「いや、あたしはね、『ソフトおたく』って嫌いじゃないのよ♪」
堂々と言い切ってしまう、悪友・サナエ。 「電車男」をガッツリと鑑賞する前からこんなことを言ってしまえる彼女そのものは、一見フツーなんだが 確かに、彼女自身の嗜好の向きというのは、オタクとも表現しずらい一種独特のベクトルをもっていたり。 故、他の誰かに理解されにくい趣味を真っ向から否定することもなく、 寧ろ、幅広いストライクゾーンでもって受け容れ態勢はいつでも万端。 彼女は美術系に長けていて、よくわかんない文化が織り交ざったシュールな絵画を見たり、 そうかと思えば、1人でミイラ展に出かけてわけわかんない絵葉書を送ってきたり(爆)、 素敵オーラが出会った頃からバリバリと出ている少女ではあった。
現在は世間の荒波でガシガシ揉み込まれてしまったので、外見のフツーさこそ変わってないけれど、 この嗜好がバシッと露呈することが少なくなった気がする。皆無になったわけではないが。 そして、「少女」でもなくなったわけだし( ̄∇ ̄;) どうやら、職場に「ガンオタ」(ガンダムオタク)がいるらしく、その彼の話を笑って聞いていられる時点で 彼女はフツーに受け容れてしまえているようだ。
先日の「Wデート」で一緒だった男性から
「電車男と自分がリンクする感じがしたよ(笑)」
みたいな内容のメールがぷよ2の携帯に届いていた。 いや、アンタ・・・・リンクするのはさすがにまずくないか??と思いつつ、 それでも映画を楽しめたんなら、ま、いっか♪くらいにしか思ってなかったんだけど、 どこがどうリンクするんだろう? とぷよ2と一緒に暫し考えていた。
「そういや、彼、ツインタワーの上に展示してある、建物模型を凝視する目は 確かに、少々オタクっぷりを発揮してたかもなぁ・・・・。」
「あぁ・・・・そういうのも『オタク』に入れちゃうの? でも彼の場合はそういうのが仕事に直結してるわけだし、興味の域というか趣味は悪くないと思うよ?」
「ま、確かに、仕事に対する姿勢は太鼓判押すよ♪ 彼はいつも頑張ってる!」
「彼女がいないから、今は余計にそういうのに神経が集中しちゃうのかもねぇ・・・・。」
オタクかぁ・・・・オタクねぇ・・・・。 この男性は、何かの趣味に入れ込みすぎるあまりに、それで彼女がずっといなかったわけでもなく、 女性経験が皆無というわけでもなく、ただここ2年ほど、少々女性と縁がなかった・・・・というだけで そんなことを言い出したら、石を投げればそこにオタクがいる・・・・みたいになるわけだし。 と、考えているところへ、ぷよ2が更に妙なことを言い出した(笑)。
「ほら、俺らだって見る人から見れば、明かなゲーオタ(ゲームオタク)だし。」
ぬをっ!! そうだった。あんまりにも近くにいすぎて最近麻痺していたけれど、 この人(たち)はゲーオタだったんだった( ̄∇ ̄;)・・・・忘れすぎ、自分。 ただ、生活の全てをその趣味に捧げているわけではなく、最近ではきちんと暮らしを省みているようなので 「オタク」と称するには少々足らないような感じがしていたから、尚更なんだけど。 そして、彼は、一頃流行った「美少女育成ゲーム」と称される関連のゲームには手を出していない。 ゲームの中で女を落として何が楽しい!? みたいなスタンスのようなので、 その分、現実へ欲求が投影されていたようだ(笑)。 なるほどねぇ・・・・実体のある「人間」に対する欲求はただの「スキモノ」だけど、 ゲームに登場する所詮2次元の美少女に対する欲求は、明かな「オタク」かも(苦笑)。 「鉄拳」や「太閤立志伝」や「スーパーロボット大戦」に夢中になってるうちは静観しよっと(笑)。
人のことはさておき、自分は・・・・となると、やっぱりある属性の中ではサナエ言うところの 「ソフトおたく」の領域に足を突っ込んでるかもしれないなぁ・・・・みたいな自覚はあるんだ。
