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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2000年11月30日(木) --

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『裏庭』

それぞれに与えられた名前は とても大事なもので、 ひとが自分をどう呼ぶか、 それは私たちが思っている以上に 『裏庭』の世界では特別なことだった。

ほんとうの名前。 わたしはいつも自分の名前に違和感を 感じながら生きてきた。 ずいぶん大人になってから、ネットのおかげで 自分で自分に第二の名を与え、 むしろ現実の世界で使われる面倒な名前よりも 自分らしさを短くあらわした(つもりの) ハンドルネームのほうが、 なじみになっていたりする。 声を出してハンドルで呼ばれることは現実には まずないのだが、この名前が思った以上に 自分の何かを表しているのだなぁと つくづく思うのである。 そして、第二の名前の影響か、他者に与えられた名も 今また、胸のなかで存在を主張しはじめている。

裏庭は大きな作品だ。 生まれながらに独特の空気をはっきりと持つ作品。 少女照美が「裏庭」という異世界へ冒険の旅に出る。 その世界や照美とつながった人々の 内側の世界もまた変わってゆく。 宇宙のなりたちまでがそこに息づき、 救われるのを待っている…

大人の心でこれを読むならば、 照美の経験する冒険や苦しみから 学ばねばならないことがある。 あえて、それは読む者の義務だと言おう。 身近な人間どうしにとって なによりも必要なことは、 わかりやすくあたたかいシグナルのやりとりなのだと。 それさえあれば、大人も子どもも生きてゆけるのだ。 そういうことがとても苦手な人にとっても、 このシグナルは魅力的なものだから。

裏庭の世界は浄化を通して教えてくれる。 どんなかたちにしろ、名前(いのち)あるものは シグナルを出すことでしか おたがいにわかりあえないのだという シンプルなことを。(マーズ)


『裏庭』 著者:梨木香歩 / 出版社:理論社

お天気猫や

-- 2000年11月29日(水) --

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☆ Web書店

みなさんは本をどこで買いますか?
それはもちろん、本屋さん?
どこにある本屋さん?
会社や学校の側?
駅?コンビニ?
…ネットで?

私は圧倒的にWeb上で本を買うことが多いです。 理由はいくつかあります。
 (1) 書棚にない事が多い類の本だから。(あまり売れていない本?)
 (2) 検索してじっくり選んで買えるから。
 (3) 体力的にも楽であるから。
 (4) 送料はかかるが、交通費とどっこいどっこいであるから。

(1)(2)については、仕事上必要な本であったり、 ちょっとマイナーなファンタジーであったり、 特定の作家について固め買いをしたりするのに便利だからだ。 (3)については、大きな本屋だと、 探せばたいていの本が見つかるかもしれないが、 膨大な本の数や人ごみに圧倒されて、 結局は探しあぐねてしまったり、 あるいは小さな本屋なら、コンパクトなのはいいが、 欲しい本が見つからず、本屋のはしごになることも多いからだ。

学生で自由な時間がたくさんあった頃は、 暇があるとよく友達と本屋さんに行った。 何のかんのと、毎日通っているから、 大書店でもほとんどの本の出入りは把握していて、 常に次買うべき本のチェックをしていた。 今はなかなか本屋さんにはいけないから、 たまに行くと、一体何が新しい本で(すべて新刊に見える)、 どれが買いたくて、何を必要としているのか、 混乱してしまう。 ただ、Web上で本を買うというのは、楽ではあるが、 その一方で、本の装丁など、 本の質感を感じ、本を愛でる楽しみはなくなってしまう。 一長一短だ。

よく使うのはKinokuniya Web書店だが、 最近では、ずっと長いこと探していた「ミサゴの森」を Web上の古書店でついに発見し、購入することができた。 インターネットを通じて、個人のお店で買い物をするのは 初めてだったので、結構不安で緊張した。 「本当に来るんだろうか?」と心配するより先に現物が届き、 支払いも到着後の郵便振替だったので、 結果としては「案ずるより生むが易し」とはいえるが、 ネット上のShoppingは用心しても用心しすぎることはないと思う。

今は前にも書いたように、 amazon.co.ukでの買い物を検討している。 大手だから安全なのだろうが、 海外サイトなので、今はまだ警戒している。 慎重すぎるかもしれないが、 それでも、軽率なのよりはいいだろうと思っている。(シィアル)

追記:これを書いた後、思い切ってというか、 軽率にというか、amazon.co.ukに注文した。
 → その時の悪戦苦闘の様子は 「夢図書掲示板 [236] amazon.co.ukにて。」

お天気猫や

-- 2000年11月28日(火) --

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『ザ・マミー』(その1)

