2003年01月23日(木)
闘え! 起動戦士アサミンジャー 「大戦争鎮圧」の巻


昨日の追記になります。できれば、昨日の様子を把握して頂きたいのだけれど
面倒な方は、ここからどうぞ。





あれから数時間。ぷよ2の奮闘は続くが、一向に状況が変わる気配なし。
彼女は、多分、落ち着くためにとちょっと強めの抗うつ剤を服用したらしいのだが、
如何せん、今の彼女の状態は、処方当初の体重を遥かに下回り、
明らかな飢餓状態。
そんなところへいつもと同じだけの薬をぶち込んだら、あっという間に血中濃度が上昇し、
意識も飛ぶっつうのは、まぁ冷静に考えれば明々白々。





もう、決めた。
あたくしはそれこそ機動戦士ガンダムのように立ち上がらねばならない。
「巨大な〜敵を〜 討てよ!討てよ!討てよ〜!!」じゃないけれど、
どうにかして彼女を、穏便な状態で名古屋から出さねばならぬという妙な使命感もあって、
あぁだ、こうだと結局彼女を甘やかしてしまっているぷよ2のやり方にも業を煮やし、


「(電話を)替われ!( ̄^ ̄)」



と、まどろっこしいやり方にピリオドを打つべく、あたくしは立ち上がった。
とはいえ、相手はボーダー。一筋縄ではいかない。
オーアエにも再三再四言われたので、
あたくしは名古屋に出向いて、直接交渉をすることは許されていない。
あるのは、音声でつながった一本の電話のみ。


電話で話をすることすらままならない彼女を、無理矢理叩き起こし、
あたくしは、とりあえず要点をまとめて彼女に伝えたが、
のらりくらりとかわされて、会話にならない。
挙句には 「あさみたんはあたしのことを見捨てるのぉ〜〜〜っっ!?」 とくるので、
ちゃんとした会話が成立しないのだ。


入院はいや、病院に行くのもいや、救急車はいや、実家には帰りたくない、
今までいた友人宅にも怖くて戻れない、ここにいたい、ここにいたい・・・・


つまるところ、これの繰り返しで、ぷよ2も出る方法がなくて、困っていたようだ。




「とりあえず、身体を起こして、
耳元で大きな声で『これから救急車を呼ぶ』って言って。」


「(なぁ、これから救急車呼ぶからな)」

「反応は?」

「ない・・・・に等しい。
それにしたって、救急車ってどうやって呼ぶの?」


「バーカ! 119番に決まってるでしょ!?」

「そうなんだけどさぁ・・・・。」

「呼んで、全部説明するの。そうすりゃ後は、救命救急で何とかしてくれるから。」

「わかった。(お〜い、返事しないのなら、本当に救急車呼ぶからね。)
(いいね。じゃあ、呼ぶよ。)」




とここまで来た時に、彼女が微妙に反応を示した。
今しかない。





「替わって。」

「(ほら、あさみから電話だよ。)」

「うぅ・・・・・あぁ・・・・あさみちゃん・・・・」

「いい? これから救急車を呼んで病院に入れてもらうから。」

「やだぁ〜〜〜〜っっ!!」

「じゃあ、ぷよ2はどうするの? これから仕事もあるのよ?
あんた1人をおいて、部屋をあけるわけにもいかないでしょ。」


「1人で留守番する・・・・。」

「じゃあ、一言言っておくけれど、
これが表沙汰になったら、ぷよ2は警察に連れて行かれるのよ。
あなたをこの部屋から出られないようにして出かけるんだから、
あんたをここに連れてきた時点で、立派な拉致・監禁罪なんだから。
迷惑をかけたくなかったら、今すぐ病院に行くか、実家に帰りなさい。」


「ぷよ2は悪くない・・・・どうして警察なの?」

「あなたがそこにいるからよ。」






ここまで話すと、また押し黙ってしまう彼女。
くっそ〜・・・・あと少しだったのに、交代人格が出てきちゃったら
話は最初からやり直しじゃんかよ・・・・(-。-) ぼそっ
と、出てきた人格は、彼女の中でも比較的大人で、比較的常識的で、
極端に自虐的ではあるけれども、何とか話の出来る人格だったのが幸いした。




