2007年06月14日(木)
あなたにもジェラシーあげたい


以前はよくやってたのに、最近めっきり「今」が忙しくて、昔を懐かしむことをしてないな(笑)。
で、すごく大きなイヴェントっていうわけでもないんだけど、
最近ふと思い出した、ほんとに小さな小さな出来事について書こうと思う。


ちょうど、季節はこのくらい。梅雨に入るかどうか・・・・または明けきっていただろうか。
もう外の空気はすっかり熱気をはらむくらいになっていて、
いくら若いとはいえ、その暑さの中で体を動かすとなると結構堪えるのだった。

たしか、中学三年・・・・15の夏のある日のことだったと思う。

あたくしは部活の休憩の時に、体育館を出て水飲み場で水分補給をし、顔もザブザブ洗って、
タオル片手に校庭を眺めていた。
ちょうどその日、野球部が練習試合をするだか何だかで、外にいたのは野球部だけ。
まだ試合は始まっていないようだったが、いつもは体操服のまま練習をしている野球部は
ちゃんとユニフォームを着ていた。
マウンドの上には、後に顔なじみになるヨシオがいて、投げているところだった。


この頃。まだあたくしとヨシオは、全くといっていいほど接点がなく、
強いていえば、あたくしが学級委員として参加する生徒議会に、彼は委員会の委員長として
参加してくる・・・・そのくらいの関係性だった。

あたくしは、彼が投げているのを眺めつつ、そばにいた同じ部活の男の子・・・・いや、クラスメイトだったか
相手のことをよく覚えていないのだけど、一緒に校庭を眺めていた少年にこんなことを言った。


「アレって、3組のヨシオ?」

「あぁ。そうやなぁ。」

「へぇ・・・・知らんかった。こうして見ると、彼ってかっこいいんやねぇ。」



同じ学年の女の子たちの中に、彼のことが好きだという子が何人もいたのだけど、
どうも彼の「よさ」みたいなものを今ひとつ理解できなかったあたくし(笑)。
だけどこの日初めて、彼女たちがどうして彼に夢中になるのかその合点がいったので、
何の衒いもなくそう口をついて出た言葉だった。
無論。
その後、あたくしまで彼に夢中になる瞬間が来るとは、この時はまだ自分も知らないわけだが(爆)。
あたくしと一緒に校庭を眺めていた少年は、普通におしゃべりをするような間柄だったわけだが、
あたくしの言葉をうけて、この少年はこんなことを言ったのである。


「あそこ(マウンド)に立っとりゃ、誰だってかっこよく見えるんや。」


あたくしは予想外の言葉に少し驚いた。
そして、この少年には申し訳ないと思いつつ、少し可笑しくなってしまった。
それを必死に隠して、「ふぅん、そういうものなんや。」 と言ったけれど、
内心、可笑しくて可笑しくて仕方がなかった。
それから程なくして、すぐあたくしは体育館に戻って部活の続きに勤しんだ。
そしてこのやりとりのこともすぐに忘れてしまった。
だけど、その後も何度か、ふっとこのことを思い出すことがあるのだ。


かの少年の、小さくて可愛いジェラシーのかけらを垣間見たことに対する、ちょっとした罪悪感。
だけど、その罪悪感はあたくしにちょっとした優越感をも覚えさせてくれた。
野球というスポーツの中で、花形的ポジションにいるピッチャーがかっこよく見えるのは、
確かに当たり前のことなのかもしれない。
その当たり前のことはあたくしもちゃんとわかっていたけれど、
それでも口をついて出てしまうほど、あの時マウンドにいたヨシオはかっこよかった。
でも、ここはやっぱりわかってない振りをした方がいいんだろうな・・・・。
15のクセに、あたくしはそんなことを咄嗟に考えた。


この少年が誰だったかをあたくしはほとんど忘れてしまったのだけど、
何故かこのやりとりだけはすごく鮮明に覚えている。
その当時はそれほどでもなかったのが、年齢を重ねる毎に、彼の純粋さというか
すごく正直な嫉妬心を、逆にすがすがしく感じ始めたからかもしれない。

↑おばちゃんになったからそう思うのか(笑)

齢30を超えると、可愛い嫉妬に心がときめく(爆)。
昔はあんなにいやだったジェラシーに、胸が弾んだりするから不思議だ。

あさみ


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