濃厚で妖しい魅力のアン・ライス。

時は20世紀初頭。
考古学者のローレンスはエジプトで、 ラムセス2世のミイラを発見する。 やがてラムセス2世は蘇り、魅力的な男性となって、 ローレンスの娘ジュリーと愛し合うようになるが…

すじがきを書くと、 期待に違わない、非常に濃いハーレクインである。 しかし、単にハーレクインで終わらないのが、 「ホラーの女王」と呼ばれるアン・ライスならでは。 何と、ラムセス2世とミリーの前に、 ラムセスの出来心により蘇った クレオパトラが立ちはだかるのである。

この時代をより身近に感じるには、 「ハムナプトラ」をVideo等で見ると、 かなりいい感じなのでは? 映画というと、この本のあとがきによれば、 ジェームズ・キャメロン監督で映画化決定しているそうである。

しかし。
映画雑誌等でも、 いまだ映画化が進行しているという情報は聞かないのだが。 ぜひB級大作映画として製作されることを切望する。 あくまでもB級が望ましい。(シィアル) 
「ザ・マミー」(その2)


『ザ・マミー (上)(下)』 著者:アン・ライス / 出版社:徳間文庫

お天気猫や

-- 2000年11月27日(月) --

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『Spells for Sweet Revenge』(2)

『Spells for Sweet Revenge』のシリーズが どこだと手に入るのか、 洋書を扱っているサイトを幾つか調べた。 amazon.comやKinokuniya Book Web等である。 amazon.comでは日本語版も稼動している。
(確か去年も一時期日本語版があったが、 今年アクセスすると英語だけになっていて 日本語ページはなくなっていた。 本格的な日本語サイトとしてスタートするための 準備期間だったのだろうか?)

結局、この本がどこで見つかったかというと、 amazon.co.ukである。 amazon.comのイギリスサイトでのみ購入可能のようだ。 ひそかにamzon.co.jpで手に入らないかと期待していたのだが…。

で、このシリーズ、なかなか好評のようであった。 (読者の評価の平均/5つ星) 「Spells for Good Times」★★★★ 「Spells For A Perfect Love Life」★★★★★

『Spells for Sweet Revenge』★★★は、 amazon.co.ukの評によると、 経験のない魔女や10代の魔女向けだというので、 ぜひ魔女のステップアップのために、 amazon.co.ukで他の本も買おうかな?と考えているところだ。(シィアル)

追記(11月30日):
『Spells For A Perfect Love Life』
『Spells For Self-Improvement』
  は、amzon.co.jpでも、購入可能です。


『Spells for Sweet Revenge』
『Spells for Good Times』
『Spells For A Perfect Love Life』
『Spells for Self Improvement』
著者:Lauren white / 出版社:MQ Publications Limited
→ amazon.co.uk

お天気猫や

-- 2000年11月26日(日) --

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『Spells for Sweet Revenge』

−甘美な復讐のための魔法−

洋書である。 グリーンの表紙に小さく黒猫のワンポイント。 小ぶりなカラーの絵本だ。 ぱらぱらと中をめくって、 一見したところ、手作りの贈り物の本だと思った。 タイトルも「Sweet」という部分にしか 目がいってなかったのだった。 まさか。。。

ある日、何を思ったのか、 しばらく放置していたこの本を手に電車に乗った。 ちょっと遠出をするので、 絵本くらいなら辞書無しでも電車のお供になるだろうと、 そう思って家を出たのだった。

何といっても、手作りの贈り物の本だと思っている。 しかし、中を開いて読み始めると何だかおかしい。

復讐:していいこととダメなこと
興奮してはダメ−平常心で

???
あれっと思って初めてタイトルをしげしげと見る。 ありゃ、魔法? 魔女のトレーニング? これはシンプルで“悪気のない”ちょっとしたおまじないの本でした。 例えば。

もしあなたが誰かに嘘をつかれたり、  噂を広められたら?
そんなときはすぐにこのおまじないを。
 「DRAGON BREATH!」
 簡単で、効果的で、深い満足感があります。
 用意するもの:
 キャンディーやチョコレートなど甘いもの
 ガーリック
 緑色のキャンドル
 飾り(絵)のついたボウル

というもの。
え?肝心のおまじないの方法? ぜひ知りたいという方は、 お天気猫やまでメールでご連絡ください。

この本のシリーズには
『Self Improvement』
 『Perfect Love Life』
 『Good Times』
のためのおまじないの本があります。(シィアル)


