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薔薇職人がバイクをクルマに搭載し、 熱いさなか出かけていった。 バイクを河原で乗り回すためである。 その、筈だった。 MILETと俺様が涼しい部屋で微睡んでいると、 薔薇職人から電話がかかってきた。 「あの。プリンスって薔薇、持って帰るから」 「プリンスって、イングリッシュローズでしょ」 「今にも死にそうで可哀想だったんだよ」 そうして薔薇職人は、 バイクに乗らずに薔薇を持ち帰ってきたのだ。 それは哀れにも葉を一枚もつけず、 枝にいたっては茶色く変色した一本の枯れ木だった。 「いくらですか、ってきいたら、お金はいらないって」 そういうと、彼はその木を鉢に植え替えた。 無事に元気を取り戻せばよいのだが。 その日のうちに、薔薇職人は もう二本の枯れ木を購入してきた。 物好きなものだ。 花の名前は緑光とコティオンである。 プリンスはイングリッシュローズで、普通に買えば かなり高価な花だ。 緑光も白薔薇の中では人気のある品種である。 売れ残ったこれらの苗は手入れもされずに、 捨て置かれていたのだろう。 商業主義、ここに極まれり、だ。 花にも命はあるのだ。 もう少し、気を遣うべきだろう。
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