまい、その隙にまたルディから写真を奪われた。
「ちょっと待て、何であの時の写真がココにあるんだよ!!」
「知るカ!写真の中に入ってたんだカラ!お前の友人ガ送ってきたんだロウ!」
ふと、手紙の内容が頭をよぎる。

【渡欧記念の特別サービスで、ある写真も同封した。どうするかはお前に任せる。ネガは久保がオシャカにしたから、もうそれ一枚しか残ってないスーパープレミアムものだぜ!!】

……矢野の野郎〜〜〜!!
アレは、最初の年の文化祭で、クラスの英語劇で「赤毛のアン」やった時のじゃねーかこの野郎!!
しかも当時、女子が面白がって、男女の役を逆転させ、「そばかすがあるから」という訳のわからん理由でアン役をやらされて!!ぴんくはうすとかいうビラビラのワンピースを着せられた、高校生活の汚点ともいうべき、悪夢の文化祭!!
…その後、何故かその英語劇の写真が飛ぶように売れたらしいが、何でもネガが紛失して焼き増しできなくなったという話を聞き、ほっとしたものだった。誰が自分の女装姿バラまかれて嬉しいものか!!
そして、その数少ない一枚の写真が、今、ルディの手の中にある。


「コレ、アツシだろう?とても可愛イ♪」
にこにこと笑みを浮かべて、ご満悦だ。
ちくしょう、さっきから写真を見て動かなかったのは、久保を見つめてたからなんて感傷にひたってた俺が馬鹿みてーじゃねぇかよ!!

「アツシ、この頃ハ華奢だったんだナ」
……もう受け答えする気力も湧かねぇ。
そう、この当時はまだ十分な筋肉もついてないし、遅い成長期だったから、骨もまだできてなくて、やたら細っこかった。ワンピースを着せられて、あまりの違和感のなさに女子からは喜ばれ、自分ながらショックだった俺はその日からウェイトトレーニングの量を増やしたのだった。
今では、ルディみたくゴツゴツの筋肉はつかなかったけれど、(どうも筋肉の質が違うみたいだ)男としてそれなりの身体はできてきたつもりだ。今の俺がスカートなんぞはいても、気色悪いに決まってる。
それであの忌まわしい過去を忘れたつもりだったのに、この写真ときたら……!

写真。それは確かに過去を思い出させてくれるけれども、いらん過去までほじくり出すもの。
俺は自分の写真の認識にそうつけ足すことにして、とりあえず、
「Schatzi♪Schatzi♪」
と連呼している目の前のバカを、一発殴ることにする。

……さて、コイツがこの写真を持ってるという事は、(俺が渡せと言っても、たぶん意地で離さないだろう)独逸のあいつらにもこの写真を見られる、という可能性は大いにあるという事で。
どうしたらそれを阻止できるだろうか、と、俺は手許にある高校一年生の俺たちに向かってため息をついた。



2003年03月09日(日) 本日の収穫

えー、本日の大阪イベントにての収穫。

乾海本3冊。
ヒカ碁ダブルパロ本『ヒカルの囲碁』4,5巻と番外編。

……以上。
規模が小さかっただけに、収穫も少なかったデス。
オガヒカと楊角は、扱うサークルはあったけど、私の好みじゃなかったのでパスしました。
「ヒカルの囲碁」はねー。はい。「ガラスの仮面」をもじって遊んでるギャグ本です。基本はアキヒカらしいのですが、緒方さんが、良い傾向で絡んできてくれて、あと、アキラの自己中傲慢っぷりが、「ここまでくれば立派よアナタ!」――てなくらいにすさまじく、爆笑できるので読んでます。

あと、まんだらけと明輝堂で、読まなくなった同人誌を処分し、(…でないと部屋に新しい本を置くスペースがない!)ちょっと急ぐ用事があったのでバタバタと帰りました。

途中、CDショップに立寄って、ヒカルの碁のアニメOPED集を購入♪それとアルパ(インディアン・ハープ)の上松美香さんのアルバムもゲット♪


……ま、予想はしてたけど、オガヒカ・楊角・ル神がない!
やっぱマイナーだよなぁと苦笑しつつ、これからもネットで自分の好きなCP求めてさまよう予定です。



2003年03月08日(土) 明日はイベント♪

明日は久しぶりのイベントです〜♪
大阪に行くんですが。
1月のは仕事で行けなかったので、ホント久しぶり。

とりあえず、お目当ての乾×海堂のサークル2つの小説本(←重要)を買ってきます♪
あとは、ヒカ碁スペースで、オガヒカと楊角を探すくらい。
なのでゆっくり回れそうです。
好みがすごいウルサイ上に、小説本が好きという私の性質上、あまり大量に買わない…方かな。(友人みたく、箱詰めにはなったことがないもん)
ギャグだったら衝動買いするんですが、小説本は必ず中身を読みます。斜め読みなんで、長時間はやりませんよ。(こんなトコで速読鍛えてどーするよオイ)でも、あらかたの内容は掴みます。
新しく発見したサークルで、気に入ったら一気に大人買いはよくやります。…めったにないんですが。

最近は、ネット上のが、激好みな小説がたくさん読めるので、(スクロールが妙に早いのがちょっと自慢)同人誌の購入は減ってますね。イベントで見かけないカップリングでも、あまりの小説や設定の素敵さにすっ転んだカップリングもありますし。
ヒカ碁のオガヒカとシュートのル神がまさにそれ。あ、楊角もそうか。なんだ、今転んでるやつの殆どはネット上の小説から転んでるんじゃん。

ま、とにかく、ネットでも本でも、活字が大好き♪というコトです。

……あ、そうだ。SDの仙越のサークル、一個チェックしなきゃいけないトコあるんだった!(私にしては本当に珍しくマンガの方。だってここ、設定しっかりしてて、シリーズ長くて面白いんだもん…)

色々読むので、どーでも良い知識が頭の中に蓄積されてしまい、
「何でそんな事知ってるの?」
とは良く聞かれます。
とりあえず、苦笑いしながら「私の知識は殆どマンガか小説」と言っておきます。まさか同人誌と言って、ツッこまれても返答できませんから。(笑)
…でもね。そう言われて話す人もいるんですよ。相手によっては。そういう人はたいてい、私によって同人界に足を突っ込んでますがね(ニヤリ)。
まぁ、そこからハマルか、脱け出すかは本人の意思に任せてます。……でも、大抵は………ねぇ?(くくくくく……)

……この辺りが、友人から「元凶」と言われる所以だったりして(笑)。



2003年03月07日(金) 『PHOTOGRAPH 2』(ル神小ネタ)

つきぬけそうな、しかしくっきりと鮮やかに青い空。
気温は高いけど、どこかサラリとしているイタリアの夏は、この空のように陽気で鮮やかだ。
大家夫妻に、その印象を、下手くそなイタリア語で伝えたら、夫妻はにっこりと微笑んで、丁寧な英語で、こう言った。(まだイタリア語で説明されても分からなかったからな)
『イタリア人は、この空の色を何よりも愛していて、その気持ちのままにこう言うのだよ。「アズーロ」と。そして、我々を代表するジョカトーレ ディ カルチョのことを、「アズーリ」と呼ぶのさ。「アズーロ」は、イタリアの色なんだ』

そんなイタリアの空の下で、日本人の俺は「独逸の至宝」ことルディ=エリックと昼飯をかきこんでいる。なんとなくミスマッチで、何か笑えた。
「あ、ソウダ。お前ニ手紙が来ていたぞ。シュペーマン氏から渡しておいてくレと言って、頼まれていたんダ」
…おまけに、喋ってるのが日本語なんだから、なんだかなぁ。(笑)
ルディはエアメールを俺の前にすべらせた。
「…ん?大塚からじゃん」
差出人は大塚になっていた。…けど、これ赤堀の字だぞ。
「写真でも入っているんじゃないカ?手紙だけにしては、持った感触が固かったぞ」
「写真〜?何だよ今ごろ」
新生掛高サッカー部の報告でもしてくる気かね。…別に心配はしてないんだけどな。あいつらなら、俺や久保が残したスタイルにこだわらず、自分達のサッカーで、掛川のサッカーをするだろうから。
好奇心のまま、ベリベリと手紙の端っこを破る。
…あ、やべ。封筒の真ん中まで変に破れそうだ。中の手紙まで破れたかな。
「不器用者め。貸セ」
「あ、俺の手紙だぞ!」
ひょい、とルディは俺の手から手紙を奪い取り、器用にペリペリと封筒の端だけを綺麗にやぶり、中身を取り出した。
「ホラ、やっぱり手紙と写真も入って………っっ!!」

ルディは、その写真を目にして、固まる。
「こら、俺のだろーが。よこせ」
半ば強引に奪い取ろうとして、写真はルディの手に一枚だけ残して後はバラバラとテーブルの上に散らばった。……何だ。俺らが一年の時の写真じゃん。昼休みだったり、部活中だったり。あー、これなんか、新設校だってんで道具がなくて、サッカーのペナルティエリアの線をひくのに、一から距離測って大変だったやつだ。
しかしなんだってこんなものが今ごろ……。俺は、一枚の写真を握り締めて動かないルディを放っておいて、俺は手紙を読むことにした。やっぱり丁寧な、赤堀の字だった。





〔神谷、元気でやってる?
こっちは、…まぁ、相変わらずかな。みんな、サッカーしてるよ。
神谷がいなくなってから、新しい僕たちのスタイルを探してみんながんばってる。「俺たちがしているからこその、掛高のサッカーなんだから、以前のパターンに捕らわれるな!」…なんて、この前白石が怒鳴っていたよ。結構良い先輩になってきたよね。
平松は、大分キャプテンとして、チームの事を考えるようになってきた。以前は少しワガママで自分勝手なところがあったけど、やっぱり、キャプテンマークをつけると変わってくるね。(でも独り言をブツブツやる癖は変わってないよん♪ばーい、矢野)
田仲は、ゴール前の聖域を見出す、作り出す力はますます強くなっている。でも「本能」で動いてるっぽくて、メンタルは相変わらず不安定。
逆に安定しているのは馬掘かな。このところ視野が広くなったよ。馬掘と新田と佐々木の連繋がすごく良くなってる。
新田はラインをしっかりと保持してくれるから、僕も動きやすい。
佐々木は、新田だけじゃなくて、平松や馬掘とのコンビネーションも考えているようだ。
大塚と僕もがんばってるよ。…変わったのは、以前よりも、攻撃に加わる事が多くなったかな。大砲の田仲がいて、平松がいて、佐々木がいて、大塚、そしてオーバーラップして僕。それからミドルシュートを狙える馬掘。…下手すると、今までで一番攻撃的なチームになるかもしれない。(笑)
矢野は、ここで意外な才能を発揮してる。後輩を指導、育成していくのが上手いんだ。得意の喋りで、気がついたら、一年生たちをノセて練習している。うちの唯一の弱点だった層の薄さも、少しは安心できるものになるかもしれない。

そうそう、矢野といえば、一年の頃に写真にこっていただろう?写真の整理をしていたら、現像していないフィルムが出てきて、現像したら僕たちの一年生の頃の写真だったんだそうだ。
…それで、「久保も写ってるし、特別サービスだ」って、僕たち三年生の人数分、全部焼き増ししてくれた。(あのドケチがだぜ!俺は今でも信じられん(大塚))
だから、同封した写真は神谷のぶんだよ。神谷が写ってない写真もあるのは、そういうこと。久保の写真もあるから、たぶんハンスたちに見せたら喜ぶんじゃないかな?

それじゃあ、この辺で。
9月がきて、もうすぐ僕たちの最後の冬がはじまる。
どんな結果になろうと、この掛川高校に入ってからの三年間を、誇れるようなものにしたい。走れるだけ、走りぬこうと思う。
じゃあ、神谷、体に気をつけて。今度、掛川茶でも贈るよ。そろそろ飲みたいんじゃないかな。

……矢野が、何か書きたがってる。封筒の宛名も書いたし、切手も用意したから、矢野にこの手紙の投函も任せてしまおう。僕、磯貝先生に呼ばれてるんだ。



おっは――――――♪
神谷、元気か?!
同封した写真の焼き増し代は、俺のおごりだ!もらっとけ!
渡欧記念の特別サービスで、ある写真も同封した。どうするかはお前に任せる。ネガは久保がオシャカにしたから、もうそれ一枚しか残ってないスーパープレミアムものだぜ!!
最近後輩を手玉にして動かすの楽しくてさぁー♪今日も元気に一年生をシゴいてくるわvvじゃな♪〕







……手紙はこれで終わり。
皆の近況には満足したし、お茶の差し入れはマジ助かる。さすが、分かってるよなぁ、赤堀。
それにしても、矢野が送ったプレミアム写真って何だ?
多分、久保の写真だろうけど…………。



2003年03月06日(木) 『PHOTOGRAPH』(神谷小ネタ。神谷渡欧中)

渡欧してから、一ヶ月。
チームが世話をしてくれた下宿屋に住んでいるのだが、その小さな部屋にはあまり物が置かれていない。…まぁ、こっちに来てからすぐチームと合流してトレーニングと試合三昧の生活を送っているから、仕方ないといえばないのだ。下宿だから、食事は一階の共同リビングでとるし、居心地が良いから起きているときもだいたいそこ。……つまり、本当に部屋には寝るためにしか入ってない。
日本から持ってきた荷物もあまりないし。一目見て、「物のない部屋」そのものだ。

先日部屋を訪ねてきたマテウスは、やれ殺風景だの、趣味のないつまらない人間の部屋だだの、自分の部屋でもないのにさんざん文句を言って帰った。すると次に来たヴィリーが、小さなミニバラの鉢植えを持ってきてくれた。(どうやらマテウスが同じような内容を、独逸の面々に言ってまわったらしい)
「これくらいなら、世話も簡単だから」
少しは部屋もうるおうだろう、と言って渡されたそれは、鮮やかなオレンジ色のミニバラだった。ありがたく頂戴したのはいいが、カイゼルのバラ園から株分けしてもらってきたってオイ……。
毒の花粉でも撒き散らすんじゃないかとちょっと引いたが、存外それはカワイイ姿に似合わず結構丈夫だった。今ではしっかりと、この部屋の住人となって、がらんとした部屋に文字どおり花を添えている。
……どんな環境でも変わらないずうずうしさを、育てた人間(カイゼル)から受け継いだんだろうな。まぁ、このバラにとっては、良い事か。

昼からはオフなので、昼間にこのバラを見るのは久しぶりかもしれない。
……そう思いながら、ぼーっとバラにコップで水をやっていると、ノックの音。
『アツシ?お客様よ』
大家のシュペーマン夫人の声だ。…客?誰だよ。今日のチームメイトとの約束は夕方だから、まだ時間があるはずだぞ。でも婦人が取次いだって事は、マスコミ関連じゃねぇよな。
『客?誰?』
『ルディよ。ルディ・エリック。ドイツからのお客様』
――え。
『今行く!』
『早く下りていらっしゃい。庭に食事の用意をしておいてあげるから、ゆっくりお喋りするといいわ♪』
婦人は「ドイツからのお客様」が大のお気に入りだ。
…ま、俺の「独逸からの客」ときたらあいつら…プロのサッカー選手しかいないからな。カルチョ好きのシュペーマン老夫妻には願ってもない客だろう。
「それに、みんないい子ばかりよ♪」とは、夫人談だが……「いい子」ねぇ……。マテウスやヴィリーならそう言えるけど、カイゼルを見てもそう言うんだろうか。この人は。
今日は独逸サッカー界の「至宝」の訪問だ。今夜の夕食の話題はルディの話で決まりだな。


階下に下りた俺は、案の定シュペーマン氏に捕まっていたルディを改めて夫妻に紹介した後、夫人が用意してくれた外のテーブルセットへと向かった。
割と大きな木の下にあるそこは、イタリアの強い日差しを遮り、時折さらりとした風が吹く。……日本じゃ考えられないほど、こっちの夏は快適だ。
「イイ下宿だな」
「ああ。チームが紹介してくれたんだ。あの夫妻もサッカー好きだし、特にシュペーマン氏は語学博士でもあるから、早くイタリア語を覚えろってさ」
軽く喋りながら、ルディは軽く俺の手を握って引き寄せ、自分の頬と俺の頬を触れ合わせた。
こういうとき、外国って便利だ。多少触れ合っても自然だもんな。(日本じゃこうはいかない。せいぜい、一部の女子に喜ばれるくらいだ)

……ただ、ルディの目はそうは言っていない。
(もっと触れたい、キスしたい)
――って、言ってる。…ほんと、正直なヤツ。少し拗ねてる色があるけど、何でだろ?

