2005年07月06日(水)
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渡る世間に鬼はいるのか、いないのか |
あたくしがよく閲覧している掲示板のとあるカテゴリの中で、季節はずれというか、 今はこっちの地方局ですら、朝にしか再放送をやっていない「渡る世間は鬼ばかり」についての質問が 掲げてあった。
「(題名そのものの)言葉の意味がよくわかりません」
とのことで、この質問に対し、既に1名の回答者が常識に則った回答を出しているんだけど、 どうやら質問者は日本人ではないということが、この回答へのコメントで明らかになった。 あたくしは、前に回答しているもので十分に質問の答えになっていると思っていたんだけど、 それは「日本人にとっての常識」で、質問者には通用しないようだった。
文脈から察するに、この質問者は中国語圏の人らしいことは何となくわかったけれど、 漢字の本場・中国の人に、漢字のことや日本古来ことわざや格言についてを説明するのって、 非常に難しいですね(;⌒▽⌒A) 今更ながらに気付いたよ(笑)。 オマケに、日本で使われている大まかな意味と、あちらで使われている大まかな意味とでは、 少しズレというか違いがあって、翻訳する時に一番難しいポイントがここらしい。
この質問の補足としてついてきたのが、
「渡る世間に鬼はなし(ない)」と「渡る世間は鬼ばかり」の意味を教えてください
テレビドラマとは全く関係のない国語的なもの(笑)であった。 たまたま通りすがっただけだけど、あたくし自身がいつも、国語の方も覗いているので ここは何かの縁だと思い、思い切りつきあってみることにした。
幾つ目のシリーズからだったか、あたくしもこの番組は何となく見ている。 何となくだったから気付かなかったけれど、元々の格言・ことわざでは「渡る世間に鬼はなし(ない)」 なのに、今や「渡鬼」といえば「渡る世間は鬼ばかり」と誰もが変換してしまうほどに 浸透してしまった言葉ではある。まだ辞書に載るほどではないけれど。 橋田壽賀子氏が作った造語であることはあまりにも有名だけれど、このドラマの内容が ズバリとそのタイトルをそのまま言い得ているものだから、今更ながらクスリとしてしまった。
これを日本語圏外の人に上手に説明するにはどうしたらいいかしら? と、 いらんとこで頭を使おうとするアサミンジャー( ̄∇ ̄;)(爆)。 質問文を見る限り、何だかまだまだ日本語が怪しそう(苦笑)。 でも、言わんとしていることは理解できるみたいで。
実は、この掲示板の国語(日本語)を扱っているカテゴリにはこういった外国人の方々が、 文法や言葉の意味などを質問しに来る場面が本当に沢山あって、 聞かれた日本人がたまに戸惑ってしまうことがあるくらいなんだけど、 常連質問者がメキメキと上達していく姿を見て、嬉しいのか、回答者たちも良心的で協力的だ。 今回はカテ違いのところにこの質問が投げかけてあったので、国語板ならドドッと回答が殺到するところ、 あたくしがこの質問に出会うまでに、たった1人の回答者しか答えを置いていなかった。
我々も外国に行けば「コレは何?」「どういう意味?」「どうして?」等の言葉を連発するはずだ。 長期滞在ともなれば、専門的にその国の言葉を覚えなくちゃならないし、 様々なメディアから流れてくる情報にも耳を傾け、興味を持ったもの片っ端から辞書で調べるしかない。 しかし、口語(スラングとまではいかなくとも)、方言、後々作られた造語、流行語などは 辞書で調べようにも全く手がかりがないに等しい。 一番生活に密着している言葉なのにもかかわらず、定義づけることが難しいから、 頼みの綱は、やっぱり周囲にいる人たちに直接聞く・・・・なんてことになる。
日常生活で、外国人に日本語のことを聞かれて、困ったことはないだろうか?
あたくしは何度もある。 感覚では理解できても、それを別のわかりやすい言葉に転換して、説明する段になると 日本語というのは非常に難しいものなのである。 大学時代、韓国からの留学生によく言葉の意味を説明してあげていたのだけれど、 日常生活に不便のない程度に日本語が上達してくると、今度はこの文献にあった言葉なんだけど、とか 辞書を引いてもわからない言葉があったの、とか、いきなりパワーアップするのである(笑)。 しかし、そういう向学心というのは本当に見ていて気持ちがいいというか、 こっちも一緒に勉強させてもらえるいい機会なのだ。・・・・う〜ん、異文化交流(笑)。
「鬼」の話に戻ろうか(笑)。 一通り、格言・ことわざの方の意味を説明したところで、橋田氏の造語がどんな意味なのかという 説明に入る。・・・・どんな言葉を使えばわかってもらえるのかと、非常に慎重になる。 「渡鬼」のテーマソングが頭の中をグルグルする(爆)。 ドラマの内容に則って、「鬼」=「(自分にとって)嫌な人」としておいた。 辞書における、第1の意味としては「想像上の怪物」なんだけど、要は「鬼のような人」を 端的に表す言葉が上手に見つからなくて、結句、「嫌な人」というのが一番しっくりくるかと思い、 そう書いておいた。 長々しい説明になってしまい、この質問者が本当に理解したかどうかが心配なところではあったけれど まぁ、何らかの手がかりになるかもしれないし、 あのドラマを見ていると文語的な科白が幾つも出てくるので、日本語を知るにはいい教材かな・・・・ とも思い、最後に、広辞苑、大辞林等の大きな辞書で、格言・ことわざの方を調べるようにと 付記して閉じておいた。
そうしたら、そんなに時間が経たないうちにコメントがついた。 この人は台湾人だったらしい。なので、やっぱり中国語圏というのに間違いはなかった。 拙い日本語ではあったが、要約すると
「『鬼』という単語を調べてみたら『冷酷な人』という意味も持っているということがわかりました。 回答文の中の『鬼』を中国語に翻訳したらとても面白いと思いました。 このドラマは見たことがなくて、友達から聞きました。 文の意味がわかったら興味がわいたので、見てみようと思います。」
まぁ、本当に言いたかったことがこういうことなのかどうかはわからないけれど、 一所懸命にお礼のコメントをつけていてくれているところを見ると、まだ語学の点では駆け出しで、 これから頑張っていく人なんだなぁ・・・・なんていうふうに思えた。 つっけんどんな文面も、ネット上では時に、無愛想で失礼なヤツだというふうにも取られがちだけれど、 この人は恐らく、自分でもきちんと辞書を片手に、本来の言葉の意味をちゃんと調べていて、 日本で勝手に作られてしまった造語のことがわからなくて、モヤモヤしていたはずなのだ。 まだまだ不自由な日本語ではあったけれど、自分の意思を伝えようと必死になっているところに 向学心の光が見えた気がした。
現実、「渡る世間は鬼ばかり」だったりするかもしれないけれど、 日本の美徳として伝承された方のことわざ、「渡る世間に鬼はない」の方を ちゃんと覚えて、お国へ持って帰ってくれるといいな・・・・そんなことを思いました♪
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