エンターテイメント日誌

2005年12月31日(土) 2005年総決算!ベスト30

2005年に劇場公開された映画のベスト30を披露する。「トニー滝谷」「運命じゃない人」は見逃した。

01. スター・ウォーズ エピソード3
02. バットマン・ビギンズ
03. サマータイムマシン・ブルース
04. キング・コング
05. チャーリーとチョコレート工場
06. オペラ座の怪人
07. コーラス
08. ロング・エンゲージメント
09. 海を飛ぶ夢
10. マイ・リトル・ブライド
11. ティム・バートンのコープス・ブライド
12. NANA
13. ALWAYS 三丁目の夕日
14. 愛についてのキンゼイ・レポート
15. エターナル・サンシャイン
16. メゾン・ド・ヒミコ
17. 自由戀愛
18. 真夜中の弥次さん喜多さん
19. ミリオンダラー・ベイビー
20. SAYURI
21. クローサー
22. シンデレラマン
23. サイドウェイ
24. レイ/RAY
25. 大統領の理髪師
26. キングダム・オブ・ヘブン
27. エレニの旅
28. カナリア
29. THE JUON / 呪怨
30. カンフーハッスル
次. 亀は意外と速く泳ぐ、亀も空を飛ぶ

総括としては今年の日本映画(というか東宝)は沢山のヒット作に恵まれ、実に活気に満ちてそれはそれで嬉しいことだがその反面、大傑作と言える作品は乏しく小粒な佳作が多かったという印象である。では個人賞に移る。

主演女優賞:ムン・グニョン「マイ・リトル・ブライド」
      ダコタ・ファニング「宇宙戦争」
助演女優賞:堀北真希「ALWAYS 三丁目の夕日」
      蒼井優「亀は意外と速く泳ぐ」
      宮崎あおい「NANA」
      大後寿々花「SAYURI」
主演男優賞:イアン・マクダーミド「スター・ウォーズ EP3」
助演男優賞:オダギリジョー「メゾン・ド・ヒミコ」
バーチャル演技賞:コング「キング・コング」
監督賞:ティム・バートン「チャーリーとチョコレート工場」
オリジナル脚本賞:ジョージ・ルーカス、ジョナサン・ヘイルズ「スター・ウォーズ EP3」
脚色賞(原作あり):上田誠「サマータイムマシン・ブルース」
撮影賞:ブリュノ・デルボネル「ロング・エンゲージメント」
美術賞:ヨルゴス・パッツァス、コスタス・ディミトリアディス「エレニの旅」
衣装デザイン賞:トリシャ・ビガー「スター・ウォーズ EP3」
編集賞:ロジャー・バートン「スター・ウォーズ EP3」
視覚効果賞:ILM「スター・ウォーズ EP3」
音響効果賞:ベン・バート「スター・ウォーズ EP3」
作曲賞:ダニー・エルフマン「チャーリーとチョコレート工場」
主題歌賞:中島美嘉“GLAMAROUS SKY”「NANA」
歌唱賞:エミー・ロッサム「オペラ座の怪人」
長編アニメーション賞:「ティム・バートンのコープス・ブライド」

なんだか女優賞については毎年、美少女コンテストみたいな様相を呈してきたが気にするな。厳選なる選考を経た結果である。



2005年12月24日(土) なんて素敵にジャパネスク〜SAYURI

「なんて素敵にジャパネスク」は氷室冴子が書いた少女小説(集英社コバルト文庫刊、1978に富田靖子主演でテレビドラマ化。漫画版は白泉社の少女漫画誌「花とゆめ」に連載)だが、勿論今回のレビューとは些かも関係ない。映画SAYURIのお話である。

SAYURIは日本ではトンデモ映画として認知されている。そりゃそうだろう。舞台は日本なのに、映画の大半はハリウッドのスタジオで撮影された。大体監督のロブ・マーシャルは映画「シカゴ」のキャンペーンで来日予定だったのに、当時香港などで猛威を振るっていた重症急性呼吸器症候群(SARS)を怖れてキャンセルするような人である。つまり香港と日本の位置関係さえ分かっていないのだ。そんな監督が何処まで日本文化を理解しているかは推して知るべしである。

