2005年01月31日(月)
ひとりに終わりはない


この時期。
そう、冬。
空気がフワフワと落ち着かない他の季節と違って、寒いのは大っ嫌いなのに、
だんだんと冬が好きになってきた。


心が落ち着く。
すると自然と、恋も安定する。
冬はわりと誰かが隣にいてくれたりした。


別に、クリスマスとか年越しとかのイヴェントに備えて、物凄く釈迦力になって
パートナーを物色していたわけではない。
眩暈がしそうな灼熱の夏に出会い、捜索の旅に出るのに丁度いい秋に互いを知るようになり、
そして冬は特別なことをしなくても、そっと抱きしめてくれる人が、ステディでなくとも
いるにはいた・・・・そういうことだ。


今朝。5時半くらいだったかな。
カーテンを開けると、雪が降っていた。


あっちゃんと一緒にいたのはたった7ヶ月。
そして処も東京だったけれど、雪を見ると、早春に連れていってくれた松本のことと一緒に
あっちゃんのことも思い出す。
確か、昨日、誕生日だったはず・・・・1月の男に縁があると前にも書いたが、
あっちゃんはその中でもとりわけ異色で、クールなくせに情熱的という
そして、O型のくせにAB型のような、魅惑的な二面性を持っていた。

このあたくしが完全降伏するくらいに頗る頭が良く、それは頭脳派という意味でもあるんだけど
とても知己的で、機転が利き、特に上の者によく可愛がられていた。

当時、水商売のバイトをしていたあたくしが、思わぬアフターで遅くなった時も、
当時はまだ携帯なんか持っていなかったものだから、連絡の手段もなく、
今日、バイトが終わったら行くね・・・・と言ったあたくしを、早朝3時まで起きて待っており、
不機嫌そうな顔でジグソーパズルをしながら

「もうここまで出来上がっちゃったじゃないかぁ・・・・。」

そう零す反面。
せっかく互いが休みで、夜に何も予定が入っていない日に二人で過ごしていたところに
バラシ依頼の電話が入ると、

「ごめんね、夕雅さん!!」

とだけ言って、足袋と雪駄だけジャンパーのポケットに捻りこんで、部屋に一人
あたくしを残して出て行く奔放さ。
この切り替えの早さに、あたくしは心底惚れていたのかもしれない。
自分にないもの、特に刺激的な部分を持っている人に出会ってしまうと、どうしようもない。
無条件に惚れてしまう。それが、「若さ」ってことなんだな(苦笑)。


そんなあっちゃんに、あろうことか自分も愛して止まない「芝居」と天秤にかけられ、
そして「芝居」に負けてしまった時、あたくしは二人からひとりになった。

「ふたり」の時間が終わった。そりゃ、もう、あっけないくらいにぷっつりと。

あたくしは、それまでにないくらいに取り縋った。
みっともないと思われてもいい、そのくらい好きだという自信もあったから、
形振り構わず、縋っていった。

「ひとり」と「ひとり」に終わりはない。

無条件に、彼と一緒にいるということを選んだ。「ひとり」と「ひとり」という形で。
その日もあたくしはあっちゃんの部屋に行き、自分の気が済むまで彼を愛しきった。


本当に「ひとり」にされたのを知ったのは、ひょんなことがきっかけだった。
あっちゃんと同い年の、後輩の男の子に、学科合宿の時に相談を持ちかけられた。
アユム(仮名)というその男の子と一緒に、1つのグラスにフォアローゼスをなみなみに注ぎ
皆がいる場所を抜け出して、誰もいない女部屋の一室に篭って、その酒を2つに分けて水割りを作り
ちびちびと飲みながら、話をした。


「夕雅さんさぁ・・・・アイツとつきあってんでしょ?」

「あら。正確には『つきあってた』だわよ?」

「え?? そうなのっ??」

「あたしがただ一方的にくっついていってるだけ。去年の5月に終わった。
終わったことになってる・・・・そんな感じ。」


「じゃあ・・・・アイツが30日、何してたか知ってる?」

「夕方からは一緒にいたけど・・・・?」

「ねぇ、夕雅さん。頼みたいことがあるんだ、協力して。」

「何よ(笑)」

「アイツと寄り戻してよ。」

「はぁっ??」

「30日の朝・・・・アイツ、俺のオンナと一緒にいたんだよ。」

「ミヤ
(仮名)ちゃん??」

「そ。見事に寝取られた。」

「やだ・・・・(苦笑)。彼女、大人しそうな顔してやるわねぇ。
二股かけそうなタマには見えないんだけど(笑)。」


「笑い事じゃないよ!! 俺とミヤはまだ切れてねぇんだから!!」

「あぁ、そうか。ゴメンゴメン。」

「夕雅さん、何とも思わねぇの?」

「と、いったところで、あたしはもうステディでも何でもないから、口出せないもん。」

「1日に同じ学科のオンナ、2人だぜ??」

「ああ(笑)。それは確かにヤかも。つか、同じシーツの上かよ〜(爆)。
我ながら情けねぇなぁ・・・・気付かんかった(笑)。サイアク〜!!」


「アイツのこと、まだ好きなんでしょ?」

「あぁ、まぁね・・・・。」

「じゃあ・・・・」

「あっちゃんが選んだのがミヤなら、仕方ないよ。あたしは何も言えない立場なんだ。」

「んじゃ、俺の1人損かよ〜!!」

「当のミヤちゃんはどうなんよ?」

「う・・・・。揺れ動いてて・・・・。」

「ぎゃははははははは _(__)/彡☆ばんばん!」

「どうして笑うんだ!!」

「どうもミヤちゃんがあたしに対してオドオドしているような感じでさぁ!!
やっとその謎が解けたわ!!」


「え? そうなんすか?」

「いきなり敬語やめて(笑)。」

「やっぱアイツも知らないんだ。夕雅さんとヤツが切れてること。」

「脅かした覚えはないんですけどぉ( ̄。 ̄)」



「ふたり」のままのアユムは、気の毒だけど「ひとり」のあたくしよりも孤独に見えた。
恋人に裏切られて、宙ぶらりんで、フワフワしていて、とても可哀想だった。
その点あたくしは既に「ひとり」だったので、意外と気楽なものだった。
本当に「ひとり」にされても、案外平気なものなんだな・・・・と、普通に考えていた。


