あたくしが住んでいる場所は、田舎とはいえ、その中でもまぁ昔から「住宅街」ではあって、 市内でも、地価は郊外の2〜3倍はつけるくらいの土地となった。 あたくしが幼少の頃なんかは、それこそ人も家もうざうざあって、 子供たちは外を走り回り、そして、近所を散歩する老人の姿あり、 とかく賑やかではあったものの、最近は、めっきり静かになってしまった。
町内という括りでいくと、世帯数は決して少なくはないのだけど、 一世帯あたりの人数が激減していて、 小学校の頃に先生が言っていた「ドーナツ化現象」みたいなものを 痛切に感じるようになった今日この頃なのである。 あの話を聞いてから、猶に15年以上経ったわけだが、あの先生の言っていたことは大当たりで、 うちの学区内の小学校は、見事な過疎を起こしていて、今や1学年2クラスを維持するのがやっと。 と、目と鼻の先にある隣の小学校はというと、きっちり4クラスあるのだというのだから 見事な「ドーナツ化現象」というわけ。 それこそ、あたくしが小学校時代、この隣の小学校の学区は田んぼや畑だらけで、 人が住んでいる気配らしきものが薄かったのだけれど、 昨今、新しいアパートやマンションは皆郊外に乱立するようになり、 そこへ新しい世帯がどんどん入居するわけだから、昔からの「家」は廃れる一方で、 便利の良くなった郊外に「世帯」が増えていった。
そんな中・・・・。同じように季節は巡りきて、今や春。 梅や桜が順番に次々と開花を告げ、そして、花粉症の人たちはマスクが手放せなくなり、 植物の間で暮らしている長閑さは、昔と全然変わらない。 そしてその中でも、如何なく「変わらなさ」を発揮しているのは「ウグイス」たちである。
毎年、2月下旬から3月上旬にかけて、鳴く練習を始めるのである。 「あ・・・・ウグイスだぁ。」と、耳を傾けていると あの独特の声はまだまだ未熟で、上手に「ホーホケキョ」と鳴けないのである(笑)。 その初々しさが逆にいじらしくて、可愛らしくて、毎年毎年、 「今年は、いつ頃上手になるのかなぁ。」 と、長閑な春の訪れと共に、ウグイスたちが一人前の鳴き声になるのを今か今かと 焦がれながら待ったりするのである。
高校時代。 あたくしの通っていた高校は、市内のはずれのとんでもないド田舎にあったので、 教室からもこのウグイスを堪能することができた。 退屈な数学の授業の時に、ふと窓辺から聞こえてくるウグイスの声。 もう、あと一息なんだけど、上手く鳴けない・・・・。 う・・・・ん、それ、もうちょっと、頑張れ!! みたいな気持ちでいると、先生が 「あ・・・・ウグイスやなぁ。まだまだ下手糞やけど、今年も来たな♪」 と、まるで新入生でも迎えるように、ほろりと笑みと共に零したのを良く憶えている。
そして、4月を迎える頃になると、何度も何度も同じフレーズを練習したあいつらが、 見事に「ホ〜〜〜〜ホケキョ♪」と鳴きながら、どこかに羽ばたいていく。
何となくだけど、「やったね♪」みたいな気分になって、 今年も新しい春が来たんだなぁと思うのだ。
今日、上手に鳴いているウグイスがいた。 姿は見えなかったが、美しい鳴き声を残していった。 桜もいいが、ウグイスの姿なき声というのも、春の情緒としては なかなかの趣があって、いいものである。
本日、「みそひともじBBS」に、昔からの暴れ仲間からの初カキコがあった。 うむ・・・・多分、宿帖を見つけられなかったに違いない(爆)。 それでも一所懸命に5・7・5・7・7でまとめてきたので、披講も兼ねてレスはつけたげようと思っている。 次からは、「楓の間」に来い!( ̄^ ̄)と進言しておかねばならない(笑)。
それにしても、あいつまでミュージカルかぁ・・・・。いいなぁ・・・・。 あいつは、踊りはともかくとして、歌は巧かったはずだ。 踊りは・・・・今やウェイトダウンして、ちっとは見られる体型になったから、 多分、まだあたくしの方が上手いだろうな(笑)。<コレ見られたら射撃されそうだな。 (ダンスの総年数は、あたくしの方がキャリア上だと思う。) (でも、ヤツはタップができるのであった( ̄∇ ̄;))
ヤツは動きは堅いが、台詞回しはなかなかで、年齢の割には味のある演技ができる。 とはいえ・・・・。あたくしらも30歳を目前にしたところにいるわけだけど、 そんな彼が、1年位前に、あたくしにこんなことを言ったことを思い出した。
「俺の事務所の大先輩が言っとったんやけどな、 この世界は、早くデビューした者勝ちというわけではなくて、なるべく遅くデビューし そして、長く生き残ることが大切なんだ・・・・ってさ。 俺、気ばっかりが焦ってたけど、あの言葉を聞いたら、一気に気持ちが楽になってさ。 今、色んなことに挑戦してるよ。云々・・・・。」
その色んなことの一環が、きっと今回のミュージカルなんだろう(笑)。 しかし、あたくしもこの言葉で一気に癒された覚えがある。 あの頃、あたくしはまだまだ野望に満ちていて、色々と考えもあったが、 夏を1度迎える度に、まるで脱皮するように、士気が殺がれていく。 すごく、嫌な感じがするのだ・・・・その脱皮は。 決して「成長」の証なんかじゃなくて、古くなり諦めが染み付いたコートを 仕方なく脱ぎ捨てるような感じだからだ。
あたくしにもまだチャンスは残っているのだろうか・・・・。
そういえば今日、珍しく、昔書いていたシナリオブックの続きを、必死に肉筆で追って書き続けていた。 普段、PCばかりの生活をしているので、字が下手糞になっていた。 それでも喰らいついて、必死になって書いていた。 そこに何かが生まれ出るわけでもないのに、ひたすら書いていた。 一気に、昔のペンだこが甦った。 そうか・・・・。 一心不乱に書いているあたくしは、時に痙攣を起こしそうになっている手さえ コントロールするほどの力を持っていたのか・・・・。 改めて、昔、成し遂げようとしていた恐ろしくも儚い、盛大すぎる作業の行程と、 そのものが「偉業」に匹敵することだったと知る。
ヤツの書き込みで、あたくしは明らかにペースを乱された。 また「おいてけぼり感」が甦ってきてしまった。 本当は役者なのに・・・・何のトレーニングもしてないなんて、愚の骨頂ではないか? 本当は役者なのに・・・・公演の予定が1つもないなんて、最低ではないか?
その思い込みを必死に消し去るため、あたくしは腱鞘炎を引き起こす一歩手前まで ペンを握って、大学ノートを1冊分を書き上げた。 井上ひさし氏を蹴散らす、この早筆は自慢の一つだが、やっぱりあたくしは舞台に立ちたい。 紙に文字を書くだけの生活じゃ、我慢も限界なのだ。 今日・・・・そう悟った。
「あたくしらしさ」・・・・それだけを忘れなければいい。 例えば、あのウグイスのように。 それをあたくしは、何をこんなに焦っているのだろう。 人々に見守られながら「上手になったね」の一言で、ウグイスのように羽ばたいていけても 新しい大きな壁が、すぐそこに待っているのはわかっているのに。 それでも、焦りは募る。 身体を曝してないだけに、いつもより2倍も3倍も焦るのだ。
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