2005年07月21日(木)
ネタでもガチでもどっちでもいいの


6月第1週から、物凄い勢いで動員数を稼いでいる、映画「電車男」。
当初、4週限り・・・・テレビでドラマが始まるのとスライドするように上映は終わるはずだったのに、
そんな予定は正に未定・・・・まだ今週、人気映画ランキングの上位に顔を出すほどに、
衰えを見せない「電車男」の勢い。


某大手掲示板発の「純愛物語」と銘打たれて、書籍も出版され、今月末には舞台化も予定されている。
掲示板内でやりとりされていたリアルタイムのことを全然知らないので、
これが、匿名性を利用したネット世界の「常識」を盾にした完全な作り話なのか
はたまた、正真正銘の困ったアキバチャンが、藁にも縋るような思いで書き込みをした実話なのか
それは今でもハッキリとした答えが「コレ」と出ていなく、未だに諸説紛々。
関連書籍も多く出ていて、「ネタ派」「ガチ派」に完全に別れているといってもいい。


どっちを信じるか、どっちだと思うか、それは見る人それぞれに委ねればいいと思うのだけど、
それにしても、こんなにも話が膨らんでいくとはそっちの方が驚きで、
もしコレが「ネタ」だとしても、時系列その他をきちんと計算して創りこまないと、
あぁもきちんと完結した物語にはならんだろうなぁ・・・・とあたくしはどっちの擁護もしないつもりなんだけど
そのポイントでは、すっごく感心する。


wwwの匿名性をまだあんまりよく理解していない、うちの母・サヨコ
ドラマ版「電車男」の第2話の途中からしか見ていないのに、「面白い!」とのたまった(笑)。
彼女は、もっぱら2時間ドラマ専門で、というのも、連続ドラマを見出してしまうと、
来週もまた同じ時間に見なきゃ、見逃したら話がわかんなくなっちゃう、面倒臭い・・・・等々、
彼女なりのポリシーがあるのだけど、そんな彼女が、話の途中で正味30分程度しか見ていないのに
「面白い!」とのたまってしまったのである。「面倒だけど、次が気になる、面白そう♪」とまで。

コレって一体、どういうことなんだろう?と、あたくしは素直に疑問に思った。
今時のドラマをあんまり見ず、もう流れや登場人物までが固定化された2時間ドラマしか見ないような人に
「面白い!」と言わしめる魅力って何なんだろう・・・・? と。


1つ目に考えついたのは、「話の流れが単純で、テンポがいい」ということ。
特にドラマ版は、実際に掲示板でやりとりされた会話(?)がわりと忠実に登場し、
名前もないような人々が沢山登場するわりには、ドラマの主軸が「電車男&エルメス」という
たった二人に集約されていて、この二人の動きさえ見ていれば、話の筋がわかるというのが
最重要ポイントのような気がしてきた。

2つ目に考えついたのが、「主人公にあんまりにも主体性がない」ということ。
いや、あるのかもしれないけれど、ドラマ仕様に極限までデフォルメして、
外野の声にあっちこっちに振り回されるのが、結構日常的でリアル。そしてコミカルである。
気の毒なくらいの小さな不幸が日常的に彼ばかりをめがけて降り注ぐように構成されているところなんか、
わかっていても同情したくなってしまう。
そして、主人公が主体性を持つと必ずといっていいほど、小さなトラブルが頻発し、
見ている側をハラハラさせる(笑)。確かにコレは魅力的だ。
だって、そういう小さな不幸というのは、人間誰しも日常的に経験するけれど、
1つの小さな不幸でへこんでいた人間を、5つも6つもバカバカしいこまめな失敗をする人間が
見事に救済しているのである。・・・・コイツよりは何とかなってる、かもしれない。って(笑)。

