2004年07月22日(木)
住宅街に落ちていた素敵な思いやり


灼熱地獄・・・・東京も名古屋も岐阜も今年の夏の狂い咲き具合はそうそう変わらない。
そんなこの日、あたくしは名古屋の住宅街に佇む、挙式を行なうことになっているフレンチレストランまで
1人で足を運んだ。


ぷよ2は夜勤明けだし、この日、ここで行なわれるのは、花嫁の美容部との打ち合わせだったので、
1人で出かけることにしたのだった。


相当な距離を歩くことをわかっていたので、今一番歩きやすいサンダルを履いて、いざ出発。
最寄り駅から、道がわかっていても10分はかかるので、この灼熱地獄の中、
結構な体力を消耗しそうだったので、バッグの中にはいつものように麦茶をペットボトルに入れたのと、
血糖値の低下に備えて、駄菓子屋で買った「麦チョコ」(爆)を忍ばせておいた。

地下鉄から降りてから地図を持ってくるのを忘れたことに気付く( ̄∇ ̄;)
でも、1度車で走っているので、キョロキョロと四方を見渡して、あぁ、こっちだなと
正確な方向を察知して元気よく歩き始めた。道は間違ってなかったらしい。


と。
名古屋の住宅街はアップダウンがきつい・・・・。
上り坂を越えて、下り坂に差し掛かり、しばらく行ったところで、ブチッと嫌な感触を足首周りに感じた。
今年で4シーズン目・・・・お気に入りの黒いサンダル、遂に寿命らしい( ̄∇ ̄;)
が、歩けないことはなさそうだった。
このサンダルはかかとの部分がきちんとついていて、マジックテープで固定するタイプなので、
多少ヒールが高いんだけど、このサンダルで新宿の街を結構な距離闊歩しても、
あんまり脚に負担がかからなかったし、靴擦れなんて出来たためしがなかったから、
今日のこの「歩く日」にも登場したわけなんだけど、ここに来て寿命かよ・・・・。


何とか、その切れた部分に負担をかけないようにして、レストランまでは無事に辿りついて、
担当者の方と顔合わせ、今後どんな幹事で打ち合わせが進んでいくか等を話して、
30分くらいで店を出た。


うぅ・・・・さっきより暑くなってるかも( ̄∇ ̄;)
あたくしはまずは下り坂になる店のすぐ前の道を、慎重に歩き始めた。
そしてそれを下りきり、いざ上りへ!と差し掛かった途端!!








































ブチッ!!!





































・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



この灼熱地獄の中、全部イッちゃったんですけど・・・・(涙)
どんなに修正を重ねても、片足だけプラプラしてしまって、とても歩ける状態でなく、
さすがのあたくしも途方に暮れてしまった。。。。
サンダルを脱いで歩こうとしたんだけど、如何せん、この暑さで、アスファルトがまるで
焼いた鉄板のように熱くて、靴下を履いていてもとても歩けた状態でなく、
文字通り、あたくしはその道端にうずくまるしか策がなかった。


うわぁ・・・・どうしよう・・・・っていうか、どうしたら地下鉄の駅まで辿りつけるんだろう?
タクシー・・・・さっきから全然通らないし、バスだって通らないし・・・・。
それにいつまでも日陰のないこんな道端にいたら、健康な人だってたちまち熱射病になっちゃうよ。
オマケにここは坂道の途中(苦笑)。
立っているだけで、フラフラしちゃいそうで、もう片方のサンダルも脱ごうとしたんだけど、
さっきも書いたとおり、道は鉄板状態( ̄∇ ̄;)
こういうのを、進路も退路も断たれる・・・・っつうんだろうなぁ(トホホ)。


あたくしは泣きそうになって、どうしたもんだか、本当に途方に暮れてしまった。


と・・・・そこへ、1台の軽トラックがあたくしに横付けするように歩道寄りに停まった。


「なぁ、それじゃ歩けないだろう? ボンドか何か買ってきてやろうか?」

「え・・・・?」

「さっきから見てると、とても歩けそうな感じじゃないし、もうその靴じゃ無理だよ。」

「は、はぁ・・・・」



見ると、運送屋のおじちゃんだった。助手席やバンの後ろにも荷物が積んであって、
まだまだこの後、色々なところを回らねばならなさそうだった。


「どこまで行くつもりだったの?」

「も・・・・本山まで。そこまで行けば、靴も買えるかなぁって・・・・。」

「歩きだとまだ大分あるぞ?」

「えぇ・・・・わかってるんですけど・・・・。」

「よかったら乗ってくか? 俺も忙しかったら素通りするところだけど、今日はそうでもないし。
それに、怪しいもんじゃないよ(苦笑)。この暑さだ、倒れたら事だよ。」

「でも・・・・」

「こんなむさくるしい車でよかったら、とりあえず乗りな。それこそ大通りまで出れば、
バスやタクシーといわんでも、靴屋くらい見つかるだろう?」


「ホントにいいんですか・・・・?」

「俺はかまわねぇよ。お嬢さんさえよければな(笑)。ちょっと待ってろ、今、席を空けるから。」



そう言って、おじちゃんは荷物が乗っていた助手席を空にしてくれて、あたくしを乗せてくれた。


いや・・・・わかってます。
見ず知らずの人の車に、易々と乗っちゃいけないことくらい、百も千も承知です。
でも、このままだと、あたくしはぷよ2を名古屋駅に待たせたまま、
夕方まで体力が持ったとしても、明らかに帰れない。ともすればぶっ倒れてしまう。
あたくしは藁にも縋る思いで、おじちゃんの車に乗せてもらった。


