2004年11月20日(土)
牙を抜かれた荒獅子


あたくしの父・(ここにての通称は)山賊は、何でかいっつも金曜日にあたくしの携帯にかけてくる。
毎週・・・・というわけではない。かけてくる日を遡ってみると、必ず金曜日なのである。


「おぉ、夕雅か。あんなぁ、お母さん、携帯にも家の電話にも出ぇへんけど、
どうなっとるんや? どっか行っとるんか?」


「おと〜さん( ̄∇ ̄;) 今日は金曜日だから、お母さんはプール!!
今頃水ん中だよ。そろそろ覚えてよね、金曜日=プール。」


「あぁ、そうやったか、そうやったか! 何や、プールか。」



いつもは、ここでガチャギリされるのであるが、昨日は違っていた。
金曜日の夜。飲食業となると、書き入れ時なのであるが、何がどうなっているのか
お客さんの脚がパッタリだそうで、夜のアルコールタイムになってからというもの、
この日、既に2時間は経過していたと思われるが、累計ゼロ。とんでもない事態である。

一方、その頃、母・サヨコはここ数年、毎週金曜日の夕方から2時間弱、
市の施設にあるプールへ通い、アクアビクスで体力づくり&おともだち作り(爆)。
あたくしもここへしばらくダンスに通ったのだけど、1年くらいで辞めた。
先生が変わったのと、女ばっかの人間関係に嫌気がさしたのと、そこそこ体力が戻ってきたのが理由。
しかし、サヨコは、それこそかれこれ、あたくしがまだ在京している頃からずっと続けているので
歴からするとすごく長くやっている。50の手習い・・・・ではないけれど、最近、ちょっとだけ痩せたので
ますます気を良くして通っている(笑)。


「ほんでお前、どうや? 調子は。」


山賊と電話で世間話なんて( ̄□ ̄;)!!
世も末・・・・世紀末は数年前に終わったよ、父ちゃん・・・・。
とはいえ、いくら怠いから横になっている状況でも、相手には姿が見えないので、
「調子はいい」・・・・ということにしておく。要らぬ心配はかけさせたくないものだ。


「そういえばなぁ・・・・パニックの子、1人雇ったやろ・・・・。」

「あぁ・・・・話には聞いてる。」

「やっぱりダメや・・・・切ったぞ。」

「ダメやったかぁ・・・・。」

「突然、発作で泣き叫ぶし、お客の手前もあるしなぁ・・・・。
それに、あの子を見とると、どうしてもお前と重なってまってやり切れん。」


「・・・・そう。」



ここしばらく、パニック発作は出していなかったものの、帰郷した頃のあたくしは、
それはもう酷い有様で、まるで幽霊のような足取りと、栄養不足の身体。
そして何より、突然襲ってくる、過喚起発作がパニックに摩り替わるあの瞬間は、
自分でも死んでしまうんじゃないかと錯覚するほどに恐ろしいものであった。
見ている人間は、もっと恐ろしいに違いない。


「まだ薬、飲んどるんやろ?」

「でも、かなり減らしてるよ。一気に減らすとリバウンドで、余計に薬が増えることになるって
医者からも言われてるから、少しずつ減らしてる。」


「あんなもの、飲むな。」

「寝れへんくなったらまた事だから、徐々に減らすわ。」



何も見てないように見えて、一番心配しててくれたのは山賊だった・・・・。
食べたくない、食べられないと、食を拒み続けていた時、帰ってくるたびに何か口にしろと、
その時期一番旬のものを極秘ルートで手に入れて、あたくしに食べさせようとした山賊
医食同源を地でいくようなやり方に、あたくしは失笑するしかなかったのだけど、
時にそれは果物であったり、魚であったり、はたまた自作のケーキであったりと、
それはもう手を変え品を変え、必死に対峙していてくれた。
「俺の作るものに不味いものなんかあるものか( ̄^ ̄)」という彼の絶対の自信を損ねないように
無理してでも食べたこともあったっけ・・・・。

その陰には、食材を必死に調達してきてくれる人たちがいたり、
手を貸してくれる人たちがいるわけだから、ひっくり返すなんていう罰当たりなことはできない。
今でも店に顔を出すと、あたくしの体調を慮ってくれる出入りの人たちがいたりして、
その方々には感謝してもしきれないくらいだ。結婚に際しても、すごく喜んでくれたっけ。