「あたくしがいると、ご迷惑なのでしょうか?
だったらせめてもの罪滅ぼしのために、お部屋のお掃除をさせて頂かなくては・・・・。」


「●●さん(この人格の名前)、お掃除はいいから。
本当に迷惑をかけたくないんだったら、病院か実家。どうする?」


「・・・・・でも。」

「言っておくけど、そこの近くの病院はお世辞にもきれいなところとは言えないよ。」

「いいえ、わたくしのような汚い者は、そういうところが似合っているのです。
警察にも頼みました。刑務所に入れてくれと。
でもダメだと言われました。
せめてお掃除だけでもさせてくれと頼んだのに、それもダメだと言われました。
わたくしには行くべきところ等ないのです。」


「じゃあね・・・・ちょっと話は変わるんだけど、
あたしはもう、あなたのお母様に連絡して、●●駅まで迎えに来るように
お願いしたの。あなたが帰らないって言うのなら、
あたしはお母様に頭を下げなくちゃならなくなるわね。」


「え・・・・?どうして・・・・?」

「お母様との約束を無碍にも破ったことになるからよ。
約束を破ってしまったら、謝らなくてはならないのは当たり前のことでしょう?」


「うん・・・・でも、あさみちゃんが頭を下げるのは・・・・違うと思う。」

「そうかな? さっき電話をかけたら、もうお母様はお家を出てらっしゃるの。
あなたのことを心配して、必死に●●駅に向かっているところなのよ。
あたしはあなたのことを帰すと約束をしてしまった。
だから、どうしてもあなたを新幹線に乗せなくちゃいけないの。」


「・・・・・・・・。」

「今、体調が悪くて動けないっていうのなら、
これから病院に行って。そのことはあたしからお母様にちゃんと説明して、
わかってもらうように努力するから。」


「病院は・・・・イヤだ。」

「じゃあ、ちょっとなら立って歩けるのね?」

「・・・・・・・・。」

「わかった。じゃあ、あなたもあたしと約束してくれないかしら?
今からとりあえず、外に出るの。
で、ぷよ2はちゃんとあなたの状態をわかっているから、
行くべきところに連れて行ってくれるはず。
それに従うだけでいい。病院がいやなら、病院には行かない。
だけど、ぷよ2の言う事だけはちゃんと聞く。
これだけ約束して。これだけでいいから。」


「・・・・・・うん。」

「今、『うん』って言ったね?
じゃあ、あたしとの約束は絶対に守ってね。
もし破ったら、あたしはあなたのお母様にも謝りに行く。
破ったら、あたしは本気で怒るからね。いいね。
じゃあ、ぷよ2に替わって。」


「おぅ・・・・。」

「今や! 今やったら動かせる。何としてでも名駅まで連れてって、
新幹線に乗せてちょうだい!!」


「わかった!!」








汚いやり方ではあったが、原始的な誘導でとりあえず彼女を
ぷよ2の部屋から連れ出すことには成功した。


切符を買ったり、ホームへ連れて行ったり、
車掌や売り子のお姉さんにまで、彼女は体調が悪いから何かあったらすぐに
処置をしてくれと頼み、
その後もぷよ2は懸命に頑張ってくれた。
それこそ、必死だったらしい。
ドアが閉まり、発車をするまで見届けて、彼はようやく帰宅した。




あたくしは、彼を労ったが、1つだけ腑に落ちない点がないわけでもない。
あたくしなりに必死に対処法を調べて、それを伝え、
こういう時はこうした方がいいとか、これだけは絶対にしてはいけないとか、
本当はあたくしが直接行ってやればよかったんだけど、
オーアエからの命令で、直接対応はするなと厳しく言われていたし、
某�校瓩�ぷよ2が「何とかする。心配するな。」と気を使っていてくれたので、
あたくしもそれに甘えていた。