『Spells for Sweet Revenge』 著者:Lauren white / 出版社:MQ Publications Limited

お天気猫や

-- 2000年11月25日(土) --

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『日本語の磨き方』

なにしろ横着者なもので、 私はハゥ・トゥ物といった類いの本を読みません。 指導された手順通りに真面目にやれば 何事も少しは上達するのでしょうが。

そういう訳で「日本語の磨きかた」なんていったって 真剣にやりっこないしなあ、と立ち読みしたところ。 「文章の書ける、書けないは生まれつき」、とあります。 (ここで言う「文章」は用件を伝える文章ではなくて 読んで面白い文章の事ですね) ・・・「才能が無いと気付いたら、他の事に エネルギーを向けたほうがよっぽど有意義」 さすがはリンボウ先生。 思わず買ってしまいました。

では文章は仕方がないとして、 話し言葉はどう磨けば良いのでしょう。 ・・・「家庭における言語環境が重要」 それじゃ文章は生まれで、話し言葉は育ちで決まる? 今更慌てても駄目ですか、先生。 いやいや今からでも先生お薦めの古文に親しみ 気になる言葉は使わない等 日本語を大事にする事を心掛ければ、 何年後かには成果が出てくるかもしれません。

以前BBSでも話題になった事なので面白かったのが 「身の丈に合ったことばづかい」。 上品とされる言葉でも使い手に合っていないと ひどく品が無く聞こえる、 無教養な話し方でも話し手に似合って 不自然でないならば品格が感じられるというお話。 しかしこれは言葉に罪が有るというより 個人の内容の問題ですね。 優れた文章も聞いて面白い話も結局は 個人の物の見方捉え方に起因するものですし。 言葉を磨く事によって人格が磨かれるのか、 人格を磨く事によって言葉が磨かれるのか。(ナルシア)


『日本語の磨き方』 著者:林 望 / 出版社:PHP新書

お天気猫や

-- 2000年11月24日(金) --

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☆ 図書館の本

「本は汚してこそ、値打ちがある。」

というのが、私のモットーでした。
気になるページがすぐわかるように折ったり、
ペンでチェックを入れたり(は、実際には滅多にしませんが)、
本は飾りではなく、どんどん活用すべきもの、といつも思っています。
でも。
当然、図書館の本は別です。
最近、大学の図書館を利用することが多くなり、
そこでは、今までなかったような、
驚くべき、というか、
悲しむべき、というか、
つらい体験をしています(現在進行形)。
借りてきた本には、ほとんど、
誰か個人の参考書のように、
えんぴつでどんどん線が入り、堂々と書き込みが。
ひどいものになると、
ボールペンやマーカーでカラフルにラインが入っているのです。
中には、自分のレポートに便利なように、
文中の「言葉」を(ご丁寧に)ボールペンで消して、
全部、自分のレポート用の別の言葉に書き換えてあったり。
最初、唖然とし、随分とまどいましたが
今では日常茶飯事のことなので、免疫はできてきましたが、
やはり、不快は不快です。
資料として、コピーを取ることも多いので、
いちいち、本の落書きを消しながら読んでいます。
あえて強引に数少ないメリットをあげれば、
学生がレポートや論文のために線を引いたところを拾い読みすれば、
最短で要旨がわかるという、
ありがたがっていいのかどうなのかわからない
そいういう効能もあるのですが。

とはいえ、自分の本を汚す(=活用する)のと、
公共の本を汚すのは全然違います。
それは、本をぞんざいに扱っているのです。
そういうことが平気でできる人がいることを
どうしても理解できません。
またその徹底的に利己的な人格を思うと、
悲しいのはもちろん、何だか空恐ろしくもなるのです。

本を大切にして欲しいと、心から思います。
それが自分の本であろうと、公共の本であろうと。(S)

お天気猫や

-- 2000年11月23日(木) --

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「ナイチンゲールの屍衣」

英国ミステリ界の最も重厚なクリーム、とでも 呼びたいP・D・ジェイムズ。 アダム・ダルグリッシュ警視が解き明かす 看護婦養成所を舞台にした殺人事件の ストーリーよりも何よりも、 ジェイムズにしか描けない、 灰色の重くたれこめる空の下、愛憎なかばにして 生きる目的を失ったかのような 人々の群の心理描写。

個性というのは、やっかいなものだ。 やっかいでわがままで、自己主張する。 でなければ他と区別もできないだろうから。 他より抜きん出て目立つという意味では、 ジェイムズの築いた城は、地味でありながら、 扉を開けた者をいっこうに外に出してくれない砦である。 女王と紳士の英国はときに、こんなにも重い。

