イヴ
 僕の親友には片手が無い子が居る。
 彼女は僕よりしっかりしていて、僕より力持ちで、僕よりもずっとしっかりと自分の夢を掴もうと生きている。
 世間の荒波に曝される事無く温室内で生きてる彼女だけど、温室では温室なりに苦労する事はあるのだ。
 育ちの良い人間は自分の目の前の人物の片手が無くても相手が目の前に居る以上は決して其の事に触れはしないし、片手が無いからといって中傷する事はない。ただ、決して相手を自分の領域に入れようとしないだけ。
 温室の中で自分の領域を作り上げ様と彼女は常に努力している。

 僕の知り合いには目の見えない子が居る。
 彼女は「盲目」という言葉は嫌いだ。自分の状態を表すのに正しい文字ではないからだそうだ。
 母親のお腹から出て来た時から彼女の目は本来の役割を果たしていない。
 僕は彼女の世界を完全には理解出来ない。彼女も僕の伝えたい世界を含んだ言葉を理解出来ない。
 出来ない事は出来ない事と片付けて自分の才能を彼女は活かそうとしている。

 僕の親戚には喋る事の出来ない子が居る。
 親から受け継いだ整った顔と自分の努力で彼は上手く生きている様に見える。
 彼はただ声を出す事が出来ないだけ。

 何処か一部が不自由な人間を聖人化して見る気は僕にはない。
 「○○が不自由なのにあなたは頑張って生きてるわねぇ。」なぞと何所かの莫迦なオバハンみたく言う気は無い。生き物が自分を生かす為に努力するのは当然の事。

 クリスマスイヴ…なのに、旧約聖書を思い出した。
 蛇が唆したのはイヴだけではない。
2000年12月24日(日)
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