「彼女さぁ・・・・いつも潤んだような目でさぁ、泣きそうな顔で
あたしの事を見るんだよね・・・・申し訳なさそうにさぁ。怖がってるみたいに。」


「当たり前だよ!! だって、アイツと寝たんだから。」

「アユムはそれでもミヤちゃんがいいんだ。」

「・・・・・・・・。」

「ミヤちゃんは・・・・どうなんやろ。」

「・・・・・・・・。」

「あ〜ぁ。あたしも可哀想(笑)。しばらくミヤちゃんには、
あたしとあっちゃんがもう切れちゃってること、黙っててよね♪」


「それは・・・・当たり前だよっ!!」

「そうだよね〜♪ それ言ったら、アユムのとこに戻ってこないかもしんないもんね〜♪」

「だからっっ!! 俺は夕雅さんとアイツに戻ってほしいわけ!!
最初にそう頼んだじゃん!!」


「それは無理だって言ったじゃん。」

「じゃあ、どうすればいいんだよぉ・・・・。ホントに・・・・。」

「あっちゃんと勝負すりゃいいじゃん。ミヤちゃん賭けて。」

「夕雅さんさぁ・・・・参戦しないの?」

「しない( ̄^ ̄) ミヤちゃんに勝っても、あっちゃんはあたしのとこに帰ってくるわけじゃないもん。」

「どうして?」

「どうしても!」



とてもじゃないけれど、アユムに、自分が「芝居」と天秤にかけられた末、捨てられたなんて
惨めで、情けなくて、言えなかった。
プライドが邪魔して・・・・というのもあったけど、わざわざ自分の手で自分を傷つけることもない、
そう思ったことにして。
アユムとは同郷の好で、でもそれ以上でもそれ以下でもなく、
彼を助けるにしてはそんな義理もなかったし、本当にミヤのことが好きなら、
あっちゃんを殴ってでも取り返しに行くと思ってたし(苦笑)。


程なくして、ギスギスしながらもアユムたちが寄りを戻したことを知った。
あたくしとあっちゃんは、相変わらずで、「ひとり」同士、
なのに、互いの家を行き来してみたり、そんなことをしていた。
ミヤちゃんと寝たことを知らされても尚、愛しいオトコ・・・・何なんだ??(爆)
そしてこちらも程なくして新しいステディが出来たりして、結局、あっちゃん
また同じ学科の女の子に手を出して、どうにかこうにかなったりしてたみたい。


あたくしの表彰対象になった舞台の裏で、あっちゃんは、必死になって舞台監督の手伝いをしていた。
出のスタンバイをしている真逆の袖で、ペンライトでキュー出ししている彼を
鬼の形相で睨みつけて、あたくしは舞台へ飛び出していった。
あっちゃんは、自分が惚れた舞台の上で、あたくしが本当にのびのびとしているのを見て
凹んだ・・・・と言っていた。


夕雅さん、あんな芝居したっけか?

俺、見たことないよ?

ひょっとして、出し惜しみ?


素直に「よかった」って言えないかなぁ、この子は。

明らかに俺より上だよね・・・・。

当たり前じゃないの。



あんな刹那にこれだけの会話ができるなんて思わなかった。
たった数秒。
ほんの一呼吸。


しかし、他の誰からよりの賛美より、あたくしの虚栄心と優越感は満たされた。
やっと、彼の呪縛から本当に解き放たれて、本当の「ひとり」になった気がした。
この時、別にステディがいたけれど、格別に愛していたわけじゃない。
表面上は「ふたり」だったけれど、この「ふたり」だって、いつかは終わる。
とてもじゃないけれど永遠に続くようなものには思えなかった。

例えばぷよ2との結婚を意識するみたいな緩やかな幸せというのもなかった。

「ふたり」には当然訪れる「終わり」も、「ひとり」にはやってこない。
それを知ったのも丁度このくらいの時期だった。

↑ま、先行き不安な世の中だもの♪

その答えを出したのは、翌年になってから。
周囲はだんだんと加速度をつけて結婚していったりしたけれど、あたくしはどっしりと
「ひとり」を満喫し始めた。
たまに「ふたり」を思い出さないと、自分から女性がなくなる気がして、
刹那的に「ふたり」になったりしたけれど、6時間もすれば元に戻るそんな関係。


この後、あたくしは「ひとり」でいる覚悟をして、妻子のある人を愛した。
罪は感じていたけれど、それに罰が下るとは思わなかった。
心の中で燃やし続けたその恋も、やがてはあたくしを「ひとり」にしたけれど、
「ひとり」はそんなに怖くない。
ひとりに終わりはない。

↑まぁ、役者とモノカキなんて、所詮こんなもの(笑)

あさみ


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