ああ、これで殺人さえ起こらなければ、 とジェイムズの世界に分け入るたびに 私はひとりごちる。

濃厚な虚構を味わいたいという日に、 日没を過ぎても読み終わらぬ頼もしい嵩がほしいときに。 そしてまたそういう日の後に来る長い夜に、 女王のミステリに酔ってみたいならば、 どうぞ。(M)


「ナイチンゲールの屍衣」 著者:P・D・ジェイムズ / 出版社:ハヤカワ文庫

お天気猫や

-- 2000年11月22日(水) --

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『フラワー・フェスティバル』

予定調和のHappy Endをどうしても読みたい気分の日がある。 何となくふさぎの虫に取り付かれていたり、 何だか言いようがなく悲しかったり、 そうじゃなくてもお天気が悪いだけで気持ちが曇ってしまう時とか。

そんな日は、本を選ぶのが難しい。 ミステリはちょっとHeavyだし、シリアスなものはとりあえず遠慮したいし。 小難しいのは、さらに表情が険しくなってしまう。 あーでもない、こーでもないと本屋で書棚の間をうろうろする。

「あ!“少女”マンガにしよう。」 さんざん、考えあぐねた末、 シュガーコーティングされた少女マンガにターゲットを替える。 最近はマンガもきれいな装丁の文庫版になっている。 ここでもさんざん迷った末、甘ったるく、華やかで、 ちょっとせつないけれど、幸福な結末を探す。

『フラワー・フェスティバル』
−魅惑のバレエ・メドレー−
バレリーナ 五所みどりはその夏、愛を知る

おお、バレエ? よっし。なかなか華やかでいいぞ。 愛を知る? 知ってもらおうじゃないの。 腰巻(本にかかっている帯)の惹句と、 表紙の絵から勝手にひとりで盛り上がって、レジに向かう。

バレエいうのはいくつになっても憧れの世界だなあとか、 ロンドン(マンガの舞台)はいいなあとか、 うっとりモードで一気に読み終わる。 さすがにいまやBoy meets girlの恋愛には、 ちょっと物足りないものも感じるが、 それでも萩尾望都を読み終わった後には、 独特の思いが残る。 悲しみは幸せな瞬間を際立たせるし、 嫉妬の醜さを知っているからこそ、 美しいものの価値だってわかるのだ。 人生には厄介事がたくさんあるけれど、 それすらそれぞれの幸せへの序曲なのだと、 自己肯定をすることができる。(シィアル)


『フラワ−・フェスティバル』 著者:萩尾望都 / 出版社:小学館文庫

お天気猫や

-- 2000年11月21日(火) --

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『十月のカーニヴァル』

ああ、惜しい。出版がもうちょっと早ければ、 更にハロウィンを楽しく待つ事が出来たのに。

怪奇味のテーマ別書き下ろし短編競作という 雑誌的スタイルで人気を博した ヒット「文庫」シリーズ「異形コレクション」、 今回新書版で登場は、新作と並んで 過去の名作を紹介するその名も「綺賓館」。 その第一弾は伯爵、いやその、 ホラーアンソロジスト井上雅彦氏の心より愛する 「十月のカーニヴァル」 ──ハロウィンを主題にした短編集です。

ブラッドベリ原作の萩尾望都描く一族の集会、 夭折された小泉喜美子の長編小説の一部といった 本格的なハロウィンものばかりでなく、 山田風太郎のおどろどろしい曲馬団の空中ブランコ、 宮沢賢司の夜店に現れる異形等、 なるほど日本にも十月の闇はあったのだな、と 納得してしまいます。

群れ集った精霊達の踊りの輪の中で、 最近の読者は過去の作家の作品に触れ、 旧い読者は最近の書き手の中から、 それぞれが新しいお気に入りの作家を見つけだす、 これは暗く華やかな宵祭。(ナルシア)


『十月のカーニヴァル』 監修:井上雅彦 / 出版社:光文社カッパ・ノベルス

お天気猫や

-- 2000年11月20日(月) --

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☆ 訂正記事

しばらく前から、地方新聞の訂正記事を 集めている。 1年集めると、どのくらいの間違いが コレクションされるだろうか。 かなり意地悪な行為だけれど、 いつかやってみようと思っていた。

その新聞では、朝夕合わせて今のところ 月に5-6本程度だろうか。 なんだか少ないような気がしている。 ときには議会の傍聴記録で重大な金額記載ミスが あったりして私の意地悪心も動かされる。 私がたまたま知っていて気付いたミスでも、 訂正記事が載らなかったりすると、 おやおやと思う。

