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訳書は岩波版のみ読んだ。 オースティンの作品は他に読んでいない。 映像はBBCのドラマ、そして映画の新作、『プライドと偏見』。 加えて『ブリジット・ジョーンズの日記1・2』、 谷崎潤一郎の『細雪』は原作と映画を。 タイトルは忘れ去ったが、ハーレクインロマンスの数々。 まだ他にもあるのだろうけど、思い出せない。 『エマ』は、映画をテレビで見せてもらったばかり。 そういえば、メグ・ライアン主演の映画『ニューヨークの恋人』で 秘書役のダーシーという女の子が出てきたが、あれもこの関係?
欧米の知的な人々が、何かにつけて引きあいに出す有名作品。 イヤミでなく、これまで日本の若い人たちには忘れ去られていた作品。
ダーシーといえばエリザベス、 エリザベスといえば、ダーシー。
いつかは読みたいと思いながら、上巻で数年経過してしまい、 映像を頭に入れてから再度読み直し、読み終えた。 だから頭のなかに、複数のエリザベスやダーシー、ジェーンがいる。 なぜかリディアは一人しかいないのだが(笑)。
ダーシーとエリザベスの主役ふたりがロマンスを成就させるのが小説としての ヤマ場ではあるのだが、文学作品としてどうしても欠かせない人物をひとり選べと言われれば、 私にとっては迷わず、エリザベスの父、ベネット氏である。
紳士階級のベネット氏には5人もの娘がいて、妻の生きる目標は娘たちの結婚(狩猟レース)である。性格の合わない妻には何も期待していない。 ベネット氏の望みは、誰にも邪魔されず読書のできる時間。
上の娘ふたりは器量も頭もよく、しかも長女のジェーンは善良の化身。 田舎に越してきた裕福で善良な美青年ビングリーと相思相愛になる。
父の一番のお気に入りは、主人公の次女エリザベス。 母にとっては、もっとも理解しにくい娘である。 彼女が大金持ちのダーシーを射止め、ラストでは誰よりもリッチになる。 エリザベスとダーシーの関係は、上に書いたように、 ハーレクインロマンスの典型的パターンの礎を築いたともいえる。 大金持ちだがどこか取っつきにくく背の高い独身男性、 意地っ張りで魅力的だが、男性よりも格段に貧しいヒロイン。
そして三番目のメアリは変わり者で不器用な頭でっかち、 末っ子のリディアはうわついた男好きのお調子者。 四番目のキッティも似たようなもの。 母の目にはまたちがって見えているのだが、父とエリザベスにとって 下の三人は、言葉は悪いが、上のふたりのおまけのようなものである。
エリザと父親が家族の話をふたりでする場面では、 その鋭いユーモアに吹き出してしまう。 それがなければこの作品は、家庭小説と呼ばれるにとどまったろう。
最近の映画ではベネット氏が妻に言っていた親らしい科白、原作では ベネット氏、これから結婚するジェーン本人に言っているのだった。なるほど。
「わたしは、お前がしあわせな家庭をもつと思うと、うれしくてしようがないんだ。 お前たちはきっとうまくやってゆくにちがいない。気性もけっしてちがってはいない。どちらも、相手の言うなりになるから、何ひとつきまることはあるまい。どちらも、お人好しだから、召使いの一人一人にだまされるだろう。たいそう気まえがよくていらっしゃるから、いつも支出超過ってことになるだろう」 (引用)
(マーズ)
『高慢と偏見』上・下 著者:ジェーン・オースティン / 訳:富田 彬 / 出版社:岩波文庫1994改版
2003年03月10日(月) ★夢の図書館 春休みのお知らせ
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管理者:お天気猫や
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