だけど、想像を絶する以上に、ぷよ2の対処は甘すぎたのである。
薬で眠ってしまっているから、今は動かせないとか、
とにかく何かを食わせておけばよかったとか、
非常に甘いのである。
あたくしは、彼女が冷静に主人格として話が出来る状態でなければダメだ
と、再三再四言っているのに、
物理的な距離を置くこともせず、半日以上を彼女のために費やしたのだ。
それはイコール、交代人格を助長させるに過ぎなくて、
ひいては、彼女のために全然なってないということになるのだ。


友人として彼女のことを考えて、行動するのであれば、
ここが限界のところだよ、ここまできたら、迷わずに救急車を呼ぶんだよ、
仕事の時間になったら、外に出るんだよ・・・・
あたくしは、数分おきにかかってくる電話で、口が酸っぱくなるほどそう言った。
直接、彼女と渡り合った方が、どれだけラクかと思った。



「結局、あさみの方にまで手を煩わせて、心配かけてまった。
ごめん・・・・俺、今、むっちゃ反省してるわ。」


「あたしのことはいいから。でもね・・・・。
やっぱりちょっと見直すところはあると思うよ。
身に沁みたでしょ? 今回の一件で。」


「あぁ。『情けは人のためならず』じゃねぇけど
優しいっていうのにも色んな種類があるってのはわかった。」


「まぁ、それがあんたの長所だけど、致命的短所でもあるわけだ。」

「そういうことやな・・・・。」





他人の生き様を介在させて、時には自分の生き様を見直すことも必要だなと、
ぷよ2は言っていた。彼にとっては厳しい一日となったことだろう。







この日の夜。
ちゃんと実家に到着したらしい、件の彼女から電話があった。
至極、落ち着いた口調で、泣き叫ぶような声をも出さず、
丁寧に今後の指針を語ってくれた。


彼女にとっては不本意で悔しい選択だったかもしれない。
決して、生れ落ちた実家に幸せがあるとは限らないのだから。
彼女は実家の惨状を、事ある毎にあたくしにも教えてくれていた。
常軌を逸したその家庭事情は、まるで小説か何かに出てくるような驚愕のつくりで
最初は俄かには信じられなかった。
が、彼女の病んでいる姿、そしてそれが悪化していく姿を知り、
あの話は本当だったんだと、改めて確信する。


「私がこの家を立て直す。」

「でも、無理はいけない。ゆっくりやらなきゃ・・・・。」

「でも、この家は明らかに狂ってるから・・・・。
私が何とかしなきゃいけないんだって思った。」


「まだ若いんだから、これからでもまた、いくらでも上京のチャンスはあるよ。」

「それはもう・・・・ないと思う。」

「え・・・・?」

「お母さんにさっき言われた。
『老後の面倒を見てもらわなくちゃいけないから』って。
もう、私しかいないんだ。好き勝手なことばかりしてちゃいけないんだ。」


「・・・・そう。
でも、声が落ち着いてる。安心した。
やっぱりそこが、あなたの本当の家だったんだよ。」


「認めたくないけど、そうかもしれない・・・・。
この家から逃げ出して、自由になれば、
もっと楽しいこととかがいっぱい待ってるって思ってた。
でも・・・・。」


「東京に出てきて、余計に酷くなっちゃったんだよね・・・・。」

「うん。でも、根本がわかった。私がこの家を立て直してやらなきゃって。」





彼女は、この長い戦争を経て、一気に逞しくなった気がする。
病気に対しても前向きだ。
ボーダーはなかなか難しい病気で、日本は精神病に関しては殊、後進国なので
これからも長き研究を重ねていかなければ、なかなか発展には遠いだろう。


それでも彼女は希望を捨ててはいなかった。
あと何年かすれば、
今よりは少しは楽に生きることが出来るかもしれないという一抹の希望だけが
彼女を支えているようだった。
健気で痛々しいほどなのだが、そんな彼女にあたくしも勇気づけられた。


あと何年かすれば、きっと今より生きやすくなる。
格言に近い。

↑私からのささやかな祈り・・・・

あさみ


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