「こんな暑い日にどうしてあんな場所を歩いてたんだ?」

「実は今日、結婚式の打ち合わせだったんです・・・・(苦笑)」

「(笑)そうかぁっ!! 俺はてっきり学生さんかと思ったよ。いや、笑って悪いな。
そんな日にこんなことになるなってなぁ・・・・ついてなかったなぁ(笑)」

「いえ・・・・多分、後から笑い話になると思います(笑)」



あの住宅街の近くには、大きな国立大学があって、学生たちが歩いているのは珍しくない光景なんだけど
まさか、この歳になって学生に間違われるとはなぁ・・・・( ̄¬ ̄*)♪
っつうか、そんなことで喜ぶ自分、かなり場違い( ̄∇ ̄;)


「本山、本山・・・・この通りに出れば、靴屋の1件もあると思ったんだけど、
案外探してみるとないもんだなぁ・・・・。」

「そうですねぇ・・・・。」

「お、駅だ!」

「あぁ・・・・本当にありがとうございますっ!! お仕事の途中だったのに遠回りしてもらっちゃって。
なんてお礼を言ったらいいのか・・・・。」


「いいって、いいって♪ それより・・・・幸せになりなよ。結婚、おめでとう♪」

「あ・・・・ありがとうございますっ!!」



あたくしが深々と頭を下げて、歩道の中に入ったのを見届けると、おじちゃんは
それこそ何もなかったように、大通りを走らせて行ってしまった。
目の前には本山駅。
隣接するように、M屋という大きな高級スーパーがある。
ここにならひょっとしたら、家に帰るまでにもつような靴が買えるかもしれない。
おじちゃんもわざわざ、ここを狙って降ろしてくれたんだ・・・・ありがたい。
あたくしは恥も何もかなぐり捨てて、片足はもうサンダルを脱いだ状態で店の中に入っていった。

店員さんに靴売り場を聞こうとして、あたくしの目に飛び込んできたひとつのブース・・・・100円ショップ。
季節柄、ビーチサンダルとかがかかっている!!!


大ラッキ〜!!!!


1000〜2000円は覚悟してたのね。
それを100円で凌げるかもしれない可能性を見出して、店の中に入っていくと・・・・

↑ありがたみを噛み締める(爆)


会計を済ませて、非常階段の片隅で新しいものに履き替えて、そのまま急いで地下鉄に乗った。
本山からだったら名古屋まで1本だ。
名古屋に着いて、この一部始終をぷよ2に話したら、やっぱり叱られた( ̄∇ ̄;)
知らない人の車に載っちゃうなんて、ホント無用心極まりないって。


あたくしもそのことは反省しているけれど、でも、あのまま立ち往生をしていても、
多分、他の誰も助けてくれなかったと思う。
灼熱の住宅街、歩いている人やその場所に住んでいる人も外に出てくる人なんて、
ほとんどいない。
閑散としすぎていて不気味なくらいで、それこそ、仕事であの辺り一帯を宅配に回っていた
あのおじちゃんが、親切で声をかけてくれなかったら、あたくしは間違いなく熱中症で倒れていた。
携帯で現場までぷよ2を呼んでも良かったのかもしれないけれど、
連絡をしてから、30分くらいはその場所から動けない。奇しくも正午近い時間だ。
太陽は脳天から降り注ぎ、照り返しのアスファルトから避難しているあたくしを、
果たしてぷよ2が上手く見つけてくれるかどうかという確証なんかどこにもない。
それより先に、見ず知らずのおじちゃんがあたくしに手を差し伸べてくれたんだ。


反省もしているけれど、あたくしはそれ以上に、あのおじちゃんに凄く感謝している。
何の悪意も下心もなく、本当の親切心だけで動いてくれた、出来た大人だったことに
素直に甘えてよかったと思っている。
そして、嬉しかった。
本当に見ず知らずのあたくしに対して、去り際に、「幸せになれよ」と言って
また仕事に戻ったあのおじちゃんのことを、あたくしは多分、これから何度も訪れることになる
あのレストランに行く度に思い出すだろうし、結婚式を終えてからも、多分、その記憶を甦らせるだろう。


閑静過ぎる名古屋の住宅街で、思いがけず出会った、親切なおじちゃん。
あのサンダルが謀反を起こさなかったら、そういう小さな思いやりに気付けないまま
しばらく過ごすことになったんだなぁ。


ちなみに4年前の夏。
同じようにサンダルのベルトが切れて、新宿の街中で立ち往生状態になってしまったあたくしに
新しいサンダルを買ってくれたのは、何を隠そう、今のダンナ様、ぷよ2です(笑)。
思い出の詰まったサンダルはゴミ箱行きだけど、それを捨てるだけの、人の心のあったかさに
触れることが出来たから、あたくしはあの愛用のサンダルをちゃんと捨てられると思う。

あさみ


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