主要キャストにチャン・ツィイー、コン・リー、ミッシェル・ヨーなど中国・香港を代表する豪華女優陣がキャスティングされたことも各方面から痛烈な批判を浴びた。中国でも憎むべき日本人を演じるなんてけしからんとチャン・ツィイーが槍玉に挙げられている。

筆者の評価はB。なかなかどうしておもしろかった。なんと言ってもスリリングなのはコン・リーとチャン・ツィイーの対決である。コン・リーはチャン・イーモウ監督の「紅いコーリャン」で映画デビューを飾った。その後イーモウ監督の寵愛され「菊豆」「紅夢」「秋菊の物語」「活きる」「上海ルージュ」と立て続けに出演。一時期ふたりは恋愛関係にあると噂された。別れる時には相当揉めたそうである。泥沼の不倫劇を精算した(筆者推定)チャン・イーモウはコン・リーとの共同作業も打ち切り、「初恋のきた道」のヒロインに当時学生だったチャン・ツィイーを大抜擢する。その後「HERO/英雄」「LOVERS/十面理伏」と両者の蜜月は続く。つまりSAYURIはチャン・イーモウ監督作品の新旧ヒロインが火花を散らして対峙するという構造になっており、その虚実をない交ぜにした展開がスリリングなのだ。実に憎いキャスティングと言えるだろう。ちなみにコン・リーとチャン・ツィイーはどちらもウォン・カーワイの「2046」に出演しているが、映画の中で顔を合わすことはなかった。今回が実質上初共演である。コン・リーの相も変わらぬ美しさ、そして内面から溢れ出る激情の表現が実に見事であった。

中国人が日本人を演じることを批判するのは甚だナンセンスである。美は全てを超越するのだ。では批判者にお尋ねしよう。日本人の中で彼女たちに匹敵する美貌と演技力を兼ね備えた女優が果たして現在存在するだろうか?原節子や山口淑子、京マチ子、高峰秀子、香川京子、岡田茉莉子、若尾文子といった麗しい大女優たちが活躍した日本映画の黄金期は風と共に去ったのである。SAYURIに憤りの矛先を向けず、日本映画界の人材不足を嘆きたまえ。

SAYURIの美術装置、衣装などは豪華だし、ジョン・ウイリアムズの音楽も格調高く美しい。当然日本人の感覚からいえば疑問符の描写は多々あるが、筆者には余り気にならなかった。大体この映画を日本の京都を舞台にした物語だと信じて観るから違和感があるのだ。それは明らかな誤解である。この作品は欧米人が夢に描くジパングという国の”都(ミヤコ)”という都市を舞台としたファンタジーである。「大阪」なんて台詞が劇中にあるが気にするな。現実の空間に当てはめてみる必要は全くないのである。この世には存在しない異次元空間、パラレルワールドで展開する物語だと想えば腹も立つまい。

えっ? SAYURIを馬鹿にしてるのかって?いえいえ、トンデモない。大いに褒めているのですよ。ハリウッドの大作でこれだけ主役・準主役級の役全てがアジアの俳優で固められた作品は前例がない。世界にアジアン・パワーを示す良い機会である。是非多くの人々に観て欲しいと想うのである。



2005年12月17日(土) すげーぜ!ピーター・ジャクソン

ピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」を観た。・・・・・圧倒された。凄い。凄すぎる!評価はA+である。

ピーターは8歳の時に親に買ってもらった8mmカメラで短編映画を撮り始め、9歳の時にテレビで観た「キング・コング」(1933)に衝撃を受け映画監督になることを決意した。そして12歳の頃、自宅でダンボールを用いてミニチュアを作り「キング・コング」のリメイクを試みたが未完に終わったそうだ。

「キング・コング」の上映時間は3時間8分。当初予定されていた2時間半よりも30分延びたことで、製作費も増大。1億7500万ドル(約205億円)から2億700万ドル(約316億円)に跳ね上がった。「タイタニック」「スパイダーマン2」を超える映画史上最高額である。超過分は一部監督自ら負担したという。