本来、どうしたって間違いは出る。 どんなにミスを防いでも、人間がやることに 完璧はない。 もしも訂正記事が極端に少なければ、 それは、訂正すべき事実に誰も気付かないか、 クレームがないので黙殺しているだけではないのか。 と思っている。 いってみれば、新聞の危機管理能力。 訂正記事を読む面白さはそこにある。

新聞に世論操作をするなといっても、 ほとんどの人が朝日も読売も読まない地方では ムリなことかもしれない。 抱えるしがらみは相当なものがあるし、 読者の信頼もそれだけに大きい。 ただ、このところちょっとやりすぎでは? と感じる一方的な記事が多くなっているのは 私が年相応の経験を持って読むからなのか、 それとも。 広告主である企業と関係のない企業を 記事として扱うときの不公平感も、人情では すまされないことだってある。 そんなことを考えながら、 情報を発信する側の誠意を読む。

このコレクションをどう使うのか、 他の新聞でもコレクションするのか、 ともかく1年続けてみようと思う。(マーズ)

お天気猫や

-- 2000年11月19日(日) --

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『万国お菓子物語』

本物の図書館で、 とある洋風お菓子の来歴を探していたとき、 資料として借り出し、その後自分でも手に入れた本。

読んで字のごとく、第1話の「お菓子の神様」から 第100話「ちんすこう」まで、世界中のお菓子にまつわる 歴史・文化的な背景、エピソードでいっぱいの、 甘いもの好きには征服欲をかきたてられそうな。 見たことも聞いたこともないお菓子があれば、 なつかしい芳香が漂ってくるような、 なじみのお菓子もある。

かくいう私は、いわゆる甘党ではない。 それでも、今買っておかないとなくなるかも、 とばかりに手元に置きたくなった。

わが書棚は趣味の本と資料類が入り乱れていて、 仕事の資料というものは、ある期間が過ぎると たいてい処分されてしまう。

が、この本はおそらく、書棚で生き残るにちがいない。 ちゃんとした人が書いたちゃんとした本は、 たとえ資料であっても、信頼が置けるからである。 加えるならば、ちゃんとした出版社であることも 信頼度をさらに高めるのである。 何度もいうが、お菓子は私の趣味ではない。(マーズ)


『万国お菓子物語』 著者:吉田菊次郎 / 出版社:晶文社

お天気猫や

-- 2000年11月18日(土) --

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『心霊写真』

私達の身近な何か、特にサブ・カルチャー系に視点を絞って 戦後史や近代史を読み解いていく手法が昨今花盛りですが、 これはなんと、かの「心霊写真」が読み解く日本!

写真の発明とともに生み出された「幽霊写真」が 幾多の技術的工夫の果て60年代の 「なにもないところに霊を見い出す」心霊写真ポスト・モダンを経て、 現代の心霊ビデオに至る、メディアと一体となった エンタテイメントとしての心霊写真の変遷を追いかけると、 日本人の求めて続けている何か曰く言い難い日常性のゆらぎが ひたひたと感じとれます。

「心霊」という言葉と概念の成立の歴史、 かの有名な福来博士の念写実験と彼に対立する心霊研究家達、 ブームを巻き起こした心霊写真の数々の栄光と失墜。 キワモノで片付けられない、 これは日本の精神史の一面でもあるのでしょう。

「ほらここ、」
「えー、わかんないよ」
「ほら、ここが目でここが口で、ちょっとこっちむいててー」
「………あっ!!!」
「見えた?」
「うんうん、ここが目でしょ、あー、すごーい、」

信じていた訳ではなかったのに。 心霊写真集が大ブームだった当時、 子供だった私は印画紙に落ちた光と影の斑に 何を見たかったのかなあ。 そして今も。(ナルシア)


『心霊写真』 著者:小池壮彦 / 出版社:宝島社新書

お天気猫や

-- 2000年11月17日(金) --

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『翻訳はいかにすべきか』

美術館から戻って、やっぱり「オデュッセイア」 通して読んでおかなくちゃ、と思ったものの、 それならついでにジェイムス・ジョイスの 「ユリシーズ」も読んでおくべきかな? うわあ──それは勘弁して下さい。

註に頼らず訳文になんとしてでも原文の豊穣を 盛り込みきろうと奮闘する柳瀬尚紀氏のジョイス訳、 翻訳は趣味ではない、と言いながらもはたから見るとこれはもう 道楽に没頭しているとしか言い様がない程で。

「翻訳はいかにすべきか」とは堅苦しいタイトルですが これは名訳家二葉亭四迷の文章にあやかっているので、 定訳とされる古典の誤訳、ひっかかりをあちこちツッコみ、 訳文といえど日本語にするからには日本語として 通用するようにせよと駄洒落満載で息巻く様は痛快です。

