2007年05月31日(木)
夕雅流 勝手に昔話のススメ ●桃太郎●
正義の味方もあてにはならない、鬼と同じで目には目を


お笑い芸人の漫才のネタやコントのモチーフとして、よく昔話が取り上げられる。
その代表格が、この物語「桃太郎」。
彼らのネタを見ていると、よく考えられているなぁと思うことも頻り。
昔話の揚げ足を取るわけではないけれども、善と悪を考えた時の「善」が桃太郎と位置づけた時、
「悪」は勿論鬼なんだけど、果たして「善」が本当に「善」なんだろうか・・・・と疑問に思う。

それが、悲劇のヒーロー:桃太郎(苦笑)。

かぐや姫もそうだけれど、彼らは本当の親に育てられることなく、ある程度まで成長し、
独特の価値観で以って正義を振りかざす。
この独特の価値観っていうのがクセモノなのだ。
かぐや姫も、彼女なりの価値観で以って殿方を次々に蹴落とした。
桃太郎はというと、育ての親であるおじいさんとおばあさんへの恩返しを鬼退治で果たそうとする。
この短絡的な発想は、物語の進行上、さまざまな要素が省略されているとはいえど
相当な危険思想のような気がする。
危険思想の持ち主なので、故、相当のこじ付けがないと彼らを「善」とできない。
彼らを自動的に「善」とできるその大きな理由は、鬼の存在だ。
姿も醜悪で、ストレートな悪事を働き、周囲に目に見える悪影響をもたらす。
そんな悪と正面から勝負を挑み、戦う桃太郎。
方程式をくむと、彼は悪と対立する立場にいるので「善」ということになるけれど、
果たして本当に、いい人なのだろうか。
あたくしはひねくれているので、かねてからこの部分に大きな疑問符を掲げていた。


昨今のドラマを見ていると、善人より悪人の方が格段に頭がよく、要領もいい(笑)。
「ライアーゲーム」なんかその典型で、一番の善人が一番バカっぽくて、一番要領が悪い。
そこで桃太郎をみると。
物語の記述にもあるように、相当頭がよく、賢く利発である様子も描かれている。
1を教えれば10までを理解するとも書かれている。
おぉ・・・・悪人の基本、かなり計算上手とお見受けする(笑)。

なので彼は、略奪の限りを尽くした鬼から、同じように略奪で以って仕返しをする作戦を思いつく。
コレが「鬼退治」。
彼が善人ならば、この作戦を1人で決行したところであろうが、
頭の良い彼は、リスクとメリットをすばやく計算して、鬼ヶ島へ向かう道中にお供を獲得する。
しかも。
黍団子1つで、命がけの戦いをお供たちにも強いるのである。
黙ってそれに従うお供たちは、恐らく善人の部類であろう。
犬、猿、雉に擬えて表現されているけれど、恐らくは彼らもまた人であったと思われる。
桃太郎自身も、とある天皇の皇子であったとする説が有力視されているので、
権力者と搾取される臣下という単純な関係性が、物語上、更にシンプルに描かれているというわけだ。


ここまで書いていて思うのは、桃太郎というヒーローは、もう善人とはいえないという真実だ。
確かに彼は「正義」かもしれないけれど、正義を謳う側が必ずしも「善」とはいえないということだ。
鬼は村里から、有無を言わさず略奪の限りを尽くし、食べ物、宝物、更にはどこぞかの姫までもを攫い、
鬼ヶ島で宴を繰り広げる。
働かずして、弱者から暴力的に物品を奪うっていうのは、誰が見ても「悪」っぽいけれど、
同じ方法でそんな彼らから奪われた物を奪い返すのは、さて「悪」ではないのか? ということだ。
おまけに。
攫われていた姫には、自分の身の振り方を自由に選択できない。
彼女の親ですら、物語に登場しない。
彼女にとっては、彼女のそばにいるのが鬼か桃太郎かの違いだけで、
環境的にはそんなに変わらなかったんじゃないかと思うのだけど、どうだろう・・・・?
それで彼女は本当に幸せになれるのであろうか?
鬼と同じように、有無を言わさぬ略奪をするような人間が、
相手が「悪」であるのをいいことに、「鬼退治」という名目で殺戮をやってのける人間が、
自分にとって「安全」な人間であるとどうしていえるであろうか。
桃太郎の物語の裏側に隠された姫の無残な行く末は、あんまり想像したくないなぁ・・・・(苦笑)。


では、桃太郎が本当の意味での「善人」だったなら、物語はどうなっていただろうか。


恐らくは、収拾がつかなくなるだろう(笑)。
こんな感じで。

犬「桃太郎さん、桃太郎さん、その黍団子を一つくれませんか?」

桃「いいですよ。はい、どうぞ。美味しいですか?」

犬「あぁ、美味しい。ではさようなら♪」

桃「ハイ、さようなら♪」


と、このように、お供になるはずだった三種の動物に黍団子を譲って、彼らの腹を満たしてあげる。
見返りは勿論要求しない(笑)。だって、彼はいい人なんだもん。
それではあまりにも桃太郎が気の毒なので、結局3匹は桃太郎の初志のお手伝いを決意する(笑)。
彼がいい人だから、3匹も彼のことを放っておけないのだ。
そんなこんなで鬼ヶ島へつくと。。。

桃「村里から来た桃太郎という者です。あなたたちが勝手に持ち出した物々を返していただきたい。」

(と、土下座。)

猿「( ̄∇ ̄;) も、桃太郎さん、何やってんの?」

犬「( ̄□ ̄;)!!何で、頭なんか下げてんの???」

雉「とにかく戦いましょうよ!!」


お供たちの助言も虚しく、完全に非暴力主義の桃太郎。
それを面白がる鬼。

鬼「お前が言うことを聞くのならば、それに応じてこちらも奪い取った金品を返すことにしよう。」

鬼は次々に無理難題な交換条件を提示する。何ら疑問視せず、それを次々に受諾する桃太郎。
たまに「それはできませんよ」と言ってみるものの、結局ほぼ全ての要求に応じるのである。
呆れるイヌ、サル、キジ( ̄∇ ̄;)
呆れるのを通り越して怒りを覚えるお姫様(笑)。
機転を利かせたお供たちのおかげで、
何とか金品の全てとお姫様、そしてお供たちは無事に鬼ヶ島を脱出することに成功するが
桃太郎は、その生涯を鬼ヶ島での強制労働で終えていくのである。。。。
お供たちも、おじいさん、おばあさんも、村の人々も、そしてお姫様も一様に思うのである。

「せめて、もう少し彼がずるがしこかったならば、こんなことにはならないのになぁ・・・・。」

そう。この手のタイプの正義の味方には、多少なりとも賢しさが必要であり、
他人を押さえつけたり、欺いたりする能力も不可欠なのである。
生粋の善人はスーパーヒーローには向いていないのかもしれません。


↑世の中、世知辛すぎるものでもないし(苦笑)

そう信じたいでしょう。
善人に何かいいことがなければ、報われないもの・・・・やっぱり。

あさみ


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