例えば「特撮」。 幼児期から、「正義の味方」に憧れていたのではなく、それを演じる「演者」に憧れていて、 ばあちゃんに「JACに入りたい!!」と意味不明の欲求を表明していたところなんか、 正にそれっぽい感じがするし(苦笑)。 現実が見えてきてからも、あぁいう番組に関っていけるにはどうしたらいいだろう? と 本気で考えたこともあるし(こらこら)。 特にスーパー戦隊シリーズの設定、出演者、その他は、寸分漏らさず・・・・とまではいかないけれど、 無意味な程度には頭の中に入っていて、作品としてよく出来ているか否か・・・・という観点で 今でも視聴しているしなぁ。 最近に至っては、スタッフロールを全て確認し、新人脚本家、新人監督(演出)、新人スーツアクターの チェックに余念がないし( ̄∇ ̄;) 出ている人、作品を直接創っている人のチェックまでで済めばいいけれど、 もう一歩踏み込んで、火薬の量やワイヤーアクション、制作サイドがどのくらい金を積んでいるか? という点までチェックを入れようとするところは、自分でも十二分に「ヤバい」という自覚もあるけど。 フィギア、超合金、その他グッズを買いあさって、家計や居住スペースに著しい負担をかけてないだけ あたくしも「真性」ではなく、まだまだ「ソフト」な領域だと思ってんだが・・・・。 あぁ、ほら・・・・近頃、韓国の俳優を追っかけて、時間も金も情熱も全てそっちに注ぎ込んでいる おばちゃんたちに比べると、熱の入り方は全然可愛いレベル・・・・そんな感じだわ。
で、考えてみた。例えば・・・・
●「ガンダム」や「エヴァ」について語らせたら時間を問わず熱弁を奮う人。 ●絵を描いたり、音楽に没頭している時間が至福だぁ( ̄¬ ̄*)♪という人。 ●とにかく自分の体をビルドアップすることが生き甲斐!!という人。 ●料理が大好きで、食卓にはいつも変わった無国籍料理や、健康を追究した献立が並んじゃう人・・・・。
程度の差こそあれ、周囲に1人はいそうなタイプをピックアップしてみた。 どこに「オタク」のボーダーがあるのか、パッと見、あぁ、あそこらへんかな?と予測できるけれど、 いやちょっと待てよ・・・・と考えた時、線引きって難しいよなぁってなふうになる。 人それぞれ、他人に迷惑がかからないように自分の世界だけで嗜む趣味としては全部当てはまるし、 健康か不健康かという線引きは、またちょっと論点がずれているかもしれないし。 やりようによっては、筆頭に書いた「熱弁を奮う人々」だって健康的な生活をしているかもしれない。 絵や音楽を趣味にしていると、ちょっと高尚な感じがして雰囲気もいいけれど、 どっかの属性に足を突っ込んでいると、たちまち「オタク」扱いにされそうだし。
「健康オタク」なんて言葉も、近年、巷を駆け巡っているような・・・・。 健康を形振り構わず追求する人まで「オタク」認定って( ̄∇ ̄;)
元々、趣味に没頭しすぎちゃって、どうしようもなくなっちゃいました(苦笑)・・・・という人たちは 沢山いて、それを代表するかのように、森高千里のフィギアを片手に、そして紙袋を片手に、 床屋にも行っていないような風貌で、ファッションにも無頓着、顔色が悪く、何が原因か視力も悪い、 そんな典型的なキャラクターとして「宅八郎」という人が現れてから、 「おたく」が認知され始め、様々なタイプの自他称「おたく」が登場した。 格好だけは「おたく」を逸脱して、パッと見ではわからなくなった人たちもいる。
あたくしの大学のお友達に、ちょっと変わった男性がいた。 「おたく」というイメージからは本当に程遠く、言うなら、モテてモテて仕方がない部類の人。 日本人以外の血が1/4入った、ミステリアスな顔立ちで、普段聴いている音楽はCDではなく ほとんどがレコードだった。しかも、ライヴハウスでDJとしてお皿が回せるくらいの腕前。 筋肉質な体型と、洗練されたファッション・・・・「自分」というものを確立して、 卒業してからはイヴェント会社で様々な活躍をしている・・・・そういう人。 この男性は、本当に好奇心のカタマリのような人で、自分が「いい」と思ったものは ジャンルを問わず、片っ端から自分にまず取り入れている人だった。 とにかく、いつでも精力的に動いていて、情報や流行にとても敏感。 どこに需要が転がっているのかを発見するのも上手な人だった。