外国語はわからないから翻訳の話なんか読んでもわからないよ、 と言う方も御心配なく。 もとの文章が外国の人が書いたものでも、 最終的に私達の目に触れる時に問題になるのは 日本語としての洗練度ですから。 だったら翻訳物で気になってた事、いろいろあるでしょ?(ナルシア)


『翻訳はいかにすべきか』 著者:柳瀬尚紀 / 出版社:岩波新書

お天気猫や

-- 2000年11月16日(木) --

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『夢のかたち』その2

とりとめのない話なのですが。

先日、地方の美術館で絵を見ていた時の事です。 猫や仲間うちでも圧倒的人気の英国画家 ウォーターハウスの作品が一つありました。 それは大きな画面に室内を描いたもので、 右の窓から幾人もの男達が室内に身を乗り出しています。

陰鬱な表情の男は竪琴を手にし、 植物を冠にした若い男は薔薇の花束を差し出し、 髭を蓄えた年配の男は金の装飾品や布を持って。 室内では男達に背を向けて黒髪の娘が機を織っています。 左端には二人の女、窓から晴れ渡った青い空と白亜の建物。 タイトルは「ペネロープと求婚者」 ペネロープ。ペネロープ。聞き覚えのある美しい名。 えーとえーと、何だったっけ。 「サンダーバード」のお嬢さま。 そうだけど、そうじゃなくて。 小さなパネルに説明書きがあるので近寄ってみます。 「ホメロスの叙事詩『イーリアス』の一場面。 戦争に行った夫はもう死んだものと思われており、 『義父の経帷子を織り上げるまでは再婚しない』と宣言して 訪れる求婚者達を退けるペネロープ」 (‥‥「イーリアス」じゃなくて 「オデュッセイアー」じゃなかったっけ? 子供の頃家にあったホメロスは埃だらけの 白いハードカバーで古典調の訳のうえ旧仮名遣いで、 とても通して読めなくて部分部分しか知らないのですが) ああ、そうか、これは英雄オデュッセウスの貞淑な妻ペネロペイア。 寡婦同然の身なのに輝く様な薔薇色の衣装を着ているから驚きました。 それでも何かがひどく気になって、でもそれが何だか判りません。 何だろう。何だっけ。

美術館を出て隣の書店で本を買い込んで、 歩き疲れたので喫茶店に入りました。 アールデコ調の椅子の上でさっき買った本のなかから 「夢のかたち」を抜き出して序文を読んでから ぱらぱら拾い読みします。 澁澤氏の本は、小説以外のものは決して順番に読まないのが 学生の頃からの私の作法(?)です。

ぱら、とページをめくります。
あ。
「ペネロペイアの夢」
ホメーロス『オデュッセイア』第十九巻

ペネロペイアの飼っている20羽の鵞鳥を 夢の中で大鷲が殺してしまいます。 嘆き悲しんでいると鷲が人間の言葉で彼女を慰め、 自分は帰って来た彼女の夫で、 かくのごとく全ての求婚者に死を下してやろう、と語るのです。

天空の一画から私のテーブルの上に さっと一条の光が降り注いだような気分です。 そうだ。そうだったんだ。 好んでファム・ファタルを描くウォーターハウスが 貞節の鑑ペネロペイアを描いていたのが 妙に腑に落ちなかったのですが、 あの場面は彼女がこの「夢」を見た後だったとしたら。 窓から覗き込んでいた男達が 美しい女性に熱心に求愛する者とも思えず、 皆一様に生気を失いまるでこの世の者のように見えないのが 絵を見ている時殊に気にかかっていたのですが、 彼等が全て死せる運命の者だと ペネロペイアが知っていたからなのです。 だから彼女は厭わしげに背を屈め、 暗い視線を彷徨わせていたのです。 気高いペネロペイアは夢で夫の予言を得た時点で 彼女に近付く者は悉く命を落とす事を知る、 ウォーターハウス好みの「運命の女」になってしまったのですね。 納得納得。 さすが澁澤先生、現世を去りしともなお我が燈台。

この時誰か連れがいたら、なにやら考え込んでいた私が 突然嬉々として上に書いた様な意味不明の説明を 滔々と話すのを聞かされるはめになっていたでしょうが、 幸か不幸かその時私は一人でした。 (もっとも、連れがいたら最初から 喫茶店で本を取り出さなかったでしょうが) と、言う訳でここにこうして延々と書いてみたものの この「ペネロペイアの夢」のページを開いて目を落とした時の 私の爽快感がはたして御理解いただけるでしょうか。