そのピーターの執念がフィルムに乗り移ったというか、才気迸る映像の洪水にただただ呆然と立ち竦むしかないといった印象だ。

ピーターは実は「ロード・オブ・ザ・リング」の撮影前にも「キング・コング」の製作を企画。だが、当時は知名度も低くスタジオから拒否された。結果的にはそのときにもしもGOサインが出ていても、これだけの予算もかけられなかったし、CG技術も今ほどには発展していなかったわけだから、作品にとっては幸運だったと言えるだろう。

上映時間が長いので物語が停滞する場面がないわけではない。特にコングが登場するまでの前半は些か退屈する。しかし、コング出現以降は正に怒濤の展開。T-レックス3頭との死闘も凄まじいし、ラプトル、プテラノドン、プレシオサウルス、ステゴザウルス、巨大トカゲ、巨大ムカデなど恐竜やモンスターがこれでもか!とウジョウジョ登場する映像は壮観である。登場人物とCGキャラクターとの合成がしっくりと馴染んでないシーンもちらほら散見するが、そんなことは気にするな。些細なことである。

舞台がニューヨークへ移ってからも、画面に目が釘付けである。息つく暇もない。この映画、殆どニュージーランドロケで実際には余りニューヨークで撮ってないんじゃないかな。CGやビガチュア(巨大ミニチュア)で丸ごと1930年代のニューヨークを再現したという感じだ。もうそのリアリティには恐れ入った。エンパイア・ステートビルで雄叫びを挙げるコングの雄姿は美しく感動的だ。

モーション・キャプチャ(そのデータを元にCGアニメーターがキャラクターに動きをつける)でキング・コングを演じたアンディ・サーキスが素晴らしい。表情豊かで想わず感情移入をせざるをえない愛すべきキャラクターづくりに成功している。彼が演じたゴラムと共に永遠に映画史に輝き続けることだろう。彼のパフォーマンスは演技賞というカテゴリーには入らないので、ぜひアカデミー協会はアカデミー特別賞を与えるべきだろう。ゴラムはMTVムービー・アワードでヴァーチャル演技賞を受賞しているが、今回も間違いなくコングが受賞するだろう。

感情表現が繊細なナオミ・ワッツも文句のつけようがない。堂々たるヒロインである。「マルホランド・ドライブ」(2001)以来彼女のファンを自認しているが、今回の彼女のパフォーマンスは今までで最高のものだ。

筆者は「キング・コング」の1933年版も1976年版も観ているが、この物語を面白いと想ったことは一度もない。まあ所詮は「オペラ座の怪人」「ノードルダムのせむし男」「シラノ・ド・ベルジュラック」などと同様の<美女と野獣>ものである。コングへの思い入れも皆無だ。そんな筆者が2005年版は時を忘れて夢中になったのだから、この映画はよっぽどの傑作である。必見。

ピーター・ジャクソンは今回の2005年版を観て映画監督を志す少年少女が現れたら嬉しいとコメントをしている。間違いなくそうなるよ、ピーター。



2005年12月10日(土) 仄暗い水の底からアンニョンハセヨ、クムジャさん。

日本映画「仄暗い水の底から」のハリウッドリメイクである「ダーク・ウォーター」の評価はBである。日本では興行的に完全にコケてしまったが、出来は悪くない。舞台となるアパートをNYのルーズベルト島に設定したのは秀逸である。街の寂れた雰囲気が作品によく調和している。ただ、リメイクは所詮二番煎じであり、オリジナルを越えるものではなかった。オリジナル版の中田秀夫監督の方が水の扱い方が上手い。

