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人はいくらでも怠惰になれる。
そうすると、今まで当たり前にできていたことがだんだんと難しくなって、どんどんとハードルが上がっていって、言い訳ばかりがうまくなっていく。
この4年間、心底、感じた。
ちゃんと向き合うことができなくなると、何もかもがいい加減になってしまう。そして、ここでも言い訳装置がカチッと作動する。どうにもこうにも、厭になる。
そして、やっと。
言い訳装置、スイッチ、オフ。
構成の長けた本を読むと、ぐぐっとくる。
ああ、うまい。やられた。
そんなことを感じた3冊。
どれも軽い本だけれど、構成も読後感も良かった。
初めて読んだ有川浩は『阪急電車』
一時期、阪急電車にのって仕事に通い、休みがあれば、やっぱり阪急電車で、神戸に行ったり、京都に行ったり、そんな頃があった。
懐かしさで手に取り、駅ごとに物語が進む短編集というのに、ぐっと惹かれた。
電車が駅に着くごとに、どんどん人は入れ替わっていくけれど、その一人ひとりに、人生があって、それぞれのドラマがある。乗り継いでいく乗客がそれぞれが短編の主役で、次々に重なりあっていく。
ああ、この物語どうなるんだろうと思いを引っ張られた後、電車は「折り返し」。なんてうまいんだ!と感嘆。短編1つ1つは、少女漫画かもしれないけれど、構成の妙に満足。
久々に若だんなシリーズ(?)を手にする。
「しゃばけ」シリーズ(何と!もう)第八弾『ころころろ』(畠中恵)
これも、物語の縦糸横糸、軽妙かつ巧妙にみっしりと編み込まれていて、たっぷりと楽しんだ。シリーズものは、長くなるとマンネリ化してだれてくるけれど、未だ、そんな気配は感じない。ひとつひとつが短編として成立し、かつ、突如失明した若だんなの物語が連綿と続いていく。
妖たちは若だんなの光と取り戻そうと奔走する一方で、仁吉が小さな女の子に懐かれたり、佐吉夫婦の話が語られたり。テンポがいいからあっという間に読み終わってしまうけれど、何か、いろんな事がぎゅっと詰まってる。
いつものように、満足して本を閉じる。けっこう、幸せ。
『植物図鑑』(有川浩)は、丁寧な本だ。
物語の出だしが、ちょっと『きみはペット』みたいでそこから一歩進むのに、数日かかったけれど、1章1章がライトなんだけれど、丁寧だ。全10話とカーテンコール2話。装丁は可愛いらしくて、そして見返しには植物図鑑よろしく、物語のテーマとなる“雑草”の写真。『阪急電車』も『植物図鑑』も恋愛小説。特に『植物図鑑』はべたべたの恋愛小説。
全然話は違うけれど、突然、オンラインノベル(恋愛系)にはまってしまうことがある。そんな時は、とにかく終始読んでいるから、そのうち、どれもこれも似通ってるなあとも思ったりする。(というか、自分の嗜好で選んで読むのだから、狭い嗜好の中で、どうしてもシチュエーションが似てくるんだろうけれど。)
で、そんな中で、やっぱりものすごく面白いものもあれば、とことん面白くないものもあって、それはなぜかと考えると、最終的には物語の構成だと思う。で、こんなに面白いのに、それでもプロとして成立しないのはなぜかと考えると、それもやっぱり構成力の違いだと思う。文章の上手い下手とか、客観化できてるかどうかとか、もちろんいろんな要素はあるけれど、私は構成力の有無にこだわる。
だから、どんなに物語が甘くて、読者を選ぶ(らしい)小説だと言われても、『阪急電車』も『植物図鑑』もプロの小説だ。ここ最近の荒れてすかすかないつもの私の読書のように、読み捨てて終わりじゃなくて、どちらも、ちゃんと自分の記録に残したいと思って、何とか向き合っている。
まだリハビリ中なので、物語の細部まで集中して、自分の思いを書くことは難しい。(ちょっと言い訳装置)ただ、物語云々よりも、この人(有川浩さん)は故郷がちゃんと好きなんだなあと、しっかり心に残っている。
先日読み終わった『妖精の女王』もちょっと目新しい、現代的妖精譚なので、ここに記録しておきたいと、今は思っている。(シィアル)
『ころころろ』 著者:畠中恵 / 出版社:新潮社2009
『阪急電車』 著者:有川浩 / 出版社:幻冬舎2008
『植物図鑑』 著者:有川浩 / 出版社:角川書店2009
2006年03月10日(金) 『高慢と偏見』
2003年03月10日(月) ★夢の図書館 春休みのお知らせ
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管理者:お天気猫や
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