それはまるで一日中心にかかっていた 明け方の夢を思い出した時のような。(ナルシア)


『言葉の標本函 夢のかたち』 著者:澁澤龍彦 / 出版社:河出文庫
『オデュッセイア 上・下』 著者:ホメロス / 出版社:岩波文庫

お天気猫や

-- 2000年11月15日(水) --

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『夢のかたち』

私は眠るのも大好きですが、 それ以上に夢を見るのが大好きです。 自分の見る夢がこれほど面白いのだから、 人の見ている夢もさぞかし面白いに違いない、 ちょっと見せて欲しいなあなどと欲張って思うのですが、 生憎言葉に置き換えられるとそれはもう 実物の夢とは全く違うものになってしまいます。

それならばそれで、夢そのものはあきらめて、 「言葉で語られた夢」という物を集めてみたら。 「生きた昆虫が標本にはならないようなもの」と言いながら 澁澤龍彦氏が古今東西の文学にあらわされた「夢」の断片を 蒐集し、ぴっぴとピンで止めたコレクションをごらんあれ。 分類ラベルは特になし、意味も解釈も全くなし。

編者御手ずから訳されたフランス古典の出品が やはり目に付きますが、 本邦の誇る夢見名人の明恵上人や 夢の図書館長ボルヘス、 サン・ドニの有名な夢実験その他、 お馴染みの夢の先人達の作品からも もちろんもれなく採取されております。 熊楠先生の夢研究など、私の編み出した方法と同じ (たんなるものぐさともいう)。 お好きな方だけ、ごらんくださいまし。(ナルシア)


『言葉の標本函 夢のかたち』 著者:澁澤龍彦 / 出版社:河出文庫

お天気猫や

-- 2000年11月14日(火) --

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『魔女の1ダース』

魔女にとっての1ダースは、12ではなく13なのだという。

魔女としてはまだまだ未熟者の私だが、 米原さんの文章を読んでいると、 身内に魔力がたくわえられて ゆくような錯覚をおぼえる。 この魔力を何に使おうかな、と思いつつ 次々とページをめくることに。 ここに書かれていることは、 まず、私という生活範囲では 想像することすらむずかしいことばかりだ。

対立しあっている2大国へ、時間をおいて訪ね、 その間の両国の変化を肌で感じる。 しかも政治的に重要な場面でのやりとりをも見聞きする。 そしてかつ、仕事までやってのける、 そのために呼ばれているとはいえ。 魔女でなければできない技である。

ロシア語通訳の第一人者としての顔はともかく、 魔女的洞察とシモネタに裏付けられた、実名も辞さない、 ほどよく錆びたナイフのごとき文章、 思わず声を出して笑わされる 落ちのもってゆきかたは、話芸の域。

しかも、こういってはなんだけれど、決して 読みやすい文章ではないと思う。 漢字も多いし、国際的にむずかしいことだって 勢いで書いてある。 ひとことでいえば、ハードボイルド。

なわけで、つい私もハードボイルドになってしまった。(マーズ)


『魔女の1ダース』 著者:米原万里 / 出版社:新潮文庫

お天気猫や

-- 2000年11月12日(日) --

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『ハンニバル』 (3)

レクター博士、再登場。 というのも、また、見つけてしまったものだから。 意味ありげな偶然という符号は、 恐ろしくも魅惑に長けた微笑をうかべて、 弱き人間をかくも陥れる。

「オペラ座の怪人」。 ロンドン発のロングランミュージカル。 この舞台は、オークションに続く劇中劇から始まる。 劇中劇が始まると、一人が舞台中央で劇のタイトル名を ぱっと開いて見せる演出。 そこには 「ハンニバル」 と書かれている。 そう、実在のハンニバル将軍の話だ。

ただし、これを見るまでにもハンニバル・レクターを 思い出すにはじゅうぶんな舞台背景だった。 ハリスの「ハンニバル」で、最後近くに出てくる 豪華なオペラ座でのシーン。 かたや「オペラ座の怪人」なのだから、こちらの舞台も その臨場感を出すことに余念がない。 どうしたって、思い出してしまう。

さて、舞台のうえで話は進む。 「怪人」は、仮面と鬘をつけている。 その後ろ頭が、とてもとても「カワウソ」を連想させるのだ。 レクター博士の髪の毛は、カワウソのようにぴったりと 頭に張り付いていたという描写を思い出す。 それに、そう、仮面といえば、レクター博士は逃亡のために 整形手術したのではなかったか。