故、「おたく」と称される人が集まる、「コミケ」や「仮装パーティ」などにも参加して、 どのくらいのお金が動いているのかもちゃんと知っていた。 不況に突入してもこの世界の人は散財を惜しまないということを悟ると、そういうのもきちんと視野に入れ 彼は自分の中に取り込んでいった。
「夕雅ちゃんはそういうのに興味ない?」
「う〜ん・・・・アニメとか好きだし、芝居やってる限り仮装とかに興味がないっていうのはウソでしょ(苦笑) だから、興味がないわけじゃないんだけど。やっぱり、1人で行くには勇気がいるよね(苦笑)。」
「何だよぉ・・・・行ってくれればいつでも連れてくぜ? 結構面白いんだよ、あぁいうところ。」
「へぇ・・・・そうなんだ。でも意外だなぁ。キミがそういうところに行ってるなんて。 ソウルとかハウスとかしか聴かないんだと思ってた。」
「俺もアニメで育った世代だから、アニソン好きだよ。聞き込むと、結構いい曲もあるしさぁ。 何ていうんだろう・・・・あの人たちのイベントでの一体感って凄いものがあってさぁ。凄く面白いんだよ!」
「そうなんだぁ・・・・♪ 面白そうだね♪」
「夕雅ちゃん、超ロングヘアだから、セーラームーンとかメーテルとかを地毛でやって参加すれば 話題を掻っ攫うこと間違いなさそうだよ!!(笑)」
「あはははは♪ そうかもね(笑)。でもそこまでする勇気がないよ(笑)。」
彼は「アニメ」というメディアをきちんと自分の中に取り入れているけれど、そこだけで立ち止まらない。 まだ日本に流行の兆しが来ていないゴスペルをあたくしに教えてくれたのも彼だった。 そこでも立ち止まらない。 たまたまテレビや有線で流れてきた「音楽」をきちんと記憶して、音楽に対してきちんと散財する。 彼の家を訪れた時、これはCDだったが、普通に「FOLDER5」と「ブリグリ」が置いてあって、
「あ、コレ結構いいんだよ♪」
と、サラリと言ってのけた。たまたま「ブリグリ」のCDはあたくしも持っていて、同調したが、 彼の琴線に触れるものは、あまりに膨大な量で、あたくしは自分の小ささを感じた。 と、同時に「小さくてもいいや♪」とも思った。 この頃、確か23、4くらいで、自分の器がまだそんなに大きくないことを自分で知っていたし、 できることだけを選んでやっていたのもそのせいだ。 この彼はあたくしなんかよりも、きちんと見聞を広める努力と環境を自ら開拓したから、 同じ年齢でも、あたくしよりもキャパシティが大きんだと、普通にそう考えていた。 決して健康的な雰囲気ではなく、逆に危うい雰囲気さえ醸し出していた彼だったが、 色んな意味で、興味深い人間だった。
彼のことを「おたく」と称する人はいないだろう。 ファッションや嗜好を一見しただけでは、そう思わせない。 でもそんな彼でもそういう要素を十分に蓄えている。・・・・まぁ「ソフト」な部類だろうけれど(笑)。 一点に絞って切り込む、真性の「おたく」はともかくとして、 狂いのない思考と嗜好でもって、「趣味」に勤しんでいるのは健康の証。 たとえ、その嗜好が他人に理解されないようなマイノリティでも、ワーカホリックよりはマシ♪ なんていうふうにあたくしなどは思うわけである。
「現実を直視せよ!」という忠言をいただきそうではあるけれど、その「現実」の中から、 自分の好きなものを選んでいって、残ったものの中に「非現実的」で「非生産的」なものがあったとしても やっぱりそれは責められないと思う。 生活さえ破綻しなければどんな嗜好でも・・・・とまではいかなくとも、 「何が好き?」 と問われた時に、即答できる人は、生きていても清々しいことだろうと思う。
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