「それはそうと、お前・・・・妊娠とかそういう兆候はまだなんか?」

「( ̄∇ ̄;) 今日、生理4日目。」

「早よ、孫の顔、見せぇ・・・・。」

「お父さんはどっちがいいわけ? 男の子?女の子?」

「んも〜〜〜〜♪ どっちでもえぇわ♪ 可愛がったるぞぉ♪」

「( ̄∇ ̄;) ハイハイ・・・・頃合を見計らって、きちんと御報告できるように頑張りますよ(苦笑)」

「お前の結婚式のアルバム、見たぞぉ〜♪ あれも可愛かったぞぉ〜♪」

「ちょっと、ちょっと!! 周りに人とかおらへんの?」

「おらん( ̄^ ̄) 今日ヒマやもん。」

「あ、そう・・・・( ̄∇ ̄;)」

「あの黒のドレス、ホントによう似合っとった! よかったなぁ・・・・ホントによかった♪」



あたくしは却って心配です・・・・(トホホ)。
これじゃ、まるで、牙を抜かれた荒獅子じゃありませんこと??
あの挙式・披露宴が済んで以来、山賊ってば、基本、こんな感じになっちゃって・・・・。
この間なんか、サヨコと一緒にお芝居を観にいったなんていうもんだから、それこそ
気でも触れたんじゃないかと、逆に心配してしまったわ・・・・。
サヨコがいうには、あたくしら子供が生まれて以来、初めての2人っきりのお出かけだったそうで・・・・。
思い起こせば、うちは祖母が同居していたし、あたくしらが幼少の頃に出かける・・・・となると
5人になるか、4人になるか・・・・そんな勢いで、デートらしいデートもここ30年、
一切ないまま、馬車馬のように働き続けてさぁ・・・・年齢にそぐわない老け方をしちゃった山賊

挙句の果てに、孫を見せに来い・・・・とな。
一生現役!! 喧嘩上等!! 俺にできないことはない( ̄^ ̄)が基本の彼がねぇ・・・・。


付記するならば、披露宴に於いて、あたくしが渾身の演技力で臨んだ、
ファーストページベア贈呈前のメッセージを聞きながら、一番泣いていたのは、何を隠そう山賊です!!
それを横目に、サヨコは、

「あんなに泣くやなんて思っとらんかったわ! おかげでこっちは興ざめよ!!」

と、謎の逆切れ(爆)。
自分ひとり、ちょっと柱の陰に隠れて、誰にもわかんないようにグシグシ泣いていた
山賊の姿は、うちらからは丸見えでも、ゲストには誰一人悟られることなく
祝宴も大団円のうちに済んでいったわけでありますが、これが我が家で伝説となって語り草にされるのは
まぁ、そんなに遠くない未来の話でしょう(爆)。
如何せん、あたくしサイドと致しましては・・・・

「自分が泣いてでも、誰かを泣かせるまでは終われねぇ( ̄^ ̄)」

的スタンスでしたから。しかも、山賊は最後の砦だと思ってたわけですよ。
それがどう? 母親はヒいて、父親がぐしゃぐしゃになるなんて、生まれて30年、
そんな均衡をあたくしは見たことも想像したこともなく、あっさりと砦を攻略しちゃったものだから
何だか拍子抜け(苦笑)。

加えて昨日、「初の孫催促」をされたものだから、コレ、我が家にとっては空前絶後の
出来事なんじゃなかろうか・・・・と、ちょっとの心配がかなりの心配になっております( ̄∇ ̄;)
子供は欲しくないわけではないので、きちんとそれ相応に勤しみたいと思っているわけですが、
その顔を見せるまでは崩れないと思っていた、あの鉄面皮が、早くもボロボロと崩れ始めているという
何とも意外な真実を突きつけられ、アサミンジャーは少々、苦笑い&困惑中。
あの人も、人間なんだなぁ・・・・そんなことを思っちゃったのでした(爆)。

今までどう思ってたかというと、少なくとも「人間離れした生命体」として見ていたと思う。
あの体力、あの行動力、あの猪突猛進の度合いは、同じ団塊の世代たちを集めても
そうそうお目にかかることはない人種だとも思っていた。

↑あたくしは凡人の子だった♪

それが判明しただけでもよしとするか(笑)。鳶は鳶しか産まないんだよな、所詮。
蛙の子は蛙。あたくしも、身の丈に合った子育てをしよう(爆)。

あさみ


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