もうこれは進行性の病気だろうか。 自分でもわけがわからずうろたえる。 しかも、どちらもまごうことなき「怪人」である。

そうなると、ヒロインのクリスティーンと クラリスの名前の相似にもおのずと妄想は飛躍する。 しかし…この二人の関係もそれぞれに、 何かの共通点を見出させてくれる。

結局、この物語が多くの謎を投げかけ、 読者を飽きさせないのは、 ストーリィの劇的な展開と絡んだ罠、 たとえば私がかかった妄想のような、 いくつもの古典、いくつもの出典世界が複合して 織り上げるタペストリーの巧みな輝きにあるのだろう。

…トマス・ハリスはこの有名な小気味よい舞台を 実際に見たのだろうか。 「記憶の宮殿」を漂う哀れな怪人に何を思っただろうか。 それとも、博士らがオペラ座で見ていた演物こそが、 ヘンデルの歌劇「タメルラーノ」ではなくこの…(マーズ)


『ハンニバル』 著者:トマス・ハリス / 出版社:新潮文庫

お天気猫や

-- 2000年11月11日(土) --

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☆ アメリカ大統領選

− 現実と小説の中のアメリカ −

アメリカ大統領選が混迷を極めている。 今のところ、どちらが新世紀の大統領になるのか、 結果は出ていない。

これほどの接戦でも、 投票率は?というと、以外にも低調らしい。 その原因としては、インターネットや多チャンネルのケーブルテレビ などの普及で、選挙に関する情報が氾濫し、 有権者を混乱させていることや、 すでに選挙前から勝負が決している州での 棄権者による投票率の低下などがあげられるそうである。

前回の大統領選(民主党クリントン×共和党ドール)でも 投票率は49.1%過去最低であった。 前回もし、共和党からパウエルが出馬していたら、 もしかしたら、共和党政権になっていたかもしれない、 そういわれたりもしている。 しかし、パウエルは出馬せず、 初の黒人米大統領は誕生しなかった。 出馬しなかったのは健康上の問題と伝えられたが、 理由は必ずしもそうではないかもしれない。

以前(10/18)にもとりあげた「ステルス艦カニンガム出撃」の話になる。 「カニンガム」は、いろいろな面でバランスのいい本だと思う。 海洋軍事冒険恋愛小説。

小説の中の近未来のアメリカは民主主義が成熟し、 社会の中のさまざまな壁が無くなっている。 たとえば海軍では女性たちが大活躍している。 ヒロインのアマンダは戦艦の艦長で、 その部下であり親友のクリスは天才的な情報将校。 ここでは大統領も黒人で、 パウエルのように出馬を断念する必要もない。

しかし、アメリカはやはりアメリカだ。 成熟した民主主義はアメリカ国内の話で、 相変わらず、アメリカは世界の警察である。 第三世界は常に爆薬庫で、 アメリカはその鎮火に活躍している。

著者がアメリカ人であるのだから、 アメリカが世界のヒーローとして活躍するのは当然であるし、 ストーリーも面白いし、キャラクターも魅力的で、 「カニンガム」のシリーズは好きだ。 しかし、それでも、違和感は大きい。 女性や黒人の前にあった障壁は無くなっているのに、 アメリカは世界を統べる巨人のままだ。 その巨人をコントロールするのが、アメリカ大統領。 世界を動かす大統領だ。 その強大な権力ゆえに、三選が禁止されるのも当然であろう。

小説の中の話ではあるが、 民主主義がどんなに成熟しても、 アメリカの世界観には変化がない。 アメリカ万歳の映画(ex「インディペンデント・ディ」)も 小説も好きだ。 好きなんだけれど、 第三世界よりももっと危険なのは アメリカじゃないかと、 「カニンガム」シリーズを読み進めば進むほど、 「アメリカ=正義」が胡散臭くなったのも事実である。 「カニンガム」は全体的にバランスのいいシリーズであるが、 世界の中のアメリカの位置付けについては 唯一バランスがいいといえない。 その唯一が、致命的なアンバランスといえなくもない。 娯楽小説として読み流すには、面白い本であったが、 時間をおいて、冷静に振り返ると、 じわじわと評価の変化する、苦い後味の本だ。 (シィアル)


著者:ジェイムズ・H・コッブス / 文春文庫
・「ステルス艦カニンガム出撃」CHOOSERS OF THE SLAIN
・「ストームドラゴン作戦−ステルス艦カニンガム (2)」SEA STRIKE

お天気猫や

-- 2000年11月01日(水) --

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♪ Information ♪

−秋休みのお知らせ。−

いつもごひいきにありがとうございます。
11月10日まで、お休みします。

リフレッシュ後は、 また元気に頑張りたいと思います。 by お天気猫や

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