そして3つ目。「そういう危なっかしい人が無器用に恋愛をしようとしている」
「それを見ていると、何となく助けてあげたいような気分になる」
決定打はコレかなぁ。
逆上がりの練習を必死で毎日やっている子どもを、近くで見守っているような
そんな気持ちにさせられるのである。
手を貸してあげたいけれど、助けすぎてもダメ。
お手本を見せてあげたいけれど、それがその人にあったやり方なのかはわからない。
とにかく本人が、きちんとその気になって必死に努力するのを、握りこぶしを作って、
「そこだ! もうちょっと! 頑張れ〜!!」
と応援するしか術はなく、うまくいったりすると、本人以上に嬉しいものだったりして、
そういう、優越感と爽快感が得られるんじゃないかと思った。


映画を見た時は、この3つをほとんど感じなかったんですよ、実は。
ただ、エルメス=中谷美紀というキャスティングだけが花マルで(爆)、その他は
ちょっと端折りすぎたかなぁ・・・・という感が否めなかった。
そう・・・・登場した、山田版「電車男」が、あんまり不幸そうに見えなかったのである(笑)。

その点、テレビ版の伊藤「電車男」は、気の毒なくらいに「毒男」という表現がピッタリで、
やりすぎなんじゃないかと思われる、緊張のどもりや、携帯を持つ手の震えなんかも、
妙にリアルで、愛しい。
今時、20歳過ぎのいい成人男性が、中学生でも経験するような淡い恋心に体当たり♪ というのが、
古典的なわりには目新しく見えて、それがすごく好印象なのかもしれないなぁ。


恐らく、リアルタイムでやりとりしていた人たちも、同じことを思ったんじゃないかなぁ。
一応、映画版を見に行く前に、書籍ではなく、まとめサイトなるものでまだ消されてないスレッドを
全部読んでみたんだけど、その中でも、おふざけ半分でも中には真剣にレスをつけている人たちがいて、
加えて「ネタでも妄想でもいい、ここまできたら最後までやってくれ!!」みたいなことを
言い出す人たちも現れ、記事そのものがお祭騒ぎになっていたもんなぁ。


で、今、フィクションとはいえ、テレビで同じことを再現しているわけで。
話の顛末を知っていても、主人公が変わっていくその行程や、名もない人々の何気ない一言が
いちいち面白おかしい上、インターネット上で起こった1つの出来事を実写にしただけなのに、
行き着く先がわかっていても尚、ちょっぴりドキドキする。
あたくしは、映画でもドラマでも恋愛モノってあんまり好きじゃなくて、
でも、コメディは大好き。
生まれも育ちも容姿も住む世界も違う男女の恋愛は、どれをとってもコメディだと思う。
美男美女の恋愛が成就しても、悲恋で終わっても、それはあんまり興味がないというか、
作り話なんだから、もうちょこっとスパイスを効かせればいいのに・・・・と思うので。
「プリティ・ウーマン」というこれまた古典的な美男美女の恋愛ストーリーがあるけれど、
あれは、美女でも、学のないストリートガールという背景が、物語をコミカルにしているから好き。

これから「電車男」がどうなっていくのか、一応は知っているのだけど、
それでも、ちょっと楽しみなところではある。だって、ドラマはあくまでフィクションだから。
あたくしはこの物語、とても面白いと思う。
発祥が、ネタだろうがガチだろうが、そんなことはどっちでもいい。
無器用な男性というのは、時に、女性の母性本能を物凄く刺激することがある。
「電車男」って、極端な例かもしれないけれど、あながち、その説に反することなく、
王道をいっているような気がする。

↑逆上がりができた後の清々しさだよ!!


原作に忠実か否かは置いといて、脚本は非常にうまく書けていると思う。
章立ては細かいけれど、日常とネットの世界を面白おかしく上手につなげているので、
見ている方の切り替え速度を裏切らないし、先述したとおり、テンポがいいので見やすい。
サンボマスターのPVもよく撮れていると思う。
この勢いで、最終回まで思い切りよく走りきって欲しいと思う、伊藤「電車男」。
そして、実生活でもきちんと恋愛しているはずの、本物の「電車男」よ・・・・ネタでもガチでもいい、
幸せな毎日を願います。

あさみ


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