『はい、お待たせ。ルディはパスタは好き?』
「?」
首をかしげるルディ。…あれ。こいつイタリア語はだめなのか。
「パスタ好きかだってさ」
俺が口をはさむと、ルディは夫人に振り向いて、ニッコリと笑って頷いた。出たな、マダム殺しスマイル。この一見「やんちゃな子供風」な笑顔のおかげで、ルディは通常のファンとは別に、お母さん世代から大いに支持されているらしい。
ルディの笑顔に大いに気をよくした夫人は、上機嫌なままパスタの他にサラダ、それからミネラルウォーターとブラッドオレンジを出してくれた。
『それじゃ、ゆっくりしていってねvv』
という言葉を残して、夫人は夫の待つリビングへと去ってゆく。
「…ま、とりあえず食おうぜ」
午前中のトレーニングで腹が減っていた俺と、朝早くにフランクフルトを発ってこっちに来たというルディは、夫人の自慢のソースをからめたパスタをひたすらかき込む事に専念した。



2003年03月05日(水) 『クローン』(楊海×伊角小ネタ)

中国と日本。海を隔てての遠距離恋愛。
現在は通信事情が良くなったおかげで、メールもやりとりできるし、携帯電話で声だって聞けるけれども。
――でも、お互いの肌を、熱を交わし合うこのひとときとは、比べものにならない。
そんな訳で、久しぶりの逢瀬は、自然に激しいものになっていった。

何度も、お互いの心と身体と、熱を分け合って、はじけて。
伊角は、激しく胸を上下させて、くたりと全身の力を抜いた。楊海も、肩で息をして、脱力したように伊角の胸に倒れこんだ。
楊海が汗に濡れた額を恋人の胸にすりつける。甘えたようなそれに、伊角はふわりと笑って、楊海の髪をそっとなでた。
「伊角くん……」
心臓の音を確かめるかのように、耳を胸に当てたまま、楊海は囁いた。
「なんですか……?楊海さん」
やわらかく答える伊角の声の振動を耳に感じながら、楊海はくすくすと笑う。
「なんかさ……すごかったよね、今日。俺は歯止めきかないし…伊角くんはいつにも増してソーゼツに色っぽかったし」
楊海の言葉に、伊角はほんのりと頬を染めながら、やっぱり笑った。
「そうですね……俺が女だったら、間違いなく妊娠したかも」
それくらい、楊海は自分に注ぎ込んだし、自分もそれを欲しがった。まだ、楊海が中にいるのに、その僅かな隙間から、ソレが流れ出ているのが、分かる。

「子供かあ……伊角くんにそっくりな子供だったら、ほしいなぁ」
「俺は……楊海さんに似た子がいいな」
じゃれあうような、言葉のやりとり。

「じゃあ、本当に作っちゃおうか」
「え?」
ひょい、と楊海は伊角を見上げた。
「今は、クローンって方法があるし。この前も、オランダの同性愛者がクローンで赤ちゃんを作ったって話だよ」
それなら、俺や伊角くんにそっくりの子供ができるよ?
どう?と首をかしげると、伊角は少し困ったような顔をした。
「本当に楊海さんと俺の子供なら欲しいけれど……クローンなら、欲しくないです」

濡れて額にはりついた髪をかきあげてやりながら、ゆっくりと、口を開く。
「クローンって事は、楊海さんと同じ姿になるって事でしょう?」
「…まぁ、そうらしいけど」
「だったら、なおさらですよ。俺が愛する楊海さんは、目の前にいる楊海さんしかいないから」
「?」
「俺はひとりしかいないし、楊海さんしか愛せない。…だから、もうひとりの楊海さんなんて、いらないんです。それに、かわいそうでしょう?そのもうひとりの楊海さんには、俺がいないんですから」
愛でるように、触れられる手。棋士の手らしく、右の指先だけは、堅い感触。
「俺のクローンができたって同じですよ。たとえ俺のクローンでも、あなたを愛するのは、きっと許せない」
男にしては細い腕が伸ばされて、楊海の背中にまわってきた。
めったに独占欲を表にしない伊角だが、いま彼が示してくれたのは、まぎれもないそれ。相手がたとえ架空の存在だとしても、その思いだけは、まぎれもない楊海への真実。

純粋すぎるほどの思いに、楊海は軽いめまいを覚えた。…幸せすぎて。
――こんなに、人に想われる事が、嬉しいものだとは、初めて知った。
「…そっか……そうだな。今のクローン技術じゃ、他人の卵子の提供が必要だし、出産も代理母に委任しなきゃならない。……君の遺伝子が他人の細胞と交わるなんて、俺もがまんできないかも」
君と交わるのは、俺だけだから。
楊海は誓うように、縛り付けるように、伊角の白い首筋に吸い付き、誓約の赤い跡をまたひとつ、残した。
眉をひそめてそれを受ける伊角は、その甘い痛みに酔うかのように、ほう、と息をつく。

「それにね……楊海さん。楊海さんがここにいるのは、楊海さんのお母さんとお父さんがいたからでしょう?」
天文学的な確立で生まれる、一人の人間。「楊海」は、その両親があってこその、奇跡のような存在。
「うん?」
「その奇跡を否定するような気がして……クローン技術自体を、受け入れる気になれないんですよ」
…古い人間だって、言われますけど。
でも、楊海につながる存在を否定することは、できない。

伊角は、楊海の背に回していた腕をほどき、両手で恋人の顔に触れた。
「俺達は、男同士だから、お互いの血を引く子供は産めないけれど」
…本当は、分かってる。無理にでも別れて、女の人と結婚してもらった方が、楊海の為だと。……頭では。
しかし、分かっていてもできないほど、自分はこの存在に焦がれてしまっている。
「でも、未来へつながる存在を残すことは……できますよね?」
今にも泣きそうな伊角の表情に、楊海は微笑んで、目から溢れそうな涙を唇でぬぐった。彼の悲しみを、こぼさずに受け止めるのは、自分だというように。
そして同じように恋人の頬を、両手で包み込んで、目を合わせる。
「そうだよ。俺はあの箱の中に。君は、これから幾人と碁を打ってゆく、その棋譜の中に」
それは確かに、残る筈だ。自分たちが行けない、未来まで。そしてその先にある、神の一手までも、繋がってゆくのだ。きっと。
ふたりが生きてきた証は、そこに、残される――――。

ふたりは、どちらともなくお互いを求め、ゆっくりと、深く、キスをした。
その動きが、繋がったままの敏感なソコを刺激してわずかに身じろいでも、それすらも、愛おしむように。









<おまけ>

「……ね、お腹、痛くない?」
「////っ、…こんな時に何てコト言うんですかアナタはっっ!!」
「や、伊角くんがお腹壊さないかって、心配したんだよ。何しろ、子供ができるか〜ってくらい、中にしちゃったし」
「楊海さんっっ!!」
「やっぱりお風呂行こう。そこでゼンブ洗ってあげるから。ここも、そこも、掻き出して…撫でて…キレイにしてあげる♪」
「風呂くらい一人で………っっっ!!」
「ほら、立てないでしょ?やっぱりお姫様はだっこされてなきゃvv」
「………………………////っっ」
「キレイになったら、ベッドのシーツも取り替えてあげるよ。ぎゅっと抱きしめてあげるから、一緒に眠ろう」
「……離さないで、くれます?」
「頼まれても、離せない」
「……なら…………良いデス……………」

「うん♪今日はいっぱいしたから、一休みして、また明日の朝、愛し合おうね♪朝日の中っていうのも、燃えるよ♪」
「……………………今ちょっと後悔したかも……………」



2003年03月04日(火) 『初心者マーク 3』(オガヒカ小ネタ)

天婦羅屋の「かんの」の料理は相変わらず美味しかった。ヒカルと緒方は旬の素材を使った天婦羅に満足し、主人自ら朝掘ってきたという筍ご飯に舌鼓を打った。主人の話では、もう少ししたら、山菜をメインにしたコースを、夜の時間に用意するらしい。その話に、ヒカルは一も二もなく予約を入れようとした。

「…おい、俺の都合はおかまいなしか」
「え、この日は大丈夫だよ」
「何?」
「だってこの日、本因坊リーグ戦じゃん。俺の対戦相手、緒方さんだもん」
ヒカルはけろりと笑ってみせる。
「…だからさ、検討を早く終わらせれば、ここでゆっくり食事できるよね」
邪気のかけらもない様子に、緒方は眉をひそめた。
まったく、こんな事ををヒカル以外の人間がやったのだとしたら、明らかに盤外戦もいいところだ。その日、お互いのどちらかが勝者となり、一方は間違いなく敗者となるのに、そんな状態でメシを食おうという。桑原本因坊が言ったのなら明らかに作為あっての事だが、ヒカルの場合は、全くの天然だ。
……だからこそ始末が悪い事もあるのだが。

「じゃあ、その日はお前が運転しろよ」
「えーなんで」
「せっかくの免許だ。練習する機会を作ってやってるんだから、ありがたく思え」
「……緒方さん、お酒が飲みたいだけじゃないの?」
「それもあったな。主人、美味い地酒を用意しておいてくれ」
主人は笑って了解した。ヒカルは不満気に口をとがらせる。
「ずっるー」
「早く大人になることだな、未成年」
緒方はニヤニヤと笑い、先程の意趣返しをしてみせた。
「今年の10月で二十歳だよ!!…ったくもう」
自分の童顔を気にしているヒカルは、緒方の狙い通りに反応し、拗ねてみせる。…だから、そういう所が子供っぽく見られるのだが、緒方はあえて何も言わない。ヒカルのそんな表情も、結構気に入っているので。わざわざ指摘して自分の楽しみを減らすなどという愚行はしない。

「あ、じゃあさぁ、運転は俺がするから、緒方さんの車運転させてよ」
「何?」
…またもや、緒方の眉がつりあがった。
「気をつけて運転するからさ………ダメ?」
カウンターに頬をつけて、下から緒方の顔を上目遣いに覗き込んでくる。
最近は少年らしさも抜け、「可愛い」というより「綺麗」という印象が強くなったヒカルだが、首をかしげ、緒方を見上げるヒカルは、間違いなく可愛らしかった。
……一瞬、緒方が手拍子で頷きそうになったくらいに。店の主人が夜の仕込みがあるから…と厨房へ下がって行ったのは、幸いだったかもしれない。

「………………」
「ねー、いいだろ?」
もう少しそんな恋人を見ていたい、と思う緒方の男心を、誰が責められようか。
「俺さ、RX−7、一度運転してみたかったんだ」
結局は願いを聞いてやるつもりだが、焦らす作戦に出た。

ヒカルは焦れて緒方の腕を掴んで揺する。
「お願いだから……いいでしょ?」
……このヒカルの台詞が、緒方の脳の中で別のシチュエーションで再現されていることは間違いない。

「…RX−7に乗ってても、煽られたりしないように初心者マーク貼るからさぁ」

この一言に、緒方は妄想から帰ってきた。
初心者マーク。
そう。黄緑色と黄色に彩られた、若葉マーク。
アレを、自分の愛車、ヴィンテージレッドの硬質な輝きを誇るあの美しい車体のフロントとテールに貼るというのか。あの、若葉マークを。
緒方は黙って席を立った。

「緒方さん?!」
慌てて追ってくるヒカルがついてくるのをさりげなく確認しながら、緒方は会計を済ませ、外へ出た。
スタスタと、若葉マークが目に眩しいスターレットへと向かう。
運転席の直前で、足を止めて、振り返った。

「ヒカル」
「……え?」
緒方は無言で手を伸ばし、ヒカルはちょっと考えて、車のキーを渡した。
緒方はそのまま運転席に座ってしまったので、ヒカルは反対側の助手席に座る。緒方は相変わらず黙ったままで、窓を開けて、煙草に火をつけた。(店の中では吸えなかったので)
ヒカルはちょっとマズかったかな、と後悔した。緒方が自分の愛車をこよなく愛しているのは、棋界でも有名な話である。そしてその車は、誰であろうと、運転はさせない、というのも定着した伝説だ。
「……ごめん。もう、緒方さんの車運転したいなんて、言わないから」
だから何か言って。
――この沈黙は、痛すぎるから。

緒方は紫煙を吐き出すと、先程までの様子とは違い、俯くヒカルの頭に、手を伸ばした。
「…別に、お前に運転させないなんて、言わねぇよ」
もう一度煙草をくわえ、深く吸ってから、吐き出す。
「ただし、一年間待ってくれ」
「うん…やっぱ初心者じゃ、危ないよね」
「違う」
「へ?」
意外な返答にヒカルは顔を上げ、緒方は煙草をもみ消した。
「運転技術からいけば、お前は芦原なんかよりずっと丁寧な運転をするし、交差点のど真ん中でエンストさせるアキラ君よりも、余程安心できる!」
緒方の目は真剣だった。
「だが、ヒカル!」
その真剣さに、つられたヒカルも息をのむ。

「俺のRX−7に初心者マークを貼るのだけは、勘弁してくれ!!」

………色をつけたら白く染まりそうな、沈黙が、時を止めた。

そして、爆笑。
「あはははははははははは!!!…く…苦しい……っ…くくくくく……」
「こらヒカル!笑い事じゃないぞ!」
爆笑するヒカルをよそに、緒方は反論しながらエンジンをスタートさせ、車を走らせ始めた。
「…や……そ、そりゃそうだ……RX−7に初心者マーク……あはははは!!」
腹を抱えて笑いころげた後、こみ上げてくる笑いを何とかおさめ、ヒカルは涙を拭きながら頷いた。丁度、赤信号で車が止まる。
「わ、分かった……じゃ、その日は対局の後、この車でデートしようね♪」
「デート?」
ヒカルはにこりと笑った。
「好きな人とドライブして、美味しいものを食べに行くのは、デートって言うんじゃない?違う?」
緒方も笑った。
「…違わないな」
その答に、ヒカルはひょい、と体を伸ばして、緒方の唇に触れるだけのキスをした。

「安心してお酒飲んでいいよ。緒方さんが寝ても起さないような運転するからね」
「ほう……ドリフトもできない初心者が生意気な」
「…だから普通に運転するのにドリフトなんて必要ないってば!」


信号が青に変わり。
初心者マークをつけた白いスターレットは、スムーズに発車した。



2003年03月03日(月) 原点に(今週のヒカ碁・ネタバレ注意)

はい、やっぱりネタバレなんで注意してください〜〜。


今週のヒカ碁です!!

「秀策はお前の何なんだ?」
「何故…そこまで」


高 永夏!!よくぞ言ってくれた!!
先の言葉を投げかけられた時の、あの、ヒカルの顔!!!!
…そしてヒカルは、自分の内に問いかける。
(秀策(佐為)は、俺の…何?)
(何故……俺は、碁を打っているの………?)
答はもう、ヒカルの中にあります。

「俺が…碁を打つのは………」
そう言いかけた時のヒカルの表情は、とても静かなものでした。
高 永夏が問いかけた言葉は、ヒカルにとって、まさしく原点に返るきっかけとなるような言葉ではなかったでしょうか。

これでもう、いつものヒカルですよ♪
対抗心ではなく、敵討ちめいた、怒りではなく。
自らの中に、碁を打つ理由を、佐為とのつながりを見出したのですから。
あとは、碁盤に向かって、ヒカルの宇宙を、作り出すだけ。
……いかん、ここにきて、永夏×ヒカルも思い付く私………。
いや、イケますよ。書けますよ。この北斗杯の決着如何ではvv

後半のこれらのシーンに目がいって、前半の、ヒカルが大将になったことでざわめく観客たちが気にならなくなりました。
観客といえば、いましたね!!筒井さん!!
童顔は相変わらずだけど、やっぱり天然系の美人さんです♪連れが加賀じゃなかったのは、ちょっと残念ですが。
高校でも、囲碁部を作って、がんばっているのかな。きっと、今回の連れは、囲碁部の友人なのかもしれません。
面白かったのは、北斗通信の上司と部下のやりとり。いつのまにか日本チームに肩入れする上司、少年達のビジュアルに、いつしか中国・韓国・日本すべてを応援するようになった部下。…一方は囲碁で。一方はミーハー魂でこうなったのですが、妙に微笑ましい一幕でした。

…それにしても、相変わらず感情が素直だね、社………三人の中で一番年上なんだけど、一番受度が高いのも彼じゃないだろかと見てしまってます。(私、社受だから……)
アキラはアキラで、例の台詞に対するヒカルの答を聞くのに、耳ダンボになってましたね(笑)。きっと、あのシーンで、ホントに耳が片方大きく描かれていても、違和感がなかったんじゃないでしょうか。

来週はお休みだそうなので、いよいよ次回、決戦です!!



2003年03月02日(日) はーしんどかった。

会議だ、お茶のお稽古だ、謡の稽古だ、機関誌の原稿だーーー、と、テンパってましたが。(特に機関誌の原稿がね……とほほ)

どーにかこーにか終了しました。

また明日からは別の原稿にとりかからなきゃですが。(あー、取材に行かないと書けねーなー、あの原稿は)
とりあえず終わったので、明日からまた元気に妄想(ネタ)ろうと思ってマス♪

オガヒカの続きも書きたいし♪
ル神の小説(小ネタじゃないやつ)書きたいし♪
キリリク書き上げたいし。(プロットはあがった)
笛のドリーム小説をいーかげん完結させたいし。(初ドリーム書きあがるのにどれだけ時間かかってるんだか……)

書きたいことはたくさんあります。
…でも時間が限られるから、これまで通り、ぼちぼちやっていきます。


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