さて、韓国映画「親切なクムジャさん」だが、こちらの評価はC。パク・チャヌク監督の復讐三部作の掉尾を飾る作品だが、第二作「オールド・ボーイ」の方が遙かに格が上だ。昨年11/13の日誌で、筆者は「オールド・ボーイ」の評価をAAとしたが、あの周到な復讐劇と比較すると今回の主人公の計画は詰めの甘さが目立ち、意外性に乏しい。はっきり言って詰まらない。今回は物語に創意工夫が見られず、監督のエログロ嗜好だけが前面に表出してしまった印象が強い。特に後半、誘拐殺人犯をクムジャさんが拉致した後に犯人の被害者家族を集めその処遇について延々と議論したり、一人ずつ私刑執行する過程が冗長で退屈この上なかった。描写も悪趣味で下品。前作は日本の漫画が原作であったが今回はオリジナル作品であり、その辺りに作品の出来に極端な落差がでた根本理由があるように想われる。結局この映画を観る価値は、世界一の美女であるイ・ヨンエの美貌に酔いしれる為だけにあるといっても過言ではない。



2005年12月03日(土) 花より三丁目の男子

堀北真希が可愛いのでテレビドラマ「野ブタ。をプロデュース」を第一回放送から見始めた。しかし、ドラマの出来が余りにも酷すぎて第2回ではや挫折した。大体原作ではキモチ悪いほどおどおどしたデブ男であるはずの<野ブタ。>をテレビでは美少女が演じるのだから説得力がないわな。演技力が欠如したジャニタレも鬱陶しいし。

そういう訳で今年の秋のドラマはTBSの「花より男子」の圧勝である。これは面白い。まず何てったって脚本の出来が良い。出演者では花沢 類を演じる小栗 旬が凄い。いやはや参った。まさにはまり役。映画「ロボコン」(2003)のあの少年と同一人物とはとても想えない。小栗はこのドラマで大化けした。

しかし基本的に筆者には野郎への興味はないので、可憐な堀北真希ちゃんの話に戻って、彼女が出演した「ALWAYS 三丁目の夕日」について語ろう。漸く本題だ。

「ALWAYS 三丁目の夕日」は文句なしに傑作である。評価はB+。なんでAにしないのかと言えば筆者は基本的に「寅さん」シリーズみたいな人情話が嫌いだからである。しかし、そんな人間にも有無を言わさぬ説得力、魅力がこの映画には詰まっている。文句なしにと言いながら一言だけ苦言を呈するなら、これ、原作の漫画はシンプルに「三丁目の夕日」なんだよね。誰がALWAYSをくっつけたの??あのスピルバーグの大駄作「オールウェイズ」を想い出しちゃうじゃないか。あ〜気分悪い。

この映画の堀北真希は素晴らしい。きらきら輝いている。青森から集団就職で上京してきた素朴な娘役をほっぺを真っ赤に染めて好演している。あと出色なのは堤真一。今年は映画「姑獲鳥の夏」「ローレライ」「フライ、ダディ、フライ」など堤の当たり年だったが、彼の演技力が最も際立っていたのはこの「三丁目の夕日」であろう。良い役者だなぁと改めて惚れ惚れと観た。余談だが堤は劇団☆新幹線の「吉原御免状」に客演し、これまた名演技、名舞台であった。

山崎貴監督の前作「リターナー」は日本映画にしてはCGの特撮を頑張ってはいたが、脚本がスカスカで、物語とVFX(特撮)が有機的に結びついているとは到底想えなかった。「リターナー」はあくまで主役がVFXだったが、一転「三丁目の夕日」では物語が主役でありVFXは裏方に回って人間ドラマに奉仕する役割を果たしている。ここに山崎監督の作家としての成熟を感じた。

「ジュブナイル」「リターナー」でも山崎監督と組んだエグゼクティブプロデューサーの阿部秀司は昭和の時代を描く映画を撮ることに当初難色を示していた山崎監督に「ジェームズ・キャメロンだって『ターミネータ2』の後に『タイタニック』を撮ったじゃないか。お前も未来ばっかりに目を向けずに一度過去に戻ってみろよ」と説得したそうだ。けだし名言である。

洗練されたCGの技術によって鮮やかに昭和33年という時代が再現されている。特に建設中の東京タワーの造形は見事と言うほかない。ただ残念だったのは街中を走る市電の中の乗客が微動だにせず、明らかにCGだとバレバレだったということくらいか。


 < 過去の日誌  総目次  未来 >


↑エンピツ投票ボタン
押せばコメントの続